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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第1章 幸せな日々。そして、
4/102

秋祭り当日1ーステータスボードと初めての狩り

 朝になり目を覚ますレグルス。リビングに行ってみると、すでに両親はいなく、おそらく教会に行っているのだろう。今日は日曜日で秋祭りなので、早くから教会を訪れる人も特に多いだろう。とりあえず食卓に置いてあったパンにハムと卵焼き、レタスを挟み込み、一口かじる。まずまずうまい。それを牛乳で流し込み、朝食を終えると、昨日言われた通り、自宅の正面にある教会に行くことにする。


 『自宅なんだから中を通らせてくれてもいいのにな。』とか思いながら裏口から出て、自宅の教会部分にまわる。今は両親以外には、エストの両親である、ハウンドとバーバラが来ていた。エストの家は武器屋を経営している。ちなみに店は町の中心部の方にあって、自宅とは別にしている。ハウンドさんは腕のいい武器鍛冶職人で店にはギルドに登録されている冒険者の他、遠く王都などから買いに来る人もいるのだそうだ。お店の経営は、バーバラさんが切り盛りしてるみたいだけどね。他には村長のダニエルさんやギルドマスターのギブソンさんも来ているな。他にも数名の大人たちが何か話をしているようだ。今日の秋祭りの件だったりするのかな?


「レグルス来たな、まずは誕生日おめでとう。今日で10歳だな!」


「レグ。おめでとう。早速だけど神様の像にお祈りをささげて頂戴。」


 母シュリーにいわれ、祈りを済ませてくる。父アスクが10cmくらいの板状のものを持ってくる。ステータスボードである。


「早速だがこれ持ってみろ。そして念じてみるんだ。そうしたら、自然と色々読み取ってくれる。」


 実は、ステータスボードに自分を登録するための儀式みたいなものなんだよね。今後は、僕以外が触っても、僕の情報を見ることもできないし、僕のステータスボードを使って、僕ではない人がその人自身の情報を見ることもできなくなる。僕が死なない限り、別な人のステータスボードとして登録しなおすこともできないみたい。


「わかったよ。やってみる・・・ん・・・登録完了したよ。」


 もちろん、自分の情報をまずは自分で確認する。


レグルス LV5 天職 聖職者 回復魔法の才能 空間魔法の才能 格闘の才能 現在の職業 なし


    HP       17

    MP      286

    力       15

    きようさ    48

    すばやさ    45

    魔力     254


    技能  格闘LV1 火魔法LV5 光魔法LV20 風魔法LV10 回復魔法LV30 空間魔法LV10

        料理LV20 学問LV20


 さすがに両親とも教会で仕事をしてれば、自分も天職聖職者になるか。まあ、変な結果でなくてほっとする。普段から教会のお仕事手伝う時もあるし、光魔法・回復魔法やそれにかかわるMPや魔力が比較的高いのは、自分のことながら納得かな。回復魔法のレベルがここまで高いのは、医学書も含めていろんな本を読んだからね。体の知識を知ってるのとそうでないのとでは、魔法の利きが全然違うんだよね。そのせいかも。


 知らんうちに、両親とも後ろから僕のステータスを覗いている。まあ、別にいいけど。


「しかし・・・レグルス。お前、いっぱしの神官レベルだな。今すぐでも王国のイザヴェラ教会でもやっていけそうなステータスだな。さすが私の息子だ。」


「イザヴェラ教会の神官はさすがにおおげさよ。でもたまに見るレグの魔法から大体予想はできてたけどね。」


「とはいえ、お前はまだ10歳だ。まだ将来を決めるのは早いぞ。そりゃ、私たちのあとを継いで神官にでもなってくれればうれしいが、もっと様々なことを学んでよく考えるといい。」


「そうねぇ。あなた本好きだし、勉強してるうちにいろんなことに興味持ちそうよね。そういえばレグは歴史関係も好きだったはよね。父さんの書斎にある、私には難しくて読めないような本も普通に読んでるし。いっそ歴史学者になるのもいいかもね。そうそう、世界中の遺跡を巡る探検家とかも面白そうね。で、新発見をして今度は自分が本を書くの。夢が広がるわねぇ~。」


