表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第5章 ミズガルム共和国に迫る影
38/102

大統領の苦悩。そして黒幕とその裏側。

 レグルス一行は、ラバナ市庁舎の登山管理課という部署を訪れていた。霊峰ミズガルムへの入山許可の申請は、問題なく終わった。本当に手続きだけだったようだ。何でも、登山には遭難の危険がつきものであるため、勝手に入山させた場合に管理ができなくなるとのことだった。・・・いずれにしろ、これで第1の用事は終了だ。そろって建物を出る一行。時間は午後0:15である。昼時である。


 というわけで、昼食を取りに繁華街に繰り出すのであるが、流石、世界中の国と交易をしているミズガルムの首都である。もともとこの国の料理っぽくないものでも多数、店を出しているようである。・・・しばらく歩いていると、独特の食欲をそそられる匂いがしてくる。看板を見ると【ら~めん】と書かれている。これはレグルスも含めて知っているものが誰もいなかった。


「面白そうだから、入ってみようぜ。」


 ラークの意見に反対する者もなく、入店する。・・・結構客が入っているようだ。ふと視界に入ったのだが、ちょうどそのら~めんと呼ぶらしきそれを食するところである。どんぶりの中にパスタとは異なる感じの麺がスープに浮いている。外に漂っていた匂いはこれで間違いないようだ。そして、棒を2本使い、麺をすすっていた。スープの上には、肉やら野菜やら他にも渦巻き柄の文様が描かれた何かも載っていてそれもうまそうに感じる。


「あ、お客様は・・・8名様ね。空いてる席に座ったら注文伺いますから、少し待っててね。」


 奥の方はまだまだ空いていたのでそちらに向かう。・・・さっきの店員がこっちに来てくれた。


「なあ、ここのら~めんって何なの? それ頼もうと思ってるんだけどさ。」


「初めてのお客さんね。・・・ら~めんってね、アースガルドの方で生まれて、イースで発展した料理ですよ。店主はイースで修行したらしい。ここのテーブルにも置いてる、箸っていう棒でつまんで食べるんですよ。まあ、別に作法とかはないですし、無理そうならフォークもありますから、必要なら遠慮なくいってください。」


 ラルフの問いに答えてくれる店員さん。いきなりフォークもしゃくなので、普通のら~めんを8つ注文する。・・・そして待つこと15分。


「お待ちどうさま。ら~めんです。」


 次々にテーブルに並べられるら~めん。早速頂くことにする。・・・まず麺を啜ってみる。何の味かは分からないが、その味が麺に絡みついてうまい。スープも飲む。塩辛いし、油も浮いている。が、そこがいい。・・・これは箸が止まらない・・・・・・・は、食い切ってしまった。本当は食べながら今日の話をしようって言ってたのに、食べることだけに夢中になってしまった。・・・ら~めん、恐るべし。


 全員食べ終わったところで、改めて今日の予定を話すことにする。というのは、アクタの街の呪いの蛇の背後にいたであろう存在を見つけるためにどうすればいいかと話していた時に、ラークが、


「だったら、直接話を聞きに行こうぜ?」


 と言い出し、だったらきちんと話を詰めようとなったわけである。 そもそも誰のとこに行くのか?  誰が行くのか? そして、行ったら会えるのか? 問題は色々だ。


「アポイントは取ってないからな。・・・取りようもないけど。」


「ここはダメもとで行ってみるしかないんじゃないでしょうか?」


「もし、いきなり行って、対応してくれる可能性があるとすれば、王族やその国の権力者位じゃない?」


「王族が、お忍びでラバナに来たもんだから、顔でも出そうと訪問してみたって線でいけないかなぁ?」


「俺は別に構わないぜ。まあ、行ってみようぜ。他のメンバーは適当に街でも散策しててくれ。」


 レグルス、リーフ、エスト、アレクの言葉を受け、ラークが了承した。ラーク、ミリアム、リーフの3名でこの国の行政の中心、総務省に向かうようだ。その建物の最上階に大統領はいるはずだ。外遊や視察等で忙しくなければだが。・・・他のメンバーは言葉通り街をぶらつくことにする。集合は夕方に宿屋だ。




