ピラミッド
1734年 8/21
土の宝玉以外、土竜を開放するための条件をすべて揃えたレグルス達は、コーネリアを仲間に加えた後、その翌日からヘスベリス王国の王都ヘスベルに渡り、そこから東へ3000㎞程離れているピラミッドを目指していた。
ヘスベルから800㎞程は、寒暖差の少ない、比較的過ごしやすい地域で、冬にもかかわらず緑豊かなところであるのだが、さらに東へ移動すると広大なムーラ砂漠に入ったのである。ここムーラ砂漠はその大部分が岩石砂漠地帯である。レムリア大陸東端付は正に砂地の砂漠地帯となっているのであるが、今回そちらに行くことは無いであろう。
そのおかげか、馬車移動が可能であったため、ここまで順調に進んではいるのである。ただ、今までの過ごしやすい日々は過ぎ去り、日中は暑くなり、夜間は冷え込むという状況に一同苦しんでいる。現にこれまで、リーフ、アレク、カペラ、コーネリアが風邪をひいてしまっていた。まあ、回復魔法持ちが数人いるため、そう時間がかからず治癒してはいるが、それでも負傷のように魔法で一気にというわけにはいかず、体力回復までは最低でも1日を要していた。現在は全員完治し、体調管理にも気を付けるようになったため、新たに体調不良に陥る者は出ていない。
ちなみに水に関しては、しっかり準備していたことに加え、もしもの場合はラークなどの氷魔法使用者に水を出してもらうという方法もあった為、飲料水までが無くなるという事態にはなっていなかったのである。ただ、これまでのように水は無くなり次第補充すればよいというわけでは無いため、それなりに節約しなければならず、それに関しては不自由を強いられていた。
「これで何日目かしら?」
「ん? 何のことだ?」
「勿論、砂漠に入ってからよ。」
「ああ、・・・もう一週間はたったかな?」
「いや、5日程だろう。・・・景色が単調だし、体調不良のものも多かったから、余計に長く感じているだけかもしれん。」
サボテンが疎らに生えた、基本、褐色の大地が延々と続いているため、感覚が麻痺していたのか、エストが聞いてきたのだが、答えたレグルスも同類だったのか、答えがアバウトだったため、ラークが訂正を入れたわけである。
「僕的には、見たことも無い光景だから退屈はしないけどね。」
「景色のこととかは良いんだけどさぁ、日中の暑さと夜の寒さがクルよね?」
「そうだね。僕も久々に風邪を引いちゃったよ。」
「ネリアも辛そうだったもんね?」
「そうなのよ。子供の体だと風邪に抵抗力が無くて・・・」
カノーは緑に覆われた土地か雪景色しか見たことが無いからこういう感想を持つのだろう。カペラとアレクは実際に風邪を引いてしまったので、昼夜の寒暖差の印象が強いのだろう。コーネリアに関しては、まだ子供であるからか、元々旅先で風邪を引きやすいタイプのようで、エストの質問には、そのように答えている。
「・・・あの地平線の先に見えているアレ。・・・もしかしてあれがそうじゃないのか?」
ラルフはそう言っているが、まだ遠くてはっきりとは見えていないが、前方に見えている小さな点は、確かに三角形型をしているように見えなくもない。
「ようやく目的地に近づいたようだな。・・・もしかしたら着いたとたんに戦闘があるかもしれない。・・・しっかり準備しておこうぜ。」
レグルスの言葉に、ようやく到着が迫ってきたからか、テンションが上がりつつも緊張感を持つ一同。そのまま馬車は前へ進んでいって、そこから2時間後目的地のピラミッドへ到着したのである。
正面に見えていたその建造物は、遠くからでは三角形に見えていただけであるが、間近で見ると正四角錘であることがよく分かる。まあ、余り近くだとただの意志を積んでできた山にしか見えないのだが。一辺は400mはあるのだろうか? とにかく大きさは圧倒的である。
「予想に反して静かだな。何かが待っていると思ったのだが。」
ラークもこう言うが、これまで何度も敵襲に見舞われてきたレグルス達である。この場所が大本であるため下手をすると大軍に迎えられることも想定していたのであるが、実際に到着してみると無人であった。
「ちょっと拍子抜けよね? このまま土竜を開放しちゃいましょうよ?」
「カペラ、まだ土の宝玉を得ていないんだ。恐らくここにあるはずだが、ピラミッドの内部で待ち構えているかもしれない。気は抜くなよ?」
「ラーク、いちいち言わなくても分かってるわよ。・・・早速内部に入りましょう? って、あれ? これ以上進めないんだけど?」
カペラが言う通り、ピラミッドに更に近づこうとして、・・・そう、見えない壁のようなものに阻まれたのである。
「ああ、これはピラミッド自体にも結界が張られてるね?・・・あっちの角になんかあるね?」
カノーのいう通り、ピラミッドの角の一つに何かが見える。
「逆の角にも何かあるよ?」
