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格闘聖職者の冒険譚  作者: 岩海苔おにぎり
第3章 王都へ
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ラーウェの街での再会。そしてトラブル。

第3章の開始です。

 シュネー村を船が出向して1週間目。人生初の船旅。磯の香が漂う風を感じ、大海原を横切り、一面に広がる水平線を思う存分堪能・・・・・できなかった。・・・今も海面は、俺の胃袋の中のモノに語り掛ける。・・・『こっちにおいで。』と。現にこの1週間、何度食べた後のモノとお別れをしたのか。別れの後には、口いっぱいに甘酸っぱさが残る。・・・中々に素敵で、最悪な船旅である。


 船上に漂う甘酸っぱい空気は、大海原に吹く風が攫っていってくれるので、他に乗っている船の乗組員の迷惑にはなってはいない。・・・はずだ。そう思いたい。乗客自体は俺一人である。それが只々不幸中の幸いであった。・・・乗船中、何度も自分で回復魔法を使うことを考えはしたが、結局やめた。・・・原因が取り除かれないからだ。やったとしても、余計に具合が悪くなるのが目に見えている。・・・でも、この悪夢の船旅ももう最後である。もうすぐラーウェの港に到着する。もう既に、陸地は視界に入ってきている。


『レグ、災難やったなぁ~(笑)』


 怒りで手袋を外し、床にペシ!ってやりそうになったが、かえって喜びそうな気もするので自重する。自分がここまで酔いというものに弱かったのが計算外だったが、苦難の日々ももうすぐ終わる。陸に上がった途端に俺のバラ色の人生は始まるのだ!


『いや、すぐになんか始まらんし。・・・それよりもレグよ。一応忠告しておくことがある。』


 軽く突っ込みを受けつつ、急に真面目になった語り口に、思わず注意が行く。


『随分としばらくぶりにシュネー村以外の人と接することになるわけやが、・・・まあ、トラブルに巻き込まれることもあるやろうしなぁ。 で、誰かと喧嘩になったとする。』


 フムフム。喧嘩したいわけじゃないが、そういうこともあるかもしれない。


『相手殴る時、気い付けや。・・・アンさん、加減間違えるとそいつ殺してしまうからによってなぁ・・・』


『いやいや、ちょっと小突いたくらいで、死にはしないだろう?・・・大げさな!』


『ワイ、結構真面目に言ってるで。レグはこの数年間、ほぼシュネー村の人としか一緒にいなかったんや。あそこで殴りあったことあるちゅうたら、師匠だけなんとちゃう?』


 まあ、そらそうだ。修行の一環でね。組手中殴ることはある。他で人相手に手をあげたことはない。


『他に殴ったんは、数種類のドラゴンに魔獣たちや。』


 いちいち違うことは言ってないが、だから何だ?


『ガイアナ島の魔物ってなぁ、ほぼほぼ全部規格外なんや。ついでにヤン爺も人外や。ふつうの攻撃ではダメージも入らん。』


 つまり? どゆこと?


『今のアンさん、トマト殴るのも、人の頭殴るのも結果、大して変わらないから気い付けや、ちゅうこっちゃ。』


 ・・・それは、いくら何でも大袈裟だろ? 化け物か! ちょっとしたトラブル程度でいちいち人を殺すわけがない!


『まあ、一応忠告はしたで。・・・基本、人はコワレモンや。・・・コワレモンなんや。大事なことは2度言うで。』


『まあ、言いたいことは分かったよ。注意はするようにする。』


 と、そんな話を念話でしている間に、ラーウェの港が近づいてきた。もうすぐ、この不安定な足場ともおさらばである。・・・・・




 久しぶりの大地を踏みしめる。・・・急に体調がよくなってきた気がする。・・・地面が揺れないってのは素晴らしいな。・・・さて、本来この街に来たのは、この街から依頼のあった、王都イザヴェラへの物資の輸送の護衛をやってほしいとのことだった。シュネー村ギルドより、紹介状を書いてもらっている。次の輸送は3日後らしいから、護衛の受付には十分間に合うはずだ。まずはラーウェギルドを探すことにする。




 港から歩いてしばらくすると、街の中心部に着いた。さすが人口30万を誇るイザヴェラ王国の第2の都市である。繁華街の大きさに圧倒される。行き交う人も多い。尤も、魔王軍に追われて逃げてきた人たちを、この街は多く受け入れているので、過去と比べても、大きくなっているのだろう。ラーウェ周辺は、東側をミル川を境にミズガルム共和国と接しており交易が盛んである。北には世界最大の湖であるウルズ湖、西はイザベル王国の主要部分にたどり着く前に大きな山を挟んでいる。南は海となっているため、ちょっとした天然の要塞と化していて、軍事上は安全な土地柄である。加えてその地理的要因から経済力もあり、この緊急時においては王都の遷都案も出るぐらいである。


