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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第8章 ガイン島の火竜
58/102

ラーヴァナ

1734年 5/3


 アースガルドの帝城、皇帝の間にて、ゲルザードの右腕にして悪魔族の首領であるマルローが、直属の部下の一人であるラーヴァナを呼び寄せていた。


「ラーヴァナ。わざわざ呼び出して申し訳ありませんが、貴方に任務があるのですよ。」


「分かった。要件を言え。」


「勇者一行が恐らくだがガイン火山に向かっているらしいです。奴らは、封印の力を得るために既に氷・光・風について精霊竜の儀式を終了させています。残るは火・土・闇ですが、ここから最も近くに居るのは、ガイン火山にいる火竜です。ゲルザード様の過去に掛けられた封印が解けるのはあと数カ月ほどというところまで来ています。このまま順調にいけば、ゲルザード様の封印が完全に解ける前に、連中が力を得てしまい、多少の脅威になる可能性があります。そこで・・・」


「勇者一行の抹殺だな?」


「フフ、・・・そうではないのですよ。いや、それが可能なら手っ取り早いんですが、あのパーティにはレグルスという強者がいます。この私が警戒するほどのね。そう簡単にはいかないと思いますよ?」


「そんな人間がいるとは思えんが、・・・では、俺は何を?」


「貴方は、純粋な戦闘力が十分にあるのは勿論ですが、我々の中でも随一の魔力の持ち主ですね。そこで、その魔力を用いて、火竜の理性を奪ってください。」



「? そんなことでいいのか? 勿論引き受けるが・・・」


「火竜も精霊竜。つまりはゲルザード様と同格の存在。正気を無くさせるとは言っても、接近せずにそれをするのは無理です。つまりは火竜の攻撃を受けても耐えられる存在でなければ。」


「・・・それで、俺って訳か。話は分かったぜ。火竜を狂わせたらどうするんだ?」


「・・・そうですね。適当に近場の島にでも潜伏しててください。あまり遠くに行くと術の効力が無くなってしまいますから。ウランガ島かサイード島か・・・」


「そうだな、ではサイード島にでも滞在することとしよう。」


「そうそう、後で勇者一行が追いかけてくる可能性があります。ですので、精々見つからないように隠れていることをお勧めしますよ。絶対に勝てる確信があれば話は変わってきますが・・・」


「ほほう。つまりは殺せるなら殺しても構わないってことかい?」


「フフ、そういうことになります。でもくれぐれも気を付けてくださいね。彼ら本気で強いですから。」


「ああ、無理はしない。では、早速行くとしよう。」


 そう言うや否や、ガイン島に転移したラーヴァナ。その様子を見ていたフレイアは不安げに言う。


「彼は大丈夫でしょうか? 何か必要以上に人間を舐めているように見えましたが?」


「実際にそうでしょうとも。それでも、火竜の暴走化を失敗するとは思っていませんけどね。ただ、あの様子では、勇者一行と相対するのは避けられそうにもありませんね。・・・フレイア、もしもの時のために、ラーヴァナと彼らとの戦闘のデータを取り忘れないように、彼の監視は頼みますよ。」


「ラーヴァナを捨て石にするおつもりですか?」


「・・・私はこれでも直接相対しないように止めましたよ。それでもやりたいのであれば止めはしません。万が一無駄にならないよう戦闘データは取らせてもらいますが。」


「もし、我々にとって悪い方向に予想通りだった場合、彼らの足止めなど殆ど出来ていないことになってしまいますが・・・」


「フフ。別に構いませんよ。仮に火竜と闇竜の儀式が順調に行ったとしても、土竜のところでとん挫するのが目に見えてますから。」


「そういえばそうでしたね。土竜はもう・・・・・でしたね。」


「そういうことです。そこでもたもたしている間に、ゲルザード様が完全復活されるはずですから。そうすれば今までのんびりやっていた世界の侵略も一気に加速するでしょう。あのお方の召喚も可能になるでしょうし・・・」




同日


「畜生! 馬鹿にしやがって!」


 ラーヴァナは転移先のガイン島にて荒れ狂っていた。


「俺が人間ごときに負ける? ふざけるな! 俺が悪魔界随一の力を持っていることは分かっているだろう?・・・まあ、いい。結果で見返してやる。とりあえずは火竜だ。」

 ・

 ・

 ・

 怒りを抑えきれないまま、ガイン島の上空を飛翔し、火竜のいる洞窟の入り口で着陸し中を進み始めると、そこには火竜が竜形態のままそこにいた。


『あんさんだれや? ただならぬ気配を垂れ流しておってからに・・・ワイに何の用や?って聞くまでもないか。』


「よく分かってるじゃねぇか。」


『ほな、ちょっくら待って~な。』


 そう言って、さらに奥の方に行き、巨大な座布団を2枚持ってくる火竜。


「?」


『小話聞きに来たんやろ? ワイも丁度退屈してたところや。 結構いいネタ貯めこんでいるさかいに。・・・』


「何でやねん! 俺は落語聞きに来たんじゃねぇ! ってか、何で俺用の座布団、そんなデカいんだよ!」


『中々ええツッコミやないかい? でもちゃんとわかってるで、アンさんの目的は。ワイが邪魔なんやろ?』


 そう言うや否や、座布団に息を吹きかける。・・・火炎の。そして燃え上がる座布団。


「あっちぃ!・・・って何しやがる!」


 全身炎に包まれたラーヴァナであるが、気合で炎を消し飛ばす。その間火竜は笑い転げていた。ラーヴァナの怒りゲージは一瞬で満タンになった。


 火竜はこの間も冷静だった。この悪魔を小馬鹿にしながらも、怒らせて冷静に戦闘させない作戦だったのだ。が、飛龍は一つ判断を誤っていた。この悪魔は自分を殺しに来ていて、その性格から直線的に攻撃をしてくると。そのため、攻撃魔法や物理攻撃に対するレジストの用意はしていたが、精神に対する攻撃に関してはノーマークだったのである。ラーヴァナが目の前で形成させている巨大な氷の塊に気を取られて、自らの足元に作られていた魔法陣には気が付かなかったのである。


