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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第10章 封印された土竜
82/102

合流

1734年 7/27


 リーフの組とレグルスの組が王都レムルに戻ってきて、別行動中に起きたことを報告しあったのが昨日のことである。光の宝玉と闇の宝玉を手にすることが出来たこともそうであるが、それ以外にも報告すべき事案が発生していたのである。


 1つ目は、レグルス達の故郷を滅ぼした者のうちの一人を打倒したことであり、その際、形見の品も手にすることもできたという点だろう。結果ラルフの戦力が大きく上がったことも付け加えられた。


 2つ目は、偶々、竜の群れに襲撃された商隊に出くわし、竜の群れを撃退した後、一人の少女を保護したことであり、こちらの方が大問題であった。商隊の生き残りは、彼女一人であり。彼女の両親はともに旅していた人とともに死んでしまっていたことだろう。


 竜の群れには、体を変化させる者もいたことから、魔王国の襲撃とも見ることが出来た。この辺は以前のレムル襲撃の件もあり、レグルス達を待ち構えていたロキも同様であったため、そこに異論はなかった。


 それよりも、孤児になってしまった彼女をどうするかであった。とりあえず、行きがかり上保護したが、いつまでも連れていくわけにはいかない。幸い、彼女コーネリアはしっかりしていて、彼女が隣国ジャンナ王国北部のモルダビの出身で両親とはそこから来たことや、家では使用人が数名いることを話してくれた。


 であるから、少なくともジャンナ王国の王都ジャンナまでは連れていくことが確定しているが、おそらく、家があるモルダビまでは連れていくことになるのだろう。本人は「使用人たちに暇を与えるしかない。」と言っているが、10歳の女の子をそんな中一人にしていいのかは大いに問題であろう。とはいえ、彼女の家に連れていくまでは少なくとも一緒に居られるので、この子をどうするかについては保留になった。


 互いの情報交換が終わった後は、今後の確認である。これで、まだ集めていない宝玉は、ジャンナ王国にある水の宝玉と恐らくピラミッドにあるであろう土の宝玉である。であるから、水の宝玉さえ手に入れば、ピラミッドに行けることにはなる。


 理想を言えば、土魔法の使い手や土精霊のペンダントも探したいところだが、土竜の復活が先決だろう。そろそろ時間が無いかもしれないのだ。つまり、次に向かうジャンナ王国ですべきことは、


1.水の宝玉を手に入れる。


2.コーネリアの預け先を確定する。


 の2点である。こんな方針を前日、コーネリアが寝静まった後話していたわけである。で、今日になって宿を出た後、レグルス達が行った闇の遺跡まで移動し、そこから一路ジャンナ王国に向かっているところである。ここから街道沿いに西へ2000㎞程進めば王都ジャンナに到着する。国境までなら500㎞程だろう。

 ・

 ・

 ・

 馬車で移動中、コーネリアはレグルス達と会話をしながら情報収集を行っていた。一応子供の質問という体で聞いたのがよかったのか、このお兄さんたちは色々話してくれていた。・・・実際は私の方が少しだけ長く生きているので、少し申し訳ないと思いはしたが、そこは利用させてもらった。


 まず、レグルス、ラルフ、アレク、エストの4名は同じ故郷の出身で、異世界から来たヴィト達と彼らが連れていた竜達によって故郷を滅ぼされたらしい。・・・前世でかつて父ヴィトが異世界へ行く方法を見つけたと言っていたが、もしそれがこの世界ならば、父ヴィトは彼らの敵ということになる。


 さらに話を聞いてみると、父ヴィトは魔王として君臨しているらしい。・・・何をとち狂ったのか!と突っ込みたくなったが、堪えてさらに聞いてみると、ヴィトは現在正気を失っていて、服従させたはずの龍が魔王国の実権を握り、その正体が700年前の魔王ゲルザードであったことを聞き出すに至った。


 こちらが理解できると思って話してくれたのだが、その情報源の大半がライズさんによるものだと知って驚いてしまった。私がライズさんを個人的に知っているのはあまりにも不自然である。一瞬、素で大きなリアクションを取りそうになったが、何とか自重した。今、私の中身がバレるとまずい気がする。いつかは話す必要がある気もするけど。


 で、現在はその真の魔王ゲルザードを再封印するための行動をしていて、そのために土竜という竜を復活させようとしていると理解できた。ここまで情報を聞き出して、私は何をしたいのか? できることなら自分が元居た世界から来た人が父ヴィトの暴走に巻き込まれるのは阻止したいと思うのだけど、その近道は・・・どう考えてもこの人たちについていくことだよね? 都合よくこの人たちは土魔法の使い手を探しているし、自分なら行けるのでは?とも思うが、今は見た目が子供というのがネックだろう。というか、私をどこに預けようか?と話しているみたいだし。連れて行けと言って、いいよとは言わないだろうし、・・・そう考えていると、


