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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
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土の宝玉と〇〇の最後

ピラミッドの地下を、幅が4m程の通路に沿って進んでいるレグルス達。地下通路というとジメジメしている印象もあるのだが、ここは砂漠であるからか、そのようなことは全くなく非常に乾燥している。それでも僅かばかりの水分はあるのか、蠍等が時々出てくるので注意しながら進んでいる。


「ひっ!」


 今もコーネリアの目の前に蠍が現れたところである。驚き、恐怖で悲鳴すら上げ切れないでいるが、至極冷静にラルフが踏みつぶす。・・・一応、毒をもった危険な生物なので、放置していたら危険であるのだが、その危険さの前に、外見の気持ち悪さだけでやられてしまっている女性陣、ミリアム、エスト、カペラ、コーネリアにとって、それを踏み潰すという行為はドン引き以外の何物でもない。4人は例外なくラルフに対して信じられないといった視線を容赦なく浴びせる。


「・・・あのなぁ。・・・そのまま放置するわけにもいかないだろ? まあ、回復要員も複数いることだし、今後は放置するか? ん?」


「・・・無理。」


「・・・ごめんなさい。 放置は耐えられないですわ。・・・今後もよろしくお願いしますわ。」


「ないわぁ~」


「あんた、女子にはもっと優しくしなさいよ! 永遠に嫁なんか来ないわよ?」


 エスト、カペラ、コーネリアが一斉に反発する。横で聞いている他の男性陣は、理不尽だとは思いながらも自分に飛び火するのは避けたいため我関せずだ。ラルフに援軍はいないようだ。ミリアムだけがしおらしくお願いしているのが唯一の救いだろう。


「うるさいわ! 殺せばキモイと文句を言う。 放置したら放置したで人でなしのような扱いだよ。」


「ラルフ頑張れ! 僕も応援するよ!」


「つうか、何で俺だけなんだよ! 火魔法使える奴とか焼けばいいだろ?」


「・・・嫌よ! 気持ち悪いし。」


「エスト、お前には言ってない。・・・レグとかも使えんだろ?」


「・・・いや、別の理由から無理なんだ。こんなほぼ密閉された空間で火魔法なんか連発したら、酸素不足になって、呼吸が苦しくなるのが目に見えているからな。使う必要があれば使うが、できるだけ温存だ。」


「・・・そういうもんか。・・・って騙されないぞ! お前は魔法の前に俺と同じことできるだろ? 虫が苦手な訳無いしな。」


「・・・いや、これはラルフが適任だよ。任せた!」


「まあ、別にいいけどな。」


 今後も、蠍というか、虫類の駆除はラルフの仕事になりそうであった。そんなやり取りの後、突然地面が盛り上がり始める。・・・岩石魔人だ。・・・それが3体。


「クソ! ここで敵襲か?」


 叫んだラルフが剣を一閃、一体の岩石魔人を一刀両断する。内部のコアもしっかり切ったのか、そのまま崩れ土にかえる。残りは1体はレグルスの一撃で崩れ、もう一体はカペラの風魔法で風化させて倒した。


「魔王国の連中、ここで襲ってきたか。」


「いや、違うみたいだね。 ここ、魔術的な仕掛けが結構あって、侵入者がいたらさっきの岩石魔人が発生して襲ってくるようになっているみたい。・・・まあ、それを誰がやったのかといえば、否定はしかねるけど。」


 ラルフが言ったことを否定するカノー。ここの仕掛けについてはそのまま事実を言っているのだろう。それも最近設置したものではなく、ここが出来た当初からのようであるし、元々の仕掛けであると言いたいようだ。


「じゃ、あれが何度も襲ってくるってことか? これだけなら楽なんだけどな。」


「・・・実際難しいのかもしれないぞ? 大体、どうやってここに魔獣の大軍を仕込むっていうんだ?」


「確かにそうだね。狭くて動けなくなるし、そもそも空気が悪くなって、向こうも呼吸が出来なくなるだろうさ。」


 ラルフも希望的観測を言っているが、レグルスやアレクも言う通り、ここでの襲撃は難しそうだ。まさか少人数ではこないだろうと考えているからだ。そういう意味では最大のチャンスは、自分たちがここに来た時だったのだが、すんなり結界を解除して中に入ることが出来た。なので、少し楽観的に考えている一行であった。


