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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第4章 水龍の洞窟
26/102

水龍の洞窟

この章はもう少し続きます。

1734年 1/25


 王都グリベルを出発した一行は、馬車で移動すること5日目で、ようやく目的の水龍の洞窟にたどり着く予定だ。まだまだ寒いこの時期であったが、天候には恵まれ、強力な魔獣に襲われることもなかったが、その分一般のシカ、バッファロー、白ウサギ、キツネといった、野生動物は多く見かけることができ、女性2名のテンションは高めである。


「あそこのウサギ、モフモフで暖かそうね。」


「ですわねぇ。癒されますわ~。う~ん、だっこしたいですわぁ・・・」


 エストとミリアム(様)である。この二人も、だいぶ打ち解けてきて、エストの方も敬語を使うことがほぼなくなってきた。実は他のメンバーも、ミリアム王女とリーフ王子にも言われたこともあり、極力普通にしようとしているところである。まあ、ラーク王子には完全にため口なため、それに釣られてってこともあるが、これから、旅の仲間になるため他人行儀は嫌だったようだ。もしかして、ラーク王子いやラークはこれを狙って・・・


「俺は、ウサギじゃなく君の胸部をモフモフしたいな。」


「オッサンか!」 


 ドヤ顔決めてるけど、エストもミリアム(様)もドン引きしてるけど?・・・一瞬でもクレバーなのかもと思った俺が馬鹿だった。絶対この人の素だな。


 こんなことをしている間に、一行は水龍の洞窟に到着する。奥は深そうという程度で、中の様子がほぼ分からないが、行くしかないと思っていると、ラークが勝手にスタスタ進入していく。


「ん? 入らないのか?」


「いや、入るし。・・・みんな行こうぜ!」


 ラルフの一声で洞窟に入りだす一行。・・・全く何も見えないので、レグルスはライトの魔法を唱える。すると、洞窟の中は、ここより、深さが百数十mはあるだろうか? 直径200mはある、巨大な大穴が口を開けて待っていた。俺たちのいる場所は、その大穴の外周部分で、洞窟の通路はこの外周の通路に沿って少しずつ下っているようだ。遥か下のそこには大きな池があるようである。ライトの光が、そこにある池に反射し、それが洞窟内部を青白く、幻想的に照らしている。まさにあまりの美しさに皆声は出ないようだ。しばらく感動に打ち震えながらも洞窟内にある通路にしたがって、らせん状に下りていく。・・・


「きゃぁっ!」


 どうした?と言おうとしたら、直後にバチンと甲高い音が響いた。


「中々いい反応だぜ。ミリアム。」


 ラークは声は出なくとも手は出せたらしい。ミリアムのどこかを触って殴られたらしい。どこかは詮索する気はないが、ミリアムの顔が真っ赤なところから大体予想できるだろう。ラークは大変満足顔だ。苛立っているミリアムはどんどん先に進もうとしているが、通路は微妙に濡れていて滑りやすくなっていて危ない。気を付けてって言おうと思ったら、転んでしまったようだ。


「いった~い。・・・キッ」


 ラークを睨むミリアム。・・・今のは自爆ですよ?・・・元をたどれば、原因はラークだけどね。・・・あ、さりげなくアレクが助け起こしてる。・・・あ、ちょっといい雰囲気になりかけてるかも。・・・ラークさんや、あんまりおいたしてると後で取り返しがつかなくなりますよ?


 それにしても、この洞窟は深い。同じような景色も続き、最初は感動していたメンバーもちょっと飽きてきているようだ。ただ、確実に下りてはいるので、そこにある池の存在が、より多く感じられるようになってきている。・・・めげずに下っていくこと合計3時間。やっと底にたどり着いたようだ。


 この池、いや、池でいいのか?・・・上からでは分からなかったが、そこまで来てみると、そこ部分から360度全方位に高さ5m程壁がない。そして、自分たちを中心に奥行きがどれだけあるのか見当もつかない程広い。まるで、王都イザベラがすっぽり収まるほどである。もはや、地底湖といったほうが正しい表現だろう。あまりの大きさに圧倒されていた俺たちであるが、そういえば、ここに入ってから何者にも出会ってはいない。もともとの目的は、ここで勇者の剣を得ることであった。ここには、剣がありそうな場所もなく、剣を授けてくれそうな何者か(例えば水龍とか)も現れてはいない。・・・もしかして、俺たち遠足に来ただけってオチ?・・・まさかまさか・・・ありえん。


 そう思っていたら、遠くの方から、強大な生命の気配を感じた。・・・こっちに向かってくる。水しぶきが大きく上がり、全長どのくらいあるだろうか? 水面から水龍と思われる存在が頭を出していた。もしかして、これと戦うのか?・・・そう思っていたら、


「あらん。客とはずいぶん珍しいわね。何百年ぶりだったかしらねぇ?あれは、確か勇者のカミュちゃんが私に会いに来てくれた時いらいだったかしらん。・・・ん?何かしら、カミュちゃんに近い気配がするのは気のせいかしら?・・・それと名無しの汚い、ぼろ雑巾の気配するわね。 私は人間には水龍って呼ばれているみたいなの。すいちゃんってよんでくれてもいいのよん。」


 随分、個性的な自己紹介だな。でも水龍で間違いないようだし、少なくとも来た甲斐はあったようだ。で、ぼろ雑巾ってなんだ?


