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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第6章 霊峰ミズガルムと光龍。
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光龍と勇者。

 ロッジで一夜を明かした一行は、早速山頂を目指す。まだ早朝ということもあり、かなり寒い。幾ら緯度的には暖かい地域といっても、標高4000m越えである。まだ3月にもなっていないこの時期に寒くないわけがない。雪も降っておらず、風も強くないのが幸いか。


 元々この霊峰は、過去を遡れば休火山に当たるらしい。周囲にはこの山以外に標高の高い山はない。逆に言うと、この山だけが大きいため、裾野が広く、標高が高い割には傾斜が緩やかである。であるから、比較的経験のないものでも体力さえあれば登れたりするのである。特にこのロッジより先には魔獣も多く出没するため、腕に覚えのあるもの以外はなかなか挑戦できなかったりする。尤も、観光が目的であれば、ロッジからの風景でも相当美しいため、通常はここを目標にしているのである。


 レグルス一行は、もちろん観光ではないので先に進むのであるが、正確な目的を言えば、山頂を目指しているわけではない。リーフに光の力を宿らせるために、光龍に会いに来ているのである。だから、本当に山頂に行けば会えるかどうかも不明である。もしかしたら、山頂付近に、山の内部に入る穴が開いているのかもしれない。光龍の、目撃情報などがほぼ存在しないことから、通常は光龍が空を飛んでいるというようなことはないのであろう。


 


 レグルス達は、まだ午前中であるが小休止している。このあたりは、傾斜が緩やかとはいっても、標高は4500mを超えたところである。大体30度を超える傾斜にはなってきている。 ミリアム、リーフ、エストは既に相当参っているようだ。回復魔法を掛けつつ休んでもらっている。エストなどはいつもの軽口が全く出てこない。とはいえ、元気なのは俺とラルフの2人だけだが。・・・実はここに来るまでに、魔獣と戦闘は2回ほど行った。勿論後れを取るようなことはないのだが、山登りに加えてである。・・・もう少し上ったら、携帯酸素の出番もありそうな雰囲気である。




 5000mを超えたところで正午を過ぎ、昼食を取ることにする。皆きついのか、一言も話さない。ロッジで一度食べて気に入ったおにぎりを一人ずつ渡していく。食べる元気はまだあるようだ。レグルスは少しでも回復してもらおうと、即席で作ったオーク汁を振る舞っていく。実は、ロッジで下ごしらえだけしておいたのだ。ここではお湯を沸かして材料をぶち込んで煮ただけである。暖かい汁ものが、僅かだか全員の疲労感を取り除いたようだ。


 ん?・・・山頂の方というよりは、ここより北側の斜面だろうか?・・・少しの間光っていた気がする。・・・他に見たものがいるか聞いてみたら、アレクも見たと言っていた。他は正直それどころではないようだ。ラルフはそもそも気が付かなかったらしい。・・・近くで同じように休憩していた他の登山パーティがいるのでそっちにも聞いてみることにする。・・・ちょうどこの辺りは、元々よく光るポイントがあるらしいが、その辺りは飛竜がよく飛来するらしいので近寄らないのだそうだ。山頂でもないから行く必要もないのだとか。・・・そりゃそうか。討伐隊ではないしな。・・・って待てよ? そこ、光龍に関係あるってことはないか? 言ってみる価値はあるよな? 違ったら遠回りになるが、行くだけ行ってみよう。


 斜面に沿って、北側に回り込むこと3時間。途中で回復魔法を掛けつつ進み、やはりというか、飛竜は時々襲ってきたが、撃退しつつ進む。そして、光っているポイントに到着。どうやらここから洞窟になっているようだ。早速中に入っていく一行。時々視界を奪うような眩しい光が襲うが、別に害はないようなのでそのままやり過ごす。・・・1㎞程内部に進んだところで、大きな空間があった。半径50m程の半球状の空間だ。その空間の奥に、光を明滅させる巨大な蛇がとぐろを巻いていた。・・・蛇でいいのか?


「だ~れが蛇じゃ! これでも龍じゃ! 龍! 儂が光龍じゃ!」


 この光龍は、龍独特の角が頭部にないのである。そして、髭や毛のようなものが何もないのである。光龍の頭頂部は、まるで大理石の如くである。洞窟の外に漏れる強烈な光は・・・これだったのか・・・


「先に言っとくが、禿って言うんじゃないぞ? これでも気にしておるのじゃ。仲間内からは禿龍言われてるしな・・・火氷風土闇禿の六竜だ!とか言われて、切れた覚えがある。」


 あ、エスト、ミリアム、カペラの3人はつぼったな? 小刻みに痙攣している。・・・かくいう俺も腹筋に力を籠めつつ、ここに来た事情を話す。


「ゲルザードが復活しようとしているんじゃろう? いや復活はしているのか? ただ力はまだ取り戻してはいないのう。 来る日に備えてそこの勇者に光の力は授けなければならんだろう。 光精霊のペンダントもここにある。・・・が、」


 レグルスに渡された、その光精霊のペンダントは、肝心の宝石部分が劣化し光を失っている。・・・恐らく、これでは効果を発揮することはできないだろう。


「見ての通りじゃ。これを修復しないことには儀式を執り行うことはできん。そこでじゃ、お前たちにこいつの修復を任せたいのじゃ。」


 やっぱりそう来たか。単純にはいかないと思っていた。で?


