アイスゴーレムとの戦闘と氷精霊のペンダント。
イエテイの集落の長の家に仕掛けられていた、盗聴用器具に残されていた魔力から、仕掛けた者たちの魔力の波長を特定したレグルス達は、一晩休んだ後、一気に敵のいる場所に転移する。・・・だが相手側は、こちらが来るのを手ぐすね引いて待っていたようだ。そこは、森の中に隠れるように存在していた洞窟の外であったが、この転移先には、氷の魔力を纏った全長5mはあろうかというゴーレムの他、10頭の飛竜、23頭の地竜が待ち構えていた。ただ、直接転移してくるのは予想外だったのか、突然目の前に現れた俺たちに動揺しているようだ。びっくりして数頭のドラゴンが咆哮を挙げている。・・・そんな様子を見ていると、どこからか声が響いてくる。
「あらあら、皆さんいらっしゃ~い。でも直接転移してくるなんて、ちょっと驚いたわ。でもわざわざ来てくれるなんてうれしいわ。でも、色々知ってはいけないこと知っちゃってるみたいだし、ここで死んでもらおうかな? ドラゴンたちも動揺しちゃっているようだけど、これだけいれば瞬殺でしょう。・・・アイスゴーレム! 命令よ! こいつらを皆殺しにして!」
これを合図に、一斉にこちらに攻撃を仕掛けてくる、ゴーレムとドラゴン。俺たちは散開し、まずはそれぞれで対応する。まず、俺レグルスが、地竜1頭の頭頂に蹴りを放ち、これを踏み台にして傍に迫っていた飛竜1頭に右拳を叩き込み鎮める。着地際をさらにもう1頭の地竜が咢を広げて襲ってきたが、ここを狙っていたのか、エストのファイアボールがその地竜に直撃して炎上する。
少し離れたところでは、纏まっていた5頭の地竜に対して、ラークが上空から巨大な氷柱を落とす魔法アイスロックで一網打尽にしていた。また他方では、ラルフの体当たりで体勢を崩した地竜に対してアレクとリーフが切りつけて・・・1体倒したようだ。・・・その間にも、レグルスは1頭、また1頭と竜種を倒している。上空に待機している飛龍に対しては、ラークが氷魔法を付与した矢で、次々と射抜いている。・・・そして少しづつ消耗する体力は、ミリアムが遠距離から回復魔法で回復してくれている。・・・10分もすれば、竜種は全滅していた。・・・一体のゴーレムだけを残して。
そのゴーレムが動き出す。そこへラルフの体当たりが真面に入るが、逆に吹っ飛ばされる。・・・少しラルフは凍っているようだ。動けなくなっている。そこへすぐにミリアムが向かう。このゴーレムの属性的に自分の魔法が通じないと悟ったラークは遠距離から通常の弓攻撃をしているが意味はないようだ。アレクもバインドの魔法で行動阻害を掛けようとしているのだがうまくいってないようだ。・・・初め、ラルフの体当たりは失敗したものの、衝撃には弱いと考えたレグルスが、気を込め一撃を加える。目論見通り当たった頭部が爆砕するのだが、・・・10秒ほどで再生してしまった。・・・直後、エストから全力のファイアボールが炸裂する。・・・これは、かなり効果があったのか、炎とは相性の悪い氷属性のアイスゴーレムは体の3分の1程を溶かしてしまっている。・・・しかし、それでもやはり再生は始まってしまい、徐々に元に戻っていく。
回復する前に攻撃をと、治療が完了したラルフにアレク、リーフが切りかかる。だが溶けかかっている体であるにもかかわらず、剣戟が中々入らない。結局3人は吹っ飛ばされる。特にリーフは、地面に叩きつけられる際に頭を打ったようで、気を失ったようだ。さらに火魔法の追撃を狙っていたエストも詠唱中,
「きゃぁ」
アイスゴーレムに一撃を加えられ、悲鳴をあげながら、吹っ飛ばされる。そのまま追撃をしようとしたアイスゴーレムの右拳をどうにか間に合ったレグルスが両手で受け止める。そのまま力比べの格好になるが・・・力は十分拮抗、いやレグルスの方が上ではあった。が、直接長い時間触れたためか体が凍り始める。まずいと思ったときには、全身氷漬けになってしまった。
パーティー全体に嫌な空気が流れ始める中、気を失っていたはずのリーフが立ち上がる。・・・見ると目の焦点は合っていないようだ。意識はないのかもしれないが、ふらふらと立ち上がって剣を構えると、剣から強烈な光が放たれる。・・・アイスゴーレムは急に現れた脅威に敵意を向け始めるが、それは少々遅かったようだ。・・・リーフが振り下ろした剣がアースゴーレムの胴を一薙ぎすると、ゴーレムの上半身は剣の動きにやや遅れてずれ落ちる。中からはコアと思われる球体が露出していて、ひび割れていた。・・・やったか?