「でもそれじゃぁ、冒険者としてのスキルもいるなぁ。少しくらいは攻撃魔法も使えるかもしれないが、そっちは今後の努力次第だな。ところで、レグルスは一角ウサギも自分では倒したこともないはずなのになんで格闘スキルがついてるのかねぇ。いっそそっちを鍛えてみるか?」


 父さん、絶対揶揄ってるだろ?なんかニヤニヤしてるし、ムカつく。まあ、でも神官にならないのなら、探検家ってのもあるくないね。歴史も地理も好きだし、自分で不思議を解き明かすってのはすごく興味をそそられる。そう考えてるところに、ハウンド・バーバラ夫妻がこちらに来ていた。


「レグルス君、今日は誕生日おめでとう。これでうちのエストとまた同い年ね。ところで、今日はエストと一緒にお祭り行くんだってね。」


「はい。夕方からですが。」


 と返事をしておく。すると母さんが、


「エストちゃん、ちゃんとエスコートしてあげるのよ?」


「べ、べつにそんなんじゃないし・・・遊ぶ約束してるだけだよ・・・」


 こういういい方は同級生の仲間内からは絶対に出ないので、どう反応していいか困る。あと今はにこやかに笑っているけど、ハウンドのおじさん、一瞬眼光が鋭くなって怖くなったような・・・気のせいかな。うん。


「レグルス、エストちゃんに迷惑かけないようにするんだぞ。それとあんまり遅い時間にならないようにな。」


「わかったよ。」    


 そう返事しておく。大人と違ってお酒飲んだりしないし。だいたい眠くなる。


「レグ、夕方まではどうするの?」


「わかんないけど適当にブラブラしてるかも。」


 とか答えながら完全にノーアイデア。このパターンは、本を読みつつ、結局自宅から出ないパターンかも? 年に一度のお祭りなのにね。我ながら呆れる。 ん?


「レグルスいるか~?」


いつの間にか、ラルフ、アレク、ロイが教会の前に来ていた。どうしたんだろう?


「暇か~?」とラルフ。「夕方までは暇だ~。」と答える。


「じゃあさぁ、村の北側にある森に行こうぜ。今日秋祭りだろ?大人たちは収穫したものとかみんな持ち寄ったりするじゃん。」


 まあ、そうだよね。と相槌を打っておく。秋祭りは収穫祭のとしておこなわれ、神様に収穫物などをお供えするのである。そして感謝をささげ、来年のよき実りを祈願するのである。


「でさ、俺たちも獲物取りに行かないか?でも俺たちだけじゃ危ないって言われてな。」


「でも、そろそろ大人の力を借りずに挑戦してみたいてきな~。」


「ああ見えて、ラルフの剣の腕前はすごいだろ?アレクは何かを見つけたり、罠を張ったりが得意だし、僕は魔法が使える。ここに回復魔法が使えるレグルスがいればもしもの時安心だしね。」


 と、順にラルフ、アレク、ロイ。狩りのお誘いでしたか。僕経験ないんですが。でも、ちょうどさっきまで、自分が将来冒険することを考えていたから、少し興味をそそられる。


「そうだな。君たち危ない魔物には絶対近づかないと約束できるかい?」


 意外なことに、父さんが彼らに助け舟を出す。頷く3人。自分も行く決心をする。


「では気を付けて行ってくるんだぞ。もしもの時はレグルスは念話が使えたな。その時は私を呼びなさい。」


「レグ!狩りに夢中になって、エストとの約束忘れるんじゃないわよ?」


 「わかった。」と返事をしつつ、レグルスを含めた4人は森に出かけるのだった。






 誘いに来た3人のステータスは、こんな感じであった。


ラルフ  LV17 天職 戦士 剣の才能 現在の職業 なし


    HP       127

    MP        20

    力        76

    きようさ     62

    すばやさ     59

    魔力       3


    技能  剣LV1 


 ラルフは、実はもうギルドに登録していて、採集などの簡単な依頼。大人と一緒にではあるが、狩りにも参加している。今回あっさり許可くれたのも、こいつのおかげである。改めてみるとほんと脳筋だな、こいつ。