 地下に入ってから2時間程経過しただろうか? これまで幾度となく岩石魔人が襲って来ては撃退するということを繰り返してきた。更には軽い迷路にもなっていて、行き止まりにぶち当たること数回。それでも確実に奥に進むことが出来ていた。


「大分歩いたわよね? まだ無いのかしら・・・」


「・・・どうだろうな? あそこの尽き辺りは左にしか行け無さそうだな?」


 閉ざされた空間を移動しているからか、言葉を発したエストやレグルス以外にも少なからず疲労の色は見え隠れしている。そろそろ着いてほしいと祈りながら突き当りを道なりに左に曲がっていくと、


「・・・何か向こう側、少し広くなってないか?」


「暗くてわかりにくいけど、そんな感じだね。」


 ラークとカノーがそんなことを言っているが、これまで光魔法で自分たちの周囲を照らしながら進んできたので、遠くまではよく見えないのである。焦る気持ちを抑えながら進んでいくと、そこは確かに広めの空間があったのである。10m四方で、高さが5m程ある大きな部屋。その突き当りの奥に台座が置いてあり、そこには琥珀色をした宝玉が置いてあったのだ。近寄ってみると、大きさは他の宝玉と同じ大きさである。


「これは土の宝玉で間違いが無いな。・・・これで土竜を封印から解き放つことが出来るかもしれない。」


 土の宝玉を手に取るレグルス。後は脱出するだけだ。


「場所は入り口に奥へ向かう道もあったから、そっちに行けばいい気がするな。」


「まあ、行ってみようよ。・・・違ったら違ったでまた考えればいいし。」


 レグルス、ラーク、カノーが口々に言う。ようやく目的に近づいた感じがしてきた。とりあえず、転移魔法で一度外に出ようと、転移陣を設置しようとしたのだが、


「あれ、揺れてる?」


 カペラが言うように、部屋全体が微かに揺れている。・・・地震だろうか? ここが地下だけに生き埋めになったら流石に厳しい。そう思い、転移陣の起動を急ぐ。 が、焦るとかえって効率は落ちるもので、作業がなかなか進まない。そんなことをしている間に揺れは強くなる。


「これ、地震じゃないわね。 明らかに人為的よ。魔法の力でこの部屋を崩しにかかっているみたい。」


「ネリア?! マジか! クソ! 間に合わない・・・」


「ラーク! 諦めるんじゃないわよ! 私が支えるから、原因を突き止めて!」


 コーネリアが自らの土の魔力を注ぎ、崩壊しようとしていた天井を何とか支える。その間、レグルス達は周囲の気配を探る。そしてこの中で1,2を争う魔法使いであるカノーが魔素の動きを突き止める。


 この部屋の右側に、別の空間があるようだった。そこでの魔素の動きが激しいのを突き止めた。どうやら、そこで何者かがこの部屋を崩壊させようと土魔法を使用しているらしい。


 そこから行動したのはレグルスであった。速やかに部屋の右側に移動すると、壁に向かって正拳突きをかます。激しい音を出しながら崩れる石壁。その振動で部屋自体が崩壊しないように魔力で必死に支えるコーネリア。軽く土煙が上がる中、それが晴れていくと徐々に一人の人物が浮かび上がってくる。


「お前か? この部屋を崩そうとした術者は?」


「・・・・・・・」


 ラークが問うが、その人物は何も答えない。それがかえって不気味である。尤も、状況からこの男が自分たちもろともこの部屋を崩落させようとした犯人で間違いないのだが。


『えぇぇ・・・ここで親父が出てくるの?』


 コーネリアにはすぐにわかってしまった。かつての自分、マーニャが死んでから10年であるから、確かに相当老けて見えるのだが、その人相が変わるほどではない。親父のそっくりさんとかではない。間違いなくヴィトその人であるのが分かる。


