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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第3章 王都へ
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王都イザヴェラ

 テーベの街を出発した商隊は、その後は順調に進んでいた。王都のお膝元まで来ているため、警備体制が厳しいようで、盗賊は全く出てこなかった。魔獣には数回襲われたが、特に脅威となるレベルの魔獣には遭遇することはなく、予定通り5日後、ラーウェ出発後からはちょうど20日で王都イザヴェラに到着した。午前中であった。実は王都に来たのは人生で2回目である。尤も、1回目はかなり幼い頃だったので、ほとんど印象には残っていない。実質初めての王都と言っていいかもしれない。


 とりあえず、護衛の任務は終了である。危機的状況が幾度となく襲ってきたにもかかわらず被害なしでここまで来られたのは奇跡だと、商隊の長たるセルジオさんには称賛された。確かに、護衛のメンバーによっては今回の依頼は失敗していた可能性が高い。さすがにこれは自分たちの力ではないとするのは謙遜が過ぎるだろう。報酬も気持ち増額があるそうだ。うれしいことだし、ブライトさんも有難く受け取ることにしたようだ。その後、護衛担当の12名はイザヴェラギルドに依頼達成報告を行い、確認も取れたとのことで、報酬を貰う。1人当たり金貨30枚であった。予定の金額よりも50%UPである。その他にも護衛の一環で討伐した魔物の希少部位の販売売上もかなりの額に上り、報酬と合わせて、合計金貨50枚ほどになった。


 依頼も済んだので、あの故郷での一件以来、ずっと会っていなかった人たちに会いに行こうかと、ギルドを出ようとしたところ、ギルド職員のギースさんに呼び止められる。・・・何でも、エストとともにイザヴェル城に来るようにという国王命令だそうだ。・・・きっと10日以上前のレアドの町の手前で起きたあの襲撃の件だろう。




 非公式の謁見であり、正装の必要はないとのことで、少々汚れた格好ではあるが城に向かうことにした。城門にたどり着くとあっさり通された。すでに話は聞いているらしい。そのまま謁見の間に向かう。・・・謁見の間にたどり着くと、既に国王陛下は玉座に座っていた。他には大臣らしき人が数名、王族と思われる人が数名、・・・あれ、親父がいる。・・・気にはなるが、それは後回しだ。促されるままに、玉座から近くまで移動し、片膝を落とし頭を下げて敬意を示す。


「あ、よいよい。楽にしていて構わない。予がイザヴェル王国国王のウィリアムである。そなたがレグルスで、隣にいるのがエストであるな。」


 肯定の意を伝える俺たち。


「この度の、魔王軍撃退に多大なる貢献をしたというお前たち2人に感謝の意を伝えようと思ってな。特にレグルスよ、1000程もいた魔獣どもを一瞬で灰燼にするそなたの力量、誠に見事であったと、弓兵隊長のマティスより聞いて居る。大儀であった。隣にいるエストも強力な魔法によって、魔獣どもの撃退に貢献したと聞いて居る、そなたたちには感謝してもしきれない。よって2人には褒美を取らそうと思う。」


 もちろん、拒否する理由はないので、ありがたく頂戴することとする。それにしても随分と大ごとになったものだ。もらった報酬は、俺が金貨1000枚、エストが金貨100枚であった。それとは別に、2人とも一部の立ち入り禁止区域を除き、王城への出入りの自由が認められた。臣下にならぬかとも問われたが、それはさすがにお断りした。「まあ、今すぐでなくともよいから、考え直したら言ってくれ」と先送りにされた格好だが。


 その後、王族とこの場にいた大臣たちを紹介される。国王の隣から、王妃カトリーヌ、第1王子ディアス、第2王子アレン、第1王女ミリアム、第3王子リーフだそうだ。どのお方も、お名前はお聞きしたことはあるが、このように直接対面してというのは初めてで緊張する。第1王子ディアスは次期国王であり、現時点でも内政、外交と大臣の補佐的役割を果たしているようだ。年齢は24でしっかりした青年といった風だ。第2王子アレンは武芸に優れ、武器を取り軍と行動を共にすることもあるのだとか。年齢は21である。強いと思ったものには興味があるのか、こちらを不敵に睨んできている。第1王女ミリアムはこの国唯一の姫だ。年齢は19で、俺たちよりは2歳年上で一番近い感じがする。見た目の美しさはもちろんのこと、中々の才女で、主に魔法や学問の世界で才能を発揮しているらしい。第3王子リーフは、武芸・魔法・学問様々な分野で才能をお持ちではあるが、まだまだ勉強中のお立場なようだ。年齢は14でおらたちよりは3歳下だ。・・・この方からは何か不思議な感じがするな。何なのかは分からないけど特異的なものを感じる。少なくとも嫌な感じでない。年齢の割にしっかりした雰囲気も感じる。


