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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第3章 王都へ
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護衛たちの受難1

 2日目の朝、レグルスは朝食の準備をしている。昨日作らせてもらったスープが大変好評で、セルジオさんの鶴の一声でこの旅の食事担当に決まってしまったのである。ということで、材料を貰い、全員分の食事を作っている最中である。・・・俺の仕事、護衛・・・まあ、嫌いじゃないというか、寧ろ好きだから、全然かまわないんだけどね。といっても、基本、汁物作るぐらいしかないけどね。パンは保存食として大量に持ってきてるから、他の主食は必要ないのである。今日はシュネー村で教わった、南国風スープである。あっちにいたときは頻繁にお世話になっていた一品である。・・・味見は問題なしっと。


 朝食も好評のうちに終了し、今日はルルイ山の峠が目標である。スケジュール的には、少なくともルルイ山には入っておきたいらしい。・・・本日は天候が快晴であり、風も穏やかなため、馬車の進行も快調である。冬も近いのであるが、この辺りは温帯域でもかなり南に位置し温かいのである。大変心地よく馬車に揺られている。尤も、ラーウェの街はここよりも南でギリギリ熱帯に位置し、ずっと暖かい。そういう意味ではここは程よく涼しく過ごしやすいのである。逆に考えると、どんどん北上しているわけで、今が冬になろうとしていることを考えると、どんどん寒くなるのだが。到着は12月の中旬だからね。王都は雪が降る可能性もある。大雪はないはずだが、少なくとも寒いであろう。気を付けなければ。・・・・




午後になってしばらくして、ルルイ山に到着している。上り坂ばかりになってきているが、引き続き馬車は先を進む。・・・結局峠にまではあと少しというところまでは来たのだが、夕暮れが近づいてきたのと、馬たちの疲弊度を考えて、ここで野営することにする。昨日と同様に、夕食の準備を始めるレグルスと他数名。暗くなってくると、多少は肌寒さを感じてしまう。ここの標高は1000m程みたいだ。その辺も関係してるのかもね。・・・夕食も食べ終わって、早くも就寝する人も出始める。護衛たちのうち、夜の後半担当の者達は当然もう寝てる。今日はたまたま、俺とエスト共に前半担当であるので起きているわけだが、


「当たり前なのかもしれないけど、結構音するのね。森の中ってもうちょっと静かなのかなって思ってたけど。」


 確かに、風が無い時であれば、シーンと静まり返っていることも少なくないのであるが、夜になって北寄りの風が吹いてきている。少し寒く感じるのはそのせいかもしれない。


『レグよ、何か気かづいてくる気配があるのわからんか?』


 ゲンの言葉に少し緊張を解いてしまっていたことに気が付き反省する。・・・まあ、それは置いといて、言われてみれば微かに魔獣らしきものの気配がる。方角は南か。俺たちを追って来た格好になるのか。ゴブリンっぽい?一匹だけだな。・・・いや、これ違うな。ゴブリンじゃない。・・・もっと大きな気配を感じる。・・・マズいかもしれない。


「ちょっと、さっきから黙っててどうしたのよ? なんか怖い顔して。・・・」


「エスト何かが南の方からやってくる。戦闘の準備をしてくれ。」


 そんな会話をしている辺りから、ズウン!という、大地を揺らす振動が感じられるようになってきている。俺はすぐさま警笛を吹き、全員をたたき起こす。すると、少しして護衛全員が馬車の中やテントから出てきた。


「おいおい、これはどうしたってんだ?」 「おおう? 何か揺れってっぞ?」 


 とブライトさんとポールさん。他の護衛たちも不安げだ。そうしているうちに、地面を揺らす揺れは徐々に大きくなっていき、音まで聞こえるようになった。まるで木を踏みつけているかのような音まで聞こえるようになった。その方向を見ると、高木ではないが決して低くはない、森の木々の上から何かの顔が浮かび上がる。


「「「トロールだ!」」」


 護衛たちの数人が同時に叫ぶ。・・・はっきり言って今から逃げるのは不可能だ。生き延びるには迎撃するしかない。トロールとは身長10m程ある巨人の魔物である。動きは遅めだが、力が規格外で、馬車など一撃で粉砕される。天災級の化け物である。一説にはゴブリンが大きな魔石を飲み込んで突然変異することで生まれるとか言っていた学者もいたが、真偽は確かではない。この辺でもこんなのが出るくらい、魔物は活性化してるってことか?・・・兎に角、商隊を守らなければ!


「前衛! 何とかアイツを食い止めてくれ。 後衛は弓と魔法で何とかダメージを与えろ! そして回復ができるレグルスはいったん後方に待機してまずは支援してくれ! もし前衛が崩れたらその後は頼む。」


 とブライトさんは支持し、自身も前衛であるので、ポールさんたちとともに計5名ほどで突っ込んでいく。ミランダさんをはじめとする3名は弓を構えている。エストともう一人の魔法使いの男が、攻撃魔法の準備を始めている。俺は、前衛5名にオートヒール」の魔法と【ウェイト】の魔法を重ねがけして支援をする。久々に神官っぽいことをやっている俺。ちなみにウェイトとは重量を上げる魔法である。エストが唱えていた魔法は【ストレングス】である。前衛たちに次々に掛けていく。この魔法は単純に攻撃力を揚げる魔法である。


 ここで、十分な支援を受けた5名がトロールに突っ込んでいくが、トロールが持っていた3mはある棍棒に吹っ飛ばされていく。直後、数発の矢がトロールに命中。魔法も一発命中したようだ。・・・が、急所には当たっておらず、多少のダメージは与えたものの、余計に暴れようとしているようだ。・・・これ以上は無理だな。