 コーネリアが内心動揺している間に、もうレグルスは殴りにかかっていたのだが、・・・彼の周囲に貼られていた結界に阻まれてしまう。


「クソ! 防御魔法か・・・」


「駄目よ! その魔法は【アースウォール】。対物理完全防御の魔法よ!」


 コーネリアの言葉を聞いたレグルスが硬直する。自分の攻撃スタイルが全く通用しないのと同義なのだ。レグルスは攻撃魔法も使えないことは無いが、今となっては他の者に劣るであろう。


 続いて、リーフの光魔法とカペラの風魔法そしてカノーの闇魔法が男を襲うが、魔法防御も同時に張っていて、すべて防がれてしまう。・・・ただ、完全防御ではなかったのか、多少ダメージは通ったようだが。


 この攻撃で、天井の崩落に魔力を使うことを諦めたのか、この部屋の揺れはどうやら完全に収まったようだ。だが、物理攻撃が効かない厄介な存在が現れてしまったのである。ここでは少なくともアレクは戦力外であろう。レグルスの攻撃魔法やラルフの雷神の剣から発せられる雷撃の通常の敵になら効果があるのだが、魔法にも大勢があるであろう目の前の男には恐らく通用しないであろう。状況的に手詰まり感を覚えたレグルスであったが、


「・・・これならどうかな?」


 そう言ったカノーは目の前の男が張った物理障壁へ魔力を働かせだした。攻撃時以外は隠れている障壁が、カノーの魔力を受けて若干明滅している。


「闇の魔力で障壁を消そうと思ったんだけど・・・こいつの魔力が大きすぎて・・・完全に消すには相当時間かかるよ!」


「・・・具体的にどれ位だ?」


「2,3時間かかるかも? でも少しは弱くなったはずだよ。」


 試しにもう1度殴ってみたが、かなりの衝撃がレグルスの拳を襲う。・・・相手の頬にめり込んだ後が出来たところを見るとダメージは通ったのだろうが、自分に跳ね返ってくるのが大きすぎるようだ。


 そう思ったところで、相手が大火球を放ってきた。・・・どうやら相手は自分が窒息する危惧を持つなどとかそういう頭は無いようだ。


「きゃあ」 「クッ!」 「おわっ!」


 エスト、ラーク、ラルフがその大火球で吹っ飛ばされる。続いて第2撃を飛ばそうと魔力を集めだしたその男にリーフの放った電撃が襲う。これには少々ひるんだのか、2つ目の大火球は散らすことが出来た。


「カノー君! ナイスよ!」


 この間も少しでも障壁を消そうと魔力を注ぎ続けていたカノー。ここで部屋の崩壊を止めるための魔力を使わなくてよくなったコーネリアが攻撃に移りだす。地面に向かって魔力を注ぐと、それが目の前の男、ヴィトのもとに届くと周囲の障壁に作用しだす。・・・すると障壁が消えるのにそう時間はかからなかったのである。


「今よ!」


 このチャンスを逃すレグルスではなかった。1秒間に10発の拳をぶち込み、その男は一瞬のうちに壁まで吹っ飛び叩きつけられると、流石に耐えられなかったのかそのまま気絶した。そのまま近寄って止めを刺そうとしたレグルスだったが、


「少し待って! カノー君、コイツに操られた跡とか洗脳された痕とかないか調べられる?」


「別にいいよ。 ちょっと待ってね。・・・あぁ、これは酷いね。強力な魔力で、本来できないはずの魔力操作を強引にやったせいで自我が壊れちゃったっぽいよ? まあ、解呪は得意だからそこまではぜんぜんOKだけどね。」


 そういって彼に掛けられた精神操作などが解除されていく。ただ、彼が使役した存在から、無理やり彼への魔力操作が行われたせいで、彼の自我が崩壊していった後があるようで、正気には戻っていない。


「・・・うぅ・・・」


 うめき声をあげる男。そこへミリアムが、


「私もやってみますね・・・」


 頭部、それも脳に直接伝わるように回復魔法を掛けていく。・・・柔らかな光が彼の頭にどんどん吸収されていく。・・・そして、


「・・・うぅ・・・うっ!? グアァ、・・・ハァハァ、・・・ここは?・・・」


「ここはピラミッドという建造物の地下ですが、覚えていないのですか?」


「ああ、状況から推測するに、どうやら迷惑をかけたようだ。・・・すまない。」


 リーフがそう質問するが、よくは覚えていないようだ。それでも周囲の様子を見て慮ることが出来たということは本当に正気に戻ったのかもしれない。


「・・・自分がいた世界とは別の世界に来たところまでは覚えている。それまでは自分たちのエゴイズムに従いこの世界で侵略の限りを尽くした。その指揮を執っていたはずだったが、どうやら逆に支配されてしまったようだ。」


