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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第6章 霊峰ミズガルムと光龍。
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アガルダ帝国の成立とアガルダ=アースガルド同盟。

 ヴィト大統領を中心とした異世界開拓者が、今いる世界に来てからもうすぐ7年半が経とうとしている。異世界転移してから一年以内には、ユグラドル大陸の西にある、イザベル王国という国の3分の2以上を支配下に置いた。現在は一部地域を除いて、ほぼ征服したといっても過言ではないだろう。 元の世界、ヴァルハラからの移民は、第一団の50人から始まり、現在では300万人にまで増加した。この数字は、元の世界の人口の30%にあたる数である。


 そして、この世界は魔力が豊富にあり、今支配している地域は温暖な気候であり、移民たちは快適な暮らしを享受している。また、原住民、つまり旧イザヴェル王国民に対しては強く抵抗するものに対しては処刑、そうでないものに対しては、多少の抵抗をしたものについては奴隷、無抵抗の者たちについては、二級市民として生活させていた。いずれにしても最低限の生活は保障した格好ではある。ただ、この世界の他の地域には、調査員は派遣してはいるものの、進行するには至っていない。今支配している、旧イザヴェル王国領を完全に掌握していない状態で、世界征服に乗り出すのは時期尚早であると考えたためだ。


 この世界は、利用可能な魔力量が豊富である。それこそ元の世界ヴァルハラが大戦を起こし、破滅に至る以前と比べても豊富といえるだろう。だからこそヴァルハラの住民の30%が移住してきたのである。それは、この世界の文明が自分たちのそれと比べて発展途上であることも原因の一つであろう。言ってしまえば、この世界の住人は豊富な魔力量のほんの一部しか利用できていなかったのである。逆に言えば、ヴァルハラは、当時現存する魔力量が不足気味になった結果、魔力使用権の問題が発生し、やがて戦争になった。それによって、世界から魔力が枯渇し、生存が不可能なレベルまで環境破壊を行ってしまったのである。


 であるから、元の世界の反省から、これまでは、なるべく科学技術には頼らず、この世界の竜をはじめとする生物戦力を元に緩やかに自分たちの支配を進めていく考えであった。 そういう意味では、転移したその日に、ニーズヘッグという龍に出会え、従属化できたのは幸運であった。この者は相当高位の存在だったのか、彼を従えるだけで、ドラゴン種だけでも相当な数を味方に引き入れることが可能になったのである。それだけではなく、この世界にいる多くの魔獣や悪魔までもが、この龍の支配下に入っているようだ。そのおかげで、転移してきた住民を戦場に出すことなく、戦争を続けられている。


 そんなことを考えていると、ドアからノック音が聞こえてくる。・・・入室を促す。入ってきたのはニーズヘッグだ。こいつは龍でありながら、人の形態をとることもできる。話し合いをするときには便利である。


「お呼びですかな? 主よ。」


「イザヴェル王国への進行の進捗状況はどうなっている?」


「未だ、北部の王都周辺と、南部のラーウェ周辺は抵抗していますな。特に北ルートより物資の供給が始まったため陥落までにはいましばらくに時間が必要かと。」


「まあ、急ぐ必要もあるまい。あの国はもう反乱勢力扱いで充分だろう。我々の支配地域での掌握もかなり進んできてはいる。ここら辺で正式に建国しておくことにしよう。」


「国名は・・・そうだな、アガルダ帝国としよう。我々の元居た世界の国名から取った名だ。我々の主権を承認しそうなのは・・・」


「アースガルド帝国でしょうな。あの国には以前から技術供与を行っております。我が国が建国の際には同盟を正式に結ぶ形になりましょう。もう、軍への兵器の配備は済んでいるようです。近々イース帝国に宣戦布告する形になりましょう。」


 報告が終わり、退室するニーズヘッグ。・・・ヴィトが正気を保っていたのはここまでだった。現在正気に戻った状態と、理性を失った状態が交互にくるようななっている。が、本人にあまり自覚がない。ただ、時々自分が、この世界の原住民にたいして残虐性的な思考をしていることに気が付くことがあるのだが、それも思考したこと自体忘れていくのである。その原因は、・・・


 ニーズヘッグが、その足で向かった先は、自分の執務室である。そこには、ヴィトの部下である、レギン、ロキ、スロールに加え、ニーズヘッグの直属の部下である、悪魔族の長のマルローが待機していた。

ここにいるメンバーは、非公式であるが、すでにヴィトの指揮下を離れている。尤も、マルローに関しては存在も良くは認識していないだろうが。


 ニーズヘッグと名乗っているこの龍の真の名はゲルザード。かつて、この世界に魔王として君臨した者である。真の名で名乗っていないのは、現時点で封印された力を取り戻せていないからでもあり、支配地域が未だ限られている現状で、ゲルザードの名を名乗り世界中から警戒されるのを避けるためである。ゲルザードと名乗れば、直ちに世界中から討伐隊が結成されるであろう。それでもゲルザード的には問題ないのだが面倒なのである。だから、ヴィトに支配された龍という体を取っている。勿論、支配しているのはゲルザードの方であり、ヴィトの方こそ操られているのであるが。まあ、言ってしまえば、ゲルザードは【魔王ヴィト】を隠れ蓑代わりにしているのである。そして、このことはここにいる4名の間で共有されている。すべてを知ったうえで協力しているのである。


