雪竜との戦い。 ホワイトアウト。
今回は短めのお話が2本分になります。 今日はあと1回更新予定です。
翌日、レグルス、リーフ、ミリアム、ラルフ、アレク、エストの6名は、オスロの街を出発し、ここより北に位置する、ルーレオに向かう。ここが被害に遭った町である。馬車で半日も行くとルーレオの村に着いた。村の一部は建物が、何かが通った後であるかのように破壊され、潰されていた。まず、宿をとって、宿屋の店主に話を聞いてみたところ、
「・・・今から3週間ほど前でしたか、5m程もある雪竜が4頭、いきなり街を襲撃してきたんでさ。みんな家の中に逃げ込んだんですが、家ごと破壊され幾人かが犠牲になりました。・・・ここに住む者では抵抗しようもなく・・・国が派遣してきた兵士団が2週間ほど前に討伐に向かったのですが、・・・帰っては来ませんでした。・・・雪竜はこの街の北部にある雪原地帯に通常生息しているのですが、これまでは人里を襲うようなことはありませんでした。・・・何故こんなことになってしまったのか、原因はわかりません。・・・」
と気力を振り絞るように話してくれたが、どうやら特別仲が良かった御仁を亡くしているらしい。・・・店主が言うように、本来の雪竜は、他の竜種とは異なり、性格が穏やかな魔獣であり、この国では人間と共生関係にある。普段は野生のシカやバッファローを獲物として食しているようだ。・・・であるから、雪原地帯で襲われたならまだしも、わざわざ人里までやってきて襲撃してきたのは困惑するしかないのである。・・・とりあえず一泊して後、雪原地帯に行ってみることにする。
翌日の朝、一行は雪原地帯に出発する。道がないところにも行くため、今回は徒歩である。馬車が雪で埋まって動けなくなるからだ。・・・宿を出てから2時間は歩いただろうか?
「寒いですね。体の芯が凍てしまいそうです。」
「ほんとにねえ。馬車の中が恋しいですわ。」
それぞれ、リーフ王子にミリアム王女である。ラルフ、アレク、エストも言葉には出さないが寒そうにはしている。俺、レグルスはというと、ヤン師匠に頂いた、【神龍の武闘着】に熱変化の耐性が付与されているせいか、それほど寒さは感じないのだが。
「・・・何でアンタだけ、そんなへっちゃらそうなのよ?・・・ちょっと手入れさせて。・・・なにこれ?・・・すごくあたたかいんですけど?・・・ずるいわ、アンタ。」
服の隙間から、俺の返答を聞きもせず手を入れてくるエスト。・・・手ぇ冷たいからヤメレ。って、そこマジでくすぐったいからシャレにならん。と、じゃれている俺たち二人に冷ややかな目をラルフが向け始めたちょうどその時、背後の方から何者かの気配が・・・あ、雪竜だ。・・・あれ?・・・何か、敵意を感じないんですけど・・・そのまま俺たちのところに近づいてきた雪竜は、自らの鼻をクンカクンカしている。む?・・・こいつは少なくとも町を襲った雪竜ではないな?
とりあえず害はないと考え放置することに決めると、その後をついてきたこの雪竜。・・・何かを訴えかけてるのか?・・・その後、6名+1頭が歩くこと1時間。怪しい気配を発する4頭の雪竜を発見。
『なあなあ、レグよ。あいつら操れれているみたいやで。』
何だ? 突然。 何でそんなことが分かる?
