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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
83/102

コーネリア帰宅する

1734年 8/7


 ジャンナ王国を目指したレグルス一行の旅路は順調であった。ジャンナ王国とアルカディア王国との国境も緊張状態ではなく、あっさり通してもらった。その後も大きな戦闘に巻き込まれることも無く、王都ジャンナに到着したのである。


 今は、シン国王と謁見中である。この国に来た最大の目的である、氷の宝玉はあっさり貰えることになった。正直拍子抜けであったが、やはりというか、これまでならこちらがこの国を害する意思がなく、どのような目的で土竜の封印を解くのかを見定めるまでは許可しなかったらしいのだが、先日アルカディア王国から来た使者の話を聞き、この大陸の3国が争っていたことや、そもそも土竜を封印したこと自体が魔王の配下の者に仕組まれたことだったと理解したからだ。


 そのため、氷の宝玉は求め通りに渡し、土竜の復活を速めた方がいいだろうという判断だったそうだ。そう考えると、魔王国側の妨害が、かえって3国の和解の切欠を作り、土竜の封印を解かせる足掛かりを作ってしまったことは、魔王国側にとっても計算外だったのかもしれない。


 ともかく、その謁見中に氷の宝玉は持ってきていただき、その場で受け取ったレグルス達。これで残るは土竜が眠るとされるピラミッドにあるとされる土の宝玉を残すのみとなった。本来なら、もう一度ヘスベリスに移動し、ピラミッドに移動して、速やかに土の宝玉の獲得と土竜の封印の解除をしなければならないのだが、レグルス達にはこの国でまだ他にやることがあったのである。




「まあ、聞いてみるもんだよな。」


 レグルスがこう言っているのは、嘗てゲルザードの封印にかかわったとされる土術師や土精霊のペンダントのことである。謁見の終わり際、新国王にダメもとで聞いてみたのだが、シン国王がわずかであるが知っていたのだ。しかもその件に関して詳しく知っているものが城内にいるというので、その本人であるモース氏に面会させてもらったところ、まずその土術師はコーネリアの家もあるモルダビに住んでいたというのだ。流石に今も残っているかは不明だとか。術者の遺品などは、彼の子孫が、戦争で家長が戦死した際に家も含めて家財道具その他を売り払ったらしい。そのうち特に貴重なものは買い手もなく長年店で飾られていたそうだが、数年前に地元の商人が買い付けたらしい。つまり、その貴重なものの中に土製れにペンダントも含まれていれば、その商人が所持している可能性が高い。


「これで、モルダビに行くことが決定したな。どっちにしろ、コーネリアも送り届けなければならないしな。」


 ラークが決定のように言っているが、特に反対意見も出てこない。カペラはコーネリア本人を無視して話しているようにも聞こえ、気にはなっているようだが。


「ネリアは家に帰るので本当にいいの? ここ王都で預かって貰うってこともできるみたいだけど。」


「うん、使用人には事の顛末を離さなきゃならないし、話した上で暇を上げないと。」


 コーネリアの言うことも尤もである。その使用人たちは、今後無給なのに働き続けることになるから。それにして、コーネリアの言葉遣いは10歳の女の子の言葉づかいではない気がする。そう思っているのはカペラだけではないだろう。


 そんな会話をしている最中、そのコーネリアとゲンが念話で別の会話をしていた。

 

『ねえ!、そのままそこでさよならって流れになってるんだけど? いいの? このままカミングアウトしなくて。』


『ん? 構わへんで。 そう気にせんでも、いい方に転がっていくで。』


『本当かなぁ。 何か作戦とか根拠とかあるの?』 


『作戦は無くはなかったんやけど、今のところいいように転がってるみたいやしな。・・・まあ、当てが外れたら、ワイが強引に押し込んだる!』


『・・・そこまで言うならいいんだけどね。頼むわよ?本当に。』


『泥船に乗った気持ちで! 安心しぃ。』


『安心できるか! 沈むわ!』


『冗談や。まあ、あんま気にするんやないで。』


『・・・わかったわよ。』


 結局コーネリアは無理やり納得することにした。多分であるが、この手袋が何かを見据えているのは間違いないだろう。今のところは信用しておくしかないのである。当面は10歳の女の子コーネリアで押し通すしかない。そう強く思い直し、この人たちについていくのみである。




