59王女様の想い
敵のアジトでは、魔法使いたちがこちらを見ながら話し合いをしていて、王女様はお祈りをしていた。
記者「で、これからどうするんですか?」
双星「え?いや別になにも・・」
縛られてたらなにもできないよね。
記者「またまた、計画してるんでしょ?」
双星「こんな行き当たりばったりでどうしろっちゅーねん。」
記者「ちょっと、そんな危険なことに私を巻き込んだんですか!」
勝手についてきたのはそっちじゃないですかー。
アスタ「少し聞きたいことがあります。」
いつの間にか、アスタ王女がお祈りを終えて近くまで来ていた。
双星「俺も聞きたいです!王女様がなんでテロなんてするんですか?」
アスタ「あれはテロではありません。心の革命です。」
心の革命?
双星「というか、王女様なんですから、なにかあるなら王様にお願いとかすればいいんじゃないですか?革命なんかしなくても。」
アスタ「あんな人たちに市井の人たちの気持ちはわかりません。」
おおう、王様は、あんな人ですか。
アスタ「この国は・・いえ、世界は間違った進化をしています。」
アスタ「人は己の快楽のみを求め、お金さえあればなにしてもよいと考えるようになりました。」
アスタ「自分たちの権利は声高に主張し、他人の権利はおざなりにする。」
アスタ「権利を声高に主張する者によって心弱き者は他者を信用しなくなり、生きづらさを感じています。」
アスタ「今一度、なにが正しいのかを考えなければなりません。」
なるほど、さっぱり意味がわからないということがわかった。
記者「ふむふむ、今の政治形態や権利の在り方に疑問を感じているということですね。」
アスタ「人は生きてるだけでは人に非ず。理知的に、未来を考えなくてはなりません。」
記者「生きてるだけなら動物と同じで、それじゃあいけないってことですね。あとは方向性だと思いますが。」
記者「どの主義主張も最終目標は同じだと思うんですよ。そこに至るまでの過程が違うだけで。」
アスタ「ならば過程もこだわりましょう。より正しい答えがあるはずです。敢えて間違った主義で行く必要などありません。」
アスタ「そして目標が同じでも、過程が違えば目標に到達するとも限りません。間違いは正すべきです。」
・・おかしいな。
記者さんが王女様の話についていってるのに、なんで俺はついていけないんだろう。
はっ、もしかして学力の差かな?
アスタ「・・あなたがうわさの双星殿ですか。」
双星「え?あ、はい。」
俺のこと知ってる?
たぶんそのうわさは間違ったものだと思うけど。
アスタ「どうすればすべての人が幸せになれるでしょうか?」
???
いきなり無理難題突きつけられた。
えーと、えーと。
俺の旧式頭脳をフル回転!
双星「みんなでお祭りでもして、おいしいものを食べれば幸せになれるかなーと。」
アスタ「時間の無駄でした。」
えーい、その質問は誰だって答えを出せないって!
記者「おいしいもの食べて幸せになれるのは双星くらいでしょ。」
双星「じゃあ記者さんはどうすりゃいいかわかるの?」
記者「みんなで覚醒剤でもやってラリってればいい。」
双星「ん・な・わ・け・ねー!!!」
どう考えても国がおかしくなるよ!
アスタ「いえ間違いというわけでもないです。」
双星「なんで!?」
アスタ「ハッピーになれるでしょう?」
・・まぁハッピーだわな。いやでも幸せってそういうことじゃないような?あれ?
アスタ「死ぬまでずっと覚醒剤で幸せな気分でいれば、それは幸せな人生でいられます。」
アスタ「用法・用量を正しく用いれば危険性は・・なくなりませんが抑えられます。使い過ぎれば危険なのはどんな薬も同じです。」
アスタ「”その人が幸せ”なのは間違いないでしょう。社会は死にますが。」
双星「そう、それ!国が滅びるって!それじゃあダメでしょ。」
アスタ「国を滅ぼしてはならないという条件が加わりましたね。」
アスタ「なら、国民を改造して快楽物質が常に出続けてるようにしましょう。幸せになりながら、忠実な労働者の出来上がりです。」
アスタ「国は滅びず国民は幸せです。」
双星「えっと・・改造はちょっと・・」
アスタ「改造で幸せになれるなら、それは正しくありませんか?」
えー・・。
そういや大会で改造人間と闘ったけど、あれが幸せのかたちっていうのもなんか・・。
アスタ「他人の提供する商品を買い、他人の決めた仕事を行い、他人の書いた本を読み、他人の作ったゲームに興じる。」
アスタ「改造前も改造後もそう変わらないでしょう。」
そ、そうかなぁ。
双星「じ、自由が欲しいかな・・」
アスタ「自由という条件が加わりましたね。」
アスタ「みんなが幸せで、国が滅びず、自由である。今度はこれを満たさなければならなくなりました。」
双星「条件がどんどん増えてる!?」
アスタ「本気でみんなの幸せを考えると、もっともっと条件が増えます。」
双星「実現不可能じゃないですか?」
アスタ「はい。無理です。でもみんなの幸せは考えなければなりません。どうしますか?」
双星「えー・・じょ、条件を絞る?できる範囲から始めるとか。」
アスタ「条件を絞り、”みんなの幸せ”のみ考えれば、覚せい剤でみんな幸せになるのも間違いじゃなくなります。」
・・あ、なるほど。さっき言ってた間違いというわけでもないってそういうことか。
いやいやいや、でも実際それをやられちゃ困る。
記者「双星ならみんなを幸せにできますよ。」
アスタ「これが?」
はーい、これでーす。
記者「アスタ王女。あなたは双星のどんなうわさを聞いているんですか?」
アスタ「・・いつもとんでもない計画を立てていると。気が付けば全部双星殿にとって都合のいい結末になると。」
やっぱり間違ったうわさだったか。
計画とか立てていません!
