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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第3章 王都へ
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王都への襲撃1

1733年 12/18 謁見の間にて


「報告します。本日未明より、敵軍が、ここより北に300km程離れたところ、イザヴェル川の東岸から南下しているとの情報です。その数、およそ5000とのことです。」


 国王ウィリアム、内務大臣リシュルー、外務大臣ユグノー、リック将軍そろってこの報告を聞いている。ことを深刻にしているのは、敵軍がイザヴェル川東岸に出現したことである。いったいいつの間に渡河に成功したのか?これまで、王都が生きながらえていたのは、偏にこの大河のおかげであった。これを渡河できないから、飛行ができない強い魔獣が襲ってこなかったのである。そして渡河させないように海軍を派遣させ、潰していたのである。飛行系の魔物には弓兵部隊が効果的であり、これらが働いて王都の防衛がなされていたのである。先日海軍が敵の攻撃により深刻なダメージを受けたとはいえ、そもそもこちらが分からないうちに渡河していたとは、王国にとって致命的な事柄であった。それに加え、敵軍5000というのは単純な兵の数ではない。魔獣の数なのである。この戦力は計り知れない。一帯どれだけの軍を

差し向けたら食い止めることができるのか?・・・陸軍精鋭たる陸戦部隊を2万派遣することにした。断じて王都に近づけるわけにはいかない。残り主力とは言えないが、もう2万陸軍兵はいる。リック将軍に出撃命令が下る。


「直ちに出撃し、敵を殲滅致します。」そう言って出撃する将軍。緊急招集された陸戦部隊は速やかに組織され、王都を旅だって行く。そこから少し時間がたった時、別の報告が上がる。


「報告します! 王都の西、イザヴェル川をドラゴンを含む飛行系の魔物の一団その数、およそ1万。真っすぐ王都に向かってきます。ここに到着するまで、まだ時間があるようですが・・・」


 たった今、主力である陸戦部隊を北方に派遣したばかりである。


「弓兵部隊を王都に呼び寄せろ。できるだけ打ち落とすのだ。残りは、手元に残した陸軍で何とかするしかない。・・・すまぬ、アレンも出撃してくれ。練度の低い兵達だがうまく導いてくれ。」


「分かってるぜ、行ってくる。」 およそ、王子とは思えない軽さで去っていくアレン王子。飛行部隊にドラゴンが多すぎれば、弓兵では打ち落としきれない。王都が戦渦にさらされるのは避けられない情勢になってきた。王都を襲う魔物たちを練度の低い兵士たちとそれを率いるアレン王子がどこまで食い止めることができるか。今の国王には祈ることしかできないのである。




 王都から北へ50km程進んだ地点にて、魔王軍と王国陸戦部隊はにらみ合う状態になっていた。そこへ響くリック将軍の突撃を促す掛け声。


 「俺に続け!」


 そう叫ぶや否や、目にもとまらぬ速さでかなりの距離をダッシュし敵軍に突っ込んでいく一人駆け。敵軍の目の前でジャンプ。高さ10mは跳ね上がっただろうか? そのまま自由落下し、敵軍のど真ん中で、自慢の叩きつける。オリハルコン製で比較的軽量とはいえ、十分な大きさのある手斧であり重量は相当ある。さらには同じくオリハルコン製の大盾を持ち、それに十分な助走付けてジャンプし、10mの高さからの自由落下である。そこにリックの腕力が加わる。一匹のオークの頭をかち割るだけにとどまらず、その衝撃波がこの地点から半径5m程まで広がる。そのまま体勢を崩さず、手斧を投擲。その手斧はブーメランの如く、周囲の魔物をただの肉塊に変えながら、再びその手に戻ってくる。そしてこれをエンドレスに続けていく。・・・リック将軍の通った後には死体の山が形成されていくのである。・・・その後、全軍突撃となり、魔法軍5000と王国軍2万の白兵戦が展開されていく。