1734年 8/13


 その後も旅は順調に進み、コーネリアの家もあるモルダビの街に到着した。まずはコーネリアの家に行こうということになり、街の中心部を抜け、小高い丘を登っていく。その丘の頂上にその家はあった。はっきりって豪邸である。家の門は魔法で封印されていたのだが、コーネリアが触れるとその封印が解除された。どうやら家族や関係者が触れるとその封印が解ける仕組みになっているらしい。門を潜ってから3分、馬車で移動するとコーネリアの家にたどり着いた。


 あまりの大きさに一同声を失っている。はっきり言ってちょっと小さめの城である。まあ、あくまでも家なので、形状は城風ではないのだが、この巨大な箱型の建造物にいったいどれだけの部屋があるのか、少なくとも両手両足の指では数えられないだろう。


 扉を開けて中に入ると、使用人一同が整列し出迎えてくれた。


「お嬢様、お帰りなさいませ。・・・御屋形様はどうなさりました?」


 使用人の一人、セバスチャンが早速聞いてくる。自分はマーニャである前にあくまでもコーネリアなのだ。両親を亡くしてまだそう日が経っているわけではない。はっきり言って悲しいのだ。ただ、同時に転生前の記憶が戻ったり、自分のよく知る人物がこっちの世界に転移していたり、そっちの方が気になっていただけである。だから、こういう聞き方をされると・・・


「・・・うぐっ・・・グス・・・」


「ああ、やっぱり無理だったか。私たちが代わりに説明しますね。」


 カペラはそう言って、その時の状況、竜に襲われて商隊そのものが全滅したこと、コーネリアだけが奇跡的に竜に見つからず生存できたこと。それを偶々通りがかった自分たちが敵を討伐しコーネリアを保護しここまで連れてきたこと等を説明した。


「・・・そうでございましたか。お嬢様をお連れ戴きありがとうございました。それでは、皆さま、お茶でもご用意しますのでゆっくりお休みください。」


 言われるがままに案内されるレグルス達、ここでコーネリアは別室に連れていかれた。恐らく着替えたりするのだろう。案内された部屋の調度品を見ても貴族のそれと変わらないレベルである。


「本当にすごいわね、ここ。」


「あたし、場違い感半端ないんだけど・・・」


 エストとカペラが感想を漏らすが、王族の3人以外は城に来た感覚である。椅子に座りながらも緊張で体がこわばる。


「ネリアちゃんはやっぱりかなり無理してたのかしら・・・」


「どうだろうな。色々あってうまい具合に忘れていられたのが、急に思い出されてしまったのかもしれない。」


 ミリアムは泣き出したコーネリアのことを思い、心配そうだが、ラークはそう深刻には考えていないようだ。これまでの旅での彼女の大人びた言動がそう思わせているのかもしれないが。


「これで、無事ネリアちゃんを届けられたね。・・・少し寂しいかもね。」


「ん? お前、小さい子に興味あったんだっけか?」


「は?! ラルフ! いうに事欠いてそれは無いだろ!!」


 何気なく呟いたアレクの一言にラルフがおかしなツッコミをしたせいで、アレクにしては珍しいマジギレ。ラルフも 「あ?」 とか言い出し、一瞬空気が悪くなりかけたが、エストに拳骨を張られ大人しくなる二人。


 そんなことをレグルス達がやっている間、父親の執務室にて、泣き止んで、着替えが終わったコーネリアとセバスチャン以下使用人の数人が話し合いをするために集まっていた。


「お嬢様、よくぞご無事で。・・・旦那様と奥様のことは無念でありますが、お嬢様がご無事であったことは、旦那様もお喜びでありましょう。」


「両親は最早これまでという状況で、私だけを馬車の床下に隠してくれました。だから、私だけが生き残れたの。勿論私が一緒に戦ってももう一人死人が増えてただけだと思うけど・・・でもね、私が両親を見殺しにしたのは変わりがないから・・・だから、ごめんなさい。」


