ヴァルハラ滅亡の真実
今まで濁してきたところをまとめたつもりです。どうでしょうか? 今回主人公は出てきません。
1734年 8/13
2週間程前、ゲルザードは、レムリア大陸にて、勇者一行が土竜の封印を解き、最後の精霊竜の儀式を行うため行動を起こしている状況を妨害しようとしたが、それが失敗に終わっているという報告を聞き、フレイアの進言もあったのだが、いっその事、抵抗分子ごと消し去ってしまおうと考えた。であるから、封印期間を延長されたとはいえ、自らの封印が完全に解けるのは時間の問題であったにも関わらず、無理をしてまで、自分が元にいた世界である魔界から20万という大量の竜を召喚したのだ。
だが、ジャンナ王国の王都が壊滅する様を見て楽しむために、一体の竜と視覚を共有していたのだが、見ることが出来たのは、空から降ってくる隕石群と、それによって撃墜されていく20万の自らが召喚した竜の最後であった。
幸い資格を共有させた竜は隕石群からは逃れたようだが、残った軍勢が、飛来した人間どものに駆逐されていく様を見ることが出来た。その途中で、視覚を共有していた竜も討伐されたのか、映像は途中で途切れることにはなったのだが、放った大軍勢がいかにして全滅したのかは把握することもできた。悪魔フレイアとの魂のつながりも切れている。状況から考えてその場で討ち取られてと考えていいだろう。
ゲルザードにとっては大打撃である。完全復活するまでの期間が多少伸びたとしても、結果として邪魔者が始末できれば問題ないと思い、無理をして竜達を召喚したのだ。にもかかわらずのまさかの全滅。自分の魔力が完全で戻ったとしても、再びあれだけの数の竜を集めることは容易ではないであろう。
結局、あの隕石群は何であったのか? あの時、大量の魔素が動いたのは分かっている。ということは、あれは魔法なのか? この世界にも、魔界にもあのような魔法は存在しない。 であるから、しばらくはその可能性を考えていなかったのだが、理詰めで考えていけばいくほど、その可能性しか考えられない。
あの魔法に打ち勝てる魔法と言ったら、ヴィトから記憶を引き出した際に見つけた魔法である核魔法位である。まあ、尤も、勝つどころではなく、確実にすべてを滅ばしてしまう威力なのだが、封印されている今の自分では、否、完全体であったとしてもフレアを放つことは無理であろう。恐らくは我は知らないのであろう。核とは何なのかを。どうやら純粋たる炎とはわけが違うようだ。膨大な魔力も必要だが、それだけでは不足なのだ。何かが分からなければイメージが出来ない。少なくともヴィトの記憶の中の核というものの内容が理解できなければ、核魔法フレアを使用することは出来ないのだろう。他の魔法と違い、すべてを無から生み出せるわけでは無いこともその一因になっている。原料となる放射性物質なるものが必要なようだが、そのようなものはいったいどこにあるというのか?
とりあえず、この件は保留だ。それよりも、もしあの隕石魔法が勇者一行の手によるものならば、この我にとっても脅威である。そして我が主にとってもそうであろう。せめて、あれを防ぐ手立てでもあればよいのだが・・・
「ゲルザード様、その隕石魔法も核魔法と同じように、ヴィトの世界のものなのではないですか?」
「マルローよ、何故そう思う?」
「核魔法も、元になる物質を必要としています。そして隕石魔法も、あのような大きな岩石の塊を空から降らせるなど、無から作り出した者とは思えませぬ。それにどちらの魔法も我らにとっても、この世界の人間にとっても未知のものであったという点も共通しております。」
「ほう、成程な。もう一度ヤツの記憶を洗い出してみるか・・・」
30分後
「ふむ。確かにヤツの記憶の中にあったな。隕石とは大地がごく小さな天体を引き付けることによって生まれるか・・・離れた者同士が引き合うなど正直ピンとこない考え方であるな。成程な。こういうことが理解できなければ使うこともできぬわけか。・・・向こうの世界での使い手は・・・あまりいないようだな。それもそうか。あの世界の人間が個人で大量破壊兵器を持つようなものだしな。・・・その数少ない使い手にヴィトの娘もいたと・・・面白いな。」
「では、あの魔法はこの世界に来ていたヴィトの娘の可能性もあると?」
「いや、それは無い。何故ならば、その娘はすでに死んでいるのだ。あの世界が滅亡する寸前まで追い込まれた世界大戦の切欠となる一撃によってな。」
「具体的に聞いてもよろしいですかな?」
「ふむ。まずヴィトはあの世界ヴァルハラでは一国の大統領をしていたようだ。その娘マーニャが異国に行っているときに別な国から例の核魔法による攻撃を受けたらしい。それにより娘マーニャは勿論、その国の多数の国民は死ぬことになる。それによりヴィトはその国に宣戦布告。全面戦争へと発展していった。互いに核魔法を使いあい、現在では生物が住めぬ世界へと変わってしまった。事実上もう滅亡していると言っていいかもしれん。」
