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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第7章 アースガルドの侵略と民衆の抵抗。
54/102

帝都ガルドへの襲撃

1734年 4/30


 ここ帝都ガルドに、自由の御旗の構成員が可能な限り集結していた。アースガルド全土から、総勢2000名強である。この集結した人員にて、帝都ガルドに駐留している防衛軍を強襲する計画である。帝都に駐留している兵は、凡そ5000人程と推測されている。今現在、他国からの襲撃を想定しているのであれば少ない兵数であるが、現在帝都は、戦争状態であるにもかかわらず、相手国のイース等の国から攻撃を受ける可能性が限りなく0に近い。その状態であることを考えると十分に過剰な戦力が駐留していると言えるだろう。


 それに対して、自由の御旗が用意できた2000と数が少ない上に、多少の戦闘訓練を受けているとはいえ、常に軍事訓練を受けているような帝国兵とは異なる、言ってしまえば素人集団である。簡易的な銃も所持はしているが、それは帝国兵も同様であり、戦力的には弱いと言わざるを得ない。しかしながら、今回集結した人員に要求されているのは、帝都の陥落ではない。帝城へ少しでも兵が向かわないようにするための攪乱、つまり、帝城強襲部隊のための囮の役割なのである。


 帝国軍の駐留施設は帝都の南端に位置している。結構な広さがあるようである。そして、帝国兵は敷地内を巡回している者、固定の場所にいて警備に当たっている者もいるが、大部分は詰め所などにいるのかもしれない。


 で、自由の御旗の急襲部隊は、帝都を囲む城壁の外側にある少し小高い丘から、駐留部隊の様子を観察して突入のタイミングを計っている。一応相手側からは死角になるような場所で待機している。当然一か所にこの人数は待機できないため、いくつものグループに分かれて待機している。


 この帝都駐留部隊の強襲組に、リーフ以下パーティメンバーも参加している。但し、レグルスは帝城強襲組に加わっているため、こちらにはいない。今のところ待機の指示が出ているため、全員大人しくしている。突入の合図は、軍の敷地内で爆発が起きたらということになっている。手榴弾を投げる役目の者がいるようだ。


 ・

 ・

 ・

 待つことしばし。誰かが手榴弾を投下。城壁が爆砕される。・・・これが引き金となり、突撃部隊が城壁の内側へと侵入する。勿論、リーフ達もそれに追随する。そして、内部に入ってみると、異常があったために兵士が既に集まってきていたのである。


「貴様ら何者だ!」


 帝国兵の一人がそう問うが、それに対して答えるものなどいない。こちら側から銃撃をしたことによって、戦闘が開始される。自由の御旗の面々は、うまいこと建物の陰に隠れながら銃撃戦をしている。


 ここで、暗雲が立ち込める。・・・比喩表現ではなく、実際にこの軍敷地内に分厚い雨雲が立ち込め始める。すると、帝国兵だけを選ぶかのように、次々に落雷していく。・・・これはリーフが放った雷魔法【招雷】である。この敷地内から次々に叫び声が上がる。時々建物にも落雷し、敵側にかなりの被害を出しているようだ。さらに、エストとカペラが組で行動し、次々に建物を炎上させている。エストが火魔法で燃やしたところを、カペラが風魔法で煽るのだ。火事はかなりの勢いで燃え広がっている。ラークはところどころに、魔法で銃弾除けの氷の壁を作成し、団員たちはその隙間から銃身を出して狙撃している。ミリアムは敵の銃弾を浴びて倒れてしまった味方を回復魔法で治癒させている。


 戦闘開始から10分程、大幅に相手の戦力が上であったにもかかわらず、こちらが優勢で事が運んでいる。この勢いなら、単なる攪乱ではなく、帝国軍を制圧してしまいそうである。が、ここで、想定外の事態が起こる。この場所に無数の魔物が出現してきたのである。恐らく転移魔法を仕込んでいたのであろう。出現した魔物達は一斉に襲撃メンバーを襲い始める。


「げ! 何だこいつ等? ひっ!・・・ぐあ。」


 魔物との戦闘になれていない構成員たちは、次々に魔物に倒されていく。弱めの魔物とは何とかやりあえているが、強大な魔物との戦闘では銃は意味をなさない。・・・事実、一人の団員が竜1頭に弾丸を打ち込んだが、頑強な鱗を破壊するには至らない。無傷である。それどころか、怒りをかったようで、直後、振り回した尾の直撃を喰らい吹っ飛ばされている。


 この団員は、たまたま居合わせたアレクによって救助され応急処置がされたが、竜クラスになると、一般的な人間では足止めもできない。が、この男は違った。ラルフがこの龍の下腹部にめがけて体当たりをかますと、バランスを崩してよろける竜。そこを剣で袈裟切りにすると、腹部を大きく切り裂かれたこの竜は絶命する。その直後、背後から数頭のオークがラルフを襲おうと近寄ってきていたが、すぐさま炎上することになる。エストが火魔法を放っていたのだ。


