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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
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メテオ

1734年 8/13


 ジャンナ王国の王都ジャンナは南西方向に海と向かい合う港町でもある。そのためここは国の中心であるとともに貿易都市でもあるのだが、そのジャンナ港沖どれ程先であろうか? 水平線のかなたが真っ黒に染まっているのが確認できる。ぱっと見雨雲のようにも見えるが、よく見るとそれを構成している粒が荒く、決して雲等ではないのが分かる。 もうこの時点で不吉であり、不安に駆られた者は既に仕事場を放棄して避難し始めている。


 既に報告はシン国王にも届いていた。敵襲の可能性を感じ、軍には迎撃態勢を整えるよう連絡はしている。だが、シン国王の頭の中は絶望感で埋め尽くされている。・・・警戒している通り、もしあの黒い集団がすべて魔物で、それがこの国にあだなす存在なのだとしたら、それに対抗しうるだけの戦力は無いのである。だから、今している警戒が杞憂であることを祈るばかりなのである。




 その頃、その黒い集団、そう20万にのぼる飛竜の群れがジャンナ港より南西沖を飛行していた。陸地の方からはまだ何者なのか確認できる距離ではないようだが、そこに到着するのは時間の問題であり、やがて、断じて雨雲などではないと思い知るのだろう。


 1頭でもいればそれだけでも脅威な飛竜である。それが1万や2万ではないのである。・・・仮にこれまで何度か抵抗してきた勇者の一団がいたとしよう。レグルスとかいう男のエネルギー波の直撃を受けたとしても、削れるのはせいぜい数万。他の者の攻撃を計算に入れても少なくとも半分の10万は残るはず。それだけあれば、邪魔者を排除し、王国滅亡という御下命を果たすことが出来る。


 フレイアは今回の襲撃は自分の発言が切欠であったため、この大群の指揮を任されることになった。正直、これだけの飛竜の群れを魔界から召喚するために、完全復活前のゲルザード様に大きな負担を掛けてしまったが、これだけの数があれば万が一にも失敗は無いと考えている。


「あなた達、・・・今日は食べ放題ですわよ? 殺し次第、何人でも。 あ、勿論、生きたままでも結構ですわね。 だから、思おう存分暴れて頂戴!」


 何頭かの竜が、フレイアの掛け声に反応している。一般に竜は知性か高めなため、話すことはかなわないまでも、人語は理解するものが多いのである。鳴き声を聞いた分には竜達の士気は高いようだ。


「もうすぐですわよ?」


 悪夢の塊がジャンナ港に到着するのは時間の問題である。




 レグルス達が、コーネリアが開いたゲートを通っていくと、そこは王都ジャンナにある、小高い丘の上であった。そこから王都の様子が一望できる場所である。特に港の混乱している様子や、沖に漂っている黒い影、恐らくは夥しい数の飛竜も良く見えている。あれがこの街を蹂躙し始めるのに、そう時間はかからないであろう。


「ははは・・・すっごい数だね。 あれと戦うとか正気の沙汰じゃないよね・・・」


「まともにやってもほとんど削れないだろうな・・・20万と断言したネリアの予測は正しそうだ。」


 カノーとラークの初見の感想である。他の者も、ここまで来ると恐怖というよりは、その光景があまりにも圧巻であるため、目を奪われている感じでじっと見つめてしまっている。そんな中、カペラがコーネリアにあえて突っ込む。


「ねぇ、ネリア。 あなた自信ありそうだったけど、なんか作戦あんの?」


「ん? 作戦? ・・・ そんなものは無いよ?」


 全員こけそうになった。自信ありげな感じだったから、有効な作戦を思いついたとばかり思っていたのだ。思わず突っ込みそうになる一同であったが、


「話は変わるけど、最強の魔法は何の属性だと思う?」


 この一大事に何を離そうとしているのか? 皆そう思ったが、レグルスは意味なくこの子がこんな話はしないと思い、敢えて乗ってみることにした。


「普通に考えて、火か光か闇な気がするが、それがどうかしたのか?」


「私は土だと思うわ。」


 全員、?を頭に浮かべる。土術は身体強化と簡単な攻撃魔法と相場が決まっているのだ。最強魔法のイメージが全くないので、別に真意があると思い発言の続きを待つ。


「・・・要は、魔法ってのは自分がどれだけ現象をイメージできるかってことなのよ。」


「それは分かるが、正直強力な土魔法のイメージがわかないよな?」


 土魔法の使い手でもあるラークもこういっている。他の者もほぼ同意見だ。カノーだけは新しい可能性を考え始めたようだが・・・


「じゃ、実例で示してみましょうか?・・・まあ、見ててよ・・・はああああ!!!」


 そう言うや否や、足元に魔法陣を展開するコーネリア。直後両手を天に突き上げ・・・硬直した・・・いや、何かしているのかもしれないが、端から見るとボーっと突っ立ってるようにしか見えないため、ラルフなどはツッコミを兼ねた拳骨を落とす準備をしているくらいである。5秒経ち、10秒経ち、25秒を過ぎた辺りでラルフが我慢の限界を迎え、一歩踏み出したその時、正にあの黒い集団が飛んでいる辺りだろうか? そのはるか上空に巨大というのもおこがましい程の大魔法陣は出現する。半径はどれほどだろうか? 500m以上はあるのではないだろうか? その魔法陣は絶えず放電し、バチバチいっている。


