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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第9章 闇竜とエルフィン王国に迫る危機
62/102

王都エルフィナへの旅路

今回は新章のプロローグ的な感じです。

1734年 5/10


 火竜の元で精霊の儀式を終了させたレグルス達は、次のスヴァール大陸に向かう前に、先日宿泊した、サイード島のコモドの街の宿に戻って一泊したところである。ここからはまた長い船旅になるため、今のうちに陸地を味わっておきたいというレグルスの希望を考慮したわけである。勿論、理輔はそれだけではない。


 スヴァール大陸は、現在いるキルナ諸島の南に位置し、そこにあるエルフィン王国の首都エルフィナもミーミル湖の北で且つ北にある海岸線の近くにあるため、そのまま船で南下していけば到着しそうなものであるが、このスヴァール大陸の北の海岸線はすべて崖になっていて、船からの大陸への進入はほぼ不可能といっても良い。ただ大陸の東側と西側の海岸線はそのようなことはなく、そして東側は強い寒流が北へ向けて流れているため、東側では船の進行が遅くなる。ということで、必然的に西側の海岸線から上陸しようとなったわけである。


 そのためには、キルナ諸島の西に位置するサイード島からの出航は、一応理にかなっているといえる。そういう背景があった為、それを説明するレグルスの説明には力が籠っていた。勿論、少しでも船に乗っている時間を短くしようというレグルスの企みはバレバレであったが、そこにはあえて突っ込まず、必死の説得をするレグルスを生暖かく見ながら、コモド港からの出航に同意していたのである。




1734年 5/15


 レグルス一行はスヴァール大陸の西岸に到着していた。コモド港から距離があったにもかかわらず短期間で到着したのは、この大陸の西側には赤道からの暖流が流れているせいであろう。本来の船の速度に海流の速度が加わった為であった。酔い止めの薬を常備するようになったとはいえ、船酔いが酷いレグルスにとっては僥倖であった。


「・・・寒いですわね。」


「真冬と変わんないじゃん!」


 今のはミリアムとカペラである。これから冬を迎えようとする晩秋の時期であるはずだが、既に雪は5cm程積もっていた。北国育ちのラークだけは特に驚く様子もないが、他の面々はやはり冬には慣れていない。


「とはいえ、この馬車で移動するからそれほど関係ないけどな。」


 収納から取り出した、いつも使用している馬車はグリバール王家の所有のものである。設置されている宝玉に魔力さえ通せば冷暖房完備になる優れものである。そして、最近は暖かいところを移動していたため夏使用にしていた車輪も冬用の滑りにくいものに交換し、王都エルフィナに向けて出発する。


 今回の目的地であるミーミル湖はスヴァール大陸の北に位置する世界で2番目に大きな湖である。そしてウルズ湖と異なり、もともと海だったところが地形に閉ざされて湖となった塩湖とは異なり、雪や氷河が解けた水が流れて集まってできたれっきとした淡水湖である。水はとても澄んでいて、そのまま飲料水として飲めるほどであるが、そのきれいすぎる水のせいで、そこで生活している生物は乏しいのである。まあ、全くいないわけではなく、澄んだ水を好む魚などが生息してはいて、この国では貴重な蛋白源の一つとなっている。


 そのミーミル湖の北側のどこかに、闇竜が住むという洞窟の入り口があって、中に入ってから、しばらく進むと湖の底に行きつき、そこに闇竜がいるらしい。だが、その洞窟の入り口はエルフィン王国が管理しているため、レグルス達は洞窟に入る許可を貰うべく、王都エルフィナを目指しているわけである。その王都エルフィナは現在地から西へ2000㎞程でありかなりの距離と言わざるを得ない。道中吹雪にならないように祈りつつ、王都を目指して進む一行である。




1734年 5/19


 王都への道のりはまだ中間地点には来ていない。それでも4割程は進んだだろうか?馬車に乗りながら、それぞれの方法で退屈を紛らわせていた。落ち着いた時間が長く続いているせいか、レグルスは読書、アレクは気に入った風景の絵を描いている。他の面々は、ゲンも交えて大抵は会話を楽しんだりしているが、それに飽きてくると、一部のメンバーを除き、レグルスと同様に本を読んだりして過ごしている。で、その一部のメンバーであるラルフとカペラは、


「暇だ~! うぉぉぉ・・・」


「退屈~ はぁぁ・・・」


 叫んでいた。読書に没頭し始めた面々は迷惑そうである。


「ちょっとカペラ煩い!」


「エスト~、構ってよ~。ってか、何であたしだけ? あっちの方がうるさいじゃん!」


 そう言って、ラルフの方を指さす。


「・・・だって。あれはそういう生き物だし。近くで猿が吠えてるって思えば気にならないわよ?」


 リーフだけは苦笑いをしているが、レグルス、アレク、ラーク、ミリアムは完全にスルーしている。


「おいおい、聞き捨てならないな! 誰が猿だ! エストてめぇ!」


『まあまあ、そん位にしとき。聞き流してた方が男としてはカッコええで。』


 エストの発言に怒ったラルフを珍しくゲンが宥める。


「ゲンよ。そうは言うけどな、猿は無いだろ猿は?」


「そうか?」


「レグ?! どう意味だそれ!」


 既に何時間も読み続けていたレグルスの集中力も切れたのか、ラルフいじりに参戦してきた。


「・・・ああ、猿とは少し違うか・・・」


「そうだろう? って違うのは少しなのか?」


「いやな、どっちかと言えばゴリラだろう? 脳筋だし、お前バナナ好きだし。」

 

