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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第8章 ガイン島の火竜
56/102

ガイン島への船旅

新章です。

1734年 5/1


 アースガルド大陸の南部の海岸線付近は、年中高温多雨の気候で、少しでも奥地に行くと、熱帯雨林が広がっている。元々、山脈以南の地域は中央からの搾取の対象であったこともあり、大きな街自体が発達していない。そのため、長い海岸線の割には大きな港は少なめなのである。勿論、南部に帝国の港がいくつか大きい港があるのは確かではあるが、当然であるが多くが帝国の管理下にあった。民間人が自分で船を出したり、定期船が出ていたりするような港ではなく、ほぼ海軍専用といった感じであった。一部漁港のような港もあるにはあるが、外国に向けて船を出すような港町は無いのである。尤も、それは昨日までの話であり、帝国が魔王国の支配下に入ってしまった関係上、これらの港も魔王国側の管理下に移っていくだろう。とはいえ、こちらが自由に使える港が無いという点においては特に変わりがないのである。


 その南部海岸線のほぼ中央に位置するケルンという漁港がある。ごく小規模であるが、この周辺の海域で取れる海産物を取ることを生業としている村である。近郊には帝国が欲するような資源はなく、周囲が岩場に囲まれており、海からここに来た場合、この漁港の存在は目立ちやすかったりする。


 このケルンの村から東に3㎞程行ったところも岩場であり、およそ人など居そうもないように見えるが、密林の中の地面に、下向きの隠し扉があったりする。この扉は、見た目何でもない地面に見えるが、そばに何気なく置いてある、これも見た目ただの石に見える物が、認証された生命反応があった場合のみ反応する特別な感応石であったりする。これに、レグルス達の案内役として一緒に来ていたジョバンニが触れると、扉が横にスライドし地下へ向かう通路が出現する。


 通路をそのまま下っていくと、そこは岩場に隠された港だった。そこには大きさ30m程の船が3隻ほど停泊していた。見た目は周囲から見て怪しまれないように漁船ぽい雰囲気になっているが、船の内部には、寝室、調理場、手洗い、食堂、風呂場等、生活スペースがあり、長期の航海にも耐えられるようになっている。そして、この内1隻をレグルス達は使用しても構わないらしい。10名足らずの人間が乗るには十分な大きさだと言っていいだろう。


「ここのスペースは天然の洞窟なのか?」


「実はそうなんですよ。まあ、船を中まで入れられるよう大分改造はしましたが。」


「ちなみにここの存在は近郊のケルン村の人達は知っているのですか?」


「基本的には知りませんが、村長には話だけ通してあります。絶対に口外しないようにと。」


 レグルスとリーフの質問にそれぞれ答えていくジョバンニ。


「因みに、海から近づいた場合、魔法で迷彩がかかっていて、ただの岩肌にしか見えません。ここが港だとバレることはまずないでしょう。」


「流石、秘密の港。隠し方が徹底してるぜ。」


 ジョバンニの補足説明に、珍しく感心しているラルフ。この秘匿感がたまらないらしい。


「これまでの作戦へのご協力への感謝というわけでもないのですが、1か月分の水・食料も積載しています。皆様の旅の無事を祈っています。」


「感謝する。これからこの国は、魔王国の支配下に入り、より厳しい状況になることが予測されるが、何とか持ちこたえてくれ。」


「皆さんが光明を見出してくれるまで、何とか耐えて見せますよ。」


 ラークとジョバンニが最後のやり取り?をし、全員船に乗り込む。これから出航というところで、忘れてたとばかりに、ジョバンニがレグルスに何かが入っている袋を手渡される。何やら粉末が少量ずつ折りたたまれた紙に包まれた状態で、多数入っているようだが。


「?」


「これは、【酔い止め薬】ですよ。ライズが調合したものです。船酔いが酷いとお聞きしたものですから。何でも、水を使わず自分の唾液で飲めるものだそうで、必要時はそのまま口に入れて舐めればよいと申しておりました。また、追加で必要時は転移魔法ででも随時取りに来てくれればいくらでも渡すとも申しておりました。」


「!」


 船酔いの件が自由の御旗の面々にも知れ渡っていることに驚きを隠せないレグルス。すぐさま仲間の方を睨め付けると、エストとカペラがスッと視線をそらした。


「だって、・・・船で寝込んでいるレグルス可愛かったし・・・」


「あんな面白いもの、あたしに黙っていられるわけないでしょ? 男なんていじられてるうちが華よ。」


 エスト・・・男にとってかわいいは誉め言葉じゃないんだが・・・、それとカペラは後でしばく。 そうレグルスがムスッとしながら黙っていると、ミリアムからフォローが入る。


「でもよかったですわね。これで船旅が楽になりますわよ? 貴方にとっても私たちにとっても。」


「・・・まあな。・・・ライズには礼を言っていたと伝えてくれ。」


「はい、確かに伝えておきますね。・・・あ、そうそう、この船は重油を積んでいて、それを燃やして走行するのですが、もし燃料がなくなっても、操舵室にある感応石に魔力を込めればそれで走行が可能です。ただかなりの魔力を消費しますので、長期の航行の際はご注意ください。」


 とりあえず、礼を言うのは忘れないレグルスである。それにしても魔力で航行ができるのは大きい。レグルス一人で2万を超えるMPがあるため、かなりの距離を燃料なしで動かすことが可能であろう。寧ろ、基本魔力で動かして、緊急時だけ燃料での航行にした方がいいのかもしれない。試しに操舵室に行って、少しだけ魔力を込めてみると、・・・確かに少し動いた。・・・成程。