「これでも喰らえ!」


 真っすぐ飛んできた氷塊を右手で、笑止とばかりに砕く火竜であったが、氷塊が砕け散るのと足元の魔法陣が発動するのは同時だった。


『ああ、こりゃ、アンさんの勝ちやな。しくったわ。ちょっと耐えられそうにないわ。・・・アカン。』


 そう火竜が言うと、そのまま本来の意識を手放してしまった。後に残ったのは、理性を失った、ただの竜であった。


「なんとか成功したようだな。・・・あのままガチで戦って見たくもあったが、命令ではどうもならんな。それよりも・・・」


 ラーヴァナが気になったのは、この後火竜の様子を見て自分を追ってくるであろう勇者一行のことである。その中には、自分の直接の主であるマルローも一目置くような存在も混じっているようであり、手は出すなとのことだったが、確実に葬れるならそれでも構わないとのことだった。それならば・・・


「殺るしかないよな、やっぱ。 警戒すべき者の名は聞いた。レグルスという格闘家らしいが、マルロー様からは飛竜等の魔獣の召喚の許可を貰っている。魔獣を使って仲間たちとはぐれさせ、うまく一人になるところを狙ってやれば、上位の悪魔の中でも強者である自分が人間にタイマンで負けるわけがない。そいつの首を取って、マルロー様に認めさせてやる。」


 そう独り言を言い、静かに闘志を燃やしつつ、サイード島に転移するのだった。





1734年 5/7


 サイード島はキルナ諸島の中では西に位置しており、そして諸島内では2番目に大きな島である。ガイン島のような無人島ではなく、コモドという大きな港町もある島である。島の大きさはガイン島の2倍ほどあり、コモドを中心に北西方向と東方向に陸地が伸びているような形の島である。レグルス達は船を使ってようやくそのコモドの街に着いたところである。当たり前であるが、観光に来たのではない。街を見て回ることなく、強力な魔物の気配を探す。すると、200㎞程先だろうか? 確かに竜種がメインだろうか?強力な魔獣が多数いるようだった。早速だが魔獣の気配がする方向に移動を始める一行。この島はコモドの街からそれぞれ北西方向と東方向に街道が通っているので馬車移動が可能である。というわけで、移動はガイン島程苦労はしなくて済みそうである。

 ・

 ・

 ・

 コモドの街を出てから3時間程経過した。順調に馬車は進んでいるが、魔獣の気配は思ったよりも早く近づいている。


「もしかしたら、向こうからこちらに来ているのかもしれない。・・・」


 レグルスの言葉に、嘘とは思わないまでも、すぐには信じられないものが数人出た。


「魔獣の気配を探知することに関してお前を上回るものがいないのは確かだが、連中は俺たちから隠れてないといけないんじゃないのか?」


 ラークの言い分である。実際、火竜を狂わせた者は、その状態を維持させようとするのならば、術者は隠れたままでいるのが得策である。わざわざ自分から出てくる必要はない。それに対しレグルスは、


「術者がいるとも限らないんじゃないか? 自分を残して俺たちをどうにかしようと思ったのかもしれない。」


「だとしたら、俺たちは随分舐められてるんだな? ということで、たぶん飛竜か? あれはどうする?」


 今の物言いから、ラルフはすぐに打って出たい心境のように聞こえる。こちらに近づいてくる魔獣は2000程か? ただし竜種が殆どだろう。 そしてかなりの速さで移動してきているようだ。 そう思っている間に飛竜の一団と思われる集団が空に見え始めた。・・・が、目前まで来たと思ったら、そのまま通り過ぎていった。


 しばし固まる一同。襲ってくると思ったのが素通りしていったのである。しばらく意味が分からなかったのだが、・・・


「もしかして、コモドの街を襲撃するつもりじゃないでしょうか? 飛んでいった方向はコモドの街方向でしたから、いずれにしても戻らないとまずいですよね?」


 リーフが言うのも尤もである。


「じゃ、アレク。すまないが全員を転移でコモドの街まで連れて戻ってくれないか? 街の防衛を頼む。」


 アレクはそのまま頷き、転移魔法の準備を始める。ここでエストが、


「レグはどうするの? 今、自分は行かないような言い回しだったから・・・」


 と言ってきたので、


「俺は予定通り術者を追う。この島に来て、あの術を掛けていた者の魔力波動がはっきり認識できているんだ。このままヤツの行方を追うよ。そして仕留めてくる。」


「お前に言うことじゃないが、気をつけろよ? 相手はもしかしたらお前とやっても自信があるのかもしれない。」


 レグルスは軽く手をあげると、フライの魔法で飛び去って行った。そして標的に近づきながら、隠しもしない魔力の波動から相手の強さを推し量り、警戒を強めるのだった。




 

次は5/15予定です。時間は遅くなるかもしれません。

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