戦争開始。
1734年 4/15
イース帝国、将軍ゲオルグの元に、アースガルド帝国からの文書が届けられる。それを見たゲオルグは、その表情を一層険しいものとする。そこに記載されていた内容は、アースガルド帝国がイース帝国に対して宣戦布告するといった内容であった。ただ、ゲオルグに驚きは特にない。アースガルドがいつか戦争を仕掛けてくるであろうことは予想していたのである。が、このタイミングでというのが分からなくはあった。もし、魔王軍と結んだのであれば、もっと早くに仕掛けてきてもおかしくなかったし、そうでないのならば、アースガルドが特別戦力を増強しているといった話は聞いていなかった。だから、戦争の開始は、そう2,3年後ではないかと思ってはいた。・・・だが、だからといって、イースがアースガルドに負けるとは思っていない。宣戦布告を受けたイース帝国は直ちに、東端の海岸線を中心に防衛体制を築くのである。
1734年 4/16
トーグの港の灯台にて、一人の兵士が双眼鏡を使い目視ができるギリギリの範囲まで監視を行い、敵軍が来るのを警戒していた。・・・いまのところ、アースガルドからの軍艦等が到着した気配はない。イースはあまり海軍の力はないが、その分武士隊と忍者隊を保有しているため、陸上の戦いにおいては絶対の自信があるのである。・・・兵士はそのまま警戒を続ける。・・・ふと、遠くの空を眺めた時、黒い影が見えた。少なくとも鳥ではない。・・・ドラゴンとも違うようだ。・・・ぱっと見、大きな鳥のようにも見えるが、それが近づくにつれ、それらの表面が羽毛や毛や鱗ではないのが分かる。・・・信じ難いが、金属の塊が飛んでいるようだ。 一つ当たり、全長50mはあるのだろうか? それが全部で5つ。真っすぐこちらに近づいてくる。そして高さは、弓などで射かけても、魔法を放っても到底届かない高さを飛んでいるのである。
それらが、裸眼で見えるようになるまで、監視していた兵は、呆然と眺めているだけであった。あまりに非現実的な光景であったためだ。が、そこまで近づいて初めて兵士は、上官へ報告に走る。勿論その頃には、他の兵士もその存在に気が付き始めた。そして、そこから上官に報告は上がる。が、何をやっても届かない高さにいるものに、出来ることなどないのである。
その金属の塊から、恰も鳥の糞のような、黒い小さなものが大量に降ってくる。それを確認してから数秒もたたないうちに、港や、隣接する街、兵士、街で生活するもの、それらすべてが、爆発によってはじけ飛ぶ。そこから若干の間をおいて激しい炎が港町トーグの街を覆いつくす。街に迫った上空の影を見つけた時点で、恐怖のあまり街の外に避難したごく一部の民衆を除いて、すべてが焼き払われてしまった。
そして、飛行する金属塊は、そのまま内陸の方へ飛んでいく。生き残った者も、この地獄絵図が何故起こったのか? 正しく理解できる者はいなかった。
トーグの街が廃墟となってから、1日が経過した、そこへ、アースガルドの海軍が到着する。100隻もの艦隊だ。そこから続々とアースガルド兵が上陸してくる、陸軍兵総勢5万にも達する。初めに上陸した兵が、念のため生存者がいないか確認している。街の中心部と思われる場所は、既に瓦礫が撤去され、アースガルドのトーグ司令部の仮設テントが設置されている。そこで、この陸軍の指揮を任されているディトロが部下に対して問う。
「念のため聞くが、この街に生存者はいたか?」
「は、一人の生存者もおりませんでした。恐らくは、全員死亡したか、そうでなければ街の外にいたかでありましょう。」
「爆撃機は、どこまで空爆に言ったのだ?」
「ここから1000㎞の範囲にある都市に空爆を敢行いたしました。イース帝国の東側の約5分の1は焦土と化しましたので、急ぎ我らで順次制圧予定です。」
「うむ、急げ。この国の武士隊が動いてからでは厄介になる。先に我らの足場を固めるのだ。アイツらは、一人一人が超一流の冒険者並みの戦力を持っている。この国への大まかな攻撃は空爆にまかせ、俺たちは拠点を固めながら武士隊や忍者隊を各個撃破していくのが作戦の肝だ。こうしている間にも、いつ忍びが入り込むか分からん。しっかり警戒はしておけ。」
了解の意志を示して仮設テントを後にする部下の背中を見つつ、ディトロは今後の戦力を考えるのだった。
1734年 4/20 帝都イスカにて
開戦をしてから、たったの一日で東側の約5分の1が焦土とされ、敵国に奪われた件の報告が上がっていた。僅かに生き残って、情報が伝えられたのであるが、信じられない報告の数々に、将軍ゲオルグは動揺を隠しきれない。それでも部下たちの手前、平静を装う。
