イース帝国へ
すいません、今日は遅くなりました。4/18も1回は投稿予定です。
1734年 4/1
霊峰ミズガルムにて、光の儀式を終えたレグルス達は、その後ラバナにて、大統領へ、霊峰ミズガルムが襲撃を受けたことを報告するとともに、防衛の強化を進言する。そこについては直ちに軍を派遣する形になった。その後、ハードラードにもどり、防具屋のダグが依頼した防具を完成させるまで待つことになった。そして、5日後、全員分の防具が完成する。
今回はレア度の高い素材を自分たちで集めて作ってもらったため、購入したものはすべて物理耐性、属性攻撃耐性、状態変化耐性などに優れたものが出来上がった。アレク、カペラ、ラークのは中衛の役割を担うため、魔獣の毛皮を用いた革鎧だ。アレク用は見た目目立ちにくい感じに仕上がっている。素早さが上がる効果があるようだ。それに対し、カペラとラークのそれは、魔法も使って戦うことを考慮して魔力アップの効果も付いているようだ。
リーフのも革鎧だが、胸を始めとした多くの場所を、グレートドラゴンの鱗を張り付けて防御力を上げる工夫がされている。スピード重視のつくりではあるが、ある程度前衛をこなせるようにしているらしい。耐性効果も当たり前に付いているため、今回作ってもらった装備の中で最もバランスがいいかもしれない。そして、エストの装備だけが、ローブになっている。物理耐性はある程度捨てて、その分属性攻撃耐性、状態異常耐性、魔力アップ、素早さアップが余計に付くようにしているようだ。
どの装備も見た目が悪くなく、皆気に入ったようだ。・・・これで、次の旅先のイース帝国に行ける。店主のダグに礼を言い、店を出る一行。 ここからイースに向かうよりは、ミズガルムから向かった方が近いため、霊峰のふもとのソリオまで移動し、そこからはいつも通り馬車の旅だ。
初めのころは、中々なれなかった馬車の揺れだが、最近は昼寝ができる程度には慣れてきたようだ。ラルフは暇だったのか、完全に夢の世界だ。アレクはいつものように絵を書いていて、最近その価値に気が付いたのか、カペラが熱心にその様子を観察している。リーフは魔法に関する書物を読んで勉強している。そしてエスト、ミリアム、ラークは・・・暇そうだ。毎度同じ面子で話をしているため、ネタが尽きているのかもしれない。俺もリーフのように本を読みたかったのだが、どうたら無理そうである。
「レグさあ、次行くイース帝国って、どんなとこなの? 帝国っていうから、ちょっと怖いイメージがあるんだけど。」
ミリアムとラークは、王族だけあって知っているからか、苦笑いしている。アースガルドのように、自国の国民まで専制的に支配するようなところもあるから、分からないでもないんだけどなぁ。
「そんなことはないよ、イースの場合は、帝の国って意味だよ。王様や皇帝と同じようにこの国の支配者という意味では同じだけど、精神的指導者って言った方がいいのかな? 最高権力者なんだけど、実際には権力は使わずに、将軍という存在が実質的なトップといったらいいのかな?」
「ショーグン! 聞いたことある! それがイースか~。」
エストにはきちんと説明が出来なかったが、イースという国は、征夷大将軍、略して将軍が幕府という行政機関を使って政治を行う国である。過去はどうであったかは別にして、将軍とはいっても軍閥政治をしているということではない。形態は特殊であるが、国民が平和に暮らすことが出来る国なのは間違いがない。違う点を挙げるならば、帝の命令には絶対服従という風土があるらしく、あえて、国民に命令をしないために伝統的に執政を行わないのだそうだ。それに、帝のための国ということであるから、特に他国に対して野心があるわけでもなく、寧ろ、ミズガルム共和国やイザヴェル王国、グリバール王国とは友好関係を築いている。ただ、この国は軍事的に弱くはなく、寧ろ、武士隊や忍者隊といった他国にはない戦力がある軍事大国でもあるのである。怒らせたら怖い国なのかもしれない。
「兎に角、他国とは文化とか違う点が多いから、初めて見るとびっくりすると思う。まあ、俺も初めてだから、やっぱりびっくりすると思うが。」
「それは楽しみねぇ。」
「そうねぇ、今4月の初めよね? うまくいったら・・・いいものが見られるかも?」
「何々?・・・気になるんですけど? いったい何があるの?」
「・・・まあ、行ってみてのお楽しみかしら? 見たら分かりますわよ?」
話題のネタだけ振って、お茶を濁すミリアム。それでは気になって仕方がないと思うのだが・・・案の定、「うぅ~」とかうなっているエスト。まあ、見ていて面白いので、そのままにしておくか。どうせ10日も掛からずに、帝都のイスカに到着するのだ。行けば分かる。・・・とここでラークが、
「レグルス。話を変えるが、以前アマルの街の酒場で聞いた噂話を覚えているか?」
久しぶりの、このチャラい男の真面目な呼び方に気を引き締めるレグルス。
「ああ、噂というのは、アースガルドの野心が高まっているのではないかという話だ。・・・それと、先日の魔王軍による霊峰ミズガルムへの襲撃が繋がっている気がしてな。」
確かに、魔王軍がイザヴェル王国以外に攻撃を仕掛けるということは、これまでに無かったことだ。それが、初めてグリバールやミズガルムへの侵攻があった。これは、魔王軍が世界全体へ本格的な侵略の開始の表れとすれば、そして魔王軍が野心を抱くアースガルドと結ぶようなことがあれば、アースガルドはどこを狙うのか? そうだとした場合、どこが狙われるか聞いてみる。