記者「一度体験してみればわかりますよ。双星は・・神の領域に到達しているということが!」
アスタ「神などいません。神がいるなら、なぜ人はこんなにも苦しむのか説明してください。」
アスタ「神は・・人間が憎いのですか?人間などどうでもいいと思っているのですか?」
記者「ほら双星説明してやって。」
双星「え?無茶ぶり?というかさっきお祈りしていませんでしたか?神様に祈ってたんじゃ・・」
アスタ「瞑想は己の心を静めるためのものです。神に祈っても結果は変わりません。失敗するときは失敗します。」
アスタ「なぜ人は苦しむのですか?」
知らないよ。誰か助けて。
地面「ヘルプいる?」
是非!
できればもっと早くヘルプ欲しかったなぁ。いやここで助けてくれるだけでも十分だ!
地面「幸福と不幸は紙一重なの。お前さ、ゲーム好き?」
ゲーム超楽しい!
でも最近現実の方が刺激強くてゲームしなくなってきたなぁ。
地面「全部結果わかってて、どう進めればうまくいくかわかってるゲームって楽しいか?」
・・作業かな。
地面「失敗するかもしれないから、先がわからないから楽しいんだ。ワクワクするんだ。」
地面「人生も、物事うまくいくと嬉しいだろ?楽しいだろ?でもそれは、失敗を知ってるからこその感覚だ。」
地面「人が苦しむのも同じ。幸せを知るために苦しむんだよ。」
地面「だから完璧な神様は幸せを知らない。不幸も知らない。全部が作業なんだ。」
なんかマジ回答来た。
アスタ「答えなさい。なぜ人は苦しむのですか?」
双星「苦しむことで知ることがあるからです。」
アスタ「どういうことですか?」
双星「王女様さっき言いましたよね。王様は市井の人の気持ちがわからないって。」
双星「それはなぜだと思いますか?」
アスタ「お父様は市井の人たちを見ていません。自分を肯定する身内の声にしか耳を傾けないからです。」
身内の声って生々しいなぁ。
王様と前に会ったときは、結構普通な気もしたけど。
双星「ええと、苦しいというのも人の気持ちです。もし苦しみを排除していこうとすると、他人の苦しみに気付かない人間が現れてしまいます。」
双星「他人の苦しみに気付かない人たち・・その世界は幸福だと思いますか?」
アスタ「・・」
双星「俺はそう思いません。人が幸福になれるのは、苦しみが、不幸があるからだと思います。」
双星「苦しむっていうのは、幸福になるための準備なんですよ。」
双星「神様は人間が憎くて苦しませているんじゃないんです。幸せにするために苦しみも与えているんです。」
双星「楽しいだけ、幸せなだけな世界は堕落します。他者を蔑ろにします。だから、不幸も必要なんです。」
双星「俺たち大人が考えること。それは苦しみを、不幸を取り除くことではなく、取り返しのつかないものだけ取り除くという、いわば不幸のコントロールです。」
アスタ「・・」
記者「双星って、時々変なこと言うよね。」
双星「変!?」
記者「いい意味で。」
いい意味?
記者「変な意味でも。」
双星「混ざった!?」
記者「アスタ王女って確かまだ未成年だったような・・大人じゃないよね~」
双星「・・あの・・おいくつでしょうか?」
アスタ「17よ。」
記者「ちなみに私は15♪」
俺より10歳以上みんな若いやん!というか俺がおっさんなだけだった!(29歳)
みんな早熟過ぎない!?”最近の若い者は~”とか死語になったの?1600年くらい前から現代まで言われ続けてたのに!!!
なんで、なんでそんな若い子がテロなんて・・この世界はおかしいよ!大人はクズしかいないの?
アスタ「・・あなたの言ってることはわかります。しかし世界に必要なのは理論ではなく実践です。」
アスタ「口で語るだけではなにも変わりません!実行してこそ価値を伴うのです!」
魔法使いA「おい、いつまでも話し込むな。もう一度爆破させに行くぞ。」
アスタ「・・その前に、この者たちの異端審問をします!」