「・・・さあ、いくわよ!」


 そうコーネリアが言うと、魔法陣から、これまた巨大な何かが降ってきたのである。それは球体に例えると半径200mはあるだろうか? 勿論球体ではなく歪な形得押しているのだが、それが、摩擦熱だろうか? 真っ赤に光りながら落下し、その黒い集団を直撃する。そしてその落下物の大きさ分の穴が、黒い集団の中に空く。落下した者が海面に到達すると、大きな水しぶきが上がり、持っていた熱によって大量の水蒸気も発生している。


「これで終わりじゃないからね? どんどん行くわよ?」


 宣言通り、魔法陣から次々に出現する巨大塊。そして出現した順番にランダムに赤熱しながら落下をしていく。やがて蜂の巣のように大穴を開けていく集団。その真下の海面は津波が発生しそうな勢いで荒れ狂っている。


 その様子をレグルス達はしばし呆然と眺めていた。余り信じていなかったであろうラルフは口をあんぐり開けている。


「・・・嘘でしょ・・・」


「マジで?・・・えぇぇぇ・・・」


「おいおいおいおいおい!! 飛竜達、もう半分以上海に落っこちたぜ!! ってまだやるのか!!」


 自重という言葉はまだ教えてもらってませんと言わんばかりに、次々に赤熱巨大塊を落としまくるコーネリア。・・・そしてとうとう、当初の1割も残っていない状況までしてしまったところで、どうやら魔力切れを起こしたようである。


「・・・・・もうムリ・・・後はお願い。」


「OK! ゆっくり休んでろ。 飛翔魔法使える奴はいくぞ!」


 レグルスの掛け声とともにエスト、リーフ、カペラ、カノーが残敵掃討のために飛び立つ。残ったメンバーは、ここまで来た場合の迎撃準備のために港へ向かっていった。




 港近辺で悲壮な覚悟で迎撃準備をしていたジャンナ軍は、遥か彼方の水平線の境界辺りでの非現実的な光景に恐れおののいていた。まさか味方の攻撃だとは思いもよらないのだ。


「・・・もうだめだ。この世の終わりだ・・・」


「怖えよ。・・・何だよあれ? 魔獣の群れの次は神の怒りか? どうなるんだよ、この国は?」


 この光景を見て、港に残って仕事をしていた者も一斉に非難し始めた。そして港には高波が襲い始めている。・・・これに関してはコーネリアのせいであったが、それを知る者は誰もいない。


「落ち着け! 人々を守る立場の俺たちが慌ててどうするんだ? ちゃんと敵襲に備えろ!」


「隊長~そんなこと言ったって、自分だって震えてるくせに・・・」


 実際、隊長の足はガクガク震えていた。折角のかっこいいセリフが台無しであった。とそこへ、


「一応助っ人に来たぜ! まあ、もう来ない気もするが、一応警戒はしておこうぜ?」


「貴殿たちは?」


「俺はラルフ。で、ここにいるのが、ラーク、ミリアムだ。さっきの派手なのは俺たちの味方の放ったものだから、安心していいぞ。」


 キョトンとしている兵士たち。それはそうだろう。個人の魔法であのようなことになるとは想像もしないのである。・・・因みにコーネリアは魔力切れの状態で、さっきの丘の上だ。一応念のためアレクが付き添っている。


「そうでしたか。ご協力感謝しますぞ。」





 こうして、港の防衛隊の士気が回復し始めたころ、上空では、


「・・・何なの?・・・一体何なのよ?!」


 フレイアにとって今回の任務は容易い仕事のハズであった。絶対に失敗できない代わりに必ず成功できるだけの戦力が与えられたのだ。負けるわけがなかった。楽しい殺戮ショーを始められるはずであった。ところがふたを開けてみれば、突然の天変地異で、屈強な飛竜が次々に隕石ともども海に飲み込まれていく。その信じられない光景に唖然としている間に味方の9割が失われてしまったのである。ここで我に返るが時すでに遅しである。


「クソ! 怯むんじゃないわよ! 突撃するわよ!」


 だが、返答を返す竜はいなかった。・・・嫌だったからではない。自分達への襲撃が来たからである。次々に火・風・闇・光・雷の魔法で撃墜されていく飛竜達。少し竜が固まっているところもエネルギー波が襲いまとめて葬られていく。


「・・・退却するしかありませんわね・・・ゲート・・・ウゲ!」


 フレイアがゲートの魔法を完成させる前に、レグルスの拳がフレイアの鳩尾にめり込んだ。


「・・・おのれ・・・このままではおかんからな・・・」


 これがフレイアがこの世で発した最後の言葉になる。直後拳の連打を喰らい至近距離からエネルギー波を受けると、フレイアだったものの証が何一つ残ることは無かったのである。


「・・・さあ、帰るぞ。ネリアに色々聞きたいことが出来たしな。」


 レグルスの言う通り、港に帰還してく5人。少なくともジャンナ王国は直面した脅威からは逃れられたようである。





次回は7/8予定です。

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