「サンキュー。・・・助かったぜ!」


「あんたもやるじゃない。・・・次来るよ!」


 10体程のオーガが現れた。人型の魔物であるが、戦闘力はオークと竜の間くらいか? 炎の攻撃にもめげず突っ込まれると前衛一人では少々厳しいが、


「ウインドカッター!」


 カペラの風魔法で、その半数程の首が切断された。残りはエストの火魔法で炎上させる。それでも残った1体はラルフが剣で左右に両断していた。


 他方では、飛龍3頭に襲われている地点があったが、そこにはラークが駆けつけていた。龍がブレスを吐く前に【氷雪吹雪】の魔法を唱える。変温動物の竜種にはこれが極めて効果的である。動きが著しく鈍った後はリーフが剣で切り裂いていく。このところ、ずっと剣の修行をし続けてきた成果が上がり始めているのか、続けて2頭の飛龍を仕留めることが出来た。そこで、残り1頭に反撃を受けるか? といったところで、いつの間にここまで移動してきたのか? 残った1頭の飛龍の首をアレクが切断する。 今回のアレクは、遊撃要因として、うまく立ち回っていたらしい。




 魔物の群れが現れてからも獅子奮迅の活躍を見せていた勇者一行であったが、それでも魔物の出現は想定外で、しかも対魔物戦では、他の自由の御旗のメンバーでは太刀打ちできない。念話を使って、今回の襲撃のリーダーのヴァンに伺いを立てる。元々、今回の襲撃は、帝城襲撃部隊のための攪乱が役目である。


『全員に伝達。一旦引く。転移を使えないものは、城壁を出た後、散開しながら逃亡。使えるものは、前もって指定していた場所へ転移して待機。』


 指示を受け、各自逃亡を図る構成員たち。勇者一行も転移で所定の場所にやって来ていた。ここは、帝都から南にある丘だ。先ほど突入の際にも一部の者が使用していたところだ。走ってここに来たわけではないので、すぐにはこの場は抑えられないだろう。そして、指示を出した本人であるヴァンも既に戻って来ていた。


「皆さん、ご苦労様でした。後で、自分の足で逃亡したものを確認しなければなりませんが、彼らのことは信じるしかありませんね。・・・とりあえず攪乱という点では、一応作戦成功の範疇ではないかと思います。」


「それはいいが、・・・あの魔物、あれは明らかに魔王軍が絡んでいるな。帝都襲撃は読まれていたということだな。」


 ヴァンの労いの言葉に、ラークが返す。すると、再びヴァンが、


「ですね。・・・ですが、あの魔物たち、様子が少し変じゃありませんか? 城壁の外に出た団員たちまでは追わないで、軍駐留敷地内だ待機しているように見えるんですが。」


 こう疑問を口にした。・・・確かに、ここからでも、飛龍が体を丸めながら、上空で待機しているのが確認できる。


「確かに妙だな。そのまま追ってきそうなものなのに、外に出たものに対しては無関心というか・・・」


 ラークの言葉に、ある団員が思った疑問を口にする。


「帝城襲撃組に備えているとか?」


「それは無いな。動きは読まれている可能性は否定できないが、だったら事前に配置しているだろう。今ので全戦力というわけでもあるまいし、態々、役目を終えた魔物を再派遣するようなことなどしないはずだ。」


「このまま、帝都をあの魔物たちが襲ったりとかしませんよね? 帝国軍の味方に付いてるわけですし。」


 念のための確認という感じで、別の団員が直感的な不安を口にする。まあ、魔物が宙に漂っているのだ。そういう不安を持っても無理はない。


「念のため様子を見よう。まさか、帝都をそのまま襲うということはないはずだが。・・・逆に考えれば、魔王軍に帝都を守る意味はあるのか? という話でもある。どさくさに紛れてアースガルドを我が物にしようと考えていると考えられなくもない。もし、そのまま街を襲うようなことになったら・・・」


「なったら、どうする?」


ヴァンが言葉を途中で止めたために、ラークが先を促す。


「俺は救援に向かおうと思う。勿論強制はできないが・・・」


「俺たちは従うぜ。リーフ、そしてみんなもそれでいいな?」


 ラークの物言いに反対するパーティメンバーははいなかった。


「協力感謝する。とりあえず待機で。何か動きがあったらその都度指示を出す。」


 その後、飛龍が宙に舞い続けるという、ここで生活している住民にとっては恐ろしすぎる光景がしばらく続くのだった。



 




  


キリがいいので、今回はここまでにします。次回は5/7に。

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