『こいつが言うにはな、以前変な奴がやってきて、アイツらに魔法を掛けたと思ったら、急に狂いだして、話や。』
『だから、何でそんなことがわかるんだよ?』
『・・・言うてなかったかいな? ワイ、魔獣とか動物の言葉とか考えてること分かるねん。』
聞いてねえよ!と突っ込みたかったが、ミリアム王女に裏を取ってみる。
「ミリアム様、あいつら、何か操られている痕跡とか感じませんか?」
「・・・そうねぇ、・・・・あ、少なくとも何か魔法を掛けられた痕跡は感じ取れるわね。」
く、本当にコイツ分かりやがるのか・・・今度から頼りまくるとしよう・・・
『・・・なあなあ、念のため言うとくけどな、労働基準法って大事よ?・・・』
労働基準法ってなんだよ? まあ、なんとなく言いたいことは分かるが。
「方針変更します! 4頭の雪竜を正気に戻すため、無力化します。攻撃は殺さない程度でとどめてください。 動かなくなったら、ミリアム様に状態異常の回復をお願いします。」
「「「「「了解!」」」」」
そう言うや否や、俺は1体に延髄切りを決め、ラルフは強烈な体当たりをかます。2体が雪の中に沈む。うん、こいつらは俺が正気に戻そう。
「リフレッシュ」の魔法を唱えると、雪竜の目の色が穏やかなものに変化した。「クァーン!」とか鳴いてるし。・・・他は?・・・エストとミリアム王女がフラッシュの魔法で目くらましをして、アレクがバインドの魔法を掛けようとしているが、中々かからないようだ。隙を見て、アレク、リーフ王子、ミリアム王女が攻撃を加えているが、加減を間違えると殺してしまうので慎重になってるようだ。エストも火魔法だと確実に殺してしまうので攻撃は不参加。リーフ王子はまだまだ実力不足だな。
俺とラルフが駆けつけ一撃を喰らわすと、あっさり沈んでくれた。すかさず王女の魔法【リザレクション】が発動する。俺の魔法のリフレッシュが状態異常を解くだけなのに対して、リザレクションは体力回復、傷の治療も同時に行う魔法である。傷ついてぐったりしていた雪竜が一気に元気になって、いい声で鳴き始めた。・・・これで一応解決かな。
その後、周囲に強力な魔力反応を探ってみたが、こちらの探索魔法には引っ掛からなかった。恐らくだが、雪竜達を操っていたと思われる存在は既にここを去っているのだろう。その者が何者なのかは不明だが、魔王軍の関係者な気はする。とにかくここにいないのであれば、これ以上気にしても無駄であろう。
ということで、ルーレオの村到着し、村人に事情を説明する。納得はしきれないだろうが理解はしてもらえたようだ。これ以上雪竜討伐は行わないらしい。ギルド依頼は取り下げるそうだ。その後オスロの街にも帰り、オスロギルドにも報告。依頼の達成はしていないが、お礼にと全員に金貨1枚が用意されていた。ホテルに戻りディアス様にも報告。雪竜を操っていたという存在が気になるのか、ずっと難しい顔をしていたが。
翌日、1733年 12/28
一行はオスロのホテルを出発するところである。ここで、ホテルマンより忠告が入る。
「王都グリベルへ向かう街道で、次にある町はかなりの遠くになります。道中猛吹雪になることも考えられますので、くれぐれも準備は怠りませぬようお願い申し上げます。」
「心に留めておくこととしよう。では、世話になった。」
そう、ディアス様は話し、馬車はオスロを後にする。次の町ベルゲンまでは順調にいって3日は掛かる。少なくとも2日は馬車に泊まらなければならない。広さはそこそこあるものの、やはり窮屈感は否めないよな。我慢するしかない。・・・そう思っていた。
オスロを出てから、雪が降り始めていたが、気にせず進んでいると、急に吹雪き始めたのだ。降る雪の量も増している。おかげで、進行方向が全く見えない。馬も魔法で保護しているとはいえ、非常に寒そうである。夕方まではまだ時間があるが、ここで馬車を止める。馬車から半径5mに結界を張り、馬も含めて安全を確保する。・・・とはいえ、見た目が寒そうだよなぁ。360度全方位真っ白なのである。地面でなく、空間すべてが。まさにホワイトアウトといった感じである。時折、ゴーっ!とかピュ~ウゥとか、恐怖を感じるほどの風の音が耳に入ってくる。結界に防音効果も加えるか・・・
それから3日後、未だ天候が持ち直す気配がないため、動くことができずにいる一行である。俺は黙々と本を読んでいるのだが。というか、旅に出てからここまでじっくり本を読んでいるのは久しぶりである。今は水龍の洞窟について書かれた本を復習ついでに読んでいるので全く退屈はしていないのだ。ミリアム様やエストにも小説を1冊ずつ貸しているので退屈に関しては大丈夫のようだ。だが、
