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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
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土竜の復活

地下天井の崩落から、ギリギリのタイミングで脱出に成功したレグルス達。さっきまでその地下にいたピラミッドはというと、正四面体型の建造物だったものの面影がない程崩れ去っていた。今これを初めて見たものならば、ただの瓦礫の山としか思えまい。


 何らかの形での妨害工作はある程度予測していたレグルス達であったが、このような、ピラミッドもろとも自分隊を消そうとするとは考えてもいなかったのである。当然であるが、これではピラミッドのどこかにあるはずの、土竜を封印した祭壇も探し当てるどころか、そもそも原形をとどめていない可能性すらある。


 土竜の復活、更には精霊竜の儀式の完成という大目標はずっと先に遠のいてしまった感がある。もしかしたら、もう完全に詰んでいるのではないだろうか? そう思えてしまうほど、ショックは大きかったのである。それよりも、あの危機一髪の状況から、全員生き残れたことを喜ぶべきであろうか? 最後に不意打ちをかましてきたマルローはどこかへ行ってしまったようだ。もしかしたら全員仕留めたと確信していたのかもしれない。


「・・・・・」


 少なくともコーネリアにとっては更に精神的ダメージは大きいであろう。今の人生での両親を失ったばかりである。そんな中、前の人生の父親に再会できた喜びを味合う暇もなく、自分たちを逃がす為犠牲になったのだ。その喪失感はどれほどなのか、周りからは慮ることしかできない。


 レグルス、エスト、ラルフ、アレクの旧コトナ村勢も思いは複雑である。4人とも、ヴィトと直接相対したことは無い。が、故郷を滅ぼした責任者ではある。数多くいる仇の代表といっても良い。特に、エスト以外の直接襲撃を受けた3人にとっては、殺してやりたいほど憎い相手であった。そういう意味では、結果として仇はとれた形になりある意味、望みは果たされたわけであるが、同時に彼のおかげで現在生きているのである。それについては感謝しなければいけない。


 それに、彼はコーネリアという新しい仲間の元父親でもある。ある意味、仲間の肉親である者が、自分たちを助けるために最後の力を振り絞って、結果、犠牲になったのである。であるから、少なくとも仇を取ったと喜ぶ気にはなれなかったのである。


「・・・ネリアちゃん・・・」


 ミリアムが心配そうにつぶやいている。きちんと声を掛けたかったのだろうが、良い言葉が思いつかず、中途半端な形になってしまっている。他の者に関しては今のところ無言だ。自分の考えすら整理できていないのかもしれない。・・・そんな中、


「・・・ああ、もう!」


 コーネリアは、バチンと自らの掌で両方の頬を叩きながら気合を入れる。


「こういうのは切り替えが大事なのよ。 落ち込んでたってしょうがないじゃない!」


 そう自分自身に気合を入れて周囲を見渡す。・・・そして睨まれた。・・・もしかしたら、自分では気が付かないほど呆けた顔をしていたのかもしれない。


「私たちは土竜の封印を解くために来たんでしょ? 瓦礫の中から手掛かりが出てくるかもしれない。 諦めずに探しましょうよ?」


「・・・そうだな。まずは探してみようぜ、って何探せばいいのかも分からないんだがな。」


 コーネリアの呼びかけに真っ先に反応したのはラークだ。


「・・・何でもいいから探せって・・・無茶言わないでよ。」


 カペラが呆れ顔で言う。・・・だが、言葉のテンションから前向きに言っているのが伝わる。


『・・・そろそろ聞く耳が出てきたようやな? 絶対とは言えへんが、結論から言うと探しようはあるで。』


「ゲン? どういうことだ?」


『レグも含めてちゃんと聞いとき。 ワイらは6個の宝玉を探しておったよな? それを使って何する思うん?』


「だから封印解くんだろ?」


 よく分かってなさそうなラルフがそのまんまなことを言う。それは答えとは言わないとレグルスは内心突っ込んでいると、


『それをどうやってと聞いてるんやで? さっきピラミッドの結界を解除したやろ? どうやったん?』


「5個所の宝玉に5種類の魔力を注いでたわね。」


『せや。ということは、今回は集めた宝玉に魔力を注げばええってことなんや。』


 エストの答えにゲンは満足そうである。


『ってことはこの場でもう封印解けるってことか?』


『ラークはん、流石に甘いっちゅうねん。・・・さっきは行ってみればピラミッドを封印してたやろ。せやから、下を除いて5個所で抑えてたねん。 今回は宝玉は6つあるんや。』


「? 土竜自体を封じている物体があって、それを宙に浮かせて、6方向から魔力を注げばいいってことか?」


『レグ、大体正解や。 ピラミッド内部にはそれが配置しやすいように台座が設けられていたはずや。勿論これはワイの推測やが、土竜様を封印するとすれば、火、氷、光、闇を真四角に並べて、その中央に土竜様を封印した宝玉を設置する。次にその上下から風と土の宝玉を配置して、宝玉だけを結ぶと正八面体になるようにするんや。その上で魔力を通し封印を完成させたはずや。せやから・・・』