『おうおうおう! 言うに事欠いてぼろ雑巾とはどういう了見だ?・・・このオカマ蛇!』


「あっらやだ! おねえさんに向かってオカマはないでしょ? レディに失礼でしょ?いいわ、人間形態になってあげる。」


 ゲンの話し声が聞こえない面々は会話の意味が分からないのかキョトンとしてるが。水龍が光を出しながら変形していく。・・・すると目の前には、筋肉質の男(?)がたっていた。


「皆さんはじめまして~。私が、水龍のすいちゃんで~す。これでも2346歳の乙女で~す。」


 この見た目筋肉質のオッサンは、自分的に乙女らしい。何故人間姿になった?


「だって、この方が話しやすいし、わたし~、いい男とお話しするのが生きがいなのぉ。」


 男性一同に緊張が走る。・・・ターゲットはラークだったようだ。このオカマさんは一瞬の間に自分の胸元に抱きしめてしまった。ご愁傷様。


「が・・・馬鹿やめろ・・・うっ・・ぐえぇ・・・」


 慌てて、この自称お姉さんの背中をタップしてやる。少しだけ満足したのかラークを開放してくれた。ふぅ。


「あ、そうそう、相変わらず特定の人としか話せないぼろ雑巾にチャンスをあげるわね。・・・」


 そう言うと、俺のグローブ、つまりゲンに光がまとわりつく。・・・


『ぐぇ~。気持ちわっる・・・このオカマ何しやがる! しかも俺のことをぼろ雑巾というなと何回言わせれば気が済むんや!』・・・切れてんな、ゲンよ。


「「「「「「!!!!!」」」」」」


 残りのパーティーメンバーは驚いているのか? そりゃそうか。手袋がしゃべったんだもんな。


『だいたいやな、ワイにはもうゲンジちゅう名前があるんや。ゲンって呼んでくれや。』


「それはそうと、このおねえさんと知り合い?」


『不本意ながらそうや。このオカマの水龍とは旧知の仲やねん。』


「だから、オカマって言わないでって言ってるでしょ。・・・もうぼろ雑巾とは言わないから。」


 水龍さんは、オカマといわれるのが堪えるらしい。・・・話が進まないなぁ~。


「あの、水龍様!」


「あらん? あなた・・・カミュちゃんと同じ同じ気配を感じるわぁ・・・もしかして、今の勇者なのかしらん?」


「はい、イザヴェル王国第3王子リーフです。本日はお願いがあってまいりました。」


「あなた、カミュちゃんと同じくかわいい顔してるわねぇ。で、なになに?おねえさんに言ってごらん?」


「勇者の剣というものがこちらにあると聞いてここに来ました。譲っていただけないかと・・・」


「・・・勇者の剣?・・・そういったのかしら?・・・それがここにあると?」


「はい。・・・伝説ではここで勇者の剣を得た勇者カミュが力を得て魔王を討伐したとありまして・・・」


「・・・あたしね。・・・その話初耳なんだけど。確かにね、カミュちゃんいい剣使ってたわよ。でもね、それ、あたしあげてないわよ?・・・どうしてそういう話になったのかしらん。」


 この水龍さん、本気で分からなそうだ。・・・って、こっちが聞きたいわ!


「そもそも、カミュ様は何故ここを訪れたのかしらねぇ」 とミリアムがつぶやくと、


「・・・そこから紐解いたら、お互い意味が分かるかしら?・・・そうねぇ、ちょっと昔話してみるわね。」


「その昔、魔王が世界を脅かしている時代があったの。龍の姿をした魔王で、龍王とも呼ばれていたわ。名前はゲルザード。でもね、実はコイツ魔界というところから来た奴なの。で魔界にはもっとおっかない存在がいてね、そいつをこの世界に召喚しようとしていたの。」