アレク  LV10 天職 探検家 弓の才能 短剣の才能 探索魔法の才能 鑑定魔法の才能 

     転移魔法の才能 美術の才能      現在の職業 なし


    HP       35

    MP       30

    力       40

    きようさ    231

    すばやさ    112

    魔力      45


    技能  弓LV10 短剣LV12 探索魔法LV23 転移魔法LV1 絵画LV75


 探すのが得意と言ってるだけはあるね。盗ぞ、ゴホンゴホン。レンジャーに向いてるスキルだ。でも、天職は探検家じゃなく、絶対画家だよね。ちらっとしか見てないけど、昨日の机の天板に描かれた絵すごかったし。エレン先生、消す前に魔法か何かで保存してるんじゃないだろうか。もったいないし、あれは。


ロイ   LV15 天職 行政官 政治家の才能   現在の職業 なし


    HP       30

    MP       85

    力       32

    きようさ    45

    すばやさ    40

    魔力     101


    技能 火魔法LV15 風魔法LV18 学問LV15 法学LV25


クラスのリーダー的存在の彼は、実際に政治家の才能があったんだね。攻撃魔法は僕よりは断然上だね。


 3人の能力を確認しつつ(僕だけ経験がほとんどないので)、森ではどんな感じになるのか想像しながら、目的の森に到着する。アレンがサーチの魔法を使いながら、食べられる木の実やきのこ、薬草を中心に回収していく。魔法のおかげで、効率が無茶苦茶良い。特にきのこは毒があったら大変なので、年のため、アレクに鑑定してもらう。自分でもできなくはないけど、得意な人に任す。・・・2時間くらい歩いただろうか。現在午前10:30くらい。4人のしょっている籠はどれもいっぱいになっている。


「思ったよりも一杯取れたな。」


 とロイ。残り3人うなずく。でも獲物はとれなかったねぇとか言いあいながら、予定より早いけど帰るか。と話がまとまりかけた時、アレクが展開していた探索魔法で、結構大きな動物がこちらに近づいているのを感知。


「こいつ、速いぞ。全員散開!」


 アレクが叫んで、全員が散らばった直後、体長1m50cmはある巨大な猪が突進してきた。なぜか興奮しているようだ。この大きさの猪は、武器を持っていたとしても、10歳程度の子供には十分脅威である。こういった経験のない僕は、恐怖で頭が真っ白になるが、冷静なアレクが弓で猪の後ろ脚の太もも部分を打ち抜く。それでも猪の動きは止まらなかったが、


「どりゃ!」とラルフが盾を持ったまま体当たり。怯んだところを、愛用の鋼の剣で切りつける・・・・イカイイカン。固まっている場合じゃないぞ、僕。


 そして攻撃を受けた猪から「ピギャー!」と悲鳴がでるが、そこにロイの魔法が・・・


「ファイアボール!!」


「ピギャッ・・・・・」と鳴きかけ、うずくまる。倒したか?


「「イエーイ!」」

 ラルフ、アレクがハイタッチ。僕もそれを見て安心して、気を抜いたところで、まだ余力を残していたのか猪が突進してきた。


「危ない!」と叫び、ロイは僕ら3人を突き飛ばし、代わりに猪の突進を受けてしまう。猪の牙が刺さってしまったのか、腹から出血している。マズイ!


「ウッラーッ!」


 高くジャンプしたラルフは、そのまま落下した勢いで剣を猪の首に落とし、完全に絶命する。僕はロイのそばに行き、患部に手を当てて、魔法を唱える。


「ヒール!」 


 ロイの出血した腹部の傷は急速に塞がり、ロイから「うっ」と呻き声が漏れる。とりあえずは大丈夫だろう。ふぅ。


「すまん、俺が油断したばっかりに大けがさせちまって。」


 アレクもいっしょに申し訳なさそうにしている。


「いいよいいよ。結局はレグルスに助けてもらったし、あそこで飛び込んでなかったら、唯一の回復役がやられてもっとやばかったもんな。」


「「「うっ・・・」」」


 僕も含めて猛省するロイ以外の3人だった。




 さて。この猪どうしようか?すでに4人とも籠はいっぱい。そもそも猪などが入るはずもなく、かといって捨てていくのはあまりにもったいない。まだ午前中だし、今なら大人に渡せば、捌いて今日のお祭りに豚汁を作ってくれるかもしれない。ここに今日は忙しいであろう大人を連れてくるのは、子供ながらに大変申し訳なく感じてしまう。・・・・