 ラーウェギルドは、そう迷うこともなく見つけることができた。扉をくぐると、多くの冒険者がそこにはいた。壁に貼られた依頼を吟味しつつ眺める者、手に取ってカウンターで依頼を受注する者。依頼を完了して討伐部位を提出する者、依頼とは関係のない有用素材らしきものを売るための交渉をする者。・・・田舎のギルドしか見たことがないレグルスにとっては驚きの光景であった。・・・しばしボーっと立っていたが、『田舎もんが! そこに突っ立ってると邪魔だ!』と言わんばかりの視線を浴びせられたので、我に返り、受付カウンターに向かう。この受付にはすでに5人並んでいた。・・・・


 列に並んで待つこと30分。ようやく自分の番がやってきた。


「次の方どうぞ~。」


 受付は20歳前後の若いお姉さんだった。中々にきれいな人だ。胸も大きく、これはなかなか・・・っと、少し白い目で見られ始めたので本題に入ることにする。王都への商隊の護衛の依頼受注に来たことを話し、持ってきた紹介状を渡す。


「シュネー村から派遣されてきた方ですね。お話は伺っております。とても重要なお仕事なんですが、とても危険なため引き受けてくださる方が少なくて・・・王都への街道が、現在極めて治安が悪い状態にありまして、腕の立つ方を募集していたんです。シュネー村の方なら安心ですね。日当は金貨1枚です。食事は付きます。日数は平均で20日ほどかかるので金貨20枚程は稼げる感じです。よろしいですか?」


 これを受けるつもりで来たので、当然了承する。受注完了である。用事が済んだので、ギルドを後にし街を歩いていると、肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。・・・これは?・・・焼き鳥であった。肉と肉の間にネギが挟んである。昼飯はこれだな。・・・5本購入し、歩きながら食う。・・・小腹を満たしたところで、適当に街をぶらついてみる。・・・色んな店があるな。・・・まあ、何か必要なものがあるわけではないから、探さなければならないのは、依頼開始までの2日間泊まる宿と酒場だな。・・・最近やり取りしてなかったが、確かエストが引っ越していったのこの街だったよな?・・・シュネー村にいる頃何度か手紙のやり取りはしていたので全然音沙汰がないわけではないが、ここ1年以上は手紙を書いていなかった気がする。・・・まあ、深く考えるのはやめよう。・・・


 そのまま歩いていると、いい感じの宿を発見。割と大きいな。で、1階が食事処で酒も飲めるのか。いいな。ここにしよう。1泊銀貨8枚か。安くはないがこの2日はここにしておく。先払いで金貨1枚、銀貨6枚を支払う。一旦宿を出たところで、宿から少し離れたところで、何だか人だかりが出来ていた。何だ?・・・近づいてみると、柄が悪めのおっさん3人が若い女の子2人に絡んでいるようだ。1人は魔法使いの娘。茶色の真っすぐな肩先まである髪が目立っている。もう一人のショートヘアーの女の子を庇っているようだ。


「おう、魔法使いの嬢ちゃん! 悪いことは言わないから、おとなしくその()を渡しな!」


「駄目よ! この娘()が何したっていうのよ?」


「あのなぁ、その()はなぁ、親が作った借金のかたなんだよ! 関係ない女が出しゃばってくんな!」


「・・・だからって、無理やりはダメ! この子嫌がってるじゃない!」


「うるせぇ! 少し黙ってろ!!」 


 そう言って、丸太のような右腕で薙ぎ払い、魔法使いの()を吹っ飛ばす。3人組のリーダー。他の人たちも遠巻きに見ているだけだな。そう思ってると、その娘の右手首を掴み、強引に引っ張っていく。・・・すると、


「ファイアボール!」


 吹っ飛ばされてた魔法使いの娘()の魔法が男たちを襲う。後ろの1人が直撃を喰らう。加減して撃ったみたいだが、やりすぎだろう?・・・逆上したもう1人の男に首を捕まえて持ち上げられている。


「うぐっ」


「もう、めんどくせー! 2人とも連れてくぞ! おい、(じょう)ちゃんたち達、今夜はたっぷり付き合ってもらうぜ?」


 残り2人もゲラゲラ笑いだす。・・・さすがに聞くに堪えんな。


「なあ、その辺にしておいてくれるか? それとこの国の法律では、人身売買とかは禁止されているはずだぜ? 借金のかたに人を連行するのも禁止だ。 当然売春をさせる行為等も許されていないはずだぞ。」


 お、こっち見られた。・・・意識がこっちに来たな。すかさず2人の女の子が後ろに回った。


「にいちゃん、おとなしくその2人を渡しな! そうしたら、見逃してやるぜ。」


「断ると言ったら?」


 あ、いきなり殴ってきた。・・・あれ、遅いなぁ。スローモーション芸?・・・ああ、こいつ見かけに反して特別弱いのか?哀れな。せいぜい加減してやるか。そう思い、軽めに手刀を首筋に一発放つ。


『あ、阿呆! 何やってんねん!』


 殴りかかってきたやつは、即気絶してバタッって倒れたけど、やっば! 首の骨折れて、曲がってるわ。どんだけ弱いだよ!


