05一回戦
そして次の日。
受付「おはようございます。」
双星「おはようございます・・」
受付「昨日はよく眠れましたか?」
双星「ぐっすり寝ました。もう諦めました・・」
受付「昨日の勢いはどうしたんですか!?」
双星「おうち帰りたい・・」
受付「ホームシック早すぎですよ。とにかく試合まで控室で待っててください。」
双星「はーい。」
控室は、床一面カーペットが敷かれ、ふかふかのソファーやら冷蔵庫には自由に飲んでいいお酒やら色々あった。
試合前のお酒はNGだよね?
いやいいや!飲んじゃおう!
適当なのを開けて少し飲んでみる・・う、うまい!
お酒はどちらかというと苦手な俺でもわかる。いい酒だ(適当)
試合まで楽しく飲もう!
こんこん。
受付「双星さーん。お客様でーす。」
ドアの外から受付のおねーさんの声がした。
双星「あ、はいどうぞー。」
誰だろう?対戦相手が挨拶に来たとか?
がちゃ。
ヒミカ「失礼する・・お前は!」
双星「軍の・・ヒミカさん。」
受付「お知り合いですか?」
双星「俺がこの街に来たときちょっと・・」
ヒミカ「インスの対戦相手はお前だったのか。」
双星「まあとりあえずどうぞ。おいしいお酒もありますよ。」
ヒミカ「まさか試合前に飲んでいるのか!?」
受付「うわー双星さん、普通試合後ですよ。」
双星「え、試合後も飲んでいいんですか?」
受付「むしろ試合後以外でいつ飲むと?」
双星「今。」
受付「・・」
ヒミカ「・・帰る。」
双星「あれ?用事は?」
ヒミカ「時間の無駄だった。」
ヒミカさんは本当に帰ってしまった。
双星「なんだったんだろう?」
受付「もう、双星さんが試合前にお酒なんか飲んでたからですよ!」
双星「でも素人の俺は一回戦で終わりですよ。今飲まなかったらもう次はないんですから。」
受付「はぁ・・それじゃあヒミカさんが帰るのも仕方ないですね・・」
双星「結局何の用だったんだろう?」
受付「対戦相手のインスペクターさん。ヒミカさんの婚約者なんですよ。」
双星「なんと!」
受付「でもヒミカさん乗り気じゃなくて・・それでインスペクターさんが条件を出したんです。」
双星「察するに、大会優勝?」
受付「はい。ヒミカさんは結婚が嫌なので、対戦相手の激励に来たというのに・・あなたは酒浸りで・・」
双星「悪いことしちゃったなぁ。」
受付「悪いというか、最低です。」
バタン。扉が閉められた。
・・飲み直すかぁ。
お酒おいしいけど、なんか寂しい。
・・・・
こんこん。
受付「初戦がこれより始まります。すぐに試合会場へ来てください。」
双星「ふぁーい。」
しばらくして受付のおねーさんが呼びに来たが・・おお、ろれつが回らなくなってきた!
はー・・早く試合終わらせてもう少し飲もう。
・・
・・・・
会場は円形のドーム状で、中央が試合場所、周りが観客席となっていた。
受付「皆さまお待たせしました!これより第一回戦を始めます!」
うおおおおおおおおおおおおおと会場が歓声で沸く。
インスペクター「貴公には恨みはないが、愛のため勝たせてもらう!」
・・紳士的、イケメン、優勝候補・・ヒミカさんなにが不満なんだろう?
双星「痛くないように終わらせてもらえると嬉しいです。」
インスペクター「む・・構えないのか?」
双星「素人なんで、構えとか知らないし。」
インスペクター「素人?ふっ、楽な闘いだな。」
受付「それではレディー・・ファイ!」
インスペクター「死ね!」
双星「死ぬのは嫌!」
身をかがませた俺の頭上をインスペクターさんの蹴りが空振りする。
かすった!てっぺんの髪の毛が大ダメージです!
おやこれは・・
双星「えい。」
隙だらけな急所を思いっきりつかんだ。
インスペクター「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
悶絶するインスペクターさん。
そのままピクピクして動かなくなった。
受付「こ、これは・・試合終了!勝者、双星選手!」
え、急所攻撃ありなの!?
