初めてのグリバール王国
今回から新章です。これまでの章よりは長くなる予定です。予定変更したらすいません。
1733年 12/26
現在、レグルスの一行はイザヴェル王国の北東に位置する、グリヴァール王国との国境付近に来ている。レグルスの同行者は、ディアス王子、ミリアム王女、リーフ王子、エスト、ラルフ、アレクの6名にディアス王子への同行者が5名の計12名である。もっとも、ディアス王子以下6名は、完全に外交目的なのであり、用が済めば帰国する予定なので、実質はレグルスを含めて7名といったところである。出発は、あの会議の日から3日後だったが、出発してから降り始めた雪で一面、真白くなっている。とはいっても、街道への積雪はせいぜい5cmといったところか。圧雪路面になっていて、馬車の通行には問題がない。今日の気温は只今3℃で暖かい。(比較の話です。)路面も一部融けている。レグルスにとっては、ずいぶん久しぶりの光景である。つい先日まで、熱帯雨林に覆われた島にいたのであるから当たり前であるが。遠い昔にコトナ村に降った雪を忘れたわけではないが、ここまで積もった雪を見るのは生まれて初めて出会った。で、なんとなく、遠くの山々を見ながらぼうっとしていたら、突然馬車が揺れて倒れかける。危ないなぁ。とか思っていると?
「申し訳ありません。圧雪部分の表面が融けていて、馬車が滑って今いまして。」
訂正。馬車の通行に支障がなくはないわ。雪が固まっていて、暖かい日はこういうことも多々あるらしい。
「いや、びっくりしたな。いきなりグラついたからびっくりしたって。」
「俺も今少し寝かかってたから、ドキッとしたぞ?」
『せやで、せやで』
「あんた、これだけ揺れてて、よく眠れるわね。そっちにびっくりしたわよ。」
ラルフ、アレク、エストである。ちなみにゲンの発言は俺以外には聞こえない。・・・しかし、この馬車はいいな。魔法の力で暖房完備。室内は適温の22℃に保たれている。揺れに関しても、エストはこう言っているが、比較的クッションが効いているっていうか、そこまで振動は伝わってこない。商隊の時とは雲泥の差である。さすが王家所有の馬車だな。ここで、ディアス様とミリアム様が話始める。
「しかし、ミリアムが同行してきたのには驚いたぞ。しかも、俺にではなく、リーフとレグルス君にだよな? ということは、しばらくは王都に戻らないのだろう?」
「そういうことですわ。何といいますか、生まれて初めて解放感といえばいいんですの?兎に角『ん~!!』ですわ。」
「君は確か、リーフが心配だからとか、言ってなかったっけ?」
「そんなの口実に決まってますわ。あ、それがないとは言いませんけど。30%くらいね。」
『少なくね?』 おい、聞こえないからと言って滅多なこと言うなや!
「まあ、君らしいね。本来の君は超御転婆娘だからね。子供のころは、僕を馬にしたり、アレンとチャンバラやったり、リーフが幼いころあの子を・・・」
「兄上、そこまでですわ!」
槍を首筋に向けて構えていらっしゃる。いったい、いつ出したのやら・・・
「くっ、分かったよ。これ以上は言わないよ。君に力があるのは間違いないからね。はぁ。」
ちなみに、本当の目的は何なんです?とか聞いてみた。俺もチャレンジャーである。
「あら、知りたいの? レグ君。」
そういいながら、柔らかい指で俺の首筋をツーと撫でる。てか、いつからレグ君呼びになった?