 魔王軍側も、ロキが猛威を振るっていた。彼が手に持つ雷神の剣は、7年前にコトナ村のギルドマスターのギブソンを倒して手に入れたものである。この剣の力も凄まじく、次々に王国軍を切り裂き血まみれにしていく。ロキは異世界人で、当然ただの人のはずだが、元々の屈強な体であったにもかかわらず、禍々しい力を帯びている。異世界人だということはもちろん王国側は分かってはいないのだが。しかし彼が身に纏う異常なまでの力は、ロキのことを魔物を率いる魔族と思わせるには充分であった。・・・そして、両軍はその数を半数まで晴らしたところで、リックとロキが相まみえることになる。


 両者は高速で己の武器をぶつけ合い、周りの者はそれを目で追うことができないでいる。完全に別次元である、ロキの剣戟をリックが盾で受け、リックが斧で応戦する。だが速さではロキが勝るのか斧の一撃は悉く空を切る。一進一退の攻防である。


 だが、王国軍の1人、スレイマンが自慢の槍と魔法の冴えで、この均衡を崩し始める。魔王軍が残り1000体まで魔物の数を減らしたところで、撤退を始める。リックとロキの一戦は決着がつかなかったが、リックは追撃はしなかった。王都の守備を優先したのである。ロキが去り際に捨て台詞を吐いて去っていく。


「この勝負は預けておくせ。だが、貴様らの王都には別動隊を差し向けてある。せいぜい耐えて見せるんだな。」


 消えたのは一瞬だった。ゲートの魔法を使い、一気に離脱していったのだ。彼らがやっていたのはただの陽動だったのだ。このセリフを聞いたリックは、王国の主力である自分たちが、王都から引き離すべく誘き出されたことを悟るのである。




 そのころ王都の西では、イザヴェル川東岸での攻防が繰り広げられていた。海軍の奮戦もむなしく、1万いた魔物の群れが川の東岸で弓兵隊が必死の応戦をしていた。だが弓が与えるダメージではなかなかドラゴンをすべては落としきれず、地面に降り立つものが出始める。そこを若手の陸軍兵が突っ込むも、あるものはドラゴンの炎に焼かれ、あるものは尾で薙ぎ払われ、またある者は凶悪な詰めで体を引き裂かれた。中には龍タイプのものに絞殺されるものもいた。・・・そんな中で両手剣を携えたアレン王子が奮闘している。この巨大な剣を自由自在に操り、竜の首を刎ね、羽を切り裂き、胴体に突き刺している。まさに八面六臂の働きであった。それでも、討ち漏らしが出て、王都は混乱に陥った。逃げ惑う王都民を喰らう竜達。


 これよりも、ほんの少し前、レグルスは元級友たちと喫茶店で談笑していた。メンバーはレグルスの他、エスト、ラルフ、アレク、ベル、メアリである。昨日の続きと言わんばかりに、割とくだらない雑談に興じていた。・・・そんな時に外に耳を傾けると、街から騒音や悲鳴が聞こえ始めるではないか。全員で外に出てみると、ドラゴン(龍・竜)やその他の飛行系魔獣が街を襲い始めていた。レグルスはアレクにベルとメアリを安全なところに連れて行くように頼む。そして、残ったレグルス、エスト、ラルフが突如発生した王都内の戦場へ走っていく。




 王都への飛竜部隊による攻撃が開始されたちょうどその頃、謁見の間では、更なる報告がなされていた。その場にいるものは国王・大臣に至るまで全員青ざめている。


「南にも渡河した魔獣の群れが現れただと! そんな・・・馬鹿な!・・・だが、もう差し向ける兵はいない・・・」


 ここにいる全員が死を覚悟した。もう、打てる手は打った後なのである。後は祈るだけだ。せめて、勇者の才能を持っている、第3王子のリーフだけでも絶対に逃がさなくては。そう、国王が考えるのは少しだけ遅かった。リーフ王子は何とかしようと1本の剣を携えて行ってしまった後であった。彼は訓練をしていなかったわけではないが、早急に勇者に仕立てようと特べつ成長を急いでもいなかったのである。現時点では第2王子のアレンの方が圧倒的に強い。というより、ギルドのレベルで言えばせいぜいDランクがいいところである。剣も魔法もいろいろできるが、一流の能力と呼べる能力がまだ何もないリーフであった。それでも、何とかしようと出て行ってしまったのは、勇者が勇者たる所以なのだろうか?とにかく、これまで本気でリーフを鍛えてこなかったことを後悔せるのである。