よくわからないが、どうやら次の試合もお酒飲めそうだ。
・・
・・・・
控室に戻る途中、受付のおねーさんが膨れ顔で待っていた。
受付「・・騙したんですね。素人とか言って、負ける気なんてなかったんじゃないですか!」
双星「いや本当に素人で。というか急所ありなの?」
受付「ええ。かなり緩いルールで、他の人の助けくらいじゃないですか?ダメなのは。」
双星「じゃあ目潰しもあり?」
受付「はい。大会要項くらい見ておいてください。」
双星「勝つ予定がなかったもので・・」
受付「そ、そうやってまた騙すつもりですね!インスペクターさんの攻撃をかわし、一撃で倒したあなたが素人のはずないじゃないですか!」
本当に素人なんですーうーうー。
受付「とにかくおめでとうございます。賞金の200万と副賞のトロフィーです。」
双星「またトロフィー!?もしかして勝つたびにトロフィーもらえる!?」
受付「あら知らないんですか?」
双星「なにを?」
受付「このトロフィーはアダマンタイト製に金メッキを張ったものです。」
受付「アダマンタイトを使った武具はかなり強力なんですよ。ただの金より高価でほしがる人は多いんです。」
双星「ま、マジですか?」
受付「今ぐらいなら、賞金の方がおまけですよ。」
すげートロフィーすげー。
受付「ところでー。」
双星「はい。」
受付「これから飲みます?」
双星「時間の許す限り(キリッ)」
受付「ならお願いが。あのお酒みんな高級品なんですよね。」
双星「一緒に飲みます!?」
受付「仕事があるのでちょっと・・なので一本もらえませんか?」
双星「あ、そうですか・・どうぞどうぞ。一本でも二本でもどうぞどうぞ。」
受付「ならお言葉に甘えて二本もらいます♪」
控室に戻り、受付のおねーさんが二本選んで持って行った。
俺はひとり寂しく高いお酒を飲む・・あー誰かかわいい女の子が一緒に飲んでくれないかなぁ。
こんこん。
双星「はーい。」
ヒミカ「失礼する。」
双星「ヒミカさん?」
ヒミカ「まずは一回戦突破おめでとう。それと受付から聞いた、全部演技だったそうだな。」
双星「誤解ですよ!俺は正真正銘の素人です!」
ヒミカ「なるほど、受付の言う通り絶対認めない姿勢は評価できる。」
双星「完全な誤解」
ヒミカ「さっきはすまなかった。お主の場外戦術を見抜けなかった私の未熟さが恥ずかしい。」
双星「本当に素人なんですよ!」
ヒミカ「ああわかったわかった。おまけに酔拳だものな。インスのやつもかなり落ち込んでたぞ。いや見事だった。」
双星「まあ・・優勝候補が一回戦に急所攻撃でやられたんですから・・俺かなりひどいことした!?」
ヒミカ「あやつにはよい教訓だろう。例え10年修行した者でも、半年修行しただけの者にもやられることがある。」
双星「そうなの?」
ヒミカ「武道ならそうそうありえないだろう。だが武闘の世界は甘くない・・ルールが緩いほど勝敗はわからなくなる。」
双星「ルールが緩いほど?うーん、よくわからん。」
ヒミカ「ルールを厳密に、厳格にすればするほど単純な力勝負になっていくのだ。」
ヒミカ「例えば相手の戦意を奪うには目潰しが効果的だ。しかも誰でもできる・・だが大抵の武道は禁止している。」
失明の危険もあるもんね。
ヒミカ「弱者が勝つには相手の弱点を狙うしかない。目など急所をな。」
ヒミカ「他にもだ、例えば戦車を使えば勝ちやすいだろう?」
双星「戦争ですか!」
ヒミカ「効率よく勝つには、相手より強い武器を使うなど当然のことだ。ルールとは弱者が勝つ手段を制限しているのだ。」
ヒミカ「ルールのある闘いなど子供の遊びのようなものだ。インスも今回を教訓にまた強くなる。お主に感謝しても恨むことはない。」
双星「いい男だ・・あの、ヒミカさんはインスペクターさんのなにが嫌なんですか?」
イケメンは正義じゃないんですか?インスペクターさんカッコイイですよ。
ヒミカ「ああ、結婚相手は自分で決めたいだけだ。」
ヒミカ「あやつは許嫁だからとか、親が決めたことだからとかばかり言うのが気に入らないな。」
ヒミカ「そんなことより、お互いの気持ちが大切だろうに。」
双星「・・ヒミカさんって、ロマンチストなんですね。」
ヒミカ「な!?」
双星「なんかそれ、すごくいいですよ!」
ヒミカ「そうか?」
双星「はい!あ、立ち話もなんですから飲んでいきませんか?」
ヒミカ「・・いや、やめておこう。軽々しく男性と二人で飲むのはインスに悪いしな。」
双星「ヒミカさんも、インスペクターさんのこと好きなんですか?」
ヒミカ「いや全然。一回戦でやられるような弱い奴は嫌いだ。」
双星「ばっさりですね・・」
ヒミカ「嘘を言ってもしょうがないだろう。興味あるのは強い男だ。」
ヒミカ「そうだな、お主が二回戦で勝ったなら・・酒を交わしながら話をしてみたいところだ。」
双星「素人なんで無理です。しょぼん。」
ヒミカ「また演技か?」
双星「本当に素人なんですって!」
ヒミカ「はいはい。では私はこれで。」
双星「あ、そうだ。ここのお酒高いやつなんで持っていってはどうですか?」
ヒミカ「いや。それは横領になるのでダメだ。」
ヒミカさん・・固い。
受付のおねーさんは二本も持って行ったのに。
ヒミカ「では失礼する。次の闘いも楽しみにしているぞ。」
ヒミカさん真面目な人だなぁ。かっこいい!
俺も真面目にやらないとな。お酒飲んだらがんばる!!
・・
・・・・




