56【強運】
闘いの舞台へ行くと、観客が一層盛り上がった。
観客「ようやくお前の敗北が見られるぜ!」
観客「ま・け・ろ!ま・け・ろ!」
観客「強さこそ勝利への絶対的な条件だあああああ!!」
うーん、俺なんか悪いことしたっけ?
扱い悪いよ。
ウェルト「来たか・・いやすまないな、新聞は読ませてもらった。」
双星「やっぱりわかった上で挑んだんですね。」
ウェルト「ああ。キミはいつか誰かに負けるだろう。そしてそいつは名をあげる。」
ウェルト「ライバルたちの名声が高まるのを座して見ているほど私は甘くはない!!」
ウェルト「キミを踏み台として私はより高みへ上がらせてもらうよ!!!」
双星「あ、はい。構わないのですが、俺、強運がなければ初心者も同然なんで・・・・えっと、できれば痛くないようにお願いしたいなって。」
受付「おーっと、双星選手いつもの口上を始めました!まぁ幸運がなければ優勝者とは闘えませんよね。」
うんうん。
ウェルト「そのつもりだが、手加減は苦手でね。多少痛くても我慢してくれよ。」
痛いのはやだなぁ。
地面「できるだけ出口の近くにいるといいよ。その方が早く治療してもらえる。」
なるほど、その通りだね。
俺は少し出口近くに移動した。
精霊じゃないけど、頼もしい味方だよな。
受付「おやおや、双星選手位置取りでしょうか?」
双星「治療早くしてもらうために、出口近くに移動しただけー。」
わははははははははと、観客から笑いが起こった。
ダークエルフ「あの位置は・・」
ヒミカ「なにか気になるのか?」
ダークエルフ「負けるつもりの位置取りじゃない。」
メイド「勝てるんですか?」
ダークエルフ「魔法使いの残した時限魔法・・」
ヒミカ「・・地雷か!?」
受付「さぁ突然勃発した闘いですが、みなさんの注目をひしひしと集めています!」
受付「では・・試合開始!」
とりあえず顔はガードしよう。
ウェルトさんがとてつもない速さで迫ってくる。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン。
ん?
地面が・・爆発した?
え?え?どういうこと?
あ、爆発でほぼ真上に吹っ飛んだウェルトさんが落ちてきた。
なんかピクピクしてる。
受付「医療班早く!」
すぐにウェルトさんが連れてかれた。
受付「えーと・・これは・・あれ?双星選手の・・勝利?」
観客もざわざわしてる。
受付「双星さん、なにしたんですか?」
双星「え、いや・・わかんないんですけど・・偶然?」
受付「・・・・あ!また騙された!!!」
え?
受付「全部計画通りじゃないですかもう!!!」
受付「ラッキー協会とか手の込んだ小細工までして!うわぁ完璧に信じちゃいましたよ!」
双星「いやあの、全部本当のことで、ウェルトさんのは偶然の出来事なんですけど・・」
観客「うわー完璧騙された!」
観客「新聞に書いてあったぞ!今までのは全部激運で、でも激運はもうなくなったって!!どういうことだ!!!」
観客「騙されたんだよ!新聞まで巻き込んで偶然の演出。もうなにも信じられない!」
観客「なんだよなんだよ、オレたちいつまで踊らされていればいいんだ!?」
観客「そもそも激運とかねーよ!全部双星の計画だったんだ!!!」
全部偶然なんだけど・・信じてもらえる気がしない・・
ヒミカ「本当になにを信じていいかわからなくなるな。双星はお前たちになんて言ってるのだ?」
ダークエルフ「他と変わらん。全部偶然だと言ってる。」
メイド「双星様がそう言うなら信じるまでです・・ですが、もしサイコロをふって1ばかりでるのなら、それはサイコロの細工を疑いますよね。」
メイド「どこまで計画通りなのか、私たちもまったくわかりません。」
ヒミカ「・・前の大会にいた、クリストファーを覚えているか?」
メイド「神の子さんですね。攻撃できない相手でしたが、ダークエルフさんの魔法アイテムで双星様が倒した相手です。」
ヒミカ「あの後、双星からその魔法アイテムを借りた。クリストファーを放置できないというのは各国の判断だったからな。」
ヒミカ「そして私が潜入することになったが、情報が洩れていて捕まりお前の作った魔法アイテムを奪われてしまった。」
ダークエルフ「クリストファーはその後逮捕されたと聞いているが?」
ヒミカ「最後まで聞け。捕まった先でクリストファーの不正を見つけ脱出しようとしたのだが、見つかってしまってな。」
ヒミカ「クリストファーには攻撃できない・・と思ったら普通に攻撃できた。」
メイド「魔法アイテムは取られていたんですよね?」
ヒミカ「・・双星から預かったアイテムはもうひとつあった。交通安全と書かれたお守り・・あいつは成功祈願と言ってたがな。」
ヒミカ「それがクリストファーの魔法を無効化していた。」
ヒミカ「誰も攻撃できなかったクリストファーの魔法に対抗するアイテムを、あいつはふたつも持っていた。」
ヒミカ「・・偶然だと思うか?」
ダークエルフ「偶然以外の理由があるとすれば・・」
ヒミカ「お前に頼らずともクリストファーに勝つ手段を用意していた。いや、用意できたということだ。」
メイド「・・」
ダークエルフ「底が見えないな。ブラスト様とはまた違う仕え甲斐がある。」
ダークエルフ「ブラスト様は強い光と闇を持っていた。国の、国民のためならどんなことでもしてきた。あの方は輝いていた。」
ダークエルフ「だが双星は光も闇もない。なにもせずなにも求めず。双星からはなにも見えない。まるで空洞だ。」
ヒミカ「空洞か・・存在しなければ掴みようがないはずだな。」
ダークエルフ「道理で、誰もが掴もうとしてつんのめるのか。」
ヒミカ「ふっ・・私もその中のひとりだな。」
メイド「よくわかりませんが、双星様がすごいってことですよね!」
受付「1億でなに買おうかな♪」
双星「いや俺のだけど・・」
・・
・・・・
”誤報のお報せ”
”先日、我が新聞で双星選手の激運が失われたとの記事を発表しましたが、偽りであることが判明しました。”
”双星選手は記事の後も事投げもなく大会の優勝者と闘い、さらりと勝利した。”
”皆なにが起こったのかわからなかったが、双星選手のあのセリフですべてを理解した。”
”偶然”
”ただそれだけで、私たちは双星選手の手のひらだったと気付いた。”
”騙されたのはこちらも同じだが、誤報してしまったことを謝罪したい。”
”双星選手の計画は完璧だった。皆が騙された。”
”私たちは、彼が暗黒街の帝王でないことに感謝するしかできないだろう。”
ひどい記事だ。
本当に偶然なのに・・
・・
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