コアを破損したゴーレムが再び再生することはなかった。それを確認したとき、ようやくレグルスは氷の束縛を破ることができたようだ。今回は完全にリーフのお手柄だった。・・・が、そのリーフに反応がない。・・・以前の王都の時と同様に、無意識で大きな力を使って気を失ってしまったようだ。あるいは初めから気を失ってたからこんな力が使えたのか・・・少なくともリーフが勇者の力を十全に発揮できるようになるまでには、まだまだ時間が必要なようである。
「あらら、あっさり壊れちゃったわね~。・・・しゃあないね。ここは、撤退しておくよ。・・・あんたたちのことは覚えたよ。次に会う時があったらちゃんと殺してあげるから。またね~。」
今の声の主の気配が消えていく。ここには、それ以外にも人の気配があったのだが、今の瞬間にその気配がなくなったようだ。・・・ここで、ふと気が付く。先ほど破壊したアイスゴーレムのコアから、依然として冷気が発散され続けていることに。そこで、ひび割れたコアを取り出してみると、中には青白色の宝石のペンダントが収められていて、それから冷気が発散されているようだ。
『あ、これ氷精霊のペンダントで間違いないわ。』
現物を唯一知る、ゲンの発言である。間違いないだろう。・・・しかし、エストが持つ火精霊のペンダントと比べ、魔力の出力が明らかに弱い。・・・よく見ると、宝石部分に破損が見られる。
「これ、さっきの戦闘で壊れたんじゃないかな? それに、このコアが無理やり魔力を吸い取っていたような跡があるな。」
鑑定魔法を使ってみたのか、アレクがそう証言する。もしかして、これは回収してもそのままは使えないパターンか?・・・とりあえず氷精霊のペンダントは回収しておく。そしてもう一つ気になる、ここで放置された敵の拠点が目の前にある。・・・警戒しながら中に入ってみる一同。もうリーフも目を覚ましていたので、一緒に来ている。そこで目にしたものは、・・・
数人が生活できる空間がそこにはあった。が、我々が知るものとは一線を画すものばかりである。勿論寝床と分かるような部屋もあったし、ここは研究施設だろうと思わせる部屋もあった。その中には意味の分からないものが多数あったのだが、明らかに生活スペースと思わせるところにも、見知らぬ器具が多数置いてあった。例えば、ここにある縦長の箱、ドアを開けると中からひんやりした空気が漏れてくる。そして、たくさんの食料が中に入っていた。その中の一部収納には、より冷気が感じられ、氷や冷凍された肉や魚が収納されていた。・・・とりあえず、これは食料とともに回収しておく。大変便利そうである。また別の部屋には、やはり大きな箱があって、適当にボタンを押してみたら、中の装置が水を出した後、回転しだした。・・・これは?
「これって、もしかして洗濯する機械?・・・洗濯物を入れると汚れが落ちそうな気がする。」
本当かどうかはわからないが、魔王軍の一味の生活水準は、どうやら相当高そうであった。もちろんこの洗濯装置?も回収しておく。・・・あとは、ここを戻ってきて再利用されないように・・・と、有用そうなものを回収した後、研究施設等を爆破するのを忘れないレグルスであった。
その後、イエテイの集落に帰還したレグルス一行。持ち帰った氷精霊のペンダントを長に見せてみる。もともと、イエテイの集落にあるかもしれないと聞いていたものなので確認してみると、・・・確かに長の家にあったもので間違いないようだった。ただ重要なんのという認識はなく、盗まれていたことにも気が付かなかったらしい。・・・ということで、これを報酬に貰えないか尋ねたら二つ返事でOKであった。これで、目的達成である。・・・それだけではと、今晩も集落あげての宴会に御呼ばれする一行であった。
翌日、イエテイの集落を出る一行。・・・とはいっても、転移魔法で一気に水龍の洞窟の底に行くだけなのだが。長をはじめとする、イエテイたちに見送られながら、展開したゲートの魔法を潜るレグルス一行。その先は、前回と同様、地底湖の真ん中にある陸地であった。・・・そこから、しばらくして水龍のお姉さま?がやってきた。
「あらら、結構時間かかったわね? 探すのに時間かかったのかしらん? ・・・ってあっれれ~。もしかして持ってこられなかったの? 全然氷精霊のペンダントの波動を感じないんだけど?・・・いや、少しは感じるわね。・・・どゆこと?」
かくかくしかじか・・・説明を始めるレグる達。
「なるほどねぇ。そんなことがあったの。 で、壊れたペンダントだけ持って帰って来たと。ふ~む。勿論だけど、このままじゃ儀式はできないわねぇ。・・・まあ、材料さえあれば治せるから、ちょっと集めてきてもらえるかしら?」
「ここより北に出ると、北極海に面した海岸に行けるのは知ってる?」
レグルス、アレク、ミリアム、リーフ、ラークはうなずく。残り2名はポカンとしているが。
「場所にもよるけれど、ここの真北であれば砂浜になっているはずよ。その砂の中にね、この冬の時期には氷晶石という、氷の力の宿った魔法石が転がっているはずなの。なんでも北極近辺でできた氷晶石はこの時期に流氷に乗ってここまで流れ着くらしくてね、この時期ならばいくらでも取れるはずよ。これが、ペンダントの中央の青白色の宝玉のもとになってるわけ。これを修復するには・・・そうねぇ、全部で1㎏ほど持ってきてくれると十分かしらねぇ?・・・ちょっと行って取ってきてくれるかしら?」
一同は、「もう1回お使いか?」と脱力しながらも北方の海岸まで移動を始めるのだった。今度はゲートの魔法をを使って、洞窟を抜け出したのは言うまでもない。・・・




