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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第8章 ガイン島の火竜
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唐辛子と火竜

1734年 5/8


 レグルス達は火竜の記憶を呼び戻すため、特別な唐辛子を探しに、アースガルド大陸の南東部のジャングルに来ている。案内役として人間形態の風龍様も同行している。


「本当はここに来る前に近くの村で聞き込みをしたかったんだけどねぇ・・・」


 風龍も自分が過去にやったこととはいえ、数百年も前のことである。ジャングルに詳しそうな者に、今はどの辺にあるのか聞いておきたかったようであるが、そもそもその村に入ることが出来なかったのである。


「まさか、こんなところまで魔王国アガルダの支配が進んでるとは思わなかったよ。」


 実は、目的の村の入り口にはリザードマンの門兵が立っていたのである。・・・本来ここにいるのは帝国兵である。それならば、ただの冒険者を装って村に入ることも可能であった。が、魔獣であるリザードマンが警備に当たっているということは、魔王国アガルダが管理し始めたということを意味する。皇帝が殺害されてからまだ一週間程しかたっていないのに、どちらかというと何もないこんな辺境にまで兵を挿げ替えていることに驚きを隠せなかったわけである。


 そんな訳で、風龍の過去の記憶を頼りにジャングルを探索しているわけである。ここに来てから既に1時間程歩きまわっているが、今のところ発見できてはいない。


「・・・あたしの記憶ではこっちだったような気がするんだけどなぁ・・・」


 風龍の案内されるがままに歩き回っているが、通常の品種をいくつか見つけることが出来たが、肝心の特別品種はまだ探せてはいない。


「あるのは木と草と虫ばっか。・・・もう街で適当なの買うってことで良くないか?」


 ラルフが疲れたというよりは飽きてきたのか、こんなことを言い出している。


「俺達にはそれがどんな特徴を持ってるかも知らないからな。せめてどんなのかが分かれば探しようもあるんだが・・・」


 レグルスが言うように、風龍を除いてはただ歩いているだけになっている。実がなっていればそれが唐辛子だとは分かるがそれが特別かどうかなど分かるはずもない。


「・・・確か名前は何て言ったっけな・・・そうだ、当時、現地の人にすっごい辛い物ないか?って聞いたとき、それ教えてもらったんだけど、・・・確か【竜の息】とか呼んでたっけな?」


 料理好きのレグルスではあったが、唐辛子の細かい品種まではさすがに知らなかった。これでも熱帯ののシュネー村で育ったレグルスであるが、竜の息とか聞いたことも無い。


「パッと見はね、野イチゴっぽい形をしていたんだよね、確か。色も赤かったよ?」


 少しだけイメージがわいたが、何かフワッとした説明だ。


「だいたい、唐辛子なんて赤いでしょ? 色のこととか言われたってピンとないわよ。」


「エスト、実はそうでもないんだ。黄色や緑の唐辛子とかも実は存在するし。ピーマンや獅子唐も実は唐辛子の仲間になるしな。」


「・・・へ~・・・」


 レグルスがフォローになってるのかよく分からないコメントをしたが、だからといって探す手掛かりにはなりそうもない。そのためか、気化されたエストの反応が冷たい。


「・・・じゃ、イメージを渡せばもう少し探せるかな?・・・あたしの頭の中のイメージを渡すから全員目をつぶってもらえる?」


 言われるがままに目を閉じると、その直後竜の息と思しき映像が頭の中に入ってきた。・・・確かにこれで分かったが、この実は今まで見ていないと確信できる。結局、状況は変わりないと皆がそう思ったとき、


「これなら、俺さっきから何個か見てるよ?」


「・・・「「!!!!!」」・・・」


 アレクが見つけていたらしい。早く言えって。・・・そうか、これがそうとは分からなかったからか。・・・ということで、見つけたものを取ってきてもらうことにしたが、そこから20分程待って、


「取って来たよ。」


 見ると確かにイメージ通りの丸っこい唐辛子が5個、手のひらに乗っていた。


「うんうん、それそれ! やるじゃん! これをそうだね、・・・合計100個取ろうか。」


「ちょ?!」


 カペラが思わず声を上げたが、確かに、ここまで苦労して5個なのに合計100個とかちょっと無理だろう。・・・いや待て、現物まで目にしたんだから、サーチの魔法で探せないか?


