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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第9章 闇竜とエルフィン王国に迫る危機
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敵の不可解な動きと闇竜

1734年 6/15


 湖底の洞窟に入ってから2週間がたった。ここまで魔王国が放ったと思われる魔獣と幾度となく戦闘にはなった。ただ、遭遇した際に相手が単体か精々2~5体であることが殆どで、そのうち3割程度が竜種であったが、特に問題なく討伐に成功している。


「ここまで順調だったな。強い敵も出てこなかったし、大群に襲われることも無かったしな。」


「実際どうなんだ? 魔王国が放った魔獣はこんなもんだったのか?」


 ラルフはここまで手ごたえがなく拍子抜けしたとでも言いたそうだ。まあ、もっと強烈な戦闘に巻き込まれることを想像していたものが殆どだろう。とはいえ、まだ到着したわけではないため、油断はできないのだが。その辺の確認だろうか、ラークがこの先の索敵をしてもらいたいようだ。


「相変わらず闇竜と思われる存在は健在なようだ。そこから少し離れたところにかなりの数の魔獣の気配がある。数日前と同じ状況だ。恐らくは闇竜の直前で足止めをされていると思われるが・・・」


 レグルスは数日前に行った索敵結果とそう変わらない内容を話す。目的地である闇竜のいる場所まで今日1日で到着できる距離までは着ているはずである。ここまで地数いてきて、状況は少しは詳しく分かるようにはなってきているが、そもそも何故魔獣たちは闇竜を目の前にして立ち往生しているのかが皆目見当もつかない。結界が張られているかもしれないと推測もできるのだが、敵がこの状態になってから少なくとも2週間以上は経過しているはずであった。


「まあ、ここまで楽だった分、最後はきつい戦闘になる可能性があるから、気は緩めないようにな。」


 所々、枝分かれのある道を進む関係上、待ち伏せを受ける可能性はいつもあるわけであり、気を緩められる状況でもないのだが、話を聞いて、やっぱりか~という表情をしている者がちらほら・・・




 レグルス達がそのような話をしていた時から1時間後、湖底の洞窟の最奥には直径200m、面積でいうと4万㎡近い、高さも最も高いところで20mはある巨大な空間がある。現在はそこに本来の竜形態をとっている闇竜がいた。ただ、闇竜に警戒している様子はない。本来、入り口から中の様子は丸見えで、ここに闇竜がいるのは一目瞭然なのだが、ここには結界が張られており、かつ闇魔法で光が一切通らないようにしていたりする。だから、中には入ってこられないうえに、気配は合っても中の様子はうかがい知ることは出来ないのである。


『・・・それにしても、いつまでいるつもりかしら・・・』


 闇竜は一人呟くが、誰にも問いかけていない以上答えは返ってこないのだが。この巨大洞窟に新たな魔獣が解き放たれてから、自分の配下の魔獣には安全なところに逃げるように指示。数体は戦闘の上、犠牲になったようだが、多くは洞窟外に逃れたり、洞窟の目立たないところに隠れていたりする。勿論簡単にはやられないほど強い魔獣も配下にいるのだが、敵の戦力を考えると数の暴力で倒されるのが目に見えている。よって、今は手元に置いて、一緒に籠城している。そうしながら、敵があきらめて帰ってくれるのを待っているのだが・・・


『そもそもわかんないのよねぇ。』


 今の独り言は、敵の目的に対してである。一人強力な悪魔族も着てはいるようだが、闇竜を討ち取るには少々戦力不足である。闇竜が本気になれば1時間足らずで全滅できるだろう。仮にこちらの実力を知らずに勝てると思って来ているのだとしたら、この空間に是が非でも入ろうとするだろうが、それもない。入れないからいるだけとも考えられるが、だったら、一度戻って対策を考えるとかもっとやることがあるだろうと思う。・・・何故、ただ何もせずあそこに居続けることが出来るのか不思議でしょうがない闇竜であった。




 闇竜がいる空間の傍には魔獣が200頭程待機していた。うち半分は竜種である。この魔獣たちを統率する立場でこの場にいる悪魔族のテレサは、張られている結界を破るように指示を出すでもなくひたすら退屈していた。


『暇よねぇ、退屈しのぎにそこの結界を破って、闇竜と戦闘してみたいけど、それはするなという指示だからねぇ。』


 テレサがマルローから受けた指示は2つ。1つは、後程やってくるであろう勇者一行の妨害。もう1つは闇竜の襲撃ではなかったりする。そのように見せたのはフェイクで、本来の目的を万に一つも悟らせないためであった。その目的とは、事前に与えられた晶石に闇の魔力をため込むことである。それには闇竜の傍が最も都合がよかったりするだけなのであった。その晶石には十分な量の闇の魔力を貯めこみ終わっていた。


『一番重要なミッションは終わっているのよねぇ。あ~あ、早く勇者どもこないかしら? あたし帰れないんですけど。こんなジメジメしたところもういやよ? 早く旧帝国のリゾート地にでもいってお日様に当たりたい。』


 こんな身もふたもないことを考えていたりするテレサであった。まあ、本当に口には出さないのだが。ちなみに、悪魔族だからと言って日光に弱いとかそんなことは特には無かったりする。