 続いて、内務大臣リシュルーは内政のトップで、この国のナンバー2に当たる人だ。政策はこの人の助言にかなり頼っているとのことらしい。外務大臣ユグノーは外交のトップであり、現在の情勢的に極めて忙しく国内にいないことも珍しくはないそうである。・・・と他数人の高官の紹介を受け、何かあったらいつでも相談してほしいと御言葉を賜った。ちなみに、その高官の数名の中にいた親父のアスクが神官長という役職になっていたのには驚いた。なんでも若い頃は王城に勤めていたらしく、元の鞘に収まっただけらしい。その後、城の中に滞在するための部屋を用意しているとのことだったが、これも、現在(いま)の実家(親父の家=神官長の家)に行くからということで、丁重に断らせてもらった。




 こんな形で謁見を済ませ、王城を後にした俺たちは、こっちでの俺の実家に来ている。もちろん2人とも来るのは初めてで、地図を見ながら来た。俺にとっては自宅なのにな。ちなみに親父は当然のことながら来られなかった。帰宅してみると、お袋のシュリーが待っていてくれた。本来ここ王都の教会でシスターやってるらしいが、休ませてもらったらしい。


「レグよく帰って来たわね。」


「エストちゃんホントにひさしぶりっ! あらまあ、綺麗になっちゃって!」


など、久しぶりに会ったらするだろうという言葉のやり取りをした後、3人でしばしお茶することに。


「疑問に思ったんだが、何故家にいたんだ? いや、居ちゃダメって意味じゃないが、仕事でいないと思ってな?」


「そりゃ、息子が帰ってくるんだから、休みぐらい取るわよ? エストちゃんにも会いたかったし。」


「いや、何故それが今日だと分かったのか不思議だということなんだが・・・」


「そんなの、エストちゃんが手紙で全部知らせてくれたからに決まってるじゃない! それよりもね!何故息子が帰ってくるのに手紙を送らないのか?ってことよね! 我が息子ながらありえないわ!」


 やばい、少し怒っているかも?


「いや、シュネー村にいるとき手紙でそのうち帰るかも?って書いてただろ?」


「あんたねぇ! いつの話をしてるの? 2カ月前の手紙に()()()()で分かるわけないでしょ?!」

 

 エストは「あ、はははは・・・」と乾いた笑いをしてるし。クソ! かなり恥ずかしいぞ。


「あんた、エストちゃんに感謝しなきゃだめよ? ホントごめんなさいね。こんなのの相手させて。」


「大丈夫です。慣れてますから・・・」とか返してるし。俺がホームのはずなのに、アウェー感が半端ない。

 ・

 ・

 ・

「ところで、こっちにはいつまでいるのよ?」


「いや、しばらく王都に滞在して、今後の旅の方針でも固まったらそっちへ向かうつもりだけどな。その間しばらく厄介になるわ。まあ、ギルドでいい依頼があったら、それ受けに行くかもしれないが、そのまま行ったきりにはしないつもり。」


「そっか、私は久しぶりに息子の世話を焼けるのね。・・・そうそう、エストちゃんも一緒なんでしょ?特に当てがないんだったら、うちに泊まっていきなさいよ? ね?」


 そんな感じでエストの滞在も決まる。ということで、うちの客間はしばらくはエストの部屋になるようだ。・・・その後、あの時から分かれたままの村民たちの近況を聞く。こっちに逃げてこられた人はみんな元気にやっているらしい。エレン先生もこっちの学校で教壇に立っているみたいだ。・・・だが、こちらに来られなかった人たちもいるようで・・・コトナ村のギルドマスターのギブソンさんは自分の身を挺して他の村民を守ったらしい。・・・随分前のことだが、俺は初めて聞くので少なからずショックだ。悲しいことだが切り替えるしかないよな。・・・何々、この後当時のクラスの同窓会があるだと! いつ決まったんだ? またエストか? エストなのか? 何だ?この俺の行動は私が管理してますぅ、みたいな感じは! 俺は知らんぞ! 断固抗議する!・・・・・いや行くけどさ。行かない理由なんて無いし。てか行きたい。「じゃあ、いいじゃない。」とか普通に返された。・・・お袋とエストの目が怪しく光った気がしたが、気にしないことにしよう。




 夕方、王都のある酒場で、都合のついた元級友たちにエレン先生を加え同窓会の最中である。酒とうまい食事に囲まれて昔の思い出に花を咲かせ、近況を報告しあっている。話題はどうしても、7年ぶりの再会になる俺へと話は集中する。


「無事だとは聞いていたけど、あの時は本当に心配したんだから。でもこうしてまた会えて良かったわ」

 

こう言うのはエレン先生である。俺一人だけ行方不明になったからな。ご心配をおかけしました。


「それにしても、レグ、お前自己紹介しないと分からないレベルで変わってるな。そんなにガタイでかくなって、いつ人間やめたんだ?」


 人間やめてないっちゅうの! この失礼なヤツはラルフだ。昔からギルド登録していたが、今はBランクまで上がっているらしい。 戦士としてかなり有名な存在らしい。 ふむ。