「・・・お前の方が酷いぞ・・・確かに脳筋なのも認めるし、バナナも好きだが・・・」


 軽くショックを受けてるラルフ。その横で、「脳筋は認めちゃうんだ・・・」と別な意味でショックを受けたリーフが小声でつぶやく。


「・・・あのなぁ、レグ、ちょっと指摘させてもらう。」


 ラークがラルフのフォローに回るようだ。それを意外そうに見る一同。


「お前は間違っている!・・・何でかって言うとな、ゴリラも猿だ。だから、エストが言ったことの否定にはなっていないぞ。」


「・・・そっか。ごめん、ラルフ。俺が間違っていた。お前は猿であってるよ。」


「何でだよ! お前ら、いい加減にしろよ!」


「あっははははっ~~~~~~~~あ~腹苦し~。」


 カペラ大爆笑。・・・ラルフの尊い犠牲のもとに、どうやら退屈はかなり紛れたようだ。


「・・・退屈になる度、俺をいじり倒すのやめてくれよ~! 頼むからさ!」


 和やかな雰囲気になったのもつかの間、レグルスの表情が急に険しくなる。それを見た皆も緊張し始める。


「何かが近づいてくる。・・・これは竜か? 敵襲だ。」


 馬車を降りて外を見ると、遠くから何かが走って近づいてくる。地竜のようだ。3頭だ。獲物と思われたのかもしれない。


 一頭はカペラが風魔法で切り刻み、もう一頭はレグルスが顎にアッパーを決めて、そのまま即死したようだ。最後の一頭は、


「おうりゃぁぁあ!!!」


 ラルフがなんと縦に切り裂いた。普通は首を刎ねるとか、腹を切り裂くとかもっとやりようがったはずだが、まさかの左右に切り分けである。


「だぁ!!!」


 気のせいでもなく、ラルフの息が荒い。相当興奮しているようだ。・・・まあ、さっきのガス抜きにはなっただろう。


「なあ、これ雪竜だよな? グリバールにいたころ遭遇したヤツ。」


「確かにこれは雪竜だな。本来穏やかな性格だったはずだが・・・」


「とはいえ、雪原に居ればそういうこともあるしな。何も不思議なことではないな。」


 この時点で特に一行に被害が無かったためか、偶々野良竜に襲われたという認識しかなかったのであるが、この後一行に対する襲撃は、散発的に繰り返された。そして襲撃してきた魔獣は基本、毎回異なっていたのである。雪竜3頭の襲撃に初めてあってから4日目、既に襲撃は7回を数え、今もスノーエイプの群れ10頭を倒したところである。


「流石に多いな。どうなってるんだ? ここはいったい・・・」


「エルフィン王国はその気候から、ある程度の大型動物はいるものの、他の地域に比べてその数は少ないはずだ。とりわけ、魔獣はここの寒さから多くは生存できず、一部環境に適応した種も、食料となる大型生物の数が少ないこともあり、少なくとも旅路の最中に再三にわたって襲撃を受けるほど多くはいないはずだ。」


 ラークの問いに、パーティ随一の蘊蓄(うんちく)を持つレグルスが答える。


「深夜寝静まったころに、スノータイガーも来たわよね。・・・あれはよく撃退できたと思うわね。」


 今のはカペラであるが、その時はレグルスが気配を察知して飛び起きたため、倒すことに成功している。ちなみにその時の他のメンバーは熟睡中であった。馬車の馬も含めてよく無事だったと今になって思う。


「レグ、やっぱりあの時は偶然起きられたの?」


「・・・そんなわけないだろ? こんな大自然の真ん中でキャンプ張ってるんだ。寝る前に探索魔法発動して、何か来たら信号が俺に来るようにしている。お陰でここ数日何度も起こされてるよ。」


 今質問したエストだけでなく、他の者も偶々起きられただけだと思われていたようだ。苦労のかいもないと心の中で思ったが口にはしないでおくレグルスである。


「しかし、エルフィナにはまだつかないかな?」


「そろそろ針葉樹が増えてきただろ? 王都エルフィナは森の中にあると聞く。あと2、3日もすれば着くはずだよ。」


 アレクの問いにこれもレグルスが答える。エルフィン王国は存在は知られてはいるものの、ユグドラル大陸とレムリア大陸の各国は距離的な問題で、積極的なやり取りはしていない。旧アースガルド帝国はその国家の在り方的な問題で国交自体開いていなかった。寧ろ険悪な状態だったと言っていいだろう。魔王国アガルダは論外である。


 そのため、本来知っていそうな王族の3人もまともな知識はほぼ無い。レグルスも本を読んだ知識しかないのであるが、他の面々よりはよく知っていることになる。とはいえ、多くの文献を通して、世界の地誌にも精通しているため、お前住んでたのかよ!と突っ込まれるくらいは知っていたりするのであるが。


「ちなみに住民のエルフの方々は、他国に人間に対してはどうなんですの?」


 ミリアムが我々に対して友好的なのかどうか知りたくなったらしい。


「人間との友好には消極的であるが、それでも訪れた人に対しては親切だと聞く。ただし自然を破壊する行為をしなければだけど。」


 そういう意味でもアースガルドの人間とは相性が悪かったのだろう。ただ、今回の襲撃の多さから、ここの環境に何かしらの変化があったのは確実である。それを現地の住民であるエルフたちに聞いてみたく、旅路を急ぐ一行であった。

次回は5/23更新です。

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