「いえ、お嬢様は何も悪くはないのですよ。悪いのは襲った竜なのです。どうか、お気持ちを強く持たれますように。」


「でもね、両親がいない以上、この家の家長は私になるわよね?」


「・・・そうでございますな。」


「今の私は10歳。今は収入はないわよね。親の財産はあるけど、この先安定して稼ぐ方法なんてない。その間、貴方たちに給料を払うことは出来ないの。だから・・・」


「そのようなことを心配されていたのですか。・・・実はこの私目セバスチャンは旦那様から預かっているものがあるのです。」


「?!」


「今から何年も前のことです。もしも旦那様が何らかの理由で居なくなり、その時奥様も不在であった場合、これで娘の面倒を見てほしいという財産を別に預かっているのです。今後は我々の所得はその財産を現金化して支払われることになりましょう。そう、このまま全員が老後まで勤めてもおつりがくるほどの。」


「・・・そうなの?」


 コーネリアからすれば驚愕の事実であった。残りの財産を切り売りして、そこから給与を支払うと考えていたので、その分は前払いでもう貰ってますと言われたのも同然なのだ。・・・肩から力が抜けるような思いだ。


「なので、その辺の心配はご無用です。勿論今回を機に暇を貰いたいという者は止めはしませんが、残った者で、お嬢様を全力でサポートいたします。ですから、コーネリア様はこれまで通りここで過ごしていただければそれでよいのですよ?」


 それを聞いて、正直ほっと一安心するコーネリア。心のどこかで、これまで通りの生活ができることに安ど感が出たのだろう。両親がいないので、本当はこれまで通りというわけでもなのだが。だが、これでは、リーフ達についていくことは出来ないと思ってしまった。子供として今まで通りいきたいと思うと同時に、嘗ての自分が、元の世界の人間との接点を持ちたがっているのだ。そのためには彼らについていくのが最短の道な気がしてならないし、状況から自分の力が必要かもしれないとも思っていた。・・・そんな風に悩んでいると、


「お嬢様? どうかされましたかな?」


 見透かしたかのように声を掛けてくるセバスチャン。ここで少し躊躇したが、事故後に起こった自分の変化について話してみることにした。冗談を言われているとか思われたらその時だ。笑ってごまかすとしよう。


「実は、その事件の時に前世の記憶が戻ったと言ったら信じる?」


「ほう? 興味深いお話でございますな? お聞かせ願いますか?」


 その後、襲撃が切欠で、異世界人としての前世の記憶が蘇ったこと、魔王ヴィトが前世での父であること、ヴィトを止めるため、かかわりのある彼らについていきたいことを話してゆく。・・・気が狂ったのかと心配されると思ったのだが、


「左様でございましたか。確かに先ほどから別人と話しているようでありましたし、そのような話をされると納得でございます。あの方たちがいいとおっしゃれば、お嬢様の隙にされるとよいでしょう。ただし、了解を貰えればです。」


「いいの?・・・というかそもそも信じてくれるの?」


「随分と大人っぽい話し方をされると思っていましたから。こう言っては失礼ですが、以前のお嬢様は、少々心配になるほど子供っぽい方でした。それが、急に大人の話し方をしている。・・別な大人の人格が入り込んだかのように錯覚しておりました。ですから、前世の記憶が戻ったと言われると、正直、成程なと思った次第でして。それに私の家系は魔法使いの家系でしてな。そういう話も初めて聞く話ではないのですよ。」


「そうなの?」


「実はその昔、土術を得意とする家系だったようでしてな。転生者もごく稀ではありますが、歴史上いたようですよ? そうそう、お嬢様も土魔法をお使いで?」


「ええ、よく分かったわね?」


「私も僅かばかり使えますから。相手もそうだと何となくではありますが分かるのですよ。・・・そうですね、ならばこれはお嬢様がお持ちになっていた方がいいでしょう。」


 そういって渡してくれたのは、琥珀色の意志がはめ込まれたペンダントだった。それを受け取り、首から下げてみる。心なしか医師が光ったような気がした。


「やはりそうでしたか。・・・いえ、何でもありません。我が家系では既に無用の長物になっていましたもので、扱いに困っていたのですよ。是非受け取ってください。」


「・・・ありがとう。」


「ということで、お話は以上ですかな? では、我々はいつも通りの業務に移ります。・・・皆さんも聞いていましたね、今日もしっかり励むのですよ。」


 セバスチャンがそう言うと、皆自分の仕事をしに戻っていった。


「では、我々もお客様の下に参りましょうか?」

 ・

 ・

 ・

 それから数分後、コーネリアとセバスチャンがレグルス達の待つ部屋へとやって来てお茶会が開かれる。女性陣3人とラークはすぐさまコーネリアの首にペンダントがかけられているのに気が付いた。