「き・み・に、興味があるからに決まってるじゃない? 肉体は逞しいのに、可愛らしいお顔。わたくし、年下嫌いじゃないんですのよ?」
絶対揶揄ってますよね? 流石に平静を保つのに苦労するんですが。
「あの王女様。レグルスが暑がっていますので、離れてあげてもらいたいんですけど? なんか汗かいてるみたいだし。」
こう言うエストの俺への視線が突き刺さる。これ怒ってるよね? 視線が痛いです。ヒール使うかな?ちなみに、汗は暑いんじゃなくて、冷や汗だよ! 言えないけどね。
「あら? 暑いのはエストがレグ君の隣にいるからじゃないの? きっと、貴女の体から出る熱が暑いんじゃありませんこと?」
「何ですって! 言うにことっムガフ・・・」
流石に、言ってはならぬ言葉を言いそうになったので、口を押えてやったら、少し我に返ったみたい。こういう時のエストは頭撫でてやると落ち着くので、「どうどう・・」といって撫でてやると・・・うん、落ち着いたようだ。・・・王女様は・・・クスクス笑ってるし。やっぱり揶揄っただけか。
ラルフが『お前はいいよな~』みたいな目でこっちを見てる。・・・俺の立場になってみればわかる。決してお前が思っているようないいものじゃない。・・・ん? アレク?お前、何書いてる?こっちの方をちらちら見ながら。・・・まさか、今の光景デッサンしたのか?! まて、早まるな。これは検閲を要求する。俺に公権力なんてないけど。これに関しては俺が法だ。・・・くっそ、危険を察知したのか、自分の収納魔法に仕舞いやがった。あとで、絶対奪ってやる。
「いや~、皆さん仲がいいですね~。うらやましいです~。」
このおっとりさんな感じな少年がリーフ王子である。俺たちと3歳しか違わないけどね。この人が勇者なんだもんな。・・・あの王都で暴れていた魔獣たちを一度に殲滅した魔法なんかは凄かったしな。まあ、俺たちは直接使うとこは見てはいないし、本人も覚えていないっていうんだよな。・・・まあ、いつか分かるだろう。・・・それにしても、この人がいると和むな。一家に一台。必需品。・・・さすがに無礼か。この人との旅なんだから、早く仲良くならないとなぁ。まだ壁がある気がする。
そんな話をしているうちに、関所が近づいてきた。実は、国境には両国の関所が設置されており、相手国に入国する理由に問題がないようであれば、関所の兵士に許可は貰えるようになっている。自由にというわけではないが、余程のことがない限り、一般の国民が、通行を認められないようなことはないのである。国としての国交はないが、人々の交流がないわけではないのである。グリバール側の関所にたどり着く。早速、向こう側の兵士がやってくる。
「貴様ら、我がグリバール王国に何ようだ?」
「私は、イザヴェル王国第1王子のディアスである。この度は、ルミナス女王陛下に謁見を申し込みたく参上した。通行許可を頂きたい。」
そう言って、事前に用意していた、国王陛下の書状を兵士に渡すディアス王子。・・・許可を貰えたようだ。ここから、グリバール王国へと入国したことになる。この国の王都であるグリベルはここより、3000km程行ったところにある。馬車で行っても、あと2週間はかかる距離である。うん、完全に年またぐね。・・・関所を潜り抜けると、そこは一面の雪世界。イザヴェル王国の土色が混ざる雪景色とは一線を画している。遠くを眺めると、ところどころに見える森も植生が根本的に違うのが分かる。遠くからでも、森を構成している木々が広葉樹ではなく針葉樹になっているのである。この国はそもそも冷帯に属しているので、夏こそあるものの、期間は短く、冬が長く厳しい。今もちらちら雪が舞っている。
「きれいね・・・」
「わたくしも、こちらには初めて伺いますが、美しいですわ。」
女性2人がうっとりしている。・・・仲直りしたっぽい。
「ねえねえ、レグ、遠くにあるあの点々、何かな?」
「ん? どれどれ、あれは鹿かな? そういえば、こっちは鹿が多く生息しているみたいだよ?」
かわいい! とか2人して言ってるし。・・・和む。
「なあなあ、こっちに近づいてくる、あれは何かな?」
お前が同じノリでしゃべっても、別に可愛くないぞ? ラルフ。・・・分かるよ。話に混ざりたいんだろう?