 レグルスはそう思うと、さっそく実行。・・・するとあるわあるわ。今まで探せなかっただけだというのがよく分かる。・・・見つかったので早速拾いに行くレグルス。30分程で目的の100個以上を集めることが出来た。


「よし、それじゃガイン火山に戻るぞ!」


 レグルスが早速転移魔法を発動しようとするが、


「ねえ、ちょっと待って!」


 カペラが止めたが、何故?


「折角とったんだから味見してみない?」


 ミリアム、リーフ、エスト、アレクは少し嫌そうにしてたが、ラーク、ラルフそしてレグルスは乗り気だ。・・・とはいえ時間もないので、収納からフライパンを出し少量のオーク肉を乗せて、若干の塩と今の竜の息をすりつぶしたものをソース代わりに掛けていく。そして火魔法を使って炒めると、食欲をそそる匂いがするとともに、辛さに弱そうな4人が目や鼻が痛いと訴えだした。


「・・・ねぇ、それ本当に食べる気?」


 エストは信じられないというような視線を浴びせている。が、残った4名は好奇心を抑えられない。・・・風龍は何かを我慢しているようだが、・・・震えてるし。 で、結局焼きあがったオーク肉を4つに切り分けて、口に入れる4名。


「ぐおおおおっ・・・」


「辛っ!  ってか痛ぇ・・・何じゃこりゃ・・・」


「これは・・・いくら何でも辛すぎる・・・」


「・・・あうあう・・・」


 ラーク、ラルフ、レグルス、カペラがそろって悶絶する。そして、我慢の限界だったのか、ゲラゲラ笑い転げる風龍。食べなかった4名はしょうがない人を生暖かく見る目になっている。


「あっははははっ・・・あの量の肉にあんなにかけて・・・そりゃそうなるって! ・・・はぁ苦し・・」


 結果が分かっていたのか、風龍の大爆笑がジャングルに寂しく響く。・・・ちくしょう。・・・少しゲンの気持ちも分かったかも?


「・・・悪い、いつまでもここにいるのもなんだから、アレク頼むわ。」


 自分で魔法を起動する気分でなくなったレグルスはそうアレクにお願いするのだった。




 ガイン火山に戻ってきたレグルス達は、香ばしく焼き上げた竜の息を巨大なおにぎりの中に仕込み持ってきている。・・・火竜はこちらをじっと見ている。警戒しているようだ。


「あたしの姿も見えてるってのに、アンタらと同じような反応ってことは、あたしのことも忘れてるねぇ、あれ。・・・今から少し怒らせて口を開かせるから、そしたらそれを口の中にぶち込むんだよ。」


 風龍の指示にうなずく一同。直後、火竜に向かって歩き出す風龍。ある程度接近したところで、風の刃を生み出し、火竜の背中を傷つける。これで風龍を敵と認識したようだ。テイルアタックで薙ぎ払おうとするが、それを宙に浮いて躱し、圧縮した空気を弾丸にして火竜の腹に当てる。


 今ので益々怒った火竜はブレスを吐きださんと大きな咢を開いた。その瞬間、レグルスは巨大おにぎりを火竜の口の中に放り込む。そして。吐き出す前に、風龍は火竜の鼻付近に踵落としをかまし、強制的に口を閉じさせる。・・・火竜は口の中のおにぎりを反射的に噛んでしまった。具として入っている竜の息の辛み成分が火竜の唾液に溶け出していく。


『・・・ガ!・・・何じゃこりゃ! 辛い辛い辛い! ワイが辛いもん苦手と知りながらまたこんなもん放り込んでからに。・・・ええ加減にせんとワイも怒るで風龍!』


「・・・やっと思い出せたかい。やれやれ苦労させられたよ・・・」


『ああ、そういえば変な悪魔の兄ちゃんがこっちに来てから、その後が思い出せへんわ。』


 そのセリフを聞いて、レグルス以下全員でハイタッチしあう。火竜は本当の意味で正気を取り戻したようだ。そう思っていると、火竜は見た目がチャラい若い男の姿になった。人間形態である。