『なあ、ネリア』


『え? だれ?』


 突然念話が届き慌てるが、聞かれたら不自然と思い、自分も念話で返すことにした。


『お? 賢い子は好きやで。・・・ワイはゲンや。今はレグルスの手袋してますねん。一応他の者には聞こえないようにしているさかいにな。安心してええで。』


 確かにレグルスさんはいつも手袋をしているが・・・まさか意思があるとは思いもしなかった。


『で、要件やが、ネリア、仲間になりたいん?』


『・・・そうね、力になれると思うし・・・』


『せやな・・・ワイ、こうみえても土竜とつながりがあってな? だから分かるんやが、ネリアには十分な土の魔力があるし問題なしや! だけどな、今は話はしない方がええやろうな。』


『やっぱりそう思う?』


『せや。話をしても信用せんやろうな。仮に実力見せてもまだ子供だからと話聞かんと思うわ。』


『実力見せてもダメ?』


『こいつ等変な偏見とか無いから、実力については見た儘を受け入れるやろうけど、中身が大人言うても信じられないと思うで?』


『そうなのよねぇ。それ信じてもらえれば、話早いのにね?・・・って、何で私の中身について知ってるの?』


『それな? ネリアの魂の記憶にこの世界の物でないのが含まれているのが見えるんや。ぼやっとやけどな。・・・偶にいるねん。他所の世界から生まれ変わってくる奴。』


『・・・そうなのね。・・・で、どうしたらいい?』


『まあ、悪いようにはせんて。うまく受け入れられるように仕向けるによってな。・・・今は待っとき。後な、これは今のところ2人の秘密や。』


『・・・そうね、わかったわ。頼むわよ。』


「ネリアちゃん、ぼーっとしてたけど、疲れたの?」


 ゲンとの念話が終わるや否やエストが話しかけてくる。


「うん。でも大丈夫。」


「そお? お菓子あるけど食べる?」


「あ! 欲しいです。」


「はい、どうぞ。」


「やった。いただきます。」


 そう言って、貰ったクッキーを食べ始める。クッキーは結構おいしかった。

 ・

 ・

 ・

 ちょうどその頃、同じ馬車の中で、レグルス、ラーク、リーフが土術師の情報について手掛かりがないか話し合っていた。


「そういえば、そっちでは土魔法の術者について、何かいい情報は無かったか?」


「一応、聞き込みとかはしてみたぜ。・・・だが、報告すべきことは何もないぜ。」


 レグルスがラークに聞いてみたが、その結果は芳しくないものだった。そのラークに同行していたリーフも同様であろう。


「レグルスはどうだ?」


「嘗て、レムリア王国が出来た頃は、今のジャンナ王国がある辺りに土術師が住んでいたらしいという記述を本の中で見つけたよ。だが、・・・」


 その本は、シュネー村の村長ホセが持っていて、今から数年前にレグルス自身が借りて読んだことがあったのだが、当時は興味本位で読んだだけだったのできちんと頭には入っていなかったのだ。それでも、数日前偶々そのことを思い出し、転移して確認しに行ったのだ。もう一度読むことで、疑問点は解決したのであるが、・・・


「その土術師の子孫は、第1次アルカディア=ジャンナ戦争の際に従軍していて、その時に戦死したのだとか。それが切欠で、遺族は没落したらしく、過去の術者の子孫に関しては、今は完全に消息不明とのことだ。しかも、その戦死した者は術者として優秀だったわけではなく、一兵士として武器で戦ったらしい。」


「どういうことですか?」


「言葉のままだ。土術者の子孫は土術者ではなかったということだ。まあ、その戦死した人も身体強化くらいは土魔法を使っていたかもしれないが。」 


 実際、土魔法をメインに使う者は少ない。これといった攻撃魔法は無く、よく知られているのは、身体強化の魔法、岩をぶつける魔法、回復魔法である。ただ回復魔法は光魔法が主流であり、土魔法の【アースヒール】は使用者が少なかったりする。自分達のパーティでも唯一の使用者ラークも使っている場面はあまり見たことがない。恐らくは身体強化をメインに使っているのだろう。


「中々厳しいですね。でも、もしかしたら、精霊のペンダントだけでも見つかるかもしれないですよ?」


 レグルス、ラークともにリーフの意見の続きを聞く。


「土術師がジャンナにいたことがあるなら、ジャンナのどこかにないかなぁっと。」


「それを持っているだろう人が戦死しているからな。そのまま遺品として遺族に届けられたか、それとも敵国に回収されたか、どちらにしても市場に出回っている可能性も考えないとな。」