「うんとな、あれは・・・ホワイトベアーだな。・・・うん、襲いに来たのかな? こっちを。」
大きさ4mはある、立派な魔獣である。当然可愛くはない。それが3頭いる。和むのはここまでのようだ。直ちに討伐に移る俺たち。1体は俺がワンパンで沈めた。もう1体はエストがファイアボール1発で焼き尽くしたようだ。残りの1体は、リーフ王子に経験させるために、ラルフとアレクそれにミリアム王女が頑張っている。ちなみにディアス王子は非戦闘員である。ラルフが盾でホワイトベアーの攻撃を食い止めながら、無防備な部分をリーフ王子が切りつけている。
「クソ。毛皮が弾力があって、切りにくい。」
ダメージは多少は通っているようではあるが、根本的に筋力が足りないようだ。・・・あ、吹っ飛ばされた。・・・アレクがうまくフォローに回っている。おかげで追撃を受けるのは防げたようだ。短剣で振り下ろす腕の軌道を僅かずつ変えているみたいだ。そこに、隙を見つけたミリアム王女の槍が刺さる。・・・最後はラルフの剣の一撃で、熊の首を刎ね戦いを終結させる。
「リーフ王子は、もう少し力をつけないとダメですね。剣の腕ではなく、文字通り運力です。腕は完ぺきではないですが最低限はできているっぽいので。」
ちょっと落ち込んでいる。彼には勇者として強くなってもらわないといけないのだ。じゃないと、多分だが、俺たちの旅は詰む気がする。勘だけどね。・・・そこから1時間後、最初の目的地である、オスロの街に着いた。
ここオスロはこの国で第2の都市であり、グリバール王国西部の中核都市になっている。ディアス王子とミリアム王女そしてリーフ王子は領主のもとに挨拶に行っているようだ。残りの俺たちはホテルに荷物を預けた後、ギルドに向かっている。依頼を受けるつもりもないが、何か情報を得るためである。
受付のお姉さんに聞いたところ、雪竜のいう地竜が近隣の村を襲ったらしい。かなりの被害が出て、軍からも兵士が数名派遣されたが返り討ちにあったらしい。で、冒険者にも討伐依頼を出してみたんだとか。軍隊まで動かすわけにはいかないのかな?・・・急ぐ旅ではあるが、相談してみるか。
その夜、夕食時にこの話を出して見た。当然ディアス王子は難色を示す。・・・そりゃそうだ。この人は、早く王都のグリベルへ向かわなければならないのだ。この国と国交を結ぶための交渉が待っているであるから、寄り道はできない。だが、リーフ王子が食いついた。
「何故ですか? 人々が困っているんですよ? どうして助けようとしないんですか?」
こういう熱い考えは嫌いじゃないけどね。どうやって説得するかな?
「私たちにはそれぞれ重要な任務があるだろう。私は王都へ出向き女王と会見。お前は水龍の洞窟へ出向き、勇者の剣を得て、少しでも強くならなければならない。」
「僕には、人々を見殺しにするなんてできない。兄上、お願いします。」
「駄目だ。任務優先だ。俺たちは国民の血税で生きているのだ。少しの時間も無駄にはできないのだよ。」
ディアス様・・・真面目だね。こういう人が上に立っているイザヴェラ王国は幸せだ。ちょっと固いが。だが、ここでリーフ王子に助け舟が入る。
「殿下。この討伐依頼を受注することは、勇者の成長を促進することになると愚考します。お時間を割かせて頂くのは心苦しいですが、無駄にはならないかと存じます。」
「そおねえ、いくら自国の国民じゃないとはいえ、少々冷たいんじゃないかしら? それにこれから頭を下げなきゃならない相手に対して恩を売っておくのも悪くはないですわよ?」
アレクとミリアム王女の言葉である。すこし悩んでいるディアス王子。
「・・・分かった。リーフ。 この国の人達のために頑張ってみてくれ。レグルス君、弟のこと頼むぞ! 期待している。」
何とか折れたディアス王子。おかげで、食事の場の空気が柔らかくなった。みんなほっとしてるし。なんだかんだで優しい人だ、ディアス様は。・・・さあ、明日は雪竜退治だ。
割とどうでもいい話になりますが、設定として、この世界は 1か月30日、年12カ月。360日 という設定にしています。12/31は存在しません。逆に2/30が存在します。ご了承を。次回更新は3/28を予定しています。28・29は多めの更新ができるかもです。