 冷静に自己分析するこの男。この発言で、この男が誰なのか凡そ予測がついてしまった。


「貴様はヴィトか?」


 ラルフの声が低い。もう聞くまでもないのだが、彼を敵とする者がここには何名もいるのだ。


「いかにも。助けてもらって申し訳ないが、恐らくは君たちの敵ということになるのだろう。私は自分の行為を正当化する気はさらさらない。私が許せないのなら、今この場で殺すもよし、自国に連れ帰って法の裁きを受けさせるも良し。好きにするがいい・・・」


「・・・そうか。」


 ラルフは腰の雷神の剣に手を掛ける。今にも切り捨てそうであったが、レグルス、アレク、エストに肩を触れられ、一旦思いとどまる。


「ちょっとだけ待ってくれない? 私に話をさせて。」


「ん? ・・・どうやら君とは接点は無さそうだが・・・何であろうか?」


 コーネリアに対してこんなことを言うヴィト。実際コーネリアとは接点は無い。


「貴方、前の世界で、核攻撃に対してどうして核攻撃で返したの?」


「・・・何故君がそれを知っている? 異世界の話だし、少なくとも君が生まれる前の話だ。」


「カマをかけたのよ。実際、ヤマツに核が落ちてからどうなったかなんて知らないわ。だけど、マーニャが死んだ後、貴方がどんな行動をするのか想像するのは易しかったってことよ。向こうがダメになったからこっちに来たんだし。」


「・・・何を言っている? どうして娘の名を?」


「そんなの本人だからに決まってるじゃない! ・・・馬鹿親父!」


「!!!  マーニャなのか? ・・・おおお」


「・・・まあ、こっちの世界の人間、コーネリアとして生まれ変わったから、マーニャかと言われれば違うとしか言えないけど、少なくとも記憶と人格は共有しているわ。」


「・・・だとすれば話しておかなければならないことがある。 ここは危険だから早く出た方がいい。転移魔法は使えるな?」


 そう言って、周囲も見渡す。早く出ろと言っているようだ。速やかにレグルスら数人が転移陣を設置し始める。


「・・・段々直前の記憶がクリアになってきた。 ここに来たのは一人ではない。もう一人同行しているものが私を監視ぃ?!」


 銃声が鳴り響く。ヴィトを見ると、左胸に鮮やかな鮮血が・・・


「ほぅ。・・・中々便利ですねぇ。 いらないと思ってましたが、こういう場面では重宝しますねぇ。」


「マルロー!」


「レグルス君も元気そうで。 再会早々申し訳ないのですが、そろそろ邪魔なので永遠にお別れをしたいのですよ。」


 そう言って指を鳴らすと、それが起爆の信号だったのか、主に上の方角から轟音が響き渡る。


「では、良き天国への旅を。・・・フフッ」


 そう言ってどこかに転移してしまったマルロー。天井はすでに今にも崩れそうになっている。


「グアァ! 何をしている! 早く行け!」


 そう言って、最後の力を振り絞り、魔力で天井を支えるヴィト。


「親父!」


「その言い方、間違いなく娘なのだな。・・・そうと知っていれば、あそこまで激しい戦争などしなかったのだが・・・グアァ・・・今しようとした話は、どこかにいるであろうライズからも聞けるであろう。今すぐ出るのだ。・・・」


 直後、ラークに抱きかかえられるコーネリア。もう他の者は転移陣に乗っている。


「行け! 最後ぐらい父親にいいかっこさせろ。」


 ヴィトが倒れるのと、天井が崩れるのと、転移陣が発動するのはほぼ同時であった。レグルス達は間一髪で地下から脱出することには成功するのであった。















次回は7/16予定です。 時間的に厳しそうなら短めでなんか書きます。 その場合は御察し下さい。

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