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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第3章 王都へ
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護衛たちの受難2

 宿で充分に休息をとった一行は、早速ミラの町を出発する。ここからどんどん北上していくのだが、次の町レアドまでは平たんな道が続く。何もなければ2日で到着するはずだが、ミラの町を出てから1日、野営をするまでに、オーク20匹の集団が1回、ゴブリン30匹の集団が1回遭遇しこれを撃退。さらに野営中、それぞれ別の盗賊団が3回、どれも小規模だったが夜襲に来た。もちろん撃退したが、寝れるかな?と思った頃にまた襲われるような格好になったため、商隊の者も、護衛たちも全員寝不足である。現在5日目の旅を始めたところである。


 護衛12名は、もしもの時に備え半分を警戒に当て、半分は仮眠をとっている。尤も、馬車走行中にゆっくり眠れるわけもないのだが。・・・ふと、遠く西の方を、今通っている街道に平行して流れている大河、イザヴェル川の上辺りだろうか?黒くモヤっとしたものが浮いていることに気が付いた。しばし注視していると、それは何かの点の集合だった。そして時間とともに、その点がはっきりし始める。・・・あれは・・・ガーゴイル、マッドイーグル、レッサーデーモンの集団だった。一部飛竜も数頭いるようだった。その数は・・・凡そ1000程か?それがだんだん近づき、こっちに来る!


 警笛を吹いたが、他の護衛メンバーも気が付いていたのか、一斉に馬車を飛び出す。商隊にも一時停止してもらう。・・・今は、軍がこちらに来ている気配はない。実はここ1年ほど、魔王軍の急襲が川を渡ってしまうことが度々発生している。軍の行動が間に合っていないのだ。もちろん後から撃退したりはしているのだが、河口から王都までの区間のどこかで、度々侵入を許しているのは事実である。たった12名であんなのを相手にするのは、正気ではない。軍の到着を待つのが正解かもしれないが、このままでは商隊が全滅してしまう。・・・やるしかないだろう。まあ、まともに遣り合えば、どっちにしろこっちが全滅するのだが。・・・こちらまであと1km程か? 相当近づいてきたが、敵は散開せず、固まって一気にこちらを殲滅するつもりのようだ。・・・うん、これならいけるかもな?


 両手を前に突き出し、気を限界まで掌に集中させる。軽く眩暈がするが、ここは出力重視。両手が光り輝きだす。・・・よし!・・・限界まで溜まったところで、気合を入れなおし、一気に放出する。両の掌から閃光が一直線に進み、敵集団に直撃。直撃した魔獣たちはその激しい閃光がもたらす超高熱により体が瞬時に解けて燃焼し、灰となったものがパラパラと落ちてくる。・・・全体の80%程がこの数秒間で消失した。さすがに敵軍にも何が起きたか分かっていないのか、混乱している様子が見て取れる。


「・・・「「「「!!!!!!!!!!!」」」」・・・」


 俺は、本当に全力でやったので、ちょっとふらつき尻餅をついている。周囲は例外なく驚愕していたが、気にしている余裕はない。すかさずヒールを自分にかけ、体力を一気に回復させていく。残り、200か・・・きついな。今のをもう1度やるにしても、今度は敵は散開して警戒しているようだった。このまま退却してくれるのを期待したんだが、・・・そんなに甘くないようだ。生き残った魔物たちが真っすぐこちらに向かってくる。・・・とそこで、・・・やっと来てくれたようだ。・・・王国の弓兵部隊だ。


 残っているガーゴイルとレッサーデーモンを次々に打ち落としていく弓兵隊。だが、飛竜も2頭生き残っていたようだ。それは、放たれた弓も跳ね返しこちらにやってくる。・・・だが、その程度であれば全く問題ない。そのうち早く近づいてきた1頭に鎌鼬を放つ!・・・直後、首が切断された飛竜が墜落してくる。そして遅れてやってきたもう1頭に、エストが放った極大のファイアボールが直撃。そのまま墜落し、暴れだしていたが、残りの護衛メンバーの総攻撃を受けて絶命したようだ。このようにして敵軍は一匹残らず殲滅に成功したのである。



 

「遅れてすまなかったね。これまでもこの辺りの町を襲うことはあって警戒は続けていたんだが、街道を移動中の商隊を直接襲うのは計算外でね。・・・申し訳ない。」


 こう、頭を下げているのは、王国弓兵隊隊長のマティスさんである。話によると王国弓兵隊はレアドの町に駐留していたらしく、発見直後に馬をとばして来てくれたらしい。川の防衛に当たっているもう一つの一団である海軍は先日敵軍と交戦し壊滅的ダメージを受けてしまって、立て直しに時間がかかっているらしい。それだけ魔法軍の侵攻が激しくなっているということだろう。それにしても、あと少し弓兵隊の到着が遅れていたらと思うとぞっとする。少なくとも商隊に大きな被害が出ていただろうし。


「ところで、行軍中に激しい閃光が敵軍を襲ったかと思うと、その敵軍が激減していたんだが、確か君たちの方から出ていたようにも見えたんだけど何か知らないかい?」


 まあ、隠すことでもないので、俺がやったことを話す。


「さっきの閃光は君か! あれには驚かされたよ。直後1000はいたと思われる敵の一団が一気に減ったからね。こちらとしても助かったよ。・・・しかしすさまじい威力だった。その力はいったいどこで?」

