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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第4章 水龍の洞窟
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氷晶石集め。氷精霊のペンダントの修復。そして、グリバール王国の危機。

 青龍の洞窟を出て5日目、現在は北の海岸にたどり着いた一行。海岸の傍まで馬車で来ることができたため、大きな疲労感もなくここに来られたのはいいのだが・・・。


「きゃ~! ひっろ~い!」 「海って、雄大ね~!」


とか女性2名が最初燥いでいたのが、それほど時間もたたぬうちに、ほぼ無言になる。・・・寒いのだ。当たり前である。海からの湿った北風が、中腰姿勢で石拾いをしている我々を遮るものがない状態で直撃しているのである。冬の北の浜風をなめていた一行は凍えていたのである。一人、地元民(?)のラークだけが、


「こうなることは分かってたけどね。」


とか言っているが、だったら最初から言っとけ、という話である。ところどころに打ち上げられた流氷が融けることなく転がっているような浜辺で、素手で小石取りをしているわけである。しかも拾っているのは氷晶石という、氷の魔石である。触って冷たいくないわけがないのである。そこを北の浜風が襲う。さらに悪いことに、何故か一人ご機嫌なゲンがリサイタルを止めないのである。拷問であった。全員の視線がレグルスに突き刺さる。とうとう堪りかねて一言いうレグルス。


「ゲン、うるさいぞ! 少し黙れや!」


『なんでやねん! 気持ちよう歌ってるさかいに。』


「あんまりうるさくすると、今後、Gの入った籠の中に保存するぞ?」


「レグ、それはないやろ~、待遇の改善を要求する!」


それを聞いていた一同は、「Gと一緒になっていたグローブを手に嵌めるのか?」とか「その前にG飼ってるの?」とか「お前G平気なの?」とか「そういえばアイツ、昔、普通に素手でG触ってたぞ。」とか色々思うところがあったが、結局誰一人として突っ込まないのだった。


 氷晶石拾いは確かに大変であったが、ところどころに確かに落ちているのを確認できる。それを今期ずよく続けること2時間。ようやく全部の氷晶石を回収することが出来た。ここまで、元のポイントから1㎞位歩いていただろうか。さっきではわからなかったものが、ここからではよく見える。あそこに見えるのは・・・アザラシの親子か?


 そこには、母親と思われる全身ゴマ様の斑点でおおわれた、人と同じくらいの大きさのアザラシが、全身が真っ白い産毛で被われた赤ちゃんにミルクをあげている光景があった。少し距離もあるためか、うちの女性たちが「キャー」とか言ってっても聞こえる様子はない。まあ、男供でもこれはほっこりするな。


 そう思いながら、氷晶石が集まったのをいいことに、しばしの間、その光景を眺めていたら、急にアザラシ親子が警戒を始める。母親アザラシが子供を庇うようなしぐさを始める。一瞬俺たちか?とも思ったが違うようだ。・・・警戒しているのは沖の方だった。そっちを見てみると、確かに強力な魔獣の気配を確認することができた。アザラシが目的なのか、あっちへ向かっているようだ。


 少しして現れたのが、全長4m程ある大亀である。こいつは氷狂亀といって、海中で魚などを食べる他、時々陸に上がって、アザラシやセイウチなどを捕食するらしい。コイツは4本脚で歩けるタイプのため、陸上では、足が退化気味のアザラシには逃げるすべがなく、はっきり言って天敵であった。正直、嫌なものを見てしまったなぁとのんきに眺めていたら、・・・気が付いたらエストが詠唱を始めている。・・・慌てて肩をタップしそれを止める。


「ちょっと、何するのよ! アザラシの赤ちゃん死んじゃうわよ?!」


「・・・いや、野生動物のこういった行動を妨害するのはルール違反だろ? あの亀も生きてるんだし?」


 レグルスは正論で返したが、エストは納得しないようだ。ミリアムもエストに同意しているようだ。他の男衆は・・・リーフも同調したな?偽善なんだけどね。他は・・・どちらでもよさそうな雰囲気だ。・・・皆、自然へのルールは守ろうよ?