「成程ですな。それで住めなくなった自らの世界ヴァルハラの代わりにこの世界を目指したというわけですか。ある意味、滅亡の引き金を引いたのは自分であるにもかかわらず・・・」
「少なくともヴィトはそう思っていたがな。後悔もしていたようだ。が、マルローよ、実際は違うのだぞ?」
「どういうことでしょうか?」
「我が主、ダグナーガ様の目指している内容は知っておるな?」
「勿論ですとも。我々悪魔族が忠誠を誓っている理由でもあります。ありとあらゆる並列世界から生命力を吸い上げる環境を整え、それを糧とし、我らにとっての桃源郷を作ることでしたな。」
「そうだ。忌々しき主神ブライガーは他の神々やその眷属とともに、生命を慈しむとかほざき、数多くの並列世界を作り、そこに人間をはじめとする生物を誕生させ生命力を宿らせた。その分、他の神々が使用できる生命力は大きく制限された。生命力は神々にとっても自らを永遠存在足らしめるための必須の要素だ。且つその保有量が神格の大きさを表していると言える。それはダグナーガ様も例外ではない。だからダグナーガ様は他の神々に対して反旗を翻した。潤沢な生命力を保持し浪費する、各世界の人間どもから生命力を奪い返し、今は魔界と呼ぶその世界を文字通り魔界とした。魔に連なる者の天国へと変えたのである。」
「そうでしたな。で、主神ブライガーの怒りをかったダグナーガ様は、神々とその眷属たち、そして本来ゲルザード様と同じ存在でありながら奴ら側に付いた火・氷・風・土・光・闇の精霊竜の手によって、魔界の地下深くにほぼ完全に封印されたのでしたな。」
「だから我はダグナーガ様を救うべく、少しでも生命力を集めるためにこの世界に転移してきたのだ。そう、一世界分の生命力が丸ごとあればダグナーガ様の封印を解くことが出来る。加えて、この世界のあるポイントであれば、その量がごく少量でも主様をこちらの世界に召喚するという形で封印から解き放つことが出来るのだ。だから十分にこの世界で準備を進め、それが整ったところで、この世界の人間から生命力を奪うべく、今から700年程前に侵攻を開始したのだ。ところが、それを事前に察知した精霊竜どもは事前に我の後を追ってきていて、その時登場した人間の勇者たちに力を授けおった。そのせいで、我は力を封印され今に至る。力が完全に戻るまでは主様の召喚は叶わぬままだ。」
「そのことは存じておりますが、先ほどの話との関係は?」
「ふむ。生命力を集めようとしていたのは我だけではない。ダグナーガ様自身もそれをなそうとしていたのだ。我々は意思疎通程度なら時々ではあるが可能であるからな。ダグナーガ様が直接目をつけられたのは、ヴァルハラという世界なのだよ。」
「それはヴィト達がいた世界のことですかな?」
「そうだ。イーラザニアとかいう国の皇帝を少しずつ洗脳していったらしいのだ。そして戦争を始めるように仕向けて行ったのだ。それは思いのほかうまくいったようで、ほぼその世界は滅亡し、その世界の人間が持っていた生命力を根こそぎ回収することが出来たそうなのだ。」
「! ということは、ヴィトは自分の世界が滅ぶきっかけを作ったダグナーガ様の下部たるゲルザード様をそうとは知らず使役したつもりになって、その実、逆に支配されてしまったということですか。なんともはや・・・滑稽ですな。」
「そういうことだ。自分達がここに来ざるを得ない状況にした者に助力を願い出たのが運の尽きだ。可哀そうな奴だ。」
「そういうことなら、もしかしたら、奴にこの世界の転移方法を教えたのもゲルザード様では? 奴等が転移してきた場所の傍にゲルザード様がいたのもゲルザード様の仕組まれたことでは?」
「・・・やはり分かってしまうか。・・・そういうことだ。奴は主様と我の掌で踊っていたということだ。」
「お人が悪いですな・・・」
「・・・誉め言葉と受け取っておく。それはそうと、最後の妨害工作を頼めるか? なんならコイツを使いつぶしても構わん。・・・もう用無しだしな。」
横に控えていたヴィトがうめき声をあげている。端から見ている分には正気を保っているようには見えない。
「畏まりました。ピラミッドですな。」
「我の封印は明後日までには融けるであろう。であるから我はスヴァール大陸にある南極に向かうことにする。封印が解け次第、主様の召喚の儀を行う。足止めはそれまででよい。」
「容易いことですな。状況によっては土竜が復活するようなことになっても?」
「時間が稼げるのならばそれでもかまわん。なるべくならば避けて欲しいがな。どうせ我を封印する力を持ったとしても、主様が現れてしまえば意味がないのだ。精霊竜全部が集まっても止められはしまい。」
「では、ヴィトを連れてピラミッドに向かいます。ゲルザード様もお気をつけて。あそこはとても寒いですから。」
「・・・・・う~む。今はあそこは極夜であるしな。・・・・・覚悟するとしよう。」
そう言って転移していくゲルザード。マルローもヴィトを連れてレグルス達が向かうピラミッドへ行く。世界の破滅を齎すものがもうすぐこの世界にやってくるかもしれないことをレグルス達はまだ把握していないのである。
次回は7/12の予定です。




