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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第7章 アースガルドの侵略と民衆の抵抗。
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状況確認と作戦立案。

 謎の男女2人組に拘束される中、レグルスは妙に冷静だった。未知の武器を突き付けられている状況なのではあるが、受けている拘束も決して強いものではなく、レグルスの力なら容易に引きちぎれる感じである。それをしないのは、相手に殺気がないためである。そもそも、ここにピンポイントで現れたということは、こちらが勇者一行であることも、武器の突き付けた先がリーフであることから、その勇者がリーフであることも知っているのだろう。ということは、ここまで大暴れしてきたレグルスの実力も、ある程度は把握しているはずであり、この程度の拘束でどうにかできるとは思っていないはずである。


 そして、こちらが彼らにとっての敵であるならば、拘束などするまでもなく、この場で殺害すればいいだけである。あえて拘束したうえで、どこかに連れて行こうとしているのは、何かしらの交渉の余地があるということであると考えた。


 そのようなことを考えているうちに、転移魔法が発動したようだ。 ゲートをくぐると、その先は薄暗い洞窟の内部だった。だが、そこは明かりが灯され、家具なども置かれており、生活感がある空間になっている。・・・とここで、レグルス達にされている拘束がとかれた。 そして、今いる部屋に2人の人物が中に入ってくる。


「どういうことか説明してもらえますか?」


 少し怒気を孕んだ声で、拘束が解けた腕を組みながら、ラークが質問する。


「そもそも、ここはどこなんですの? そしてあなたたちは?」


 ミリアムも不安げに質問する。この二人でなくても、いきなり拘束され、見知らぬ土地に連れてこられたのだ。一様に不安な表情を見せている。


「まず、この場所だが、アースガルド山脈の中腹にある洞窟で、我々自由の御旗の活動拠点となっている場所だよ。 で、俺はこの組織のリーダーであるロベルトだ。俺の横にいるのがヴァン。お前たちを連れてきたのが、ライズとジョバンニだ。」


 予期せずにいきなりアースガルド大陸に足を踏み入れたことには、素直に驚いた。何せ、マドラ港を出港すれば、この大陸に到着するのに数週間はかかるのだ。そういう意味ではラッキーだったという他はない。


「私たちをここに連れてきた目的は何ですか? 答えてください。」


 こう話したのは、女忍者のジャンヌだ。彼女としては、極秘裏に行動していたはずなのに、その行動が読まれており、自分も含めてここまで連れてこられたのだ。はっきり言って失態だと思っているだろう。声色から怒気を含んでいるのが分かるが、それは彼らに対してなのか、自分自身へなのか、その両方か。


「まずは、このような強引な方法でこちらに連行させたことを謝罪する。こういう形を取ったのは、情報の攪乱のためだ。」


「攪乱?」 レグルスは聞き返す。


「あなたたちは、魔王軍、いえ、今やアガルダ帝国か。そこと、アースガルド帝国の両国より監視されている可能性がありました。あそこの場、マドラ港で友好的に連れ去ったのであれば、容易に我が組織、自由の御旗の関与を疑われたでしょう。ここアースガルドでの警戒が強くなるのは想像に難しくありません。」


「俺たちと敵対すれば、自分たちだと疑われないと? お前たちは俺たちの味方だと言いたいのか?」


 ラークは冷静に問いただす。


「君らにとって、アガルダやアースガルドは敵国で間違いないな。我々もそれは同じだ。だからといって、我々が君らと味方同士であると断定はできないのだが、敵国側はそうは思わないだろう。話を進める関係上、その前提で一旦続ける。」


 ロベルトはこのように話す。それを聞いて、俺たちは一旦矛を収めることにした。


「さて、我々の目的だが、ここアースガルドにて、帝国政府を打倒することが最終目標である。イースと戦争を行っている最中が、そして国力を分散させている今がチャンスと考えている。我々がそちらへ望むのは、我が組織への協力。それに対する対価は、君らが必要としているであろう、敵国の情報だ。アガルダ側の情報、つまり魔王側の情報も掴んでいる。ついでに言うならエッダ島の世界樹に関しても詳しく知っているつもりだ。」


「続けてください。僕らにとって避けられない話だと思いますので。」


 リーフがそう答える。他のメンバーに異論はないようだ。ジャンヌだけは釈然としない様子がうかがえるが、我慢はしているようだ。その後、聞かされた情報はこうだ。


 1.アースガルドとアガルダは同盟関係にある。アースガルド帝国の軍備拡張は、アガルダが持つ異世界の科学という理論体系に基づいて行われたものであり、空飛ぶ金属の塊は、飛行機と呼ぶらしい。それが落としてくる爆発物は、この国アースガルドで採取できる石油から分離したものに、硝石を作用させるとできるものらしいが、その硝石は、実は空気からも生産が可能であるらしい。 石油を精製したもので、飛行機とやらを飛ばし、それに大量の爆弾を積み込んで落としたということであった。 他にも機関銃や手榴弾といった武器がアースガルドに齎されたということ。


 2.現状で地上から、空を飛ぶ爆撃機を打ち落とす手段は存在しないこと。但し、空を飛ぶことが出来る強力な火力があればそれは可能であるということ。


 3.エッダ島にある世界樹に住むといわれる風龍ならば、空を飛ぶことに関して何かのヒントを持っているかもしれないこと。

 

 4.この自由の御旗という組織は、今のところ、散発的な軍施設への破壊活動等しか行ってはいないが、この国の多くの国民からの搾取で成り立つこの国の支配体制を打倒しようとしていること。


