アルカディア、ヘスベリス両王国の和解
勇者一行が、一軍を率いていた、嘗てスロールだった大猿を討伐してからは、アルカディア軍が一気に優勢になり、そこから30分も掛からずに襲撃部隊を討伐してしまった。敵のリーダーを倒したのを見て、一気に士気が上がったらしい。レグルス達がその後も手伝ったというのもあるが、残存兵を完全に駆逐するのにそう時間はかからなかったのだ。
ヘスベリス軍(仮)を討伐後、レグルス達は国王に呼び出しを受けていた。勿論、今回の王都防衛の功績を称えたいとのことであった。そこで、国王を相手に今回の敵軍の正体について、現場の軍を率いていたゼスト将軍とともに報告していく。レグルス達の証言のみでは、あくまで参考意見程度に聞かれたであろうが、身内の部下からの証言と一致するとなれば、もはや信用せざるを得ない。
「・・・う~む。状況的に真実なのだろうが、5000を超える人間の軍隊が、突然すべて魔物に変化したなどと、簡単には受け入れられんな。・・・あ、いや、お前たちのことを信用していないわけではないぞ。」
そこで、ラークにより、変化したのではなく、元々魔獣だったものを、人間に見立てていただけであり、カノーの変化解除魔法でその正体を明らかにしただけであると説明する。
「ムムム。だとすれば、ヘスベリス王国を態と貶めるような所業ではないか? ヘスベリス王国の国旗を掲げていたというしな。・・・実はウラヌスという者が、この王都にヘスベリス軍が侵攻してくると予言していたのだよ。かつて邪竜を封印した4人の術者の一人と同じ名前でもあったし、信用したのだ。で、今回の件についてヤツの意見も聞いてみたかったのだが、ダナン!!・・・ウラヌスは見つかったか?!」
レオポルド王に名指しされた、ダナン大臣は申し訳なさそうに報告する。
「・・・それが、戦闘終了から、ウラヌスを見かけたものは誰も居りませんもので・・・探してはいるのですが発見は出来ていません。」
まるで、今回の戦闘の結果が彼にとって都合が悪く、ここから逃げたかのように見えてしまう。だとすると、彼こそが、アルカディア、ヘスベリス両国を戦争に導こうとした張本人ではないのか?
「・・・我は、ヤツに意見を聞きたかっただけなのだが、これではヤツのことを疑わざるを得ないな。ヤツがあの魔獣軍を陰で操っていたとすれば、奴は魔王国の者ではないかという疑いが出て来るな。」
「国王、邪竜を封印した4人の術者の一人にウラヌスという名前があったとのことですが、他の当時の術者の名前は分かりますか?」
レグルスはこう聞いてみたのであるが、
「ああ、当時の4術者の名は、マルロー、フレイア、ウラヌス、バティスタであるが?」
ウラヌス、バティスタについては状況証拠だけで確認は無理であるが、マルロー、フレイアの名は、直接対峙しているだけに、魔王国にいる悪魔と同じ名であるとよく記憶している。悪魔は長命なのだろうし、もしも同一の存在だとすれば、ウラヌスも悪魔の一人ということになる。そしてバティスタという者も、きっとどこかで戦争に向けての工作活動をしているのかもしれない。そして今気が着いたことも報告しておく。
「・・・成程な。ということはだ、我々3国は、それらの者どもの情報に踊らされて、しなくてもいい戦争を200年間もしていたということか?」
今持っている情報だけでは何とも言えないのであるが、今の状況は今回だけが偶々だと思える状況ではない。王の言うとおりだということであろう。レオポルド王はその後しばし放心状態に陥り、レグルス達にかける言葉などなかった。そして王が再起動するまで10分を要したのである。
「・・・は! こうしている場合ではないな。恐らくは、ヘスベリスの方でも我が国が侵略するという話になっているのであろう? 使者を派遣して誤解をたかねばなるまい。」
レオポルド王は直ちに部下に命令を下そうとしたが、ラークがそれを止める。そして、
「私ラークとこの者レグルスがいってまいります。レグルスは転移魔法が使えますゆえ。」
「・・・そうか、頼めるか?・・・分かった。そしてすぐ報告に戻ってくれ。他のものは、客室に案内させるので、そこで待ちながら寛いでいるがよい。」
それを聞き、ミリアム以下仲間たちが客室に案内されて行く。レグルスは直ちに転移魔法を起動し、ラークとともにヘスベル城へと移動する。城門前に転移したため、兵士には驚かれたが、すぐに仲に通してくれた。そして中に入って15分後、ザイン国王に会うことが出来た。
「ラーク殿、今回はどのような用件で?」
「実はアルカディアで起こったことについて報告がありましたもので、・・・」
ラークはアルカディアの王都レムルが、ヘスベリス軍を装った魔獣の一団に攻撃を受けたこと。アルカディアでは、ヘスベリスの方が侵略してくると戦争準備をしていたこと。魔獣の一団を撃退後、ヘスベリスが侵略してくると予言した者が忽然と姿を消したこと等を報告してゆく。
「・・・我が国でも、バティスタと名乗る者が情報提供者なのだよ。その情報を受けてアルカディアからの防衛準備をしていたところだ。お前たちの活躍が無ければ、レムルは蹂躙され、それに怒ったアルカディア軍が我が国に宣戦布告してくると、それを我が国は向こう側の一方的な侵略と思い込み・・・」