 イザヴェル城を出て城下にかけていくリーフ。周囲を見渡すと、川岸周辺やその近辺の市街地から煙や炎が見える。このまま走っていくのももどかしく、ゲートの魔法を唱えて一気に市街地へ。すると丁度槍を携えたレッサーデーモンが幼い子供に向かっていくところだった。


「サンダー!」


 基本的な雷の魔法である。氷系と風系の魔法の組み合わせで放つことのできる魔法であるが、いかんせん加えた魔力が低いため、あまりダメージは与えられていないようだ。だが、注意は引くことができた。腰に差しているミスリルソードを構え、レッサーデーモンに切りかかるリーフ。だが、付けることができた傷はかすり傷のみであった。逆に持っていた槍で突かれるリーフ。直撃は避けるものの、吹っ飛ばされて転がされてしまう。・・・リーフは死を覚悟した。周囲の制止も聞かず飛び出しては見たものの、これでは犬死である。・・・あまりの悔しさに頭が弾けそうな思いがした。・・・絶対にあきらめたくない!そう思った瞬間、ほぼ無意識に「§ΔΘΖΠΛΘ!」自分自身でも何か聞き取れないような呪文を唱えていた。いや決して変な言語ではなかった。古代語などでもない。無意識なあまり、聞き取れなかっただけだ。体からごっそり魔素が抜け落ちていく。が、その発動された魔法はピンポイントに襲ってきている敵を狙い撃ちしていく・・・味方を避けて・・・聖なる光で。川からやってきたドラゴンを始めとする一団は、このたった一つの魔法で全滅したのである。・・・ただ、リーフにはその結果が分かる前に意識を失っていた。レグルスたちがこの場に到着したのは、その直後であった。


「リーフ王子? いったいどうしたんですか?」


 エストはリーフを抱きかかえて、頬を軽くたたく。・・・少しして気が付いたようだ。


「あなたは・・・あ、レグルスとエスト! 大変なんです! 王都が!」


「王子! ちょっと落ち着いてね? いったいどうしたというんですか?」


 優しく尋ねるエスト。そこで、王城に齎されていた情報。現在北方で国の主力が魔王軍と交戦中。西からも敵が飛来し、これは撃退できたが、この後南からも敵が来るという。その数2万らしい。そもそもどうやって、イザヴェル川を渡河したのか不思議だったが、既にこの国は戦力をほぼ失っている状態だ。2万の魔物軍に攻められたら、この国は確実に滅亡する。商隊の護衛中、テーベの町で訊いた、見えない何か揺らめくものが川に居たという証言が妙に気にはなりはしたが、今はそれを考えても仕方ないだろう。普通に考えたらここは全力で逃げるべきだが、・・・・


「私たちでやっちゃいましょうよ?」


「はぁ?! 何言ってんの? 無理に決まってるだろ? 逃げようぜ?」


 エストとラルフで意見が割れた。まあ、ラルフが正しいけど。


「レグがいれば大丈夫! 私もいるし。 2万や3万なんとかなるよ!」


「まあ、やれと言われればやるが。というかやらないと死ぬだけだしな。一つ全力を出すとするか?」


 そうこなくっちゃ!って顔をするエスト。『まあ、何とかなるんやない?』とゲンはいつものように軽いな。・・・俺たちの様子を見てラルフも折れたようだ。


「分かったよ! やればいいんだろ! やれば! どうせ今からなら逃げられねぇよ!」


「僕も戦います。力を貸してください!」


 とリーフ王子。この人に言われるとなんかできそうになるんだよな?


「・・・はぁはぁ、お前! リーフ! 何でこんなとこ来てんだ!」


 今度はアレン王子だ。いきなり敵へ魔法が発動して消滅したから、確認しに来たんだとか。生き残った兵士の方々も来ている。今話していたことを話す。


「無茶としか言いようがないが・・・俺は好きだぜ、そういうノリ。もちろん俺も付き合わせてもらうからな。」


 そういって、大剣を構えなおすアレン王子。・・・様になるわ。


 このように無謀ともいえる、少人数による2万程の魔物たちとの戦いが幕を開けるのだった。


3/26続きアップします。

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