 闇竜と悪魔族のテレサがそんなことを考えていたころ、レグルス達はとうとう闇竜の住処に近づいてきていた。


「やっぱりいるね、敵の魔獣たち。100? 200?」


「ここまで来るまで分からなかったが、悪魔族も混じっているな。そいつが恐らくはリーダーだな。」


 アレク、レグルスが遭遇する前に察知した情報を話す。


「あとどのくらいで着くの?」


「あそこの角から見えなくなっているだろ? そこまで行ったらいるぜ、大群が。」


 エストも確認のために聞いたのだろうが、本当にすぐそばまで近づいていたことに緊張を隠せない一同。


「リーダーは俺がひきつける。他は手分けして頼むぞ。」


 レグルスの指示にうなずき、魔獣が待機しているであろう部屋に突入する一行。


「! 来たわね、勇者御一行。悪いけど死んでもらうわよ。」


 悪魔族の女がそこに待機していた魔獣凡そ200をけしかける。・・・が、今更このくらいの数ではそれほどの脅威は感じない。ラルフやアレクの剣閃で魔獣たちの首が飛び、カペラの風魔法が魔獣の胴を切り裂き、空を飛ぶものも、ラークの弓やエストの火魔法が襲い、残敵もリーフの光魔法が仕留めていく。


「! ちょっと、いくら何でも早すぎない? ・・・聞いてないんですけど、これ。」


「・・・お前の相手は俺だ。」


「! 出てくるの早すぎ! ・・・ゲート!」


「!!!・・・マジかよ? 開幕即逃げるとか、そんなのありかよ? あいつら何しに来たんだよ?」


 敵のリーダーはレグルスが背後に立つや否や、即ゲートの魔法で逃亡を図った。この行動を読むことが出来なかったレグルスはまんまと逃げられてしまった。


「・・・もう倒したの?」


 エストをはじめ、他のメンバーがやって来ていた。見渡すと、生き残っている魔獣は特にいなかった。すべて倒したようだ。


「俺の顔を見た瞬間逃げやがった。まさか、いきなり逃げるとは・・・」


「レグの顔がおっかなかったんじゃない?」


「・・・そんなわけないだろ? そんなこと言う口はこれか!」


「いひゃい、・・・・・ひっぴゃらにゃいでよ~!」


「・・・お前ら、何じゃれてんだよ? 敵がいなくなったんなら、先を急ぐぞ。」


 レグルスはしょうがなくエストの頬を離し、先を歩き始める。その先には、強力に張られた結界が見える。


「やはりこの結界が邪魔で足止めをされていたのかしらね?」


「どうだろうな? 今の様子を見るに結界を破ろうとしているようには見えなかったな。」


 ミリアムの疑問にラークが答える。


「やっぱり俺たちの待ち伏せをしていたのか?」


「・・・その割には敵の大将はあっさり逃げていったけどな・・・」


 ラルフの疑問に答えたのはレグルスだ。とはいえ、では、奴らは何をしにここで2週間以上も何かを待ち続けていたのか益々意味不明なのだが。どちらも違うとなると、何をしたかったのか目的が見えない。しいて言えば、自分たちが思いついていない第3の目的が存在していたのかもしれない。だとすれば、これ以上推測しても時間の無駄だろう。


「お! 結界が消えていくぜ。」


 それまで頑なにあらゆるものの侵入を拒んでいた結界が突如消えたのだ。この先には闇竜がいるに違いない。そう思い、先に進むことにする。・・・進んだ先は想像以上の大空間があった。この空間にいったい人間の住める家が何件立てることが出来るだろうか。というより、町が丸々一つはいるのかもしれない。そのくらいの広さである。その奥に確かに黒く大きな竜がいた。あれが闇竜であろう。その周りには十数体の魔獣が控えていた。・・・特に敵意は感じない。


『よく来ましたね? 勇者一行でよろしいですよね。 私が闇竜になります。』


「はい、精霊竜の儀式を受けに来ました。ゲルザードを封印するために。」


 その後、闇竜は人間形態になり、ここを訪れたものすべてが自己紹介をする。そこで、改めて儀式のことを聞こうとしたのだが、


「精霊竜の儀式には、精霊のペンダントとそのペンダントが持ち主と認めたものが必要なのは、これまで他の竜のところで儀式を受けてきたのであれば分かりますね?」


 全員うなずく。


「結論から言いますと今すぐ儀式を行うことが出来ません。ペンダントとその持ち主、どちらもここには無いからです。」


「心当たりはないのですか?」


 このままでは帰れないため、食い下がるリーフ。


「心当たりというわけではないのですが、嘗て数百年前の龍王ゲルザードとの戦いの際、私は闇精霊のペンダントをエルフの少年に渡して、勇者カミュに対して精霊竜の儀式を行いました。そして、無事ゲルザードは封印され、闇精霊のペンダントはそのエルフの少年が持ち出したままなのです。」


「それって、手掛かりは無いよって言ってるのと同じじゃない?」


 カペラからのツッコミが入ったが、どうやらそうではないようだ。


「彼はミーミル湖の南にある小さな田舎町の端に住んでいました。基本人とのかかわりを嫌う人で、同じエルフとすら交流を持っていませんでしたが、偶々勇者に命を助けられてとかで協力するようになったのだとか。その後、龍王の封印後、彼は元の家に帰っていったと聞きます。彼は一人住んでいたので、元の家があるかどうかは分からないですけど、闇精霊のペンダントが今もそこにある可能性が高いです。そして、その親族ももしかしたら近くに住んでいるのかもしれませんし。一度行ってみるといいでしょう。」


「はあ、雲をつかむような話だが、言われた通りするしかないみたいだな?」


 ラルフが納得した通り、とりあえずその場所を探すことにした一行。まずは、長旅の疲れをいやすべく、王都エルフィナへいったん戻るのだった。

 









次は6/2更新です。

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