「ネリア、それいいね! 似合ってるよ?」 


「ほんとかわいいわね?」


 エストとカペラがコーネリアの可愛さをほめるが、ここで、ラークがツッコミを入れる。


「うん、かわいいかわいいって、・・・違う。・・・それって、土精霊のペンダントだろう? どうしたんだ?」


「これね、本当は私のじゃないんだ。これは・・・」


「いえ、お嬢様の物ですよ。先ほどお嬢様に差し上げたのですから。私の家系はその昔、土術師の家系だったらしくてですな、こんなものが伝わっていたのですよ。」


「何でも、すでに売られてしまっていると聞いていて、ありそうなところを探そうとしていたのだが・・・」


 ラークが話に聞いた通りのことを言ってみるが、


「我が家系は、随分前の戦争の時に没落しましてな。その際に色々家財を撃ったのは確かですよ。たぶんそのせいなのでしょうね。ですが、これは大変重要な品。一族から優秀な術師が生まれなくなった今では無用の長物ですが、それでも手放すことは出来ませんでした。ですが、私が若き日に旦那様の父上に拾われた際、質代わりに渡そうともしましたが、断られました。・・・それは渡すべきものが現れるまで大事に保管しておくようにと。」


「もしかして、この娘がそうだと?」


 このレグルスの問いに対しては、


「これでも私は土術師の端くれ。ある程度は分かるつもりですが、お嬢様からは何々ならぬ力を感じます。だからお渡ししたのです。」


 レグルスをはじめにわかには信じられない面々。カペラだけは反属性の風であるため何か感じるものがあるようであるが。


『・・・お話し中のとこ悪いけどな、レグ! 何か感じんか?』


「感じるって何をだよ?・・・って、・・・ん?!」


 他にはリーフとカノーも感じたようだ。コーネリアのことではない。夥しい魔獣の気配だ。恐らくはほぼすべて飛竜だ。これは1万2万ではない。凄まじい数としか言いようがない。それがこの大陸の西側を飛んできている。


『確信は持てへんけど、この国を襲う気やないか?』


 ゲンの言う通りだとすると、狙うのはどこだ?


「敵の数は20万。数からいってこの国を一気に攻め滅ぼすつもりだわ。だとすれば、王都に行くはずよ。」


 コーネリアであった。その真剣な表情から本気で言っているのが分かる。


「何故それが分かるんだ?」


 ラークの尤もな問いに対し、


「ここより南下しても国は無いから、ジャンナが標的なのは確定。一都市を狙っているとしたのは、そうでなかっら、軍を小分けにするからよ。そして王都と言ったのはそこを落とせばこの国の滅亡が確定するからよ。その後地方に分かれて国土を蹂躙しきるには十分な数ね。」


「てことは王都を防衛しなきゃならいが、数が尋常じゃないな。行けるか?」


 ラークに話を振られたレグルスであるが、


「普通に考えて無理だろう。俺達だけじゃ力尽きる。」


「僕もそう思うよ。ここは逃げるのが正解だね。」


 レグルス、カノー揃って同意見だ。流石に無理かと思われたとき、


「固まって飛んできてるんでしょ? 行けるわよ?」


 まさかのコーネリアである。


「あのねネリア。これからあなたが襲われた竜を退治するって話なのよ?」


「・・・こないなら私一人でも行くわよ?」


「分かった。だが、無理そうなら強制的に連れて帰るからな。」


「OK,じゃいくわよ? ゲート!」


 10歳の女の子がゲートを開いたのだ。セバスチャン以外は驚愕してしまっている。そしてあっさり飛び込むコーネリア。


「よ、よし、俺たちもいくぞ!」


 多少動揺しながらも、コーネリアの後を追うレグルス達であった。














 



次回7/6予定です。

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