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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第7章 アースガルドの侵略と民衆の抵抗。
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風龍

 夜が明けた後、再び世界樹を登り始める一行。5000m地点の休憩所を出発してから、どれほど時間をかけただろうか。少なくとも正午は過ぎている。それだけ時間をかけて、現在は7000m地点にたどり着いている。まだまだ世界樹の幹は太いが、地上付近のそれと比較すると、目の前の壁面はだいぶ丸みが感じられるようになってきている。そして、この高さまで観光客が来ることはほぼ無いのである。で、実際この場にはレグルス達の他は誰もいない。通常は5000mの休憩所で折り返すのが普通である。空気が相当薄くなっているのもあるし、足場もこれまでのものよりも簡素になっていて危なかったりする。そして、その簡素な足場もここで途切れている。ここから先を目指すならば、枝や、樹壁に空いているくぼみを頼りに上るしかない。


 収納から、登山用ロープを取り出して、全員の体を固定する。それを確認した後、レグルスが樹壁面を登り始める。ところどころに空いている、樹壁の割れ目に指を掛けながら、器用にスルスルと登り始める。そのまま10m程登ったところで、かなり太い枝にしっかりロープをくくりつける。残りのメンバーはそのロープを頼りにほぼ垂直な樹壁面を登っていく。実のところ、レグルスは超人的な跳躍力で、枝から枝へとジャンプで登っていけるし、風魔法が得意なカペラや身軽な動きが身上のアレクと忍者のジャンヌも問題なく登ることが出来るが、それ以外のメンバーが無理だった。というわけで、一人の先導者を決めて確実にロープを使って登ることにしたのであるが、


「きっつ! はあ、やっとここまで来たか。」


 ラルフが、最初にロープを掛けた枝までたどり着いた。これで、全員が上り終えたわけだが、全員きつそうである。無理もない、高度を2000m分階段で登った上での、垂直な壁面のぼりである。自分の全体重を腕の力だけで支えているようなものである。もともと余裕がある4人を除いて腕がパンパンに張ってしまっている。ミリアムに至っては、力もない上に、自分で風魔法を使えるわけではないので、結局カペラの風魔法の補助を受けつつどうにかここまで登った感じである。


「なあ、レグルス。」


「ん?」


「これ、どこまで登ればいいんだ?」


「・・・分からん。」


 ラルフの問いに対して答えられないレグルスの返答を聞いて、元々登るのが余裕出ない面々ががっくりと肩を落とす。


「これ、あと1000mとか登るのはさすがに無理だわ。10mでこれだろ?」


 とラークが言うが、


「とはいえ、他のメンバーはまだしも、リーフだけはいかないとな。」


 レグルスはこう答える。しかしリーフが、


「・・・だとしても、もう少し待ってください。・・・流石に体力が・・・」


 いろいろ限界のようである。・・・いっその事、レグルスが一人で登って、風龍に迎えに来てもらうこととかできないだろうか? そう考えだしたところ、


『何だい何だい。雁首揃えてその体たらくは。・・・しょうがないから、あたしの魔法で運んでやるよ。少し位怖いのは我慢しなよ!っと。』


 突然、下からの突風によって、浮遊感にとらわれると、一気に上空に舞い上がった。


「のっわ!」


「きゃあ。」


「ひっ!」


 ラルフ、エスト、ミリアムがそろって悲鳴をあげる。・・・これまでは、微妙に木の葉などによって、地上が直では見えなかったのだが、上空に舞い上げられたことによって、視界が変わり、地上が丸見えになってしまったのだ。これは、高所恐怖症でなくてもいささか恐怖を感じてしまう。


 そして1分もしないうちに、世界樹の頂点が拝める高さまで来てしまった。何か堅いところに落とされた。・・・見ても特に何もあるようには見えないが、確かに何かに叩きつけられた。・・・あ、結界か。


「そういうことさね。良くここまで来たね。一応歓迎はさせてもらうよ。あたしは、風龍とか呼ばれている存在さね。よろしくな。」


 目の前にいる風龍は、既に人間形態に変わっていた。周囲を見渡すと、かなりの広さが歩けるように結界が張られているようだ。微かに光っているのが見える。ただ、基本透明なので、下を見ると下界が丸見えなのだが。ちなみに女性型をとってはいるが、風龍は果たして女性なのだろうか? 水龍のように心だけ女というケースもある。ちなみに、胸部からは性別が分からなかったが・・・


「ああ、レグルスっていったっけか? あたしは女だよ。水龍のような変態と一緒にしないでほしいね。まあ、それにあたし龍なんだし、この残念な胸見たっておもしろくもないだろう?」


 ・・・う~む。見てるのがあっさりばれてしまった。オカマではないと分かって安心はしたものの、俺は余計なリスクを抱えてしまったようだ。・・・さっきからエストをはじめとする女性陣の視線が痛い。


「まあいいさね。ところで、ゲルザードが暗躍し始めているのはこちらでも把握してるよ。勇者君も一緒にいるってことは、風の儀式を受けに来たんだろう? 都合よく風精霊のペンダントとその継承者も一緒にいるようだし、さっさとやっちゃうか。」


 早速念じ始めた風龍が、風の魔力を集め始める。それに呼応して、カペラが持つ風精霊のペンダントが輝き、風龍の魔力をさらに増幅し、それがリーフに注ぎ込まれる。リーフは緑色光に包まれて、儀式は終了する。・・・すると、リーフにこれまでになかった変化が現れる。