「ではそろそろ僕たちは行きます。有難うございました。」


 リーフがそう言うと、レグルスは再び魔力を込めて船を発進させる。・・・ジョバンニは、この隠された港を出るまで手を振ってくれた。そして、港を出てみると、確かに港だったところはただの岩肌にしか見えなかった。・・・ここをピンポイントで偶然たどり着くのは不可能であろう。この港の迷彩に関しては置いておくとして、高性能の船を貸してくれた自由の御旗に感謝する一行であった。




 アースガルド大陸を出てから3日、360度全方向大海原である。幸い嵐にも遭遇することなく、順調に航海を続けている。高性能の船であるためか速度も速く、あと2日程で予定のガイン島に到着する予定である。酔い止めの薬を頻繁に飲んでいるせいか、レグルスの体調はすこぶる良い。そのせいか、船にはしっかり魔力が伝わっており、余計に順調な航海となっている。


『レグ、塩梅よさそうやな。ライズの姉ちゃんのおかげやな。』


「・・・うるさいわ。ほっとけ。」


 操舵室にて、ゲンの物言いに悪態をつくレグルスである。


「そういえば、アースガルドでは殆ど発言してなかったけど、何か理由あるのか?」


『・・・ああ、そういやなんもしゃべってなかったわ。まあ、大した話じゃないやが。』


「・・・聞こう。」


『しゃあない。 せやな、まずワイな、自然が好きやねん。逆にな、石油いうたか? あれ使うもの全般苦手や。何つうか、匂いがな。こう好かんのや。ワイは魔法の炎では絶対に燃えへんけど、あれが燃えてるところにくべられたら流石にな。本能的なもんかもしれへん。・・・実は今も少し気分悪い。この船ちょっと積んでるやろ? 浜風に当たるから大分ましなんやが、それが一つ目や。』


「てことは、まだあると?」


『せや。ワイと風龍は犬猿の仲やねん。・・・ワイがまだ体がちゃんとあった頃からやな。だから全然口きかなかったというわけや。』


「・・・お、おう。そうか、それは大変だったんだな。」


『せやで。・・・だから偶には心ゆくまで歌わせてぇな。』


「それは無理。諦めれ。」


『なんでや! ええやん。』


「騒音公害だからヤメレ。マジうるさいし。」


『・・・・・』


「ん?・・・ああ、すまん少し言い過ぎたか? まあ、でもリサイタルだけは勘弁な?」


『・・・・・』


「おい! 何か言えや!」


『ちゃうねん。・・・分からへんか?・・・何か来るで。』


「!!!!!!!」


 どうやら馬鹿な話をゲンとしているうちに、何かの接近を許したようだ。ソレは海中を進んでいるようだ。慌てて操舵室を出て、甲板の上に出るレグルス。他の者達で気配に気が付いている者はいなかった。試しに少量の気を集めて、ソレがいるあたりに集めた気を放り投げてみる。


「ちょっと! いきなりどうしたのよ?」


 レグルスの突然の奇行に、エストに頭がおかしくなったと思われたらしい。他の面々も大体そんな感じでこちらを見ている。・・・そんな感じで注目を集めた直後、巨大な魚影?が跳ねた。大きさは・・・この船より一回り小さい位。およそ20mといったところか? 明らかに鮫だった。・・・メガロドンだ。ウルズ湖はこいつが生息しているせいで、湖の航行が不可能なのだ。それくらい危険な生物である。


「「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」


 やはり、みんな気が付いていなかったようだ。波はこれまで静かだったのだが、メガロドンが跳ねたためにその力で大きく船体が傾く程揺れている。それでも、いち早く現実に帰って来たリーフが魔法を唱える。


「サンダー!」


 基本の雷撃魔法であるが、以前のそれと比べ、大きく威力の上がったそれは、海中のメガロドンにダメージを与えるには十分のはずだ。案の定、ダメージを受けて驚いたメガロドンが会場に再びはねた。そこをすかさず、エストの火魔法とカペラの風魔法が追撃する。その直後、レグルスは、この間にしっかり貯めておいた気を掌から一気に放出すると、襲ってきたそれは10m程飛ばされつつ爆砕され消失した。遅れてやってきた衝撃波で、船が大きく揺れたのは言うまでもない。


「かぁ~! ビックリしたな! おい!」


「・・・まあ、いるよな。ウルズ湖みたいなところにもいるんだ。この大海原にいないわけがない。」


「でも珍しいはずだよ。あそこは閉じられたところで繁殖しちゃったから。でも海は広いから、余程運がよくないと出会えないはずだよ。」


「・・・怖かったですわ。」


 ラルフ、ラーク、アレク、ミリアムは口々にそう言う。


「・・・・・」


「どうしたの? レグ?」


「・・・もう無理。」


「え?・・・ちょ! 待って、ねえ、何か洗面器か何か・・・ああ、せめて海で、・・・あああ!!!」


「・・・・Δ§Ζ±ΠΦΨΦΔ§Θ¶δΘ・・・・」


 今の大きな船の揺れは、いくら船酔いの薬を飲んでいたとしても許容範囲を超えていたらしい。戦闘中は限界まで我慢していたためか、エストの必死の言葉での誘導も虚しく、その場でやらかしてしまったレグルスである。

 ・

 ・

 ・

 目的地のガイン島までは、大きな事件はこれだけであった。メガロドンとのエンカウント騒ぎ以外は、大変穏やかな船旅であった。










 



次は5/11予定です。

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