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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第6章 霊峰ミズガルムと光龍。
42/102

アマルの街。そしてよくない噂。

1734年 2/29


 昨日のうちに霊峰ミズガルムから、ラバナまで転移で戻ってきた一行は、この街で一泊し今日の朝を迎えている。ドヴェルグ王国に向かうには、ここから南下し、ここから3日程で着くアマルの街に行く。その後、南東に向かうとドヴェルグ山脈という、国境となっている山脈がある。そこから南下すれば、ドヴェルグ王国領である。首都のハイドラードまでは、アマルの街からなら7日間程度で着くだろう。


 ラバナには数日いなかっただけだが、気温がかなり上がっている。この辺は温帯域でも比較的南側に位置していて、そこからさらに南下してアマルまで行くと、熱帯域の北限に当たる。この辺りまで行くと、もう暖かいを通り越して暑くなってくるはずである。


 


 ラバナを出て5時間程、現在お昼の休憩中である。とはいっても食事はもう終わっていて、まさにくつろいでいるところである。・・・そんな中金属がぶつかる音が鳴り響く。


「はあ・・はあ・・、どうした? もっと切り込んできていいぞ?」


「・・・・・いきます!」


 ラルフとリーフである。光龍に助言された通り、2人で剣の打ち合いをしているところである。・・・まだまだ、ラルフがリーフをあしらってる感が拭い去れないが、リーフは必死になっているのがよく分かる。打ち終わった後、技術的な問題点を指摘するのを忘れずにやっている。・・・なかなかいい先生をしているな。・・・いや、リーフがいい生徒なのか。ヤツが子供のころはクラス一の問題児だったからな。・・・それとも、逆にそういうのがよかったのかな?


 残りのメンバーは、今は休んでいるが、教えることがあるものは色々考えているようだ。ミリアムは光魔法、カペラは風魔法、ラークは氷魔法、そしてレグルスは気功をできる範囲で教えていく予定である。すでに午前中は、レグルスが馬車の中で気功の基礎を教えていた。・・・まあ、今の剣の打ち合いを見ている限り、全然使えてはいないのだが。・・・長い目で見ないとな。


 午後の移動中、リーフはさすがに限界だったのか、今は寝てしまっている。今は一番暑い時間帯であるので、馬車の窓は前科にしている。その窓から入ってくる風が心地いい。2月末なのに、完全に春になったような天気だ。


「リーフはやる気はあるんだよな。技術も悪くはない。・・・パワーとスピードだな。」


 実際に打ち合っていたラルフが感想を漏らす。・・・確かに見ていたら分かるが・・・


「地道に頑張っていたら、身についていくんじゃないの?」


「とはいっても、早く戦力になってもらいたいというところはあるかな。いつまでもこっちが守ってやるわけにはいかんしな。」


 カペラは楽観的に考えているようだが、ラークが言うようにまた激しい戦いがあると、こっちがリーフの分まで頑張らないといけなくなるからな。


「魔法も魔力が足りてないですわね。・・・ただ、光龍様のもとで力を受け継げれば、光魔法は自然とどうにかなるような気も・・・」


 ミリアムも実の弟だけに心配そうである。・・・あとは、俺が教える気功だが、俺が師匠に教えてもらったときは、俺は多少はできていた。が、リーフは完全に一からである。これも時間がかかる。・・・悩んでもしょうがないんだけどな。・・・う~む、空気が重いな・・・話題を変えるか。


「次に向かう街、アマルのこと誰か知ってる奴いるか?」


「知ってるわよ。だって私の家があるラーウェが近いからね。とはいっても私は行ったことないけどさ。確か~結構大きな街よ。この国の第2の都市だっけ? ラーウェとハイドラードとの交易をやって栄えているのよね?」


「そんな感じだな。だからか、イザヴェル、ミズガルム、ドヴェルグ3か国の良いところが合わさったような街になっているはずだ。そう本に書いてあった気がする。だから、ラーウェ産の食べ物も、ドヴェルグ産の食べ物も普通にあるから、美味しいものがいっぱいあるぞ。・・・スイーツもな。」