ザイン王も両国を戦争に巻き込もうとする陰謀に気が付いたようだ。バティスタは預言者としてヘスベリス王国の中枢に入り込むようなことはしなかったようだ。アルカディア軍がこちらへ攻めてくるのは確実で、特別な工作活動は必要ないと考えていたのかもしれない。当然バティスタの尻尾を掴むのは不可能であろう。
「今思えば不思議であるな。何故たった一人のものが言った情報を鵜呑みにして軍を動かしてしまったのか。我も含めて誤情報の可能性を可能性を考えてもよさそうなものなのにな。」
「どういう形でこちらには報告が?」
レグルスの問いに国王は、
「リセルの町に峠をものすごい勢いで下ってきた者がいたそうだ。バティスタと名乗り、アルカディアでものすごい数の軍勢がリセルに迫っていると言ってきたものがいるのだ。その者は少し怪我をしていたと言っていた。それで信用したのかもしれんが、こちらも敵の進軍を確認もせずに信じ切ってしまったのは問題であるな。」
「・・・その際に兵士たちがバティスタから洗脳を受けた可能性は?」
「!・・・成程な? その可能性も考えなければならないだろう。分かった、リセルの町の兵士たちに洗脳の影響が残っていないか調査するとしよう。」
実は、後日分かることだが、バティスタという者に応対した兵士数人から洗脳魔法の影響を受けたものが確認できたらしい。
「さて、ラークにレグルスよ、お前たちはまたアルカディアに戻るのであろう? であれば、ヘスベリス王ザインがレオポルド王に会談を希望していると伝えてはもらえないだろうか? 長年の戦争は双方の誤解である可能性が高い。至急和平を結びたいのだ。」
この申し出は是非もなく、その直後レムル城に戻り、ザイン王の申し出をレオポルド王に報告する。厳ついオッサン顔のレオポルド王の破顔した顔が少しだけ気持ち悪かったのは内緒である。その後レムルから使者が旅立ち、会談を受諾する旨が伝えられ、この日より2か月後、両国国王同士の会談が行われ、平和条約の締結と両国の国交正常化が宣言されるのである。勿論、今の時点では未来の話であるのだが。少なくともそんな未来が見通せるようになったことに対して、使者となったラーク、レグルスに感謝が伝えられる。
「王都防衛の件も含めて、お前たちにはいくら感謝してもしきれない。よって褒美を渡したのであるが・・・」
「でしたら、以前お願いした、火の宝玉と、光と闇の宝玉を祀っている両神殿への立ち入りと両宝玉の持ち出し許可を頂きたく・・・」
「・・・そうであったな。お前たちのことは最早疑いようもない。レグルスよ宝玉の件は好きにしてよいぞ。無事土竜を開放してやってくれ。」
「国王、感謝いたします。」
その後、エスト達がいる客室に案内され、一行まとめて歓待を受ける。酒も入り、結局城に一晩止めてもらうことになった。
夜が明けて、兵達に見送られつつ城を出るレグルス達。無事火の宝玉を手にすることが出来た。次は光と闇の宝玉である。とりあえず荷物を取りに元の宿に戻る一行であるが、歩きながら、まずどちらに行くのか話してみる。
「光の遺跡はかなり遠いね。ここから3000㎞は先にあるジャングルの中みたいだね。」
アレクの言う通り、この国の北西部は熱帯域にかかっていて、光の遺跡はそこにあるのである。馬車でいったら2週間は掛かる距離である。
「闇の遺跡はここより南1000㎞先にある。ここも遠いが、光の遺跡よりはマシだ。闇の遺跡からにするか?」
レグルスはこういうが、ラークから反対意見が出る。
「どっちから先に行っても、合わせて20日程かかる計算になるな。それもすんなり手に入れられたとしてだ。そうしたらもう8月だ。その後も水の宝玉を取りにジャンナ王国にもいかなければならないし、土魔法の術者も探しにか無ければならない。今までのように行く先で出会えればよいが、そうでない場合下手をすると世界中度をし直す羽目になるかもしれない。そこまでして、さらにピラミッドと土の宝玉だ。時間がいくらあっても足りないぞ。ゲルザードの封印が解けてしまわないのか?」
「ではどうする?」
「少しでも時間を稼ぐため、チームを分けよう。レグルス、エスト、ラルフ、アレクは歩きで闇の神殿に向かってくれ。残りは俺とともに馬車で光の神殿に向かう。カペラも転移魔法が使えるし、終わり次第、王都レムルにて合流する。これで時間は少しでも節約できるはずだ。その後は全員で闇の遺跡まで転移し、そこからジャンナ王国に向かうのが早いだろう。」
「戦力を割く形になるが・・・」
「俺たちも大分強くなったからな。レグルスがいなくても何とかなるだろう。・・・というより何とかできなければいけないという話なんだが。」
ラークの班には、ミリアム、リーフ、カペラ、カノーがいる。人数も一人多いし、何より本来メインの戦力足り得る勇者リーフがいる。賢者の孫のカノーもいる。こちらが心配されるのは本来おかしいのである。
「分かった。それでいこう。反対意見はあるか?」
特に無いようであり、方針が決定した。何もアクシデントが無いことを祈るばかりである。
次回は少し時間を貰って、6/22の予定です。