「・・・この瓦礫の中に土竜を封じ込めた宝玉が別にあるってことね?」


『カペラはん、大正解や! ちなみにワイならそれの判別が出来るやろうから、これやと思うものはかたっぱしから持ってきたらええねん!』


「そうは言ってもねぇ・・・やっぱり土の魔力を発していたりするのかな? あと大きさとか?」


『ワイが封印したわけやないし、分かるわけないやん!・・・ただな、合ってるかどうかは責任取らんけど、土竜様の存在からして、直径30㎝位の球体かもしれんな。あと土の魔力を発しているとかは多分正解や。その辺を目印に探して来てや!』


 何故見たことも無いのに、ここまで推測できるのか謎であるが、保有しているエネルギー量とかで球体の大きさとかが決まってくるのかもしれない。ゲンにはそれが分かるということかもしれない。・・・とりあえず、他に案があるわけでもなく全員その指示に従うことにした。

 ・

 ・

 ・

 何せ、もとは1辺400mの正四角錘である。広さはそれが瓦礫の山となっても何ら変わらない。寧ろ瓦礫の上を歩くのは困難なため、飛行手段がある者が中心になって捜索している。あくまで予想であるが、宝玉の設置個所はピラミッドの中心だった気がする。したがって封印体とでもいえばよいのか? それは中心付近の瓦礫の中にあると予測される。そのため捜索は全体というより中央付近を重点的に行われている。


 そして、捜索が始まってから2時間が経過した。いくつかそれっぽいものが運ばれてきてはいるが、ゲンが違うという物ばかりである。・・・こうやってみると、内部には土の魔力を含んでいる者が多数あったということなのだろう。


「・・・無いな。」


「無いわね・・・」


 ラーク、カペラが呟く。 内心みな思っているのだが、改めて人に言われるとがっくり力が抜ける感じがするのは不思議である。


『ちょっと待ちいな! 諦めるのは早いで!』


「そうは言うけどな、これだけ探しても出てこないんだぜ?」


 ラルフが吠える。ちなみにラルフは歩いて探している。労力は飛行組の数倍は掛かっているだろう。


「まあ、まだあきらめる気はないが、しんどいのは事実だな。」


 レグルスもこんなことを言い出している。まだ心が折れていないだけマシであろう。


「流石にウザったいわね。・・・ねぇカノー? 魔素を分けてもらうことは出来る?」


「ネリア? いや、別に構わないけど、何に使うの? 自分のじゃダメなの?」


「勿論魔法何だけど、自分のじゃ足りなくてね。・・・一番持っていそうなのが貴方だったから。」


「成程ね、好きに使うといいよ?」


 そういってコーネリアの手を握るカノー、カノーも持っている膨大な魔素がコーネリアに流れ出す。


「・・・分かってはいたけど、貴方凄いわね。うん、これなら行けそう。」


 これだけの魔素を受け取って平然としているコーネリアも大概なのだが、敢えてそこに触れないカノーである。・・・何をしようとしているのか皆が注目する中、コーネリアが魔法を唱えだす。普段は無詠唱か簡単な言葉を発するだけなので、長い詠唱が必要だというだけでかなり異質だ。


「・・・・・大地の持つ引力のくさびを断ち切れ! 【ゼログラビティ】」


 最後の言葉が紡がれたとたん、瓦礫という瓦礫が宙に浮きだす。・・・どうやら、大地が物体を落下させる力を断ち切ったようだ。カノーの魔力を使っても尚、コーネリアの額には汗が浮かぶ。


「今のうちに! 浮いているものの中にない?」


『! あれやあれ! レグ! あの黄色っぽい奴や!』


 見ると確かに一つだけ、琥珀色した、人の頭ほどの球体が浮いていた。周囲と比べると明らかに異質であった。そこからの行動は早かった。すかさずその球体を確保し瓦礫の外まで飛んでくるレグルス。それを見届けて、コーネリアも無重力魔法を解除したのだった。そして戻ってくる途中から、グローブとしてじかに触れているゲンが断言する。


『・・・間違いないで。これは紛れもなく土竜様だ。』


 前に自分は土竜の眷属とか言ってたな。そのゲンが言うのだから間違いないのだろう。地上に降り立ち、集まってくる皆に指示を出すゲン。


『誰か土竜様を浮かせてな。・・・あ、もうちょい高くや。・・・そうそうそんな感じでええで。あとは・・・各宝玉をさっき言った6方に配置して・・・って、ちゃうねん。火と風の位置が逆やねん。・・・せや。それでええねん。・・・あとはそれぞれの宝玉に魔力を注ぐだけや。』


 土竜と思わあれる球体と各宝玉はレグルスが浮かせている。各宝玉が正八面体の頂点になるように配置し、その中心には探し当てた球体が嵌められた格好になっている。


「それじゃ頼むぞ!」


 レグルスの掛け声とともに、エスト、ミリアム、ラーク、カノー、カペラ、コーネリアがそれぞれ火、光、氷、闇、風、土の各宝玉に魔力を注いでいく。すぐさま各宝玉は輝きだし、それぞれの宝玉の色の光、すなわち赤、白、青、紫、緑、黄の色の光を球体に注いでいく。その光を受けた球体は徐々に脈動を初め、やがてまばゆい光を放ったかと思うと、


「グルラアアァァァァァア!!!!!!」


 激しい雄たけびとともに、体長10mは優にあるであろう巨大な竜が今ここに復活したのである。







次回は7/18予定です。前回同様、変更するかもです。 今回微妙な形で終わりましたが、次回がこの章の最後になる予定です。更にその次からは新章になる予定です。

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