「「「!!!!!」」」


 女性3人の表情が変わったな・・・


「例えば、どんなの?」 


 エストがそう聞いてくるが、・・・まあ、俺は本ででしか知らないんだけどなぁ。


「・・・そうだなぁ、ラーウェって蜜柑とか苺とかよくあるよな? で、ドヴェルグ産のマンゴーやバナナ、パイナップル、さらにミズガルムでとれた林檎や葡萄それらをアイスクリームと一緒に盛り付けたフルーツパフェとか有名じゃなかったっけ?」


「「「食べたい!」」」


「あとな、これから南国に行くだろ? 多分だが、それぞれの国ではやっている服なんかも売ってるだろう。夏物の服も買わなければならないし、3か国の服なんかが同時に選べていいかもよ?」


「「「おお!!」」」


 いい感じに盛り上がってきたか?・・・嫌な雰囲気は消えたかな?・・・


「楽しみになってきたわね。・・・着いたら、勿論買い物に付き合ってくれるわよね? レグ?」


「へ?」


「へ?・・・じゃないわよ! 言い出しっぺなんだから、ちゃんと付き合いなさいよ。」


 ・・・しまった。そこまで考えてなかった。・・・回避するには・・・って、ラルフ! 他人事だと思ってニヤニヤしてるんじゃねぇよ!


「・・・いや、リーフの修行に付き合わないといけないしな・・・」


「僕なら大丈夫ですよ。僕も姉に付いていきますし。」


「俺ももちろん付き合うぜ! 俺はお国柄か着るものに夏服ってあんまりないんだわ。決行興味あるしな。」


 リーフとラークは敵側に回ってしまった。てか、リーフ、いつ起きた? クソ、計算外だ。


「俺も暇だし、行こうかな・・・」


 アレク、お前もか! 


「ラルフ? あなた、他人事だと思ってない? 私だけエスコート役いないから、アンタで我慢してあげるわ。 一緒に来なさい?」


「何でだよ? 俺は・・・」


 ラルフが話せたのはここまでだった。ここで、エストとミリアムの視線がラルフに突き刺さる。・・・どうやら、男ども全員連れていくつもりだ。・・・ああ、これ絶対断れない奴だ。・・・その後、俺とラルフは、アマルの街でいったいどれだけ被服店にて拘束されるのか、恐怖するのだった。




 その後日が暮れて、野営をすることに。道中、ワラビなどの山菜を見つけたので、他の野菜や肉と一緒に煮込み鍋としていただく。主食はすっかりメンバーに気に入られたおにぎりだ。夕食を食べ終えた後は、再びリーフの修行のお手伝いだ。レグルスが、もう一度気の練り方を伝授していくが・・・


「・・・くっ。・・・うまくいかないですね。」


「掌が少し暖かくなるような感覚はある?」


「・・・少し。」


「なら、出来ていないことはないから、もう少し心を落ち着けて、その感覚をもっと強く、長く保てるように精神統一をしてみよう。」


 はい、と返事をしつつまた集中し始めるリーフ。・・・この修練を夜が更けるまで繰り返していく。


 


 次の日も、またその次の日も修行を継続するリーフ。少しずつは上達している。気の訓練、剣の打ち合い、素振り、魔法の鍛錬、ほどほどの休息。そんなことを繰り返しているうちに、一行はアマルの街に到着したのである。到着はその日の夕方だったため、そのまま宿でゆっくりすることにする。一晩寝た後、




 一行は現在、アマルの繁華街の被服店に来ている。入店してから2時間程、女性3人は今試着の最中である。もう10回以上はこれを繰り返しているが、未だ何かを買う様子はない。最初は喜々としていたラークでさえ、今は少しぐったりしている。レグルスとラークは言わずもがな。何故かアレクだけが自分の気に入った服を数着着てみては購入していた。リーフは楽しそうにしているように見えるが、額に浮かぶ脂汗までは隠せていなかった。とここで、エストからお呼びがかかる。


「・・・今度はどうかな?・・・似合ってる? さっきのと比べてどうかな 」


 ところどころに青い色が目立つ、白い半そでの上下。下は短めのスカートだ。勿論似合っているのだが、さっきのと言われても、余りにも見すぎて、どれと比較しているのかが分からなくなっている。直前のは緑っぽかった気がする。ここで適当に答えるとぼろが出るので、真剣に考えたうえで、今の方がよいと伝える。