 ・

 ・

 ・

「そうか、君はシュネー村の出身だったのか。で、拳聖ヤン様のお弟子さんだったと。なるほど、それならあの人ならざる力もうなずける。・・・え、出身はシュネーではない?・・・コトナ村?!・・・そうか・・・君は若いのに大変な苦労をされたのだね。・・・ふむ。両親は健在で、王都に避難中であると。・・・名は・・・なんと! アスク様とシュリー様の息子さんだったとは・・・」


 やっぱりというか何というか、ヤン師匠は相当高名な人らしい。あの人普通じゃないしな。というか、両親がそれなりに有名だったのは知らなかった。この人部隊長しているのに、様付けしてるしな。時々会いに来ていた時、王都では忙しいって言ってはいたけど、かなり活躍しているんだなぁ。とそこはうれしく思う。




 マティスさんたち弓兵隊がレアドの町に戻っていく。商隊も移動を開始した。俺とマティスさんの会話をブライトさんたちも聞いていたので、先日のトロール戦のことなんかと合わせて妙に納得していた。まあ、今回の護衛が当初考えていたよりもずっと危険なものであることがよく分かった。こりゃ、金貨20枚貰っても全然割に合わんな。とはいえ、これ以上報酬を上げたら肝心の商売で利益が上がらないしね。商隊もボランティアでやってるわけじゃないし。・・・でもそうすると、このままではだれも物資の輸送などは請け負ってはくれないだろうし・・・まあ、その辺は王家の人達や政治家がどうにかしてくれるだろう。


 結局、もうしばらく進んだところで、野営することになった。夜が明けてから出発し、できるだけ進んで外でもう一泊。レアドに着いたのは7日目の夕方であった。俺たち2人も疲れ切っていたため、どこにも出歩かず就寝。起きたら、準備でき次第、即出発である。




 あれから、さらに1週間が経過した。現在15日目、今までと変わらず魔獣たちの襲撃にさらされ続けた商隊であったが、レグルスたちの護衛の頑張りで、商隊は損害を受けることなくここまで進むことができた。盗賊も何度か襲撃してきたが、そのすべてを撃退できていた。あれ以降、魔王軍の襲撃はなかったのが幸いである。町に着くたびに、倒した後、切り取って持ち運んできた魔獣の希少部位なんかをその都度ギルドで買い取ってもらい、利益を回収してきた。あと残り5日程で、順調にいけば王都イザヴェラに到着する。現在は街道沿いの6つ目の町、テーベの街に到着している。今は夕食時で、いつものように酒場に来ている。いつもと違うのは、今日は2人ではなく、ブライトさんら、別に5名ほどの護衛メンバーに加えて、セルジオさんら3名の商隊メンバーも同席している。「まあ、偶には一緒に飲もうや。」ということらしい。それ以外の面々はまた別の酒場で一杯やっているのだろう。この街は人口10万程もいる大きな街であるから、これまで通ってきた町と比べても賑やかさが全然違う。そんなことで、少しだけ解放感に浸っているのである。


「最近、なんか寒くないか? なんか、足元がひやひやするんだよなぁ。」 とポールさん。


「そりゃ~ねぇ。もう12月よ? そろそろ雪も降ってくるんじゃない?」


 こう言っているのはミランダさんである。もう冬である。寒いのは当然だが、ここは、そこまで北ではないし、雪は滅多に降らないはず。大袈裟である。


「ぶはぁ! おめー、年取ったんだよ! 股引でも常時はいてたらどうだ? おっさんにはひちゅ需品だろ?」 今のはブライトさんだが、噛んだよね。確かに。


「呂律が回らなくなってるジジイには言われたくはないがな。・・・フ」 鼻でわらったポールさん。


 直後、酔っぱらった勢いで「やるか?コノヤロー」とか「かかってこいや!」といって喧嘩を始める2人。迷惑だからやめてくれと思ってたら、ミランダさんが拳骨落としてくれた。女性なのに意外と男前だなと思ったのは内緒だ。・・・頭から煙を出しながらテーブルに突っ伏す2人。・・・ほっとこう。ん?近くのテーブルから、気になる会話が聞こえてくるような・・・


「なあ、あの話聞いたか?」


「何だよあの話って?」


「イザヴェル川を、王都からさらに上流を航行していた船に乗っていたやつが見たって言うんだが、夜になってたらしいんだが、船の前方に揺らめく影が映ってたって。それがな、川の東側に渡っていったって。」


「季節外れの怪談か? 寒すぎるっちゅうの! 透明なお化けでも見たとでも言いたいのか? それ。」


「俺も別に信じているわけではないんだが。 まあ、見間違いだろ?」


 ちょっと近くのテーブルで、そんなことを言って笑いあっている男2人。普通はそう考えるんだろうが、透明化した魔物がこっそりと渡河したと考えたらどうだろうか?それが1匹2匹ではなく、それはもう、軍単位で。少しずつやればこちらには気づかれないだろうし、人知れず、無視できないほどの大軍が王都のより北部に出現して、今までの空からだけの攻撃に加えて陸上部隊が攻めてくるとか・・・気になったのでボソッと言ってみる。・・・まあ、予想通り、考えすぎだと笑われたが。自分でもそう思うしな。・・・いいや、忘れよう。・・・その後はそのまま楽しいひと時を過ごすレグルスである。心に棘が刺さったような感覚を残したまま・・・




 


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