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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第4章 水龍の洞窟
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レグルスの無双

1734年 2/1 オスロの兵舎にて

 

 現在は有事ではなく、イザヴェル王国との国交樹立とのニュースも舞い込んできており、常駐する兵は多少弛緩しながらも、一応街の警備業務に当たっていた。


「お~い。暇だな~。スミスよ。」


 一兵卒のノーランが同僚の兵士に話しかける。誰にだれ切っているが、


「もうちょっと我慢しようぜ。もう夕方だ。交代時間もあと少しだし、終わったら酒場に直行だ!」


 それを聞いて笑いあう2人。他のメンバーもほほえましそうに見ている。このまま、いつも通りの日常が終わりを告げると誰もが思っていたその時、見張りの一人が、声を張り上げる。


「あれは何だ!」


 上空を見上げると、夥しい数のドラゴンの群れである。そのうち何頭かには、人らしき者が騎乗しているようだ。その数はおよそ3000、いや5000か?突然現れた恐怖に、誰一人として対応を始めるものがいないのである。しばらくしてから、意を決した部隊長がようやく出撃命令を出したのを聞き、出撃する一同である。・・・だんだん近づいてくるその威容たるや、兵士たち全員の繊維を喪失させるには充分であった。





 転移魔法で、オスロの街に一瞬で戻ってきたレグルス。遠く見渡すと、飛龍と飛竜が大体半々か?真っすぐこちらに向かってきている。レグルスにとっては幸いなことに、ドラゴンの一団は固まっていて生気収束波で一網打尽にしてくれと言わんばかりである。いつものように両手を前に突き出し気を集め始める。


 


 イアリは只今、ドラゴンの群れ凡そ5000を率い、オスロ上空に向かっている。先日のイエテイ集落傍の拠点にて、意味不明な戦力を持った旅人から味わった屈辱は忘れることができなかった。竜も一定以上用意し、実験段階とはいえ、たまたま見つけた強力なアイテムを使って作り上げた最高傑作のアイスゴーレムを破壊され、逃げの一手を打たざるを得なかったあの屈辱を。だから、今回の出撃は完全に八つ当たりであった。この国には、イザヴェル王国のリック将軍のような人外な存在はいない。強力な陸上部隊も海軍も、弓兵部隊もいない。そこそこ強い兵が多数いるだけである。ドラゴンの大軍で攻めるだけで一溜りもないであろう。そして、今向かっているのはより落とすのが楽な地方都市オスロである。他国に近いこの場所であるから常駐戦力を浮遊しているこの都市であるが、王都のそれと比べれば大したことはない。自分は楽な方を選んで楽しむつもりなのである。


 ふと、前方を見ると1人の人間が立っているように見えた。一瞬目の錯覚とも思ったが、不意に嫌な予感がした。先日雪の中の砦にて味わったような理不尽さが襲ってくるという予感が。他の部隊に指示する余裕もなく一人上空に上がる。その直後強烈な光のエネルギーの奔流が今自分がいた場所を通り抜けていった。・・・今のは何だ?・・・魔法?・・・いや、魔力は感じなかった。だが、強力なエネルギーは感じた。・・・今のはあの人間が出したの?・・・魔法も使わずに・・・いや、強力な魔力は秘めているようだが、今のは断じて魔法ではなかった。じゃあ、なんだ?・・・意味が分からない。ここで少しだけ冷静さを取り戻すと、引き連れてきたドラゴンの80%以上が消滅したようだ。・・・


「なんだそりゃ! ふざけんじゃないわよ!」


 イアリの発言を聞いているのかいないのか、その後遠く前方にいた男は、飛び上がり飛竜を葬り去っていく。ほぼ一撃でドラゴンはやられて地に落ちて行っているようだった。・・・再びイアリが正気を失うのに時間はかからなかった。




 レグルスは開幕の一撃によって、ほとんどのドラゴンを消し去っていた。残るはあと800以上であるか?いずれにしてもまだまだ脅威となる数である。 レグルスはすぐさま飛び上がり、目の前に出現した飛龍を殴り頭部を爆砕させる。その勢いのまま次々と近くにいるドラゴンを倒していく。実は、レグルスは自らに風魔法を掛けて、宙に居られる時間を長くしているのである。そして、ゆっくり地上に落ちてからまたジャンプを繰り返し、片っ端から空中で固まっている竜種を撃破している。


