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虐げるもの

作者: 富山晴京

「おい、この薄ノロな豚野郎め!」

 そういって菱川巧はいじめられっ子を足蹴にした。

「お前は買い物の一つも満足にできないのか?ママから買い物の仕方を教わらなかったのか?」

「すいません、すいません」

 必死になっていじめられっ子は謝っている。その様は今までの虐待によってすっかり心が卑屈な方向へと捻じ曲げられていることを示していた。

 その卑屈さはある種の不快さを醸し出していた。それは菱川巧にも伝わり、余計巧みをいらだたせた。

「謝りゃすむと思ってるんだろ?おれみたいなやつはそうやってご機嫌を取っておけばごまかせるって」

「いや、そんなことは」

 いじめられっ子は首を振った。

「お前むかつくんだよな、何か」

 そういって巧はいじめられっ子の顎を蹴り上げた。


 こうした凶悪のいじめっ子の巧ではあるが、しかし彼にも違った面があった。

「ごめーん、待った?」

 里穂は小走りに時計塔の下へやってきた。

「ううん。全然」

 それに対して巧は微笑をもって答える。

「今日はどこ行く?」

「里穂の大好きなところ」

 巧は言った。

 巧にはこうした一面があった。彼はいじめっ子である一方、一人の彼女を持つ色男でもあったのである。

 こうした男というのは往々にしている。こうした光景を見たいじめられっ子は果たしてどう思うだろうか。私には彼が驚愕の気持ちをもってこれを見るような気がするのである。

 人を虐げるものというのは得てしてより多くのものを持つ。仕事において階級が高く、居丈高に威張り散らす店長や社長などによくみられるものである。彼らはその強さゆえに権力を持ち、それによって異性の信頼も得る。彼らが多くの人を不幸にしているからと言ってそれが彼らの不幸につながることはない。むしろ、彼らをより幸福にしていくのである。社会とはそのような仕組みになっているものなのである。


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