「ガー、俺にはそんな本なんて読めねーしよ! 暇だー!」
「ラルフ~。そんなこと言ったってしょうがないだろう? この吹雪で動けないんだし。暇なら寝てなよ?」
「さっき起きたとこだっつーの! 目はパッチリさえてるよ。」
ディアス様は苦笑いしてるし。・・・まあ、気持ちはわからんでもない。まあ、コイツがムードメーカーになっていて、いやな空気が払しょくされているのも確かだ。リーフ様も笑っている。だが、それはそれとして、ディアス様と配下の人達が深刻そうな顔をしている。ミリアム様にも相当な疲労が見て取れる。ずっと疑問に思っていたので聞いてみる。
「この馬車の暖房ってどうやってるか知ってるかい、・・・ほら、ここに宝玉があるだろう? ここに魔力をそそいで馬車に魔力をため、それを利用しているんだが、部下の魔力はすべて使ってしまっていてね、どうしても足りないからって、ミリアムにも手伝ってもらっていたんだが、何せこの吹雪だろう?失われる熱が半端なくてだな。もう限界に近づいているんだ。」
今張っている結界は熱の移動も妨げるのだが、それも限界があるらしい。ここを温かくするためにとんでもない魔素を消費し続けているらしい。ミリアム王女のMPは5000超えてたはずだけど、使っちゃったのか。
「分かりました。俺に任せてください。」
そう言って、宝玉に魔力を注ぐ。魔力切れ間近の赤い色が、一瞬で満タンを示す青に変わる。
「! これって、満タンはMP換算で魔素は1万位なんだけど、今空に近かったはずなのに・・・」
「ああ、俺のMP1万は少なくともありますから。」
ちなみに確認してみたら最大MPは18567ってなってた。また増えたんだな。
「・・・関心を通り越して呆れるよ。でも感謝するよ。何とか生き延びられそうだ。君は本当に人間なのかい? 冗談抜きにそう思うよ。」
ふつうは1000もいかないらしいからな。そういうもんか。ラルフとアレクは知らなかったのか目が点になっていた。・・・ちょっと傷つく。・・・やさしくエストが頭を撫でてくれているが・・・俺は子供じゃないんだよ?・・・そう思いながら、そのままやらせておく。
このまま腐っててもしょうがないので、うまいものでも食って英気を養うことにする。まず外に出る。勿論、結界の中なので問題はない。そして収納魔法から、十分な薪と、干しオーク肉、葱や人参、茸、芋といった野菜、に加え、調味料として味噌を引っ張り出す。オーク肉はシュネー村にいた時からの秘蔵品だ。品質には自信があります。味噌もシュネー村産だ。野菜は向こうから持ってきたものやら、これまでの旅の途中で見つけて買っておいたものまで色々だ。
まず火を熾す。火魔法は得意ではないので、最近は戦闘では使わなくなったが、こういう時の点火には役に立つ。うん、十分だね。大きめの鍋を取り出し、水を入れて加熱しつつ程よい大きさに切った野菜たちをぶち込む。そのまましばし煮込み、次にオーク肉を投入。・・・灰汁が出てくるので、そこは丁寧にとる。葱はこのタイミングだな。・・・あとは秘蔵のシュネー産唐辛子と胡椒を振りかけてっと。じゃじゃん、かんせ~い! お~く~じるぅ~。馬車の中から覗いていた面々が外に出てくる。ちなみにラルフは俺の調理の様子を齧り付きで観ていた。お前、どんだけ暇だったんだよ?
てことで、全員にオーク汁を振る舞っていく。まずは王族の人達、部下の人達、友人たちの順で。・・・ここのところ、食事といえば、保存食としてパンを齧るだけだったため、気分転換になると思ったのだ。まず、ラルフががっつく・・・
「うっめ~!!! なんじゃこりゃ? ピリッと辛みが効いてうまいじゃないか!」
「ああ、おいしいな、これは。」
「おいしいですわね。旅の間の料理人はレグ君で決まりですわね。」
「いつも思うけど、ほんとに料理得意よね。・・・今後も任せたわよ。」
ラルフ、ディアス様、ミリアム様、エストである。エスト、お前もできるんだから、偶には作れっての。でも、俺も気分転換になったし、何より、暖かいものを食べてみんな元気になったようだ。
その後もう一泊して、翌日まぶしさで目が覚めた。外に出てみたら、見渡す限りの快晴である。ようやく出発できるな。・・・前方を見ると、1m位の積雪がある。この馬車が無ければ死んでるな。
その後はエストの火魔法で雪を溶かしつつ進む馬車。途中で除雪が完了している地帯にたどり着き、ベルゲンの町に到着したのは、オスロを出発してから6日後、1734年 1/4 のことであった。