 ラーク、ミリアム、リーフの3名が総務省で名乗ると、対応した職員の顔がこわばっていくのが分かる。隣国2か国の要人がアポイントなしでいきなり訪問したのだ。そりゃ慌てるよな。・・・そのまま貴賓室に案内される3名。ここで、しばし待たされる。大統領に報告が行き、面会可能か聞いてくれているようだ。・・・




 少し時間が遡る。ネルヴァ大統領は午前中に参加していた議会の予算案審議でのことを思い出していた。この国の会計年度は4月より始まる。そろそろ来年度予算は通しておきたいのであるが、来るべき魔王軍との戦いのため、そして何より隣国の危機のため、イザヴェル王国の救済を対外政策の最重要項目と考えているネルヴァである。当然来年度予算案にも、援助物資にかかる費用、輸送費、街道警備にかかる費用等、十分な金額を計上している。今年度も計上していたのだが、議会の多数は野党である国民党にあるために大幅に下方修正させられた。特に警備費用がだ。理由はいつものお題目。


「国民の血税を無駄に使うわけにはいかない。」


 だ。現在治安にかけている金額は全く持って足りていないのだが、多数派がこれでよいと言われれば、それが通ってしまうのが民主主義の悪い点である。詳しく金額の用途を詰めて考えているのか問いただしたくなるが、こちら側の主張に聞く耳は持たないようだ。


 おかげで折角、長年の冷戦状態から脱却したイザヴェル王国とグリバール王国のおかげで、王都イザヴェラへの北部からの物資の輸送が可能になったというのに、使用される街道での治安の悪さでその効果が減じられているのである。北方への輸送が今後さらに重要になったにもかかわらず、予算を割こうとはしない。王都イザヴェラとラーウェが落ちたら、次に狙われるのは、グリバールとミズガルムである。それが分からないはずはないのに、国民党は国内の目先の利益に拘ろうとする。


 そして浮いた予算はどこに回すのかといえば、国内産業への交付金を増額したり、新しく起業する人への融資に当てたり、街の者が共用できる会館を建設したり等、色々案が出てきて、今年度は通ったりしている。・・・そこにもからくりがあるような気がしてならない。・・・あくまで憶測にすぎないが、近年多発する盗賊被害。減少傾向になる警備予算。もし、交付金と称して、大きな犯罪組織に金が流れるような事態になっていたとすれば、つじつまが合うのである。その糸を引いているのが国民党・・・いや、考えすぎか。仮にも国家を支えるべき者が国家転覆を企てるとかあってはならぬことだ。・・・そんなことを考えているとき、不意に部屋がノックされる。秘書のようだ。


「失礼します。急遽、イザヴェル王国王女ミリアム様、第3王子リーフ様、グリバール王国王子ラーク様が来訪されております。都合が付くようであれば大統領との面会を希望されているようなのですが、以下がされますか?」


「何だと!・・・分かった。公式にというわけではなさそうだし、こちらにお呼びしても差し支えないであろう。こちらへ来られるよう、丁重にご案内差し上げろ。それと他の者に、来客を迎える準備をするよう指示するように。」


「畏まりました。・・・」 


 そう言って、退室する秘書。午後は少し暇ができて思案に耽ることができると思っていたのだが、どうやらそれは無理そうである。




「ラーク殿下、ミリアム姫、リーフ殿下、ようこそおいで下さいました。私が大統領のネルヴァでございます。」


「ご丁寧に有難うございます、大統領。お会いできて光栄に存じます。」


 大統領の挨拶に対して応対するラーク。 まずは、自分たちの旅の目的について話始める。彼が所属する秩序党は掲げる政策的に例の犯罪組織の後ろにいる可能性が無いからだ。素直に話しても問題ないと判断した。その方が話が早いしな。


「なるほど。勇者育成と魔王討伐ですか。最初は驚きましたよ。ついこの間まで国交すらなかった2か国の王子王女が同席しているのですから。魔王討伐は我が国だけでなく全世界の悲願になります。そこについては全力で協力しましょう。しかし不思議なものですな。かつて勇者カミュが現れたのがイザヴェル王国の中。そのカミュ殿が新生イザヴェル王国の王位をついで700年程、その王家から再び勇者が生まれたのですね。やはり血が関係するのですかな?」