「いやあ、勇者とその後一行には迷惑をかけたみたいやな。」


 少し申し訳なさそうにしている火竜。横で風龍が肘で小突いている。・・・仲いいなこの二人。


「あんたってば、辛いの本当に苦手よね。」


「だからって、あれは無いやろ! あれ、竜の息やろ? この世界で一番辛い奴やって後で聞いたで!」


「昔あんた、野イチゴだって騙したら、ホントにそのまま食べるんだもの。普通匂いで分かるよね。」


「・・・性格悪いのは相変わらずやな。・・・それと懐かしい気配がすると思ったら・・・」


『やっほ~、元気だったかいな。・・・今はゲンジって名前もろうたから、ゲンってよんでな?』


「了解や。今の持ち主との中も良好みたいやな・・・」

 

 この2人?は本当に仲がいいのか、しばらく周りそっちのけで冗談を言い合っていた。途中風龍が間に割り込んで、ゲンと軽く言い合いになったり、外から見てる分には楽しそうに見えたが、


「・・・ああ、ワイたちばかり話しててすまんな。ただでさえワイが正気に戻るまで迷惑かけてたのにな。堪忍やで。・・・で、アンさん達の要件は分かってるで。・・・勇者御一行さんが来たちゅうことは、封印の儀式やな? ええで、そこの嬢ちゃん、火精霊のペンダント掛けててな? ほないくで!・・・・・おっし、完了や!」

 

 火竜が持つ魔力が、火精霊のペンダントを通して増幅されリーフに注がれると、それがそのまま体の中に吸収されていった。今回は精霊のペンダント等、既に必要なものはそろっていたこともあり、儀式そのものは極あっさり終了した。拍子抜けするほどである。


「確か、リーフっていったっけな? これで4つ目なんやろ? 何か変わった感じするか?」


「何となくですが、火魔法のイメージがしやすくなった気がします。それ以外では大きな変化は今のところ分からないですが。」


「まあ、そんなもんかもしれんな。で、次はどこ行くん? やっぱり次は闇竜のところか?」


 今いるキルナ諸島から南下していけば、スヴァール大陸に行きつく。そこの北部にあるミーミル湖の底地下深くに闇竜はいるという。確かにそこに向かう予定であると話す。


「ちょっと怖いですが、避けては通れませんものね。どうやったら行けるのかもわかりませんが。」


 ミリアムはこう言うが、やはり闇と名がつくからには、人間には恐ろしいと感じてしまう。実際どういう竜かもわからないが、邪悪ではないにしろ、闇という言葉のイメージが先に来てしまう。


「・・・怖い言うたか? 今。」


「? はい、言いましたけど。」


 ミリアムだけでなく問いかけの意味が皆つかめていない。


「あの子の名誉のために言うとくが、ワイらの中で一番若いのもあの子だし、性格いいで? まあ、合ってみればわかるけどな。」


「確かにそうね。あたしとしてはあの子ばかりちやほやされるから、面白くない気もするけど、まあ、いい子よ。」


「風龍の場合は、サドっけのある性格がすべての原因やねん。まあ、若くてかわいいねぇちゃんってのもあるけどな。って痛いっちゅうねん!」


 火竜が風龍に抓られてたが、闇竜が名前のイメージとは違う性格なのは理解できた。ついでに行き方も聞いてみる。


「せやね。ミーミル湖の北の方に地下に通ずる入り口があったはずや。過去に色々あったせいか、今はそこにある国のエルフィン王国で管理してるはずやったな。」


「それいつの情報よ? 700年前じゃないの?・・・とはいっても、そこの国の住民であるエルフは長命の種族だから、ルールは変わっていないとは思うけど?」


「・・・ほなら、ツッコミいらないやん! あ! そうそう・・・」


 こんどはどうした?


「向こうはこれから冬やから、道中気をつけてな? あそこは特に寒いで。」


 まだ5月だが、ここは南半球。もう冬が間近である。しかもエルフィン王国は冷帯から寒帯に位置する極寒の国である。ちょっと気が重くなった一行であった。





 



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