「・・・誰か、グリバールの件について報告できるものはいるか?」


「それについては、私レギンがご報告を。グリバール王国は、イザヴェル王国と国交を樹立。それを利用し、両国との友好関係にあるミズガルム共和国より物資の輸送が行われ、必要があれば、軍事行動も起こすようになっています。そのため王都イザヴェラは軍事的に強化され延命を続けています。また、リバールにて調査・実験をしていたイアリは正体不明の冒険者と交戦後戦死。その時連れて行った1万程の飛竜の群れも全滅しています。」


「1万の竜がやられたのか? その正体については分からんか? 勇者ではないのか?」


「何せ、全滅であるので、今のところは分かっておりません。勇者の存在も今のところは確認できておりません。」


「・・・ゲルザード様。以前4年ほど前にグルド山の封印の祭壇を襲撃した冒険者の話を覚えておいででしょうか? 私、その者と、ミズガルムの首都ラバナにて再会したのですよ。・・・さらに強くなっていたと思いますよ。・・・恐らくですが、グリバールの件やイザヴェラの件と関係あるかと。」


「マルロー、その者は始末しないのか? かなり邪魔な動きをしているようであるが。」


「ご心配なく。いずれは責任もって始末いたしますので、今しばらく私の戯れをお許しください。」


「フッ、困ったやつだ。・・・しくじるなよ。・・・次の件だ。我は勇者の出現を警戒している。あれがもし封印の力を持てば、これから復活したとしても、また我の力は再び封印されよう。・・・念には念を入れて、それを阻止したい。そのためには精霊竜と呼ばれる、我と同郷にして、同質の存在共がじゃまである。始末する話はどうなっている? スロールよ、どうだ?」


「は、飛竜の軍勢を霊峰ミズガルムに派遣予定です。光龍を討ち取り、あそこを落とせば、邪魔なミズガルム共和国を滅亡に追い込めるでしょう。」


「あの禿は、奴らの中心的存在である。我の野望達成には最も邪魔である。確実に成功させろ!」


「畏まりました。」


「ロキについては、引き続きイザヴェラを攻めろ! ミズガルムさえ落ちればあそこも、ラーウェも落ちる。勇者を輩出しそうなところはあそこなのだ。確実に滅亡させるのだ。」


「は!」


「アースガルドの件はどうなっている? レギンよ。」


「は、すでに我々が数年前より技術協力を行った結果相当な軍事力を持つに至っています。軍用機による空爆、陸上の戦車部隊、海からはミサイルによる攻撃。最初に餌食になるであろうイース帝国はもとより、世界は簡単に蹂躙されましょう。まあ、イースに関しては、侍と忍者は脅威ではありますが、問題にはならないかと。ただ・・・」


「なんだ?」


「技術供与のリーダーとして派遣していた、ヴィトの元秘書ライズが、アースガルドにて行方不明になっておりまして。現在捜索中です。」


「ほう。あ奴は、おかしくなり始めたヴィトを必死に正気に戻そうとしていたな。」


「はい、この世界に転移してくる以前から、異世界を侵略することに異議は申しておりました。だからこそ、ヴィトは自らのストッパーに彼女を選出したようでありますが。」


「あの国は、確か、皇帝の方針に抵抗する勢力があると聞いているが、よもや、そちらと合流しているようなことはないだろうな?・・・いずれにしても邪魔になりそうだ。・・・消せ!」


「は! そのように。」


 部下たちを退席させた後、ゲルザードは一人つぶやく。


『我が真なる主よ。もうすぐこの世界にお呼びできそうです。千数百年越しの我らの計画がもうすぐ・・・』


 今の心の中の発言を耳にするものは誰もいなかった。




1734年 3/20 アースガルド帝国 皇帝の間より


「・・・成程。とうとうあの異世界からの来訪者たちが自分たちの国を建国すると。それに伴い、我が国に主権を認めさせ、同時に同盟関係を築きたいと、こう申しているわけだな。」


 こう言ったのは、アースガルド皇帝のテオドールである。


「以前から、我が国はアガルダより技術供与を受けてきた。それにより軍事力は大幅に上がることなった。儂はとうの昔にあそこを一つの国と考えておる。今更であろう。正式にアガルダを国家と認め、我が国との同盟を承認しよう。そのように取り計らえ。」


「は、直ちに条約締結作業に移らせていただきます。それと、我が国の抵抗勢力の動きが活発になってきているとの報告があります。いくつかの軍事拠点が攻撃を受けていると聞き及んでおります。」


「それについては報告を受けている。他に追加の報告があるのか?」


「数年前より我が国に来訪した技術供与のグループリーダーのライズ殿の行方が分からなくなっています。もしかすると、反乱分子に紛れ込んだのかもしれません。」


「成程。裏切ったと思って間違いないだろう。見つけ次第捉えて、尋問するのだ。あの国との関係悪化は避けたいからな。あの女はアガルダの獅子身中の虫になるやもしれん。明確に敵対意思を示すようなら殺してしまっても構わん。」


「は、そのように。・・・これもアガルダの方から来ているのですが、イース帝国へは、いつ戦争を仕掛けるのか?ということでしたが。」


「それも考えておったわ。直ちに宣戦布告する。向こうにそれが届いたら早速軍を差し向けるぞ。大臣よ、陸海空の軍に以上を通達するように。戦略は担当大臣に任せる。」


 テオドール皇帝は、アースガルド帝国の世界征服の足掛かりを自らの手で築けたことに、強い喜びを感じずにはいられなかった。


次回は4/16夜に。

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