 ただ、固まっている竜種ばかりではない。数頭の飛竜がレグルスの隙をついてすべてを燃やし尽くしそうな紅蓮の炎を浴びせかける。・・・が、レグルスには通じない。装備している幻獣の革手袋(ゲンジ)と神龍の武闘着の効果である。・・・自慢の炎を浴びせてもノーダメージな様子に困惑するドラゴンを片っ端から沈めていくレグルス。すると、飛竜に騎乗していた者たちが、動きを封じ込めようと、バインドの魔法で麻痺させようとしたり、フラッシュの魔法で目くらましを掛けてきたり、コンフューズの魔法で混乱させようとしたり、それらの状態異常も装備効果でレグルスには一切通用しない。唯一サイレスの魔法だけが効果があり一度は掛かるのだが、レグルスから発散される闘気が、サイレスの魔法効果を一瞬で弾き飛ばしてしまう。敵からすると手が付けられない状態であった。


「化け物め!」


 誰かが、そうつぶやいたが、その瞬間その者の首が飛ぶ。・・・とうとう敵軍全体が恐慌状態に陥った。気が付くと残りたったの3頭になっていた。そのうち1頭に蹴りをお見舞いしその竜から鮮血が吐き出される。そこを両手で叩き落とす。そして横にいた飛龍は蛇のようにくねりながら逃げるのだが、的確に頭部の位置だけに狙いを定めて、右フックにて頭部が爆砕。残る1頭はイアリが騎乗する者だった。


「おーけー、貴方が強いのは分かったから、話し合いましょう? ね? ね?」


「・・・・・・」


 レグルスは聞く耳を持たなかったようだ。竜の顎に強烈なアッパーを決めた後、本日2発目の生気収束波がイアリを襲う。彼女にこれを耐えたり回避したりするすべはなく・・・


「畜生が!!!!」


 これが、この世で発したイアリの最後の言葉となった。



 

 レグルスは地面に着地すると、周囲を見渡すと、改めてこの街に被害が出ていなかったことに安堵する。無事防衛に成功したようである。ここで一つのことに気が付く。一気に殲滅してしまったが、最後に残っていたの敵の大将だよね。・・・捕まえて捕虜にすればよかったんじゃ・・・まあ、今更気が付いてももう遅いという話である。次はもう少し慎重に行動しようと心に誓うレグルスであった。




 遠くで、レグルスとドラゴンの一団との戦闘を見学していた兵士団は驚愕のあまり、顎が外れそうな有様であった。まず、この青年から放たれた光の一撃が、一瞬にしてドラゴン兵団のほとんどを飲み込んだこと。さらにその直後、青年は跳躍し生き残ったドラゴンたちを武器も魔法もほとんど使わず、1頭ずつ地に落とし、最後の1頭に至るまですべて狩りつくしてしまった。誠、見事としか言いようがなく、同時に自分たちの出番がないことも悟り、当初、急いで援軍に行こうと考えていたその気がなくなってしまったのである。尤も、本来援軍は彼のことなのであり、あそこに居なければならないのは自分たちなのだが・・・そして、戦闘終了後、ここの兵士団、常駐隊隊長はバツが悪そうにレグルスの方まで歩いていくのである。そしてレグルスの前でこう述べる。

 

「どなたかは知りませんがこの街を救ってくださり有難うございます。」

 

「いえ、ここが危ないと知らせてくれる人がいたので。たまたまですよ。」


「常駐兵士団の代表として感謝申し上げます。」


 そう言われましても・・・もう少しご自分たちの仕事を・・・と言いたかったが自粛したレグルス。正直、彼らは何をしに来たのか?という感じであった。レグルスの目から見てもオドオド・ビクビクといった様子である。この人たち軍人に向いていないのでは?・・・そう思ってしまった。逆に考えると、ここに自分が来なかったら、オスロは滅亡していたかもしれない。自分がここに来たのは大正解だった。そう思って、急ぎオスロを後にし、王都グリベルに転移するレグルスであった。


 この事実を後で知ったルミナス女王がオスロの常駐兵士団に大幅な人事異動を伝達するのは、少し後の話である。




 

 


本日2話目は短めですがご勘弁を。次の話は第4章の最終話になります。4/2の夜に更新予定です。よろしくお願いします。

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