『だから、アンさんが強すぎる言うたねん。 ワイ2回言いましたよ? 言ったよね? ね?』


 ちょっと血の気が引くも、冷静を装って、全力でヒールを掛けておく。首の骨の骨折は治ったっぽい。


「まだやるなら、続きするけど?」 言ったとたん、気絶した男を抱えていく2人。とりあえずは危機を回避できたようだ。色んな意味で。


「助けてくれてありがとね。私も追われているこの子を見つけてとっさに庇ったんだけど、わたしじゃ収集付かなくて・・・結局あなたに助けてもらう形になっちゃって。・・・」


と魔法使いの女の子。年は、俺と同じくらい?


「御2人とも、危ないところを助けて頂き有難うございました。・・・」


「それにしても・・・あいつ、この街でかなり有名なごろつきでね。なまじ強いから、誰も手出しできなかったのに、寧ろ間違って殺してしまいそうになるなんて、あんた、どんだけ強いのよ。・・・ああ、ごめんね、私はエスト。この街の1番の武器屋で看板娘やってるんだから。で、偶に魔法使いとしてギルドで依頼なんかもかなしてるけど、やっぱり魔法使いは前衛がいないとダメねぇ?危うくやられそうだったわ。」


「あ・・・・ちゃんと顔を見ると面影がある。・・・首には見覚えのある赤い宝石のペンダントが輝いている・・・」


「! ・・・じゃ、そういうことで。では。」


 突然の遭遇で、俺は混乱してしまったようだ。不自然な挨拶をして去ろうとする俺。・・・だってそうだろ? 会いに行こうとは思ってはいたが、偶然助けた女の子がエストだったとか・・・シャレにならん。もしかして、嫌な予感を本能で感じたのかもしれん。・・・


「そお?・・・ん?・・・・・そのグローブ・・・ってあんた! レグじゃない! 何で言わないのよ! しかも逃げようとしてるし。 どういうこと?!」


 一瞬でばれた。・・・そりゃばれるわな・・・これは覚悟を決めなければ・・・




 大衆の面前で、エストに黙って逃げようとした件について、1年近くも手紙の返事を書いていなかった件(最後のエストの手紙に返事を楽しみにしているって書いてあったのに忘れていた件)、ラーウェの街に来ることが分かっていながら連絡の1つも寄こさなかった件について、滾々と説教を受けていたレグルス。まるで、姉に叱られる弟の図である。衝撃的な事件解決直後の修羅場である。この間周囲の生暖かい視線にさらされ続けたのである。ゲンにも『何をやってんねん。』と呆れられた。・・・ぬう。


 少し落ち着いたエストともう1人の女の子を連れて泊まる予定の宿に戻ったレグルス。連れ込んだって意味ではなく1階の食堂兼酒場にね。その女の子の名前はコロナというらしい。俺たち2人の再開を祝う話は後回しにして、コロナの事情を聴く。


 聞いた内容を要約すると、あの連中は【青龍会】とかいう暴力団の一味だそうだ。で、コロナの家はこの街の薬屋を営んでいるらしいのだが、ある日のこと大量の注文が入ったらしい。で、代金先払いで受け取りミズガルムに商品を仕入れに行き戻ってきたところを盗賊団に襲撃されて、店主は逃げてこれたのだが、その買い手先が契約不履行を訴えてきて、店側は後日もう1度仕入れに行くと言っても相手側は聞かず、法外な違約金を要求してきた。もう1度契約書を確認してみると、確かに違約金の項目があり支払い義務があるようであった。ただ、契約時はそのような記述が全くなかったというのが解せない。大方、魔法か何かで、契約時には隠していたのだろう。違約金の支払い期限もないに等しく、支払い不能。それで、店を借金のかたに寄こせという話になったらしい。しかも債券の所有権がいつの間にか青龍会に移っていた。そこでの強引な取り立て。どさくさに紛れて娘も連れ去ろうとしたらしい。勝手に違法な金利吹っ掛けデモしたな?


「何それ? 許せないんですけど?・・・盗賊団とかもグルで、連中の自作自演なんじゃない?」


「その可能性が高いけどな。・・・また似たようなことも起きるかもしれないしね。・・・わかった。乗りかかった船だし、明日、ちょっと青龍会行ってお話してくるわ。」


「ちょっと、大丈夫なの? あんた、そこそこ腕がたつのは分かったけど、あんたが捕まっても困るのよ?」


「任せてくれ。悪いようにはしないさ。あ、一応確認すけど、契約書はあるんだよね? 明日見せてもらいに行くから。」


 コロナから了解の返事をもらう。まずはコロナの薬屋に行って・・・さあ、明日が楽しみだ。


 


 

更新可能であれば、3/22に更新しますが、厳しいかもしれません。少なくとも3/23には更新します。

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