ここから見えるもう一つの角にも同様の何かが見える。・・・ということは、他の角にも何かあるのかもしれない。
「まずは、最初に見つけたところに行ってみようぜ?」
ラルフの言う通り、その場所に行ってみると、高さ1m程の台座があり、そこには宝玉が乗っている状態であった。
「・・・うん? これに魔力を注ぐのかな?」
カノーが自身の魔力をその宝玉に注いでみる。・・・特に反応は無かったようだが、表情を見てみると何かをつかんだようだ。
「今魔力を注いでみた感じでは、ここには火の魔力を指定しているようだね? で、ピラミッドの各頂点には氷、風、光、闇の魔力を注ぐ宝玉があるはずだよ。ここから左に行くと光、右に行くと闇、そして対角線上の一に氷の宝玉があるはずだ。そして天井のすべてをつなぐ頂点に風邪の宝玉があるみたい。」
確かに見上げると、ピラミッドの頂上に宝玉があるような気がする。遠くてよくは見えないが。
「ってことは、それそれの属性に合わせて魔力を注がなければならないってことだな。」
「そういうことだね、レグ。 そしてここはエスト担当ってことになるね。」
「じゃあ、私はここに残ればいいの?」
「そうだね。・・・念のためレグも残ってね。」
「ん?・・・ああ、一人のところを狙われたらヤバいからな。」
「そういうこと。じゃ、光はミリアムとリーフ、闇は僕とラルフ、氷はラークとアレク、そしてあの上のやつはカペラとコーネリアにお願いしたい。」
「私にあの一番高いところへ行けと?」
コーネリアは一番きつそうなところを指定され不服そうだ。
「コーネリアならカペラも抱っこして飛べるだろうしね? 他の飛べない者はどっちにしろあそこはきついからさ。頼むよ。」
「・・・しょうがないわね。カペラ、頼むわね?」
「OK, 任せなさい!」
「他は大丈夫だよね? 術師は魔力を注ぐ係、ペアの人は念のための護衛ね? 他に質問は?・・・無いみたいだね。・・・じゃあ、移動しようか?」
カノーがそう指示すると、皆一斉に移動し始める。ミリアム班は左、カノー班は右、ラーク班は左側を経由して反対側へ、そしてカペラはコーネリアを抱きかかえて、ピラミッドの壁の上を飛行し始めた。移動の様子をしばし眺めていたエストであったが、
「そろそろ魔力を注いでみないか?」
レグルスにそう言われ、目の前の宝玉に両手をかざす。掌から魔力を注ぎ込むと、目の前の宝玉が赤色に光り輝く。
「こんな感じでいいのかな?」
「ちゃんと反応しているしな。問題ないと思うぜ。」
「でも、まだ結界は残っているみたいよ?」
「他はまだ移動中だろうからな。・・・もう少し待ってみようぜ?」
そうレグルスが行ってから、15分程たっただろうか? 目の前に貼られていた結界が明滅し始める。・・・そして、完全に消滅したのである。・・・ここで、ラークから念話が届く。
『俺たちがここに来るまで通ってきた途中に地下へに入り口らしきものを見つけたぜ。最初のポイントからするとちょうど反対側だ。そこに集合しよう。』
レグルスも了解の意を返答しすぐそちらへ向かう。そして10分後そこに到着すると、成程、入り口と断定して構わないほどの整った穴が開いていて、奥に向かう通路と地下に向かう階段が存在していた。
「それじゃ、地下に降りてみるとするか。」
得られた情報からすると土の宝玉はピラミッドの地下にあったはずである。とりあえずはその除法を信じるしかない。先の方を警戒はしながらも、続々と中に入っていくレグルス達。そして全員が完全に中に入っていったのを見計らって出てきた影が二人、この場に現れたのである。
「フフ。警戒するのが前方だけではいけないというに。・・・おかげでこちらは助かるのですが。」
「・・・・・・」
現れたのは、透明になり且つ気配も遮断していたマルローと正気をすでに失っていたヴィトである。
「・・・いい感じで壊れてくれたので、私でも容易に精神支配が可能でした。・・・正直この男は道化としか思っていませんでしたが、・・・能力を覗いてみるとなかなかどうして。かなりの魔力を保有していますね。仮にも一時的にゲルザード様を使役できたわけです。まあ、後から逃れられるのを計算に入れてわざとそうされたというところでしょうが。これならば、私とともに行動すれば連中に一泡吹かしてやることができそうです。良そうもされないタイミングで襲われたとき、かれたがどう反応するのか・・・中々楽しみですね。」
「・・・うぅ・・・・・」
ピラミッドの入り口では、マルローの呟きとヴィトの呻き声が聞こえるのみであった。
次回は7/14更新予定です。まだしばらくはこのままの更新ペースで行く予定ですが、個人的な事情により、状況が変化したため、更新ペースをさらに遅くするかもしれません。その場合、4日に1度になると思います。そうせざるを得なくなった場合、改めてお知らせします。