「・・・!・・・はっきりと何か力が流れ込んでくるのが分かります。・・・えい!」


 すると、我々の周囲にごく小規模の稲光が轟く。周囲にいた鳥たちが驚いて飛び立っていく。


「こら! 急にあんなの使ったら、あの子たちがびっくりするだろう! 自分の力くらい制御しな!」


「うっ、ごめんなさい。・・・どうしても試したくて・・・・。」


「まあ、いいさ。気持ちは分からんでもないしな。・・・で、どうだい?」


「はい! 雷の魔力が大幅に上がったのを感じます。 これで魔法で、少しは戦力になれる気がします。 有難うございます。」


「・・・まあ、アンタにはゲルザードの駄龍を止めてもらわなければならんからね。しっかり頼むよ。」


 確かに、リーフから感じる魔力の波動が変わった。さっきの雷魔法もかなり加減したんだろう。やはり、氷の魔力に加えて、風の魔力も増強されたのが大きいのではないだろうか?・・・っと、ここで、ジャンヌがしようと思っていた相談を持ち掛ける。


「風龍様。我々イースの民は、ここアースガルドによる空からの攻撃によって苦しんでおります。風と大空を司る貴方様ならば、何か良い知恵を授けてくれると思いまして、ここまで参上いたしました。」


「ふむ。・・・何をアイツらがしているかはあたしも把握しているよ。確かに一方的に空から爆発物を落とすのは一方的で卑怯だとは思う。・・・そうだね、風魔法が使える前提でだけど、飛行魔法なら教えてあげられるよ?」


 すると風龍は思念を使い、直接脳に風魔法【フライ】を使用時の風の魔力の使い方を伝えてくれた。・・・これで、風魔法が使用可能な、レグルス、エスト、リーフ、カペラの4名に加え、忍者のジャンヌや自由の御旗のメンバーであるライズとジョバンニにも適性があったようだ。

 

「言っておくけど、この魔法は空飛ぶだけだし、かなり魔力消費するからね。ここから飛んでいったら海に落ちるよ。あと、飛んでから別手段で攻撃できないと意味ないからね。」


「風龍よ感謝します。忍者部隊の中には風魔法が得意な者も多いです。これで逆襲が出来ます。」


 ジャンヌが感謝を述べると、早速イースに戻って、そっちの対応を考えることにする。


「それじゃ頑張んなよ。あたしが直接戦うわけにもいかないしさ。」


「それでは、皆さんはイースに戻られのですね?」


「ああ、向こうの爆撃機を何とかしてから、自由の御旗の者に戻るよ。こっちもこのままではまずいしな。」


「・・・そうですか。それでは、帰還をお待ちしております。私たちは先に戻りますよ、ジョバンニ。」


「はい。それでは皆さん。お先に失礼します。」


 そういって、ライズとジョバンニは転移魔法で彼らの本拠地へ戻っていった。俺たちも早速戻ることにする。


「では、俺たちもそろそろ行くな。」


「またいつでも遊びにいらっしゃい。」


「ああ、またな!」


 そういって転移魔法を起動したレグルス。向かう先はイースの帝都イストだ。今残っているメンバーは全員転移していなくなる。


『さあ、この後どうなるかね。この後も都合よく精霊のペンダントやその所有者に巡り合えればいいけど。』


 そんなことを考えながら、転移していくのを見送るのであった。





1734年 4/28 帝都イスカにて


「それは誠か!」


 現在、ジャンヌとレグルス一行は、将軍ゲオルグと面会し、アースガルドでの一件を報告していたところである。


「しかし、直接イメージを伝えられたお主は良いとして、他のものに習得させようにも時間がかかるな。」


 確かに尤もであるが、ここで今回限りであるが、レグルス達も作戦に協力することを伝える。


「他国の者に頼るのは誠に心苦しいが、ここはあえてお願いをする。・・・どうか頼みます。そして、くれぐれも無理は為されませんよう・・・。」




 同日、事前にこれまでの爆撃から次はどのあたりか予想していた一行は、まんまと爆撃機が通過するであろう地点に転移していた。そこで、レグルス、エスト、リーフ、カペラ、ジャンヌの5名がフライの魔法で飛び立つ。少しすると、帝国爆撃機が飛んできたようだ。・・・そこへリーフが現時点で使える極大の雷魔法を落とす。


「ライトニング!」


 そう叫ぶと、3機の爆撃機を稲光が襲う。これで電気系統に異常が生じたはずだ。そこをレグルスの生気収束波が襲うと、空中で木っ端みじんになる爆撃機。離れたところを飛んでいた爆撃機も、カペラの風魔法であおられたエストのファイアボールが襲うと、たちまち炎上する。燃料として積んでいるはずのガソリンという石油から精製した燃料は爆発性はとても高いらしい。もともと爆弾を積んでいたこの機体は間もなく爆発することになる。そして残りの一機も、ジャンヌがそのまま乗り込み・・・蹂躙しているようだ。しばらくして高度を下げていく爆撃機。・・・そして墜落した。その直前には、ジャンヌも戻ってきていた。これで、しばらくの間は、イースへの空爆はできないであろう。


 地上に降りてきたレグルス達は、ラルフら他のメンバーに迎えられる。


「これから、どうする?」


 ラークはそう問うが、ライズ達にも予告した通り、


「もう一度アースガルドへ。魔王軍と繋がる帝国ときっちけりを付ける。」


 レグルスの答えに反対意見は無かった。・・・そして一行は、ジャンヌをその場に残し、自由の御旗の本拠地に転移していく。それをジャンヌは見送るのだった。


 

次は令和元年の初日を予定しています。

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