帝城襲撃計画
すみません。今回短めです。
1734年 4/29
レグルス達は一旦、アースガルド山脈のどこかにある自由の御旗の本拠地に転移で戻ってきていた。勿論、この組織がここアースガルドで帝国を打倒する手助けをするためだ。
実は、次の精霊竜の儀式を受けに、キルナ諸島のガイン火山かスヴァール大陸にあるミーミル湖に向かっても良かったのだが、ミズガルム等の件で、レグルス達や勇者リーフの存在が魔王国側に把握さ荒れてしまったことと、今回の作戦行動にてアースガルド側と完全に敵対してしまったことから、2方向から追われるのは厳しいと考えたためだ。可能なことなら、敵対組織は減らしておいた方がいい。そう考え、改めて今後の作戦に協力を申し出たのだ。ということで、現在は主要メンバーの参加する会議に出席させてもらっている。
「現在行われている、帝国とイースの戦争については、イースが行っているゲリラ戦法に帝国が付いていけず、占領した土地を奪還され続けている模様。加えて帝国側が大きなアドバンテージとして持っていた、爆撃機の存在も、ここにいる勇者一行の御助力で撃墜することに成功した。帝国側から見ると劣勢であると言えるだろう。そして、先日行った、油田地帯に行った攻撃も効いる。炎は結局、火元からパイプラインでつながるすべての拠点に燃え移り、ダメージは原油の精製工場にも及んだようだ。昨日の夜遅くまで鎮火にかかったそうだ。」
「元々、技術を学んでから3年程度。利点ばかりを追求し、原油精製に関する危険とか、事故や火災が起きた場合の対処とか、その辺は後回しなのよ。来た当初はあちら側だったけど、帝国の連中は科学技術の軍事利用ばかりに頭がいって、他の生活とか医療とか防犯とか、皆を幸福にしようという考えからはかけ離れていたのよ。そのツケが回ってきたのね。」
リーダーのロベルトの状況説明に当初は帝国への技術供与に携わっていたライズが補足する。
「南部の都市を中心に暴動も起きていますね。この国は、山脈以北の民が裕福になるように、山脈以南の民から搾取しているような国家体制ですから。」
ヴァンもこう言っているが、元々このアースガルドは山脈以北に起こった国であるが、南部には多種多様な民族が暮らしていた。そもそも、この大陸の北部は温帯、南部は熱帯である。人種も民族も宗教も異なっていたが、北部に起こった帝国が、それらの民族を征服し支配下に置いたのである。重税を課し、気候を生かした商品作物を強制的に栽培させ、被支配階級として差別してきた。不満がたまる土壌はもともと存在はしていたのであるが、ここにきて開戦した戦争が思うように言っていないのを見て立ち上がった者も多いのであろう。
「帝国は、各地で起きるようになった反乱に対しても労力を割かなければならなくなった。我々が行動を起こすにはこれ以上ない状況であると推測できるがどうだろうか?」
ロベルトの意見に反対意見は無かった。が、ジョバンニから懸念がでる。
「問題は何をするかですよね。手薄になっているとはいえ、帝都の防衛軍とガチンコで戦争をやる戦力はうちには無いです。これは勇者御一行を戦力に数えたとしてです。」
レグルス達には集団を殲滅する攻撃手段もあるが、重火器で武装している集団であるから、避けたいところではある。
「皇帝を少人数で襲撃するという手がありますよ。すでに、スパイは潜入させていて、警備の穴などは把握してはいます。それでも、かなり厳重に警備はされているので、失敗の可能性はありますが、皇帝までたどり着ける可能性はあります。」
「それは、わざと警備が薄いように見せて、襲撃者を誘き寄せ寄せる罠かもしれないな。ただ、それを言っていたら話が進まないのも確かだ。・・・どうだ? いっそこの線で行ってみないか?」
ヴァンの提案にロベルトが乗った格好になった。それであればと、もう一つの提案がジョバンニからされる。
「それをする際、帝都防衛軍も同時に襲撃しましょう。寧ろタイミング的には、そっちを先にして・・・。」
「で、それを囮にするのか。そっちに人を引き付けて、皇帝暗殺は少数精鋭で行うと。・・・よし。これで行こう。反対意見の者はいるか?」