「それじゃ、まだ使ったことないけど、収納魔法試してみるかな?本で読んで知識だけはあるんだ。僕は空間魔法使えるみたいだし。」


「おお!」と3人から感嘆の声があがる。『あんまり期待されすぎても困るんだけどなぁ。』とか思いながら、収納魔法のイメージを頭の中で形作る。詠唱はしないんだよね、これ。すると目の前に黒い吸い込まれそうな球体が現れる。試しに、『お試し中』と落書きした小石を入れてみる。・・・普通に入った。今度は手を突っ込んで、さっきの小石を頭の中でイメージすると、手に石の感触が。取り出してみたら、、『お試し中』と落書きしたさっきの小石だ。うん、成功だ。やった。


『おめー!おとなしい奴だと思ってたけど、何気にすげーやつだな。さっきの回復魔法といい、やるな!ギルドのおっちゃんたちが褒めてたのほんとだわ。』


『回復魔法は普段教会で使ってるだろうし知ってたけど、その、・・・収納魔法は本気ですごいな。』


 クラスメイトに褒められることなどほとんどないので正直照れる。そう思いながらも、倒した猪の胴体部分を収納魔法にしまう。で、意気揚々と村に帰るのだった。


 村の中央に到着した。大人たちが今日のお祭りの飾りつけを行ったり、祭壇に続々と到着するお供え物を設置したり忙しそうにしている。中には屋台をだして売られていたり、お酒が打って居たり、もう食べたり飲んだりしている人もいる。祭壇のところにギルドマスターのギブソンさんがいた。


「ラルフじゃねぇか、それに教会のとこのボーズも。・・・たしかレグルスっていったか。どうしたよ?」


「俺たちも神様にお供えしたいと思ってな。いろいろとってきたぜ。」


直後、僕は収納魔法から結局みんなから預かっていた、木の実、きのこ、薬草関係を取り出していく。最後に極めつけの猪の死体を取り出した。


「随分気前がいいな、ありがとよ!・・・ってええ!おまえら、どっから取り出しやがった!特にこの猪とかお前たちに運ぶの無理だろ?そもそもどうやって手に入れた?」


 ギブソンさん、おおいに混乱していらっしゃる。実は『カクカクシカジカ』と説明を始める僕たち。


「お前たちラルフがついているとはいえ、なんつー危ないことをするんじゃ。よくもまあ。・・・アスクさんに許可もらったんなら俺からは文句はないけどな。」


 嬉しそうに人差し指で、鼻先をこするアレク。


「まあ、でも今後は子供だけでの無茶はしないでくれよ。どうしてもやりたい場合は俺の許可をもらえ。そしたら文句はねぇよ。でもまぁ、ちゃんとお供えとして受け取っておく。大人代表として言っておく。ありがとうよ。そして、お礼てわけじゃないが、お前たちはまだ子供だしお駄賃もかねてお小遣いをやろう。」


 そういうと、僕たち一人一人に金貨を1枚ずつ手渡してくれた。大喜びする3人。もちろん僕もうれしい。ちなみに、世界に流通しているお金は、金貨・銀貨・銅貨があり、銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨10枚で金貨1枚である。ふつう、一般的な4人程度の家族であれば、月あたり金貨20枚ほどあれば生活できる金額であり、お金持ちでもなければ、子供がお小遣いとして金貨1枚をもらうことはない。要するに結構な大金をもらったわけである。これで、今日のお祭りの軍資金は完璧である。やった!


 え! 金貨とか銀貨とか、大金を扱う場合、ものすごくたくさん用意しなければならないし、そうすると金なんかはとんでもなく重くて、家などの高価な買い物なんかには向かないだろうって?確かにその通りなんだけど、そういう時は、銀行に依頼して、自分の口座から金額の情報だけを移動させる、いわゆる魔法取引という技術をつかって行っているから問題ないよ。銀行は一部金貨も持っているけど、実際はその人が持っているお金を魔法をつかって情報だけで管理しているんだよね。国家予算とかも同様に管理してるってわけ。なんか管理通貨制度って何かの本に書いてあった気がするけど。って誰に説明してるんだ、僕は。


 で、話を戻すと、お昼も過ぎて腹も減り、意図せずにお祭りの十分な軍資金を得た僕たち4人は、気分良く家路につくのだった。










 






 





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