「レグっち。あんまり難しく考えなくてもいいんじゃね? 偶々目に入って、可哀そうだから助けたって。どうせ一期一会。もうこんな機会なんて無いしよ。ここで助けないで、レグっちだけが不興を買う方が俺たちにとって不利益だぜ?」


 その後自分以外の6名に見つめられる俺。・・・わ~ったよ! 助けりゃいいんだろ!助けりゃ! GOサインを出すや否や、エストが詠唱を開始、リーフも雷撃の呪文を唱え始めた。・・・もう少しでアザラシ親子に襲い掛かるといったところで、2人の魔法が命中。亀がこちらの存在に気が付いたが、ここで俺が闘気を全開にしてやると、亀は怯えて、全力で海に帰っていった。・・・現時点で俺たちの敵というわけでないから、今回はこれでいい。というか、これ以上はやりすぎだ。・・・アザラシ親子は心なしかほっとしているように見えるのは気のせいだろうか?


「今回みたいなのはこれっきりにしてくれよ?」


 と釘は刺しておく。 みんな「は~い」とか言ってるが・・・


 とりあえず、目的のブツも回収したので、一旦馬車のところまで戻り、馬車を収納に仕舞ってからゲートを使用。再度、水龍の洞窟へ。




「あらん? 戻ってきたのね? 必要なものは集められたかしらん?」


 洞窟に戻るや否や、水龍はすぐに現れてくれた。そこで集めてきた氷晶石を出して見る。・・・チェックを始めること数分。


「うん、大丈夫なようね。必要な量も質も問題ないわ。じゃ、これから修復作業に入るわね?」


 人間形態になった水龍はそう言うと、集めてきた氷晶石に手をかざし、魔力を込め始める。・・・なんでもまず純粋な氷の魔石になるように精製する必要があるようだ。作業終了まで約30分。終了後は、破損した氷精霊のペンダントの意志の部分に、精製した氷の魔石を当てて、また魔力を加え始める。こうすることで元の魔石部分に施された術式を生かせるんだとか。集めてきた氷晶石から一から作れないのか聞いてみたら、それやったら何カ月もかかるわよ?と言われてしまった。そこから待つことさらに30分。ようやく氷精霊のペンダントの修復が終わったようだ。


「これで、このペンダントを使って、リーフちゃんに氷の力を授ける儀式を始められるわね。・・・じゃあねぇ、リーフちゃん、あたしの前で両ひざをついて祈ってもらえるか知らん? あとね、氷精霊のペンダントを持つのは・・・やっぱりラークちゃんね。」


 言われたとおりにするリーフに対して、ご指名を受けとても嫌そうな表情をするラーク。そのペンダント自体はいいものなんだけどね。すると、水龍は両手を合わせ、己の魔力を集中させる。その隙間に強力な氷のエネルギーが溜まってくるのが見ていて分かる。と同時にラークが持つ氷精霊のペンダントの石の部分が光り輝き、水龍が集めている氷の魔力を増幅しているようだ。・・・そして、十分に溜めたそれを、跪き祈っているリーフに注ぎ込む。するとリーフが青白い光に包まれ、・・・やがてそれが治まっていった。


「これで、儀式は終了よ。たしかにリーフちゃんに氷の魔力を授けられたわよ。これと同じことを後5回。それぞれ、火・風・土・光・闇を司るあたしの仲間から儀式をやってもらえば、リーフちゃんは強大な力を封印する魔力を得ることができるわ。だけどね、間違わないでほしいのは、今回授けた力で、氷の魔力が使えるようになるわけじゃないから勘違いしないでね。」


「そりゃ、どういうこった?」


 意味が分からなかった、ラルフが問う。


「うんとね、リーフちゃん氷の魔法の適性が余りないのね。雷の魔力を使う関係で少しはあるみたいなんだけど。多分これからも雷の魔力は挙がっても氷の魔力は大して使えないと思う。ただ、力としては体の中にちゃんとあるから大丈夫よ。ただ、光龍ちゃんが授ける光の力ならリーフちゃん、十分に使いこなせそうな気がするわね。それと、6種類全部集めたら、一気にいい効果が出ると思うわよ? 多分、ステータスが跳ね上がるとか? 前のカミュちゃんがそうだったし・・・あとね、さっきのペンダント。あれはラークちゃん専用ね。多分他の人では能力引き出せないから。火精霊のペンダントがエストちゃん以外はダメなようにね。」