「いや、そんなこと言ったら世界中を探さないとマズいだろ?」


「そうなったら、素直に土竜を先に復活させて、作り方を聞くしかないだろうな。」


「そうだな。術者も探さないといけないしな。多分・・・俺ではダメなんだろうな。」


「ラークは既に氷精霊のペンダントを持っているだろう。多分だが、兼任は出来ないと思うぞ。」


「分かっている。言ってみただけだ。術者の居場所とかも分かればいいんだけどな。土竜が。」


「まあ、どっちにしろ、土竜復活を先にする必要がありそうだ。」


「で、話は変わるが、ジャンナ王国について分かっていることはあるか?」


「いや、別段目新しいことは何も。ただ、アルカディアもヘスベリスも長年の紛争の原因が土竜復活を阻止しようとする勢力の妨害工作の一環だったと分かってしまったからな。ジャンナ王国次第だが、ここでも戦争とかそういう流れにはならんとは思う。」


「その意見を聞けただけでも一安心だな。ということは、ジャンナ王国の国王と交渉して水の宝玉を貰うだけか。だったら楽なんだが。」


「ここまで俺たちの動きを邪魔しようとしてきた魔王国だ。ジャンナは放置というわけにはいかないだろう。まあ、他国を戦争に仕向けるという手は使わないだろうがな。」


「そう考えると次の一手は怖いな。何をしてくるか想像もできない。う~む。」


「ラ~ク~、今からそんなに悩んでると禿げるよ? 気にしない気にしない。」


「! テメェ! いうに事欠いて禿げるだと? ・・・泣くぞ?」


 どこから話を聞いていたのか、カノーが毒舌で乱入してくる。


「まあまあ、僕たちはやれることをしましょうってことで・・・」


 こんな会話をしつつ、レグルス達は一路、王都ジャンナを目指す。




1734年 7/27


 レグルス達が合流して旅を再開した丁度その頃、旧コトナ村にある魔王国アガルダの行政庁の一室にて、ゲルザードの静かな叱責が患部に発せられる。


「マルローよ、我が封印が再延長されたというのは本当か?」


「・・・申し訳ございません。祠にはわが眷属を警備代わりに置いておいたのですが、・・・どうやらジジイ一人にやられたようでして。僅かですが解除までにかかる期間が延びた模様です。」


「まあよい。後少し待てばよいのだ。どちらにしろ復活まで後一月もない。召喚魔法の行使がそれだけ遅れるだけだ。」


 実はレグルスの師匠のヤンがこっそりグルド山にある封印の祭壇にいって封印の再延長をしてきたのだった。マルローの部下に妨害をされそうになったがヤンの敵ではなく、適当にあしらった後、僅かばかりの魔力を注いでその場を後にしたのだった。ヤンにはそれほどの魔力は無いため、封印の延長はせいぜい数週間といったところか。それでもやらないよりはましというヤンの判断であった。そもそも、以前この指示をレグルスに出したのはヤンである。彼が気が付かないはずはなかったのである。


「で、レムリア大陸の件はどうなっておる?」


 この問いにはフレイアが答える。


「こちらもよろしくない事態ですわね。どうやら3国は和解に向かっているようですわ。こちらの工作活動がバレたみたいですの。レグルス達のせいで。ロキ、レギン、スロールもやられましたわ。」


「あ奴らのことはどうでもよい。それより宝玉はどうだ?」


「土を除けば、あとは氷だけですね。で、今、連中はジャンナ王国に向かっていますわね。そこで5つ目が揃うと思われますわ。」


「ウラヌス、バティスタ、何をしていたのだ? 全く妨害になっていないではないか? ん?」


「「申し訳ございません。」」


「ふん、まあ、よいわ。・・・それよりも、戦争に仕向けられないとなればどうするか・・・」


「もう、いっそ面倒ですから、連中もろとも滅ぼしてしまいます? 今度こそ本気で。」


 フレイアの過激な発言に、マルロー以下3名が硬直する。これまで、ゲルザードの主に配慮して、主様が降臨なさる前に人類の一国を壊滅させるのは控えてきたのだ。それを破る一言だっただけに余計になのであるが、


「主様の降臨もあと少しである。・・・まあ、少し位ならいいだろう。・・・全軍を率いても構わん。ジャンナ王国を滅亡させよ。さらに邪魔立てをするようなら、いっそ邪魔な勇者一行も始末してしまえ!」

 

 とうとう発せられた国一つ滅ぼせという命令。マルロー以下全員の気が引き締まるのであった。

次回は7/4予定です。

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