 それを答えられるものは、ここにはいないだろう。それよりも・・・


「アクタの街の犯罪組織、呪いの蛇ですか。・・・こちらでも存在は把握しています。数日前に突然その本部が爆発し、多数の死者を発見。生存者は逮捕されましたが・・・勿論、そこが犯罪組織であったことは、そこに残っていた証拠から明らかでした。が、こちらもその呪いの蛇の裏にいる存在を疑ってはいるのですが、そこに関する証拠は何もなかった。・・・」


「誰が怪しいかは大体推測は付くんだけどな。・・・」


「王子様といえども、それ以上は無しですよ。誰のことを言っているのかはわかりませんが、証拠もなしに人のことを疑うのはまずいですからね。一応、非公式とはいえ、他国の要人同士の会談ですし。」


 この人も狸だな。本当は誰のことを言っているのかはっきり分かるくせに。ラークはそう思ってしまう。ポーカーフェイスうまいな。勿論、国民党党首のクレメンスのことだよ! と思ったが言わないでおく。 本当に証拠ないしな。


「・・・それにしても、これから霊峰に向かうのですか? 春が近づいてきているとはいえ、山の標高が高いところは寒いですから、くれぐれもお気をつけて。・・・そうそう、折角このラバナにお越しいただいたのです。明日の夜は晩餐会を開きますので、お供の者も是非お連れになってお楽しみください。」




 そんな感じで、無事、非公式の会談を終える3人。特に成果はなく、晩餐会という余計な手間を大統領にさせることになってしまったらしい。まあ、政府として、詳しい情報は持っていないということが分かっただけでも良しとすることにし、総務省を後にするのだった。・・・晩餐会という堅い場に呼ばれることになった他5人はどういう反応をするのか? 少し楽しみなラークである。




 3人が帰った後、急遽、国内の要人に渡す案内を書かせるネルヴァ。と同時に晩餐会の準備も手配する。 この晩餐会、その場の思いつきであることは否定はできないが、イザヴェル、グリバール両王国の要人を歓待するという目的ではない。いや、そういう目的もあるが、真意は別にある。晩餐会の案内は、国の主要政治家に送る。それは、国民党の議員にもだ。当然大きなパーティになるだろう。そして、国民党のクレメンスが本当に黒幕であるならば、両国の要人が参加するこの晩餐会で、何か行動を起こしてくるはずだ。あわよくば、そこで事件を起こし、その責任を俺に被せようとしてくるはずだ。だが、そこが逆にこちらが相手のしっぽを掴むチャンスになる。・・・狐と狸の化かし合いが始まる。・・・そう思い思案に耽るネルヴァであった。




 少し時間が経ち夕刻時、場所は国民党本部。その一室に党首室がある。今、この部屋には誰もいない。いないが、この部屋から繋がる秘密の通路を通ってたどり着く、他からは入る手段のない隠し部屋に、党首クレメンスがいた。手には既にネルヴァからの晩餐会の案内状が握られていた。当然内容には目を通している。今、この部屋には、クレメンスの他には、一見人に見えるようで、決して人ではない存在がいる。肌は浅黒く、耳は尖り、腰に付けた曲刀が目を引く。


「お前のお抱えの組織、呪いの蛇は潰されたそうだな。計画の方は大丈夫なんだろうな?」


「確かに呪いの蛇は潰されましたが、お抱えの犯罪組織はまだあります。計画に支障はありません。来年度の予算にも警備費用は極限まで抑えさせます。イザヴェラへの物資の輸送はいずれ止まりましょう。それにこれをご覧ください。マルロー様。」


 そういったクレメンスは、マルローに、晩餐会の案内を渡す。


「そのうち、大規模にイザヴェラへの物資輸送隊に壊滅的打撃を与えて、その政策を掲げていたネルヴァ大統領に責任を取らせる計画でしたが、もっと早く責任を取らせる機会が巡ってきたようです。晩餐会にて、そうですね。ミリアム王女を狙うのがいいのかもしれません。」