 やはり、このペンダントは人を選ぶんだな。新加入のラークが所有者として認められるとか、何という偶然なのか。・・・まあ、ラーク自身は嫌そうにしてるけどね。ここ出たら、そういう仕草もしないだろうし。


「さて、これであなたたちにとっては、この国でやるべきことは終了かしらん? 次はどこ行くの?」


「そうだな、距離的には、霊峰ミズガルムに行くべきだろうなぁ。リーフの強化に繋がりそうだし。もしかしたら、ミリアムにも・・・」


 水龍の問いに、レグルスが答えてみる。


「妥当なところかしらねぇ。もしかしたら、ミリアムちゃんも光精霊のペンダントの所有者になるかもしれないし、レグルスちゃんかもよ?・・・まあ、仮に認められなかったとしても、儀式には使えるからそんなに心配しないでね。」


 現在のパーティーメンバーで他にペンダントに認められそうなものがいるか聞いてみると、


「そおねぇ、今のところ風、土、闇に認められそうなメンバーはいないわね。イメージ的にはレグルスちゃんとか土って感じだけど、貴方土魔法使えないしね。可能性があるのはやはり光だけど、たぶんそっちはミリアムちゃんかな?・・・でも、もしかしたらそういうメンバーがこれから仲間になるってことかもよ?」


 こればっかりは、分からんな。実際旅してみないと。そもそもそんな奴がいるとは限らんし。


『なあなあ水龍よ。わい、いつまで皆に声聞こえるかいな?』


「レグルスちゃんから少しずつ魔力貰ってれば、ずっと大丈夫よ。いい加減やり方覚えなさいよね。あたし、アンタにこれ教えたの初めてじゃないんだから。」


『おう! ありがとさんな。しばらく退屈せんで済みそうや。』


「じゃ、そろそろお暇するな。元気でやれよ、水龍。」


「はーい、アンタたちことが落ち着いたら遊びに来なさい。・・・ん!」


 今まで優しそうに話していた水龍が真顔になる。どうした?


「ちょっとヤバいかもよ? この国のグリベルって街とオスロって街にヤバい気配が迫っているわ。多分普通の人間じゃいくら数がいても意味ないわよ? ラークちゃん?両方の町に強力な兵士っている?」


 いないのかよ?! と突っ込んでる場合じゃないな。シャレになっていない。イエテイ集落傍の拠点をつぶされたのが頭にきたのか? ここからじゃ俺では敵の様子はさすがに探れない。水龍の言うことを信じて動いた方がよさそうだ。


「どうする? どっちかに絞って全員で移動するか? それとも全力分散させて、両方に行くか?」


「すまん。みんな。俺にはどっちも見捨てることはできない。分散させる方向で考えられないだろうか?」


 申し訳なさそうに、頭を下げ、声を絞り出すラーク。そりゃ、見捨てられないよな。


「パーティーを分けるのは構いませんけど、どう分けます?」 とミリアム


「俺1人でオスロに行く。他はグリベルの防衛に回ってくれ。」


「ちょっとレグ! それは無茶よ! 私も行くわ。」


 2人でしばし言い合いをすること数分。水龍から助け船が出る。


「そうねぇ、両方とも飛竜(龍)の群れが5000ずつってところかしら? うん、あのくらいならレグちゃん一人で大丈夫そうよ? 逆に王都グリベルの方が残りのメンバーでギリかしら。 これでもあたしの能力分析には自信あるわよ? だからね? エストちゃんも信じてあげて? ・・・大丈夫よ~。レグちゃんつよいんだから~。」


 ようやく、折れてくれたらしいエスト。「死ぬんじゃないわよ!」と蹴り入れられたが。・・・いってぇな。


 こうして、レグルスは一人オスロへ、残りのメンバーは王都グリベルへ、それぞれ転移によって移動したのだった。


 








最近前の投稿見てると、時たま誤字等を見つけて、直したりしています。今回ももし変な表記があったらご容赦を。この章はあと2話かかります。そのうち1話は、今日の15時までに上げます。残りは4/2の夜にでも。

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