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84猿の手


変わらない日常。

なにも変わったことが起きず、昨日と同じことを繰り返す日々。

なんて素晴らしいんだ!

ドラゴンの棲む山へ行け?やなこった。

盗賊ギルドとやりあえ?やなこった。

革命して王になれ?やなこった。

刺激のない日常こそ幸せなんだ。きっとそうだ。


ヒミカ「双星いるか?」

俺は逃げ出した。


ヒミカ「逃げるな!」

しかし回り込まれた。


双星「やばい話でしょ?」

ヒミカ「ああ。猿の手を知ってるか?」

双星「はい。旅しているとそういう話はよく聞きますから。」

猿の手・・神の手、悪魔の手など呼ぶこともある。

3つの願いを叶えてくれるが、3つ願いを叶え終わると所有者を不幸にするという。

大抵非業の死を遂げ、猿の手は行方不明になる。

有名な話だよね。


ヒミカ「所有者がこの国にいる。既に3つ願いを叶えているそうだ。」

双星「ご冥福をお祈りします。」

ヒミカ「まだ死んでない。それでな、次の所有者をどうするかって話になっているのだ。」

双星「はは~ん、全部読めました。俺を次の所有者にって話でしょ?」

ヒミカ「ご明察。」

俺は逃げ出した。

しかし回り込まれた。

ヒミカさんボスキャラですか?イベント戦闘ですか?


ヒミカ「知っていると思うが、猿の手の呪いを解くには別の人に譲渡する必要がある。」

ヒミカ「事情を伝えた上で心から同意を得なければならない。」

ヒミカ「さらに、不幸な者は猿の手の所有者になれない。」

人生に絶望して死んでもいいやって人とかは所有者になれないのか。

自殺するまで追い詰められた人からすれば、猿の手の呪いなんて怖くないか。


双星「というか、猿の手とか嫌なんですけど。」

まだ死にたくない。


ヒミカ「みんなそう思う。それでも所有者が現れるというのは不思議な話だな。」

双星「猿の手が危険だってわかってて所有したんでしょ?富とか名誉とか欲にとりつかれて。」

双星「その人の責任ですよ!」

普通の人は猿の手なんかの所有者にならない!


ヒミカ「本人に言ってくれ・・ほら出てこい。」

え、連れてきているの?


受付「ふえ~ん双星さん助けてくださ~い。」

・・あー。どうしよう納得しちゃった。

お金の亡者だもんなぁ。


ヒミカ「自業自得といえばその通りだ。断ってもいいんだぞ。」

う・・


受付「私はただ、お金が欲しかっただけなのに!」

双星「後先考えましょうよ。」

受付「なんとかなるかなーって・・」

皮算用すぎる。


受付「双星さん・・助けてください。」

いや・・自業自得でしょ?


受付「まだ死にたくない。お金が欲しいって普通の欲求でしょ?なのになんで不幸にならなきゃいけないの?」

そりゃまぁそうだけど・・だ、だからといって俺が不幸を背負う必要なんてないわけで・・


双星「ヒミカさんは・・」

ヒミカ「断った。自業自得だ。」

俺もヒミカさんくらいはっきりものを言える人になりたい!


受付「双星さぁん・・私、死んじゃうの?」

双星「・・し、死なせませんよ!俺が・・所有者になりますので・・」

受付「やったー!はい猿の手。あ、返品不可なので。」

猿の手を俺に渡した受付のおねーさんは、さっさと帰っていった。


ヒミカ「後悔しているか?」

双星「ええと、猿の手の呪いで俺が死んだら遺産を全部ください・・と言わないだけ偉いと思いました。」

普段の受付のおねーさんなら間違いなくそう言う!


ヒミカ「猿の手のおかげで、お金の風呂に入れるくらい余裕はあるそうだ。しばらくたかったりはしないだろう。」

そっかー。よかったよかった。

めでたしめでた・・まだ終わってない!


双星「さ、猿の手を使わなければ大丈夫ですよね!3つ願いを叶えてから不幸が始まるんですから。」

ヒミカ「不思議と猿の手の所有者は願いを叶えたくなるそうだが・・お前がそれに打ち勝てるかどうかだ。」

そうだった。そういやそんな話も聞いたことある。

俺の心を操るというのだろうか。


猿の手「あなたは願い事がしたくなーる。願い事がしたくなーる。」

地味な方法だった。


猿の手「あ、わたくし”みんなの幸福を願う会”所属のサル=ノ=テ(呪い付き)でございます。以後お見知りおきを。」

やだ。


ヒミカ「お前なら猿の手すらなんとかするのではないかと思ってな・・期待しているぞ。」

無理無理無理。

だが!強い意志で使うのを拒めば・・きっと厄介事に巻き込まれまくった俺は忍耐がついているはず!


猿の手「無駄なことです。あなたは私を使う・・私にはわかる。」

使いません!今の生活に満足してますから。

今まで通りの生活をすればいい。それだけだ!


・・

・・・・


ダークエルフ「とんでもないものを押し付けられたな。」

メイド「これが猿の手さんですか。初めましてです。」

猿の手「あ、初めまして。サル=ノ=テです。」

猿の手が喋っても、俺にしか聞こえないらしい。

なのでメイドさんは意思疎通しているわけではない。


ダークエルフ「それで、どうするつもりだ?」

双星「使わなければ諦めてくれるかなーと。」

ダークエルフ「そんな例は聞いたことがない。」

やっぱそうかぁ・・


メイド「持ち主捜すっていうのはどうでしょうか?手があるなら本体もどこかにあるはずですよ♪」

双星「そうなの?」

ダークエルフ「見つけた者はいないが、そういう考え方もできるかもな。」

持ち主に返せばいいのか。


猿の手「私の持ち主は魔族ですよ。かなりの力を有しています。」

いたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

じゃあそのうち返せばいいか。

あ、できれば2つ願い事してから返そ・・いや待て待て待て、そうやって願い事を消費させようとするわけだな。

これは罠だ!


猿の手「ちっ」

手しかないのに舌打ちしやがった。

・・いやそもそも喋る時点でって話か。うん気にしないでおこう。


・・

・・・・


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