「・・・そっか。うん、・・・でもやっぱり自分的にはさっきの方が気に入ったんだよね。やっぱりあっちを買うことにする!」


 じゃあ何で今、俺に意見求めたの?!・・・と激しく突っ込みたかったが、やめておく。怖いし。


 全員の買い物が終了したのはそこから30分後だった。ちなみに、俺とラルフの買い物時間は10分ですべて終了した。




 ちょうど昼時だったので、レストランを見つけて昼食を取ることにする。レストランといっても敷居は低い感じで、家族連れなんかも多く来店しているようだ。・・・メニューが豊富だな、ここ。ラルフは肉どんぶり、ラークとアレクとリーフはステーキ定食、ミリアム、カペラ、エストの3名は、トマトソースのパスタを注文していた。俺はというと、天丼なるものが気になったので、注文している。


 しばらくすると、注文したものがテーブルに並び始める。食べてみて思った。ここ当たりだ。すごくおいしいわ。自分の天丼を見ると、どんぶりご飯の上に、野菜や海老、魚を衣をつけて揚げたものを乗せ、その上から、醤油ベースだろうか? 甘辛いタレが程よくかかっている。口に入れた時の、サクッとした感触。遅れてやってくる食材そのものの甘味、旨味、そして野菜はちゃんと香りというか風味が損なわれていない。・・・うまいわ、これ!・・・聞いてみたら、これもイースから伝わったものらしい。アースガルドに行く際には、イースは絶対に通るので、どんな国なのか今から楽しみである。


 昼食後、女性3人は、スイーツを食するのを忘れない。・・・ちゃんとこの店にはパフェがあり、注文していた。その間ぼーっとしているのも何なので、男5人は、それぞれコーヒーやお茶を注文する。・・・スイーツ系もレベルが高かったのか、女性たちの機嫌はすこぶる良い。




 レストランを出た後、街の散策を続ける。さすがに午後からは、いくつかのグループに分かれたが。

ラークとミリアムとリーフ、ラルフとアレクとカペラ、そして俺とエストの3班に分かれて適当に見て回った。俺たちはというと道具屋やアクセサリー店を見て回っただけだが、ほどほどに楽しめた。他の面々も楽しめてればよいが・・・。




 そして夕食時、今度は酒場に来ている。いつものように料理と酒を注文し、舌鼓を打っていたのだが、近くの客席から良くない噂を2つ聞くことができた。どちらも聞き捨てならないものだ。


 一つが、ドヴェルグ王国は国土のほぼすべてが熱帯雨林とサバンナとよばれる草原地帯で被われている。大雑把に言えば、国土の北西側がサバンナ地帯、南東側が熱帯雨林だ。俺たちの用事はその熱帯雨林にある光のクリスタルと呼ぶべきものだ。その地域での魔獣の活性化が著しいとのことだ。元々竜種も生息している他、獣型、鳥潟の魔獣も多いらしい。それらが狂暴化していて、そこに向かった冒険者がかなり被害に逢っているらしい。当然死者も出ている。・・・俺たちも気を付けなければという話である。


 もう一つが、このユグラドル大陸の東にある、世界で2番目の大陸のすべてを支配しているアースガルド帝国の動きが悪い意味で活発になってきているらしい。元々この国は、世界征服が国是である。皇帝は基本は世襲であるが、皇帝に力が無いと分かったときには、よくクーデタが起こり、帝国自体を乗っ取ったりしている。それを歴史上繰り返しているこの国に新しい皇帝が誕生し、現皇帝の代で、大陸の外へ勢力の拡散を実行していくとの方針が示されたらしい。ここまでは事実として話されているようだ。ここからは噂のようだが、一つには全世界に宣戦布告するというものだ。これは、分からなくはない。さっきの話と繋がってくる話である。


 気になるのは、その際に、魔王と手を結ぶという噂である。本当だとすれば、アースガルドは、イザヴェル王国の西側を支配し続ける魔王の一団に、国家としての主権を認めた可能性もある。実際、もう7年程になるのか。イザヴェル側西岸が向こうの支配下に入って。最近は東岸の一部もその支配下におさめている。だから、冷静に考えてみると、一国と認め、野望を進めるために結託することも向こうの立場で考えれば悪いことではない。・・・本当だとして、それが対等な関係なのか、魔王側に従属された関係なのかは分からないが・・・


 この話を盗み聞きしてしまった以降、この先の旅への不安を強く感じてしまったレグルスであった。


 









次は4/14夜に。

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