アースガルド帝国の革命集団。
お待たせしました。とはいえ、周辺の状況説明的な感じですが。
1734年 4/22 イース帝国、ケープの街にて
この街は、イース帝国東部の中心都市である。3日前に空爆を受けて、その日のうちにアースガルド帝国の占領下に入っている。現在は夜の11時。夜の警備に当たっている、数人の兵士が何やら話をしている。
「イース帝国とはいっても、空から一方的に攻撃を加えられたら、どうにもならないんだな。こうやって、あっさり占領で来ているしな。」
「ちげえねえ。弓も魔法も届かないところから爆弾を落とされちゃ、どんな強力な兵士がいたって宝の持ち腐れになっちまうしな。」
「しかし、静かなもんだな。街には生存者なんかいなかったしな。数が少なかったし、どっかに逃げてるのかもしれねえな。・・・こんな時に敵襲とかあったら、ちょっとは緊張感出るんだが。」
「ギャハハハ、オメーは支給された、この機関銃っていう武器を使ってみたいだけだろう。・・・で、オメーみたいなのは、いざ敵襲が来ると動けなかったりするんだよな。」
「んなことねぇよ! ・・・出てきたら、コイツですぐさま蜂の巣よ。・・・あ~あ、こんなたり~の早く終わらせて~な。」
「まあ、心配しなくてもこんな戦争1~2週間で終わるって。 ・・・へ?・・・ぎゃぴ。」
闇を照らす、松明のわずかな明かりで、今話していた兵士の首が飛んだ様子が確認できた。
「てめぇ、やりやがったな! これでも喰らえ!」
そう言って、もう一人の兵士が、所持していた機関銃で乱射するも、暗い上に相手が素早いため、襲撃者には当たらない。・・・現場は忽ちパニックになっていた。 別の一人が、所持していた剣を振り回すも、
「侵略者には死を。・・・地獄に落ちろ。」
そう言って、その者の首を飛ばす襲撃者。・・・とここで、異常に気が付いた、他の兵士たちも起きだしてきたのだが、・・・30分後には、ケープの街のアースガルド兵は、今進入してきた、10名足らずのイース忍者隊によって全滅させられるのだった。
1734年 4/24 イース帝国領内のとある平原にて
ここはイース領内にある、メナドという、イース領の西部に位置する大都市の傍にある平原である。アースガルドはここより東側の地域までは、空爆などにより勢力を広げてはいるが、占領した土地が次々にイース帝国に奪い返されている現状があり、最寄りの拠点からメナドの街までは爆撃機が燃料不足で届かないという状況である。が、メナドを落とせば、帝都イスカに空爆が可能になるため、陸上部隊で攻め落とそうとし、イースの武士隊とアースガルドの陸軍部隊が睨みあっている状態にある。
イースの武士隊が突撃してきた。全員、騎乗しておらず、歩兵である。そのまま突っ込んでくる、いい的である。アースガルド兵は銃を構え乱射を開始する。イース兵は蜂の巣に・・・ならなかった。銃弾が飛んでくる方向を予測しているのか、見切っているのか、銃弾はほぼ当たらない。一部の兵は命中し犠牲に放っているが、割合からすればごく少数だ。・・・そして大人数の武士団に突っ込まれてしまう。
アースガルドの陸軍兵は、この戦争のために銃の扱いのみを鍛えてきた。であるから、武士隊が接近してきた段階で正確に狙えていたはずである。手元が狂ったわけではない。が、そのうえで躱されるのは想定外である。もう手榴弾を使えないところまで接近されてしまった。
武士団が装備している武器は刀である。特殊効果はほぼないものの、切れ味だけに特化しており、達人が使用した場合の殺傷能力は凄まじい。・・・今一人の武士が、刀を一閃。アースガルド兵の胴が左右にスライドする。アースガルドの兵は肉弾戦の訓練は今回はあまりしていなかったのか、ここから先はもろかった。メナド襲撃部隊はあっさり全滅することになったのである。
1734年 4/26 アースガルド帝国、帝都ガルドにて
「イース帝国と開戦してからしばらく時間が経って居るが、戦況はどうなっておる?」