「元気そうでよかったよ。あっちでの暮らしはどうだった?・・・暑い?・・・そりゃそうだよな。景色はいいところあった?・・・」


 こんなことを聞いてくるのはアレクだ。こいつも冒険者の仲間入りをしているらしい。ランクはCとのことだ。傍ら趣味だった絵を書いては売ったり揚げたりしているらしい。・・・何でもコイツの絵はかなりの値がついているらしい。天才か! だったら、いつかガイアナ島に連れて行って絵を書かせるのもいいかもなぁ。


「何か、完全に人が入れ替わったようだよ。君があの大人しそうなレグルスとは信じられないくらいだ。向こうでは相当苦労したんだろうね。・・・まあ、僕の方はそこそこ頑張ってるよ。」


 こう言っているのはロイだ。現在は応急で一行政官として、日々の業務をこなしているそうだ。ゆくゆくは大臣になるのが夢だそうだ。・・・おおぅ、頑張れ。


「それにしても逞しくなったじゃない? ちょっと胸触らせなさいよ?・・・ナニコレ?コッチコチなんですけど、いったい何やったらこんな体になるのよ? あの本の虫が・・・中々セクシーじゃない?・・・って、イタ! 何すんのよエスト!」


 このセクハラして、エストに叩かれた、セクシー姉さんはマニだ。この酒場で働いているみたいだが、今日は休みを貰っているようだ。


「こらこら。そんなことしたらエストに叩かれるに決まってるじゃない?・・・え?わざと?・・・ネタ?・・・中々体張るわね。」


 これはベルだ。王都にある美容院で働いているらしい。マニはマニでいい男にペタペタ触って何が悪いのよ?むしろご褒美じゃない?って逆切れしてるし。・・・まあ、ご褒美ってのは否定はしない。・・・ヤバッ! 悪寒が! あっちは見ないことにしよう。


「そうそう、アンが会いたがっていたわよ。今更感はあるけど、あの時妹のアンを助けてくれてありがとうね。・・・そうそう、アンが『お兄ちゃんって、年下って嫌いかな?』って随分気にしていたけど、そこんとこどうなの? ん?」


 こう言っているのはメアリである。妹のアンちゃんを助けたのがきっかけで俺もガイアナ島に転移したし、ある意味今の俺があるのはあの子のおかげではあるしね。冗談でもネタでもこう言われて悪い気はしない。年下?アンちゃんって確か14歳になるのか。結構大人っぽくなってるかもな?あの頃1年生だったし、想像つかないけど。・・・痛! エスト! 爪楊枝で突くんじゃない! ちなみにメアリは学校の先生になりたいらしく、上級の学校に通っているらしい。アンちゃんはまだ年齢的に中等学校だね?


 しばらくの間、俺の話題から中々離れなかったので、いっそのことと思い、シュネー村での思い出とかいろいろ話して聞かせた。俺も茶化しながら話したせいか、どんな魔獣を倒したとか、師匠にどんな修行を受けていたとか、話半分で聞いてもらえた。・・・だってなぁ。まともに話したら、頭おかしいと思われるか、普通に引かれるかどっちかだしな。別に自分語りしたかったわけじゃないし。


 その後も、初等学校時代のあれこれ、アレクがよく落書き書いて怒れれてたとか、ラルフの悪戯がひどくていつもロイが被害に逢っていたとか、エスト・マニ・ベル・メアリの4人組が仲良かったとか、あの頃の思い出をたくさん語り合った。まあ、他の皆もみんな仲良さそうで、自分も少しだけ昔を思い出せてうれしいしと思う。あの事件以来俺もきつかったが、きつかったのは俺だけじゃなく、他の皆も親を亡くした奴もいるし、少なくとも長い避難生活に耐えていたわけだからな。こうやって楽しく過ごしているところを見ると、強くなったんだろうな、としみじみ思う。・・・こうして夜が更けるまで俺たちは旧交を温めていく。・・・・




1733年 12/17 王都イザヴェラからイザヴェラが沿いに北上したある地点にて。


 「ロキ様、報告いたします。このポイントにて我が軍の魔獣兵、総数5000イザヴェル川の渡河に成功いたしました。」


 その報告を受けニヤッと笑うロキ。


「やはり、我々の世界で開発されていた、ステルス昨日は効果を発揮したようだな。」


 元の世界には普通に軍に実用化されてもいたものだが、こちらの世界での開発は困難を極めたが、先日ようやく完成し、実験を兼ねて使っていたのである。そして、見事これまで成し得なかった、イザヴェル川の渡河に成功したのである。


「これまで、リックとかいう男に煮え湯を飲まされてきたが、次はそうは行かぬぞ。この規模の魔獣が南からも来る。先日は試しに偶々いた商隊を襲ってみたが、その時は護衛にイレギュラーな存在がいたために全滅したようだが・・・もう既に移動済みのはず。次は失敗は・・・無い。」


「明日がイザヴェル王国の終焉となる。今夜をせいぜい楽しむことだ。」


 ロキの独り言を聞く人間は一人もいなかった。







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