「・・・にわかには信じがたい。金属の塊が飛んできて、よく分からない何かを降らせたと思ったら、それが爆発して建物も人も吹き飛ばすなど・・・しかも弓の届かない高さからとなると攻撃手段がないな。」
その言葉を聞き、早くも敗戦濃厚な状況に項垂れる部下達。・・・部下たちの戦意を喪失させたかもしれないと、自らの発言を反省する。勿論策はある。・・・あるにはあるが、できれば取りたくはない策だ。・・・だが、現時点では他に方法がない。
「とりあえず、可能な者は、隣国のミズガルムへ避難しろ。それが不可能なものは、なるべく人がいないと思われるような山の中とか、そういったところに避難させろ。国民には苦労を掛けるが今のところ安全の保障はできない。」
「次に廃墟にされた街に敵軍が入ってきているようだが、武士隊と忍者隊をフリーで動かす。落とされた年を逆に落としていく。空から攻撃されそうになったら退避。それの繰り返しだ。まあ、ゲリラ作戦といったところか。この戦い方でいつまでもつか分からぬが、これで耐えるしかないであろう。」
「この国には、もしもの時のため、地下に作られた拠点がある。私もそこで指揮を執る。・・・帝には逃げていただく他は無いだろう。あの空を飛ぶ金属塊を落とす方法が見つかるまでは・・・あとは、」
「それと、ジャンヌを呼べ。」
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「お呼びですか、ゲオルグ様。」
呼ばれてきたジャンヌは諜報能力に長ける、女の忍者である。
「・・・すぐに勇者一行を追え。東に行かせてはならぬ。アースガルドへはマドラから出航させろ。そしてアースガルドまではお前も同行しろ。向こうに着いたら、何かあの金属塊を打ち落とす方法を探せ。可能であれば勇者たちの協力を仰げ。」
そう言って命令を下し、下がらせるゲオルグ。出せる支持は出した。そう言って自らも地下の指令室に移動を始めるのだった。
1734年 4/25
レグルス一行は、トーグ港に向けて旅を続けていた。既に2000㎞近く移動してきている。道のりはちょうど中間地点といったところか。ここ数日、肉眼ではよく分からないが、生物ではない何かを目撃することがあった。嫌な予感はしていたが、今は道の途中であり、情報が何もないのである。とりあえずそのまま東に進んではいるが・・・。ふと、後ろを振り返ると、何やら馬が駆けて来るようである。勿論人が乗っている。・・・俺たちの馬車の傍まで来て、止まったようだ。乗っていたのは、女性の忍者だった。俺たちも、馬車を降り、話を聞いてみる。
「何! ここから東が戦場になっていて進むことが出来ない? いったいどうなっている?」
流石のラークも意味が分からないらしい。勿論俺レグルスも同様だが。・・・そこで聞かされる相手の攻撃方法だ。空から何かを落として地上にあるものを無差別に爆破していると。イース軍は、ゲリラ作戦を取り、敵が作った拠点を後から落とす方法を取っているようだ。そこで、俺たちには、マドラの港から出航せよと、知らせに来てくれたのである。さらに、
「その後の旅に、私ジャンヌも同行させて下さい。そして、良ければ、対応策の糸口を一緒に探してもらいたいのです。お願いします。」
もともと船を貸してもらっている立場であり、自分たちにとっても恐らくは敵になる国家である。しかし、そうなると時間が少しで惜しい。ここからマドラまでは距離がかなり離れてしまった。いつ到着するやら。
「それなら私の転移魔法で、マドラまでならいけます。早速向かいましょう。」
言われるがままに、転移にて、港町マドラに到着する。助教が状況だけに、無駄口をたたく者はいない。皆険しい表情で港を目指していく。船は最も早く移動できるものを貸してもらえるそうだ。・・・だが、この緊張した状況で、まだ敵の支配が及んでいないこの港町でレグルス一行は誰一人として強い警戒をしていなかったのだ。・・・突然背後から近づいてきた女がリーフの頭に金属製の何かを突き付ける。
「この武器は、一瞬にして人の命を奪うことが出来ます。この人の命が惜しくば、抵抗はやめてください。」
この女の仲間と思われる男が、動揺の武器のレバーのようなものを引く。すると、その武器から金属の球が飛び出て、地面が破裂した。・・・確かに人を殺傷する武器で間違いないようだ。対抗策を今すぐ講じることは出来ないようだ。一旦拘束される他は無いようだ。全員ロープで縛られたのち、ここではないどこかへ転移させられるのだった。
次回はちょっと時間を貰って、4/22の更新を予定しています。ご了承を。