 5.現在の仲間の一人であるライズも、元々は異世界転移組。つまり、魔王側の人間であった。ところが、そのリーダーであり、この世界の人間からは魔王と呼ばれているヴィトが理性を失った存在となったこと。そしてこの世界に来てからヴィトの元に付いていたニーズヘッグという名の龍が実権を握りだし周囲を従えだしたことに不信感を覚えていたところ、向こうがそのことを察知し、事実上の厄介払いでアースガルドに技術供与の人員として派遣されたこと。そこから先の経緯は省くが、元々この世界を犠牲にしようとしていたヴィトの方針には反対だったライズは、自由の御旗と接触する機会があり、そこでこちらに寝返り、現在は協力しているということ。先ほど自分たちに使用した武器も、銃で、元はライズが持ち込んだものであるということ。


 以上を聞いたうえで、この場にいる全員の利益になることを考えてみると、まずは、爆撃機対策である。これをしなければイースはいつか破綻する。そのためには、早く世界樹に行って、風龍の力を借りたいところである。それはリーフがこなさなければならない儀式の一環でもあり、旅の目的でもある。だが、エッダ島に行くためには、帝都ガルドに乗り込まなければならない。そうすると・・・


「帝都に行くのは転移魔法を使えば簡単だが、そこから先、どうやってエッダ島に渡るのかが問題だ。正式な許可があれば渡れるが、俺たちにも、君らにもそれは無理であろう。やらなら秘密裏に行う必要があるが、そのためには帝国の警戒網をどうにかしないとな。」


 ロベルトはこう述べる。・・・ここで、エストが思いついたことを言ってみる。


「あのさ、石油ってどこで取れるの?」


「石油の元になる原油は、この大陸の南西部に集中しています。燃料や爆薬への加工は帝都の近郊まで運んで行っているようですが。」


 ヴァンがそう答えると、


「その油田地帯だっけ? そこを襲うことは出来ないの? 燃えるんでしょ? それ。」


 エストの発言を聞いて、ライズが返答する。


「これまでは、被害が大きくなりすぎるので油田への攻撃は避けていました。油田が重要であることを知っているということは、帝国の技術を知っているということと同じ意味になります。一般の人はただの汚い油という認識でしょうから。まさかそこを攻撃するとは思っていないでしょう。一応多少の兵は配置しているはずですが。一回やったら成功はすると思いますが、その後は徹底的にマークされるでしょう。下手をすると、意地でも我々の本拠地を見つけ出して、本気で潰そうと考えるかもしれません。」


「では、エッダ島上陸と作戦をリンクさせるはどうでしょうか? 油田を炎上させて、混乱させているところを我々は、帝都に飛びます。その混乱をついて船でエッダ島に渡るわけです。少なくともここに戻ってこなければ、本拠地を辿られることはないですから。」


 ジョバンニの発言に多くの者がうなずく。とりあえず次の行動方針は決まったようだ。


「念のため確認するが、君らはこの作戦に協力してくれるのか?」


 ロベルトの問いに、積極的な意思表示をしたかどうかは別にして、一応全員がうなずく。自由の御旗のメンバーはそれを産銅と受け取る。それを受けてロベルトが宣言する。


「作戦決行は明日。南西部の油田地帯を攻撃する。その後勇者一行とライズ、ジョバンニは帝都に渡り、世界樹を目指す。以上。」


 これにて、強制的に参加させられた会議が終了した。が、話はそれだけでは終わらなかった。レグルスがライズを呼び止める。


「あなたは、異世界からヴィトとともにこちらの世界に来たとのことだが、ということは、俺たちの故郷コトナ村を襲撃したのもあなたたちで間違いないのか?」


 レグルスも含めコトナ村出身の4人にとっては、友人知人の(かたき)ということになり、イザヴェル王国の王族の2人にとっても、国土を侵略した重要人物ということになる。レグルスを除いたコトナ村出身の3名の表情が変わる。とりわけラルフの目つきは、このライズという女をにらみ殺しそうな勢いだ。自由の御旗の面々も、そのことには思い至らなかったのか、動揺が走っているようであり、互いに顔を見合わせている。


「確かに私は、最初の襲撃のメンバーの一人でした。あの場で村の人々を殺めたのも確かです。恨んでもらっても構いません。殺したければ殺すといいでしょう。ですが、ことが集結するまで待ってもらえませんか? 私はヴィトの傍に居ながら、この度の暴挙を止められなかった責任があります。今、この世界は想定外の方向に進んでいます。ヴィトは支配したはずの存在に逆に支配され、今は邪龍の思うがままに事が進んでいます。それを食い止めるまで、力を貸しては貰えませんか?」


 我慢の限界だったのか、ラルフはライズの胸ぐらをつかみ、殴りかかろうとして、寸前のところで留めた。理性と感情がせめぎあっているのだろう。殴りかかった腕が痙攣している。・・・結局ラルフは殴らずにライズを開放する。乱暴に解き放ったので、ライズはそのまま転んでしまったが。


「せめて教えろ! ギブソンさんを殺したのは誰か。」


「?」


「・・・雷の力を持った雷神の剣を持っていた男だ。」


「・・・それなら記憶があります。ロキという男です。あの男は今は、ヴィトには見切りをつけ、邪龍の配下の一人となっています。王都イザヴェラ襲撃の中心人物でもあります。やがて皆さんの前に立ちはだかることもあるでしょう。」


「分かった。・・・納得は行ってないが当面は協力してやる。信用はしないがな。」


 そう突き放すように答えるラルフ。心境は他のメンバーも似たようなものだろう。それに対しライズも


「それで充分です。」 と静かに答えた。


 その様子を見ながら、翌日は勇者一行にライズを加えたメンバーと行動を共にする羽目になったジョバンニは、胃痛の発生を抑えられなかった。


 

 

次回は、4/25までには。

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