皇帝テオドールは、軍務大臣スラに報告を求める。
「イース帝国領の東半分ほどを既に空爆しております。その都度、重要都市を占領した後、駐留軍を派遣していくところまではいいのですが、その後占領した都市の駐留軍が襲撃されております。そのため、我が国は攻撃はしているものの、支配地域が増加していないのが現状であります。」
「それは妙だな。駐留を命じた部隊には、開発したばかりの機関銃や手榴弾も配備していたはずだ。それにもかかわらず、防衛線にて敗れたというのか?」
「左様で。連中は主に、忍者部隊が夜襲にて攻撃を仕掛けてきております。気配を消して近づいてくる上に、暗闇の中では機関銃も手榴弾も味方を巻き込むため使用できない状況です。そして、落とした拠点を悉く奪い返されますので、敵国西部までの空爆が出来ず、実行できないでおります。また、野戦を仕掛けても、一進一退の状況であります。」
「・・・なるほどのう。ではどうするのだ、スラよ。」
「このまま空爆を続けます。向こうも少ない物資でギリギリの戦いをしているはず。やがて、向こうのゲリラ戦法にも綻びが生じるはずです。その時が制圧のチャンスかと?」
「その辺はお前に任せる。何、我々の被害など微々たるものだ。じくっり構えて問題ないであろう。」
「では、そのように。」
ここで、皇帝の間に転移陣が現れ、ぱっと見、人間のようでそうでないような男が現れる。マルローというらしい。数年前から、よく出入りしているが、本人曰く悪魔であるらしい。そのことが本当かどうかは分からないが、魔王国、もといアガルダ帝国とのパイプ役になってもらっている。
「ご機嫌麗しゅう御座います。皇帝陛下。」
「挨拶などどうでもよい。わざわざここまで来たのだ。何か要件があるのではないか?」
「流石でございます。皇帝陛下。実はお耳に入れておきたいお話がありまして。」
「聞こう。」
「先日ミズガルムで、勇者と呼ぶべき集団とその仲間たちに会いましてね。精霊竜の儀式を受けて回っているようです。次はエッダの世界樹に行くかと思います。恐らくですが、現在はイース帝国を横断中かと。」
「ほう。それが我が国とどう関係してくる?」
「フフ、我らアガルダは当然勇者と呼ばれる存在とは敵対しています。そして、やがては我らと同盟関係にあるアースガルドとも敵対することになりましょう。で、ちょうどイースに軍を派遣されているのですから、見つけた場合、確保をお願いしたく。勿論高値で引き取らせていただきますとも。」
「そういうことか。わかった。軍に通達を出しておく。確保の約束は出来んがな。」
「ええ、それで結構ですとも。・・・ところで、こちらが派遣していたライズの消息は分かりませんかね。様々な状況証拠から、どうやら、裏切ったのではないかという話になっていましてね。」
「こちらでも問題視していてな、反乱軍へ行ったのではないかと疑っておる。もし見つけたら、こちらの責任で処分しておこう。」
「フフ、よろしくお願いしますね。それでは・・・」
そう言って、また転移陣で去っていくマルロー。それを見ながら、皇帝が続ける。
「最近の反乱軍の動きはどうだ?」
「・・・そうですな。今のところは軍関連施設への小規模な攻撃。・・・あとは主に帝国南部の諸都市で反帝国の世論が形成されつつありますな。」
宰相のモブツはこう報告する。
そもそも、アースガルドという国は、円弧のように伸びるアースガルド山脈の内側に、帝都ガルドを始めとする主要都市が存在し、工業生産も穀物などの生産も高い。経済的に豊かな地域でもある。逆に山脈の外側は、資源の生産や農業でも嗜好品的なものの生産が多くなっている。この外縁部に住む住民の多くは二級市民と位置付けられ、内部に住む人間から差別と搾取の対象となっている。元々この国はエッダ島がある、北部の中心辺りから発生し、後から外縁部を支配していった歴史からきているらしいが、それゆえに、外縁部に住む住人は中心部に住む人間に対し潜在的不満が高いのである。それを潰してきたのが、強大な軍事力を背景にした皇帝の権力である。にもかかわらず、一部の者の間に、反皇帝の動きが加速してきているところが、帝国の悩みの種にもなっている。