「そうだな。可能性があるのは、あそこのすぐ南に位置するキルナ諸島。ただここには国家は存在しない。集落はあるがな。わざわざ攻めないだろう。次にその南のエルフィン王国も可能性があるな。エルフの国であり魔法大国であるあの国は覇道を進む国にとって脅威だろう。だが、最も可能性がありるのは、俺たちが向かっているイースだ。侵攻する際の距離が短いしな。なにより、イースが戦争になると、ミズガルムに援軍を送れなくなるしな。」
「そうかもな。・・・とはいっても、実際に戦争になるのはもう少し先だろう。仮にイースを攻めるとして、イースは強国だ。アースガルドにどれほどの戦力があるか分からないが、もし宣戦布告しようものなら、逆にアースガルドの方が攻められるかもしれないしな。あそこは、国内問題も抱えているからな。内憂外患と言ったら言い過ぎか。」
「まあな、言い得て妙かもな。いずれにしても、早く世界樹にたどり着いて風の儀式を終わらせたいところだ。ヤバい情勢のところとは早くおさらばしたい。」
ここまで話したところで、ラークとレグルスはうなずきあう。・・・とここでエストが、
「・・・話が硬いわよ~。そんなこと言っても私にはわからないじゃない! もっと楽しい話はないの?」
自分との話を切られた上でのこの話である。少々というかかなり退屈させてしまったようだ。ムスッとしてるし。
「ごめんな、エストちゃん。・・・お詫びと言っちゃなんだが、向こうの面白情報を教えてあげよう。」
「・・・何よ?」
「イースに入ったら、葉っぱのようにピンクとか白の花を沢山付けた、桜って木があってな、めちゃくちゃ綺麗だぜ。とくに帝都イスカ近辺の街道や帝都内にはかなりたくさん植えて合って壮観だぜ。」
「へ~。それは楽しみ~。他になんかないの?」
「そうだな、・・・あそこは料理が特別美味しいので有名だぜ。時々俺たちの国にも、味噌とか醤油とか入ってくるけど、あれ、この国の物だしな。あとは、刺身っていう、生の魚を薄く切った料理とか、あ、この前食べたラーメンも確か、アースガルドで生まれた料理がイースで発展したらしいぜ。」
「生のお魚はちょっと勘弁だけど、美味しいものは楽しみね。あとは?」
「俺も何でも知ってるわけでもないんだが、・・・そうそう、着物っていうあの国独特の民族衣装があるぜ。男性用も女性用もな。」
「「・・・いいね!」」
エストに加え、ミリアムもハモったな。・・・いや、あなたは知ってたでしょう?
「私はリーフに着せてみたいわね。多分かわいいわよ?」
「あ、似合いそう。見てみたいかも。」
少し話を聞いていたのか、リーフがビクンと反応している。
「・・・たしか、観光客用に衣装を貸している店があるはずだぜ? 行ってみるか?」
待て待て、ラーク。その情報を出すと、下手すると俺たちまで着る羽目になるぞ?!・・・って、何故、右親指を立てている? お前も着たいのか?・・・いや、違うな。・・・たぶん下心だろう。はあ。
「意外と、レグも似合ったりね?」
「・・・・・」 カペラまで話に加わり始めたが、無視だ。俺は着ないぞ。
「レグ? 逃げるんじゃないわよ。」
睨みながら言うエストに対して、肯定の返事しかできなかったレグルスであった。
1734年 4/10
ソリオを出た一行は、そのまま旅を続け、国境になっているイースト山脈を超え、現在帝都である、イスカに到着している。ここは、イース帝国の西側にあり、ミズガルムとの国境に近い。少し距離はあるが4日程でたどり着ける港町マドラがある。船を借りることが出来れば、ここから出航してもいいだろう。もちろん、もっと東に移動してから船に乗ってもいいのだが。
とりあえず、帝都について改めて思うことは、やはりこの街に入る前から目にしていた桜である。王族の3名を除いては全員桜を初めて見るのである。
「やっぱり綺麗よね~」
「道沿いに、等間隔で植えられているとは思わなかったわ。」
「私は初めてではないですけど、いつ見ても綺麗ですわ。」
女性3人にも勿論好評のようだ。・・・桜に見とれながら、最重要要件である、船を借りに、イスカ城に向かう。イスガ城はこの国の政治の中心である幕府が置かれた場所である。帝は皇居という、別な場所があるためそこにはいない。これから会いに行くのは、将軍であるゲオルグである。
城門は、身分を明かすとすんなり通ることが出来た。ゲオルグ殿に面会するのは今なら問題ないそうだ。そのまま大広間に通され、将軍ゲオルグに面会する。そこで、これまでの経緯を説明する。
「話は分かりました。タダでとはいかないが、船をお貸しするのには問題ないでしょう。そうですな、・・・すべてが解決して以降、イザヴェル王国に請求いたしましょう。どこから出航されますかな? リーフ殿。」
「できれば、大陸東端のトーグの港がいいのですが、可能でしょうか?」
「別に問題はないですよ。もし変更されるなら、港で行っていただければ、融通が利かない対応はしないと約束します。」
「ありがとうございます。」
快く船の貸し出しを許可してくれた将軍に礼を言いつつ、その後多少のとりとめのない会話をした後、大広間を退出する。その後は帝が住む皇居に挨拶に行き、ようやく自由な時間になる。昼食をとって、向かった先は、観光客用の貸衣装屋である。そこで女性3人は存分に楽しむことが出来た。男性5人は・・・アレクを除いた全員がぐったりしていたと言えば分かるだろうか。・・・その後宿にて、この国の料理を堪能して一夜を過ごす。そして明日から、この国を東に向けて縦断する旅が始まる。・・・はたして予定通りことが進むのか? レグルスは不安な過るのを抑えられなかった。