 そう思い前衛に出ていく俺。飛ばされた前衛は、ブライトさんとポールさん以外最初の一撃で気絶してる。後方から走ってきた勢いそのままを殺さずに、どてっぱらに蹴りをめり込ませる。・・・跳ね返されたが、トロールも後方に倒れたようだ。・・・腹へのダメージは通りそうもないな。・・・起き上がってきたところを目掛け飛び上がり、たっぷり気を込めた右拳を叩き込むと、左方向に吹っ飛ぶトロール。すかさず今の攻撃の勢いをそのまま生かし、額に肘打ち。・・・痛みから咆哮を揚げるトロール。


 体のバネで飛び起きたが、そこを今度は、限界まで練った気を両手に集め、額にそのまま直接叩き込むと、気のエネルギーが振動となって脳を直接侵したのか、トロールはそのまま動かなくなった。後は、念のため、ブライトさんが持っていた剣で心臓をしっかり刺してもらい完全に絶命させる。・・・主に前衛の人たちの治療をして一件落着。商隊には被害が出なくてほっとする。セルジオさんを始め、商隊の人たちも安心したようだ。


「今回は、レグルス、お前のおかげで命拾いしたよ。ありがとうな! しかし、何だお前の戦闘力は、トロールにタイマンして勝つとかどんだけだよ!・・・」


 正確には、後方からの援護とか色々あったけどね。


「あなたと、エストちゃんと2人がいてホントによかったわ。・・・幼馴染コンビ最強ね。」


 まあ、前衛後衛分かれているからね。互いにないもの補えるからそれはあるかもな。これが、もし森の中でなければ、ファイアボールなんかを使ってくれればもっと簡単だったかもしれない。森の中だから今回はこれで正解なんだけどね。


「次回からはレグルスの戦闘力も頭に入れて戦略を考えないとな。これからは更に頼らせてもらうぜ。」


 これには俺も苦笑いだが、少し皆の気も紛れたようだ。明日以降も続くし、今日はもう寝ないとな。ってまだ俺たち当番の時間じゃん。眠いのを我慢しつつ時間まで頑張るのだった。




 3日目、まずは峠を越えてルルイ山を下りきる。基本ここから街道沿いに北上していけば首都イザヴェラに到着する。ただここから東にしばらく行くとイザヴェラ川があるのだが、その川を渡ってしまえば、現在は魔王軍が占領している土地になる。要するに、いつ魔王軍が襲ってきてもおかしくないのであり危険度が大きく跳ね上がる。難民もかなりの数がこちらに来ており、ラーウェ周辺とは違い治安の悪化も甚だしい。よって盗賊団も多く出没するありさまなのである。尤も、昨日のトロール撃退で何が来ても大丈夫!という空気に放って入る。・・・そうこうしているうちに3日目の目標地点である、【ミラ】の町に着いた。今回の護衛の旅での最初の町である。


 折角のゆっくりできる日である。少しだけ2人で買い物をし、暗くなってからまた酒場に行く。腹も減ってるし、他に行くところもないからね。酒と料理を注文し会話を楽しむレグルスとエスト。


「そういえばさ、このまま王都に着いたら、その後どうするのさ?」 


 とエスト。そもそも今回の護衛依頼は王都に到着するまでである。東都に着いたら解散である。またラーウェに戻るもよし、王都に残るもよし、その他の町に流れていくもよしである。


「実は決め手はいないんだよなぁ。少しの間、王都にいるとは思うけどね。王都のギルド依頼なんかも見てみたいし。今回こっちに出てきたのは、世界中の遺跡を回って見たいってのが理由にはなるんだけど、候補がいくつかあるからね。どこに行くとかは全然決まってないよ。」


「ふ~ん。なるほどねぇ・・・そっか。」 何か考えているようだが・・・・


 実際に行ってみたいところを具体的に挙げてみると、グリバール王国の西の端にあると言われる【水龍の洞窟】。ミズガルム共和国の中央に位置する【霊峰ミズガルム】。アースガルド大陸の北にある、エッダ湾に浮かぶ大きな島、エッダ島。そこにあると言われる【世界樹】。遠く南の大陸スヴァール大陸、この大陸の南の果ての南極にあると言われる何かが封印されているといわれる洞窟。レムリア大陸の東に位置する、ムーラ砂漠にある【ピラミッド】と呼ばれる古代に存在した王国の王のものと思われる墓。これらすべてに、今でも伝わる神話があり、基本的にはおとぎ話のように語られることが多い。が、これらの場所は確かに現存する場所であり、古代の歴史を解明する手掛かりが存在する可能性はある。もちろん自分の知識にはない遺跡であっても、世界を回るうちに情報が耳に入るかもしれないし、行くことができれば行ってみたい。・・・なんてことを語ってしまった。少し飲みすぎたか?


「聞いてると、少し面白そうね?・・・それって私もついていっていいの?」


「もちろん構わないが・・・現時点でははっきりした目的もないよ? いいのか?」


「・・・別にいいわよ。両親にはもしかしたら、そのままついていくかも?って話してたし。」


 確信犯か! 初めからそのつもりだったとは。・・・いや、まあ、いんだけどさ。・・・寂しくないのは素直にうれしいし、・・・


「王都に着いたら少しゆっくりするつもりだけど、旅に出るとき、気が変わったら言ってくれ。 そうでなければ、これからしばらくよろしくな、相棒!」


 相棒かぁ~とか言ってるけど、相棒じゃダメ?・・・わからん。『ダメやなぁ~』とかゲンに言われてるが、もっとわからん。・・・まあ、これからの旅のパートナーを得たのは間違いないようだった。




もう少し旅は続きます。

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