「ほほう。暗殺ですか。で、会を主催した大統領にその責任を取らせると。うまく持っていけば、その混乱を理由に物資の輸送も止められるな。・・・だが、どうやって殺る?」


「依頼を数回挟んで、組織の下位の者にでも紛れ込ませて殺害させましょう。肩書に秩序党員の者もいます。ミリアム王女は手練れといううわさもありますが、歓談中を襲われればひとたまりもないでしょう。途中に挟む依頼者は、口封じに、出国でもさせましょか?ドヴェルグ辺りに。」


「それでいいだろう。だが、失敗は許さんぞ。というより貴様に害が及ぶか?」


「ご安心を。必ずや成功させます。・・・それよりも、イザヴェラが滅亡し、この国も魔王様の支配下に入った暁には、私めをこの国の皇帝にしていただけるというお約束はお忘れなきよう・・・」


「フフフ。それはもちろんだとも。貴様の献身には、魔王様もお喜びである。成功した暁には、・・・約束しようとも。貴様の皇帝の地位をな。」


 満足そうな表情で、この隠し部屋から退出する党首クレメンス。クレメンスが、このマルローと呼ばれる存在と繋がっていることを知る国民党幹部は誰もいない。彼お抱えの複数の犯罪組織もだ。彼らにとってクレメンスは、悪どいことはやっていても、自分たちに利益を還元させるリーダーである。よもや、このような野心を持っているとは思っていないのである。せいぜい、ネルヴァ大統領の後釜に収まろうとしているとは皆が思っていたことであるが、魔王の庇護下の元、自分がこの国の支配者になろうとは、想像だにしていないのである。それは対立政党である秩序党の面々も同様であった。政敵ではあったが、そこまでのゆがんだ野望までは見抜けていなかったのである。・・・そのクレメンスが完全に立ち去ったのを確認して、マルローはクレメンスに対しての思考の中で嘲笑を始める。


 自己の野望と保身のために国を売るとは馬鹿な男です。あんな約束、こちらに守る義務などないことは少し考えたら分かるでしょうに・・・。だからこそ、ヤツに話を持ち掛けたのに。我々の目的はこの国を混乱させること。ある意味この国は政治システムがしっかりしています。崩すのは容易ではなかったのですが、この馬鹿のおかげでうまくいきそうです。・・・まあ、こちらにとっては暗殺がうまくいくかどうか、どうでもいいのです。どうせ、イザヴェラはあと少しで落ちる。ダメならダメで、後から力ずくで落とせば済む話ですしね。


 馬鹿といえば、ヴィトという男もそうです。自分の世界を救うためこの世界を支配するつもりだったようですが、逆に利用されるとも知らず、当初ニーズヘッグとお名乗りになった、ゲルザード様を手なずけたつもりになって、その実、逆に支配されていることに未だ気づいていない・・・。あの男はもうだめですね。もうそろそろ、ゲルザード様が全面に出てもいいのかもしれない。既にヤツの部下の何人かは、知ったうえでこちらに付いたようです。ロキやイアリはその代表格なんですが。まあ、イアリは戦死したようですね。・・・ゲルザード様がお力を開放なさって、真の主をこの世界に召喚なされたときに、この世界は完全に我々のものとなりましょう。


 そう言えば、数年前、ガイアナ島、グルド山のゲルザード様の封印の祭壇を訪れた少年はどうなったですかねぇ。 人の身であれだけの戦闘力。・・・大変興味深いです。・・・あの存在が、封印を解く前のゲルザード様に相対されると少々面倒ですね。・・・その前に消した方が安全なのですが・・・今どこにいるんですかねぇ?・・・もうちょっと楽しみたい気持ちもあるんですけどねぇ。


 そう頭の中で思考した、マルローという名の悪魔は、転移魔法によってこの場から消え去るのだった。






何か事件が起こる前で止まってしまいましたが、キリがいいのでご勘弁を。次回晩餐会編になります。たぶん何か起こると思いますが。次回更新は4/10夜に。時間はすいませんが未定で。ただなるべく頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