「そもそも魔界ってのはね、ここからすると異世界にあたるの。だから、異世界転移という大魔法を使わないとこっちに来られないのね。でね、そんなことをできるのは強力な魔法の使い手でなければだめなの。しかも転移させる存在の魔力に比例して転移魔法に必要なMPも上がっていくの。ようするにね、強さの割に魔素量が低い存在。例えば竜種などがそうねぇ。勿論人間と話ができるような存在じゃないと無理よ。転移魔法なんか使えないもの。でもね、魔界には悪魔のようなドラゴンがいてね、あっちでは相当暴れていたけど、こっちには来ることができなかった。なぜかというと、自分の魔素量がでかすぎるから。だから、他の竜なんかが転移魔法を掛けるなり、こっちに来て召喚魔法を掛けるなりしないとできないわけ。」


「でね、ゲルザードってのは、その悪魔のような竜種の部下なのよ。当然こっちには、自力での異世界転移で来たはずよ。勿論性格最悪で、だからこっちでは魔王と呼ばれた。だけどその目的は、もっと強力な悪魔みたいな存在をこっちに呼び出すこと。だから、人間を殺しまくって召喚魔法を成功させるほどの魔素を集めようとした。ちなみにあたしを始め、数体のドラゴン(龍・竜)ははるか昔にそれを防ぎに来たの。当然、あたしも、異世界の龍ってわけ。」


「で、そろそろ勇者の話に戻すわよ?、彼はゲルザードを倒そうとしていたけど、ちょっと力が足りなかったのね、だから一回力を封じる方法を教えたのよ。あたしは氷の力を持っているけど、他のこっちに来た竜種たちから、火・氷・風・土・光・闇の力を特別な存在、要するに勇者のことね、つまりカミュちゃんに託したの。それで、彼は1回だけ、どんな力でも封印する力を得たのよ。その時にね、同じく、火・氷・風・土・光・闇の力を宿したペンダントを仲間たちが持っていて、術を発動させる触媒にしていた。・・・たまたまか知らないけど、あななたち、火精霊のペンダントだけもう持っているのね。」


「!」 エストが驚いているが、あれか・・・


「もしかしたら、あたしがカミュちゃんに氷の力を授けたことが、歪められて伝わってしまったのかしらん?」


 なるほどな、そういうことか・・・勇者の剣なんて初めから無かったのか。だが、だったら、リーフがここで氷の力をここで授かればいい。だとすれば目的達成でいいだろう。


「実はねぇ、力を授けたいのはやまやまなんだけど、やはりというか、触媒としてどうしてもこの場に氷精霊のペンダントがないとダメなのよぅ。」


 ということは、ここには氷精霊のペンダントはないということか?


「そういうことね。でも、どこにあるかは分かっているわ。波動を感じるもの。そうねぇ、ここの傍にある森の奥地に波動を感じるから、もしかしたら、あそこにはイエテイの集落があったはずだから、そっちで大事にしてもらっているのかもよ?」


 大体の場所を聞いてみる。なるほど、次に向かうはそっちだな。まずは行ってみるしかないか。


「そうそう。ここまで話したから、もうちょっとだけ、まずここで用が済んだらどうすればいいか分かっているかしら?」


 水龍様が言うにはこうだ。


1.霊峰ミズガルム

2.世界樹

3.ミーミル湖

4.ガイン火山


 ここに、水龍と同格の、精霊竜と呼ぶべき存在がいるらしい。それぞれ、光・風・闇・火らしい。そして、土の精霊竜に関しては不明ではあるが、ムーラ砂漠にあるピラミッドと呼ばれる遺跡にヒントがあるかもしれないとのことだ。それと、もう一つ重要な情報が齎された。


「今あなたたちから聞いた、ヴィトという存在を魔王と呼んでいるみたいだけど、たぶん違うわよ。ちゃんと別にゲルザードの気配感じるもの。・・・たぶんね、私たちとは違う世界から来たただの人間よ?」


 これには、全員が驚愕した。なんでも、俺たちが魔王と信じていた存在はゲルザードにいいように利用されている可能性だ。尤も彼らはこの世界を侵略するつもりだったのは確かだろうとか言っているが・・・これが本当なら、・・・ううむ。・・・どうやら、それぞれの立場の者たちの事情が複雑に絡み合っているようなのは確かなようだ。最後に一つ聞いてみる。


「ゲルザードと直接戦わないのか?」


「・・・・実は、異世界のことはその世界の人に任せなければならないというあたしたちのルールなのよ。向こうは守ると森が無くて、こっちに迷惑かけてるけどね。だから直接は無理だけど、できることは協力するわよ?」とのことだ。


 状況を理解した一行は、もう一度この縦穴を出るべくまた登るのだった。


 

今日は、この投稿で限界っぽいです。楽しみにしていた方々すいません。次回は、明日3/30の正午までに投稿します。その次は3/31の夜を予定しています。

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