「ドヴェルグ王国の南東に位置する密林地帯のどこかに、この石と同じもの、ホーリークリスタルがあるはずじゃ。・・・あの辺は熱帯じゃから、日差しはもともと強いんじゃが、森が光を吸収してしまって、地面には弱い光しか届かない。・・・が、ところどころに強い光が届くポイントがあってな、そこにクリスタルが落ちてたりすると光を吸収してくれるのだ。・・・それを、その国にいる、ドワーフの職人にでも嵌めて貰え。そのペンダントの力が元に戻るじゃろう。それを持ち帰ったら、光の力をそこの勇者に授けてやるわい。」


「ドヴェルグ王国か・・・それも南東・・・遠いな。行くしかないけどな。」


 ドヴェルグ王国とは、ミズガルム共和国の南に位置する国であり、国土のほぼすべてが熱帯に位置する。また、住人のほとんどがドワーフなのである。所謂亜人の一種である。人間よりはやや背が低く、人間と比べてやや肥満型に見えるぐらいが標準体型である。かといって、極端に太っているようなものもいないのであるが。それと人間と比べ、体が強く、魔力はやや低め、その分手先は器用で、良い武器や防具を作るのが得意な種族である。レグルスが着ている装備もこの国の職人が制作したものである。


「しかし、お前たち・・・一部の者を除いて装備が貧弱だのう。・・・折角ドヴェルグ王国に行くのじゃ。・・・特に武器じゃな。武器で戦う者は今回購入するのも良いじゃろう。」


 いきなりだなぁ。俺たちの装備に言及し始める光龍に少なからず困惑する俺たち。まあ、まずは聞く。


「儂はな。これでも光を司っておる。一応じゃが、精霊竜と呼ばれる存在達の主であるつもりじゃ。先の魔王との戦いのこともよく覚えておる。あの時の勇者カミュとその一行と比較してみると、お前たち色々足りんのじゃ。実力はこれからつけるとして、そもそも装備じゃな? 殺されに行くつもりはないのじゃろう?」


 皆自分の装備を見始める。ラルフなどは自慢の一品だったらしく、ちょっと噛みつき気味に、


「なあ光龍さんよ、やっぱりこの剣じゃマズいか?」


 このように言って、ラルフが自分の剣を抜いて光龍に見せる。


「そうじゃのう。一冒険者としてならいいんじゃが、ゲルザードやその他の強敵と戦うとなるとなぁ。そのうちぽっきりいくぞ。・・・やっぱり鉄製品では不足じゃろうなぁ。」


 がっくり来るラルフ。・・・でも武器を使う、アレクやカペラ、ラークもそこら辺は同じだよな? 俺は基本素手だから関係ないが。


「お前さんたちは、金はあるのじゃろう? 王都のハイドラードには腕のいい職人が多いという。・・・悪いことは言わん、早めに行ってくるといい。」


 ここまで来て、自分の装備にダメだしされるとは思っていなかったらしい。皆それぞれに思うところはあるようだ。・・・まだ言いたいことは終わってはいないようだが・・・


「特に、リーフだったか・・・勇者殿は、ちゃんとした剣が必要じゃな。そんな剣を使ってるから貧弱に見えるんじゃ。」


「・・・貧弱・・・」


「色々努力はしてるっぽいが、はっきり言うが、戦力になってると自分で思うかのう?」


「・・・・・」


 完全に落ち込んでしまったリーフ。 確かに、時々すごい力は発揮するものの、全体的に力不足ではある。努力もしているので強くはなってきているが、まだまだ修行中である。その方向性も定まっていないから本人も焦ってはいるのだが、こればっかりは力になってやれない・・・


「・・・ああ、落ち込ませるつもりはなかったのじゃ。ただ現状は理解はしてもらわないとなぁ。お前さんの場合、装備、剣技、光魔法、雷魔法で問題を抱えておるな? まあ、光魔法は儂との儀式が終了すれば一気に改善するじゃろうて。使えなかったものが使えるようになるはずじゃ。」


 リーフは光龍の言うことを真剣に聞いている。今までヒントを示してくれる存在はほぼなかったのだ。我流だったといってよい。話の続きをそのまま聞く。


「剣技に関しては、そこのラルフと練習するしかないじゃろうな。あと、気の使い方はレグルスに学ぶといいじゃろう。剣技にも応用できるはずじゃ。・・・雷魔法は、氷の力は受けたのじゃから、あとは風の力じゃな? 世界樹に行ったら恐らく劇的に変わるぞ。」


 俺の方に話が飛んでくるとは思わなかった。・・・だって剣使わないしな。少し困惑する。


「レグルス、あんまり難しく考えるんじゃないぞ。 要は気の使い方を教えればよいのじゃ。お前の師匠に教わったことをそのまま教えてやればよい。お前さんの力の使い方は先代の勇者に近いのじゃ。」


 成程。それでいいならできる気がしないでもない。・・・やれる範囲でやってみるか。


「それで良いよ。 まあ、今回はお前たちに課した儂からの修行じゃと思って頑張るのじゃ。戻ってきたときに、魔王退治の旅をしていますと言って違和感ないようになってるといいがな。・・・期待しておるぞ。」


『ほなら、ワイらはこれで失礼するで。禿龍さんも、あと少し頭のテカリ抑えてぇな。』


「うるさいわ! 手袋の分際で! 700年経っても変わらんな貴様は! サッサとどっか行け!」


 ゲンの一言で、少し雰囲気が緩んだ状態で光龍のもとを去る一行である。次はドヴェルグ王国、寒かったところから少しの間の温帯地域を挟んでの熱帯である。不安と楽しみと両方同居するレグルスであった。

そんな訳で、新しい土地に向かいます。また戻ってくることになるのですが・・・何話目かは分かりませんが、途中魔王サイドの話をこの章で入れる予定です。 4/13昼までに更新したいんですが、もしかしたら厳しいかも。その場合は翌日になります。ご了承を。(なるべく更新する方向で考えてます。)

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