「・・・目立つ動きがあれば、見つけ次第潰せ。そして、反乱軍の拠点を早く見つけるのだ。」
皇帝テオドールは怒りを抑えるようにそう言うのだった。
1734年 4/24 アースガルド山脈の洞窟内にて
この場所の入り口は、山の南側の斜面、標高2000mのところにある、普段は人が寄り付かない場所である。この辺りは熱帯に属しているため、標高2000mのところにも森林帯が形成されている。そのため、ぽっかりと空いた洞窟の入り口は麓からは見ることは出来ず、周囲にいるのは野生動物か魔獣である。人間でいるのは、この洞窟内で、帝国の歪んだ支配構造を破壊し、革命を画策する組織。【自由の御旗】の構成員のみである。ここには、組織のメンバー1000人程のうち、その半分が活動拠点としているのである。ここの一角にある会議室にて。
「調べた限り、帝国はイースへの侵攻は苦戦しているみたいだな。」
「空爆して都市を壊滅させていくまでは良いんだけど、その後はゲリラ戦法にて逆に占領地を奪還されているようです。」
「イースの戦力を甘く見すぎです。・・・それに与えられた武器もうまくは使いこなせていないみたいですね。確かにああいった兵器は便利で使いやすいですが、同時に弱点もあります。あれだけに頼り切って、これまでやってきたことに力を入れなくなったのが苦戦の原因でしょう。」
自由の御旗のリーダーであるロベルトの問いかけに、今回の戦争状況の調査に当たっていたジョバンニが答える。その後、魔王軍からアースガルドに派遣されて、技術供与をしていたのが、あるきっかけがあり、この自由の御旗の協力者になったライズが意見を述べる。ある意味、新兵器は彼女が帝国に教えたものであり、帝国の失敗がよく理解できるのだろう。
「しかし、いくら武士隊や忍者隊が強力とはいっても、あのような戦い方では長くは持たないだろう。いずれはイースは負ける。その次は恐らくミズガルムだろう。・・・やはり、上空からの爆撃というのは反則だな。さすが異世界の軍事力だ。とはいえ、今すぐ敵対勢力が同じものを作るのは不可能だ。どうやって無効化するか。」
「問題なのは、爆撃機と同じ高さまで上がれることと、それを破壊できる火力ですね。」
「味方に引き入れられればの話ですが、その火力を持っている存在に心当たりがあります。」
ロベルトとジョバンニの話に、この場にいたもう1名の団員である、ヴァンが割り込む。
「イザヴェル王国とグリバール王国で魔王軍を撃退した存在です。たった数名で魔獣の軍勢を蹂躙したと聞いています。その者は勇者やその仲間と旅を続け、現在はイースを東に向けて移動中なのだとか。恐らくは、ここアースガルドに向かっているかと。」
「その者に協力させるというわけか。ダメで元々、接触はしてみたいな。でもどうやって来てもらうかだが・・・」
ロベルトの物言いに、ライズが答える。
「恐らくは、東へ向かうのを断念し、南に位置するマドラ港まで行くと思いますよ。そこで強引にでも来ていただきます。私は転移魔法も使えますし。」
そう言うと、懐から拳銃を取り出す。
「こちらとしては協力を求める立場なのに物騒なことだ。」
「いきなり勧誘してその場で断られてもいけないですし、その場ではだれが聞いているか分かりませんから。拉致の形を装ってきてもらった方が、相手側に対してよい目晦ましになるかと。」
「分かった。任せる。時間的に急ぐから、イースへ転移できる者を連れていけ。ジョバンニが適任か?」
「わかりましたよ。ではライズ、行きますよ。」
そういって、ライズとジョバンニは転移魔法で、マドラに移動する。そして翌日、レグルス一行を拉致し、自由の御旗の拠点に連れてくることになる。
次回は可能であれば、4/23に。無理であれば4/24までには上げます。