異を唱えるものは出なかった。早速だが明日結構ということになった。勇者一行は、レグルスのみ皇帝暗殺組に参加。残りは帝都防衛軍の強襲に参加することになった。・・・この戦いに、ラーク、ミリアム、リーフの3人の王族が参加するのは問題があるのでは? という疑問を持つ者もいたが、アースガルド帝国が魔王国であるアガルダを国家として承認したことと、イザヴェル王国、グリバール王国ともに友好関係にあるイース帝国と開戦していることから、戦争開始当初から、アースガルド帝国には宣戦布告は済ませているらしい。これで会議は終了となった。
ちょうどその頃、アースガルド帝国皇帝テオドールは、届けられた報告を聞き荒れ狂っていた。
「ふざけやがって! 爆撃機が撃墜されただと! 何でこんなことになっている。」
「いえ、・・・その・・・生存者がいないものですから、何故打ち落とされてしまったのか、原因は全く分からないので・・・」
怒りのあまり、飲み物が入ったグラスを地面に叩きつけ、グラスの破片が飛び散る。
「皇帝陛下、怒りをお静め下さい。怒りは正しい判断をするのを妨げますがゆえに。」
軍務大臣スラの発言に、少しだけ冷静さを取り戻したテオドール。他の報告も聞く気になったようだ。
「続けて報告を申し上げます。イース領にて占領していた都市はその90%は奪還されています。空襲が不可能になったことを考えると撤退しかないかと考えます。」
「加えて報告します。先の油田地帯の火事がようやく鎮火いたしました。これにより、向こう1カ月は原油の採掘は出来ず、精製工場にも延焼したため、ガソリンや軽油、重油といった原油の蒸留が当面の間できません。普及の目途は立っておりません。」
続けて行われる報告に、ため息をつくテオドール。そして、呆れたように声を絞り出す。
「・・・この際だから、他に何か都合の悪いことがあったら申して見よ。」
ここで、誰も発言しないと思いきや、魔王国サイドのゲストである、マルローが発言をする。
「皇帝陛下は、もう聞いてると思いますが、国内では反乱が増加しているようですね。戦争もうまくいっていないのが知れ渡ると反乱数はもっと増えるかもしれません。でも、それよりも・・・」
ほんの少しだけ間をおいて続けて話す。
「反乱軍は、ここがチャンスと考えているでしょう。あなたを直接狙ってくる可能性が大です。警備網を確認させてもらいましたが・・・いくつか穴があるのを確認しましてね。」
「それを無くせばよいのだな?」
「少しお待ちください。・・・フフ、いっその事、これを機に反乱分子を一掃いたしましょう。皇帝の警備網はあえてそのままにしていただけますか? 足りないところには私の部下を配置しますので。確実に生け捕りにしましょう。捕まえさえすれば、直接思考を抜き取れますから、本拠地の場所も特定できますよ。・・・それと、我が配下の魔獣の軍団も呼び寄せます。帝都の防衛のためにね。」
あまりにも過剰な戦力補強に周囲は少なからず動揺が走る。
「同盟国の御配慮に感謝する。・・・がそこまでする必要はあるのか?」
「念のためですよ。もしも、襲撃に勇者一行が絡んだ場合、今のままでは厳しい可能性がありますし、こちらとしても、邪魔な彼らにはそろそろ消えてもらいたいと思っておりまして。本当なら私も参戦したいのですが、これでも多忙な身でしてね。そこはご容赦を。」
「・・・まあ、よい。・・・素直に協力は受けることにする。・・・よし、用のないものは下がれ。」
そこで、皇帝の間を次々に去る部下達。・・・そしてマルローだけが残った。
「・・・お前たちは何を狙っているのだ? 」
「先ほどお話しした通りですよ。貴国の御助力になればと。・・・それだけですよ。」
「・・・まあよい。お主も下がれ。」
「御意。」
そう言って、転移を使って消えていくマルローを眺め、言いようのない不安を考え始めるテオドールであった。
次回は、こちらの都合により5/5の更新とさせていただきます。お時間を頂く形になり申し訳ないですがよろしくお願いいたします。




