23七回戦(準決勝)
朝になった。説教はまだ終わってない。
ヒミカ「・・このように歴史を振り返れば、飢餓や暴力で自分を守れないことも多かった。」
ヒミカ「だが今の時代は文明が発達し、昔と比べれば安全になった。」
ヒミカ「お主らは恵まれた時代に生きているのだ。その環境にあぐらをかき、己を大事にできずにいるなど先人たちが見たらどう思うか。」
ヒミカ「先人たちの血と努力の結晶が今の世の中なのだ。そのことを忘れることなく我らも未来の子供たちのためになにができるか、それを考えてほしい。」
ヒミカ「そもそも人が安全に暮らせるのが権利のようになったのは最近のことで・・」
双星「あのーヒミカさん・・朝になりましたが・・」
ヒミカ「なんだ?まだ話は終わってないぞ。」
双星「そろそろ・・試合に行かないと・・」
ヒミカ「・・?」
ヒミカ「・・!」
ヒミカ「<●><●>」
ヒミカ「 <> 」
ヒミカ「しまった!」
一睡もしてないので眠いです。
なおメイドさんとダークエルフさんは俺の両隣で寝息立ててます。
双星「じゃあ俺、準備してきます。」
メイドさん寝てるから宿の朝食かな。
ヒミカ「す、すまない、つい癖で。」
双星「ヒミカさんも徹夜なのに眠くなさそう。」
ヒミカ「任務で徹夜仕事もあるからな。慣れてる。」
・・これが・・若さか・・?
いや俺も若いよね!まだ20代・・まだ20代だ信じろ自分を!
もし来年20代が終わっても、それは来年の俺に任せるんだ!!!
・・
・・・・
ふらふらしながら試合会場へ。
受付「ちーっす双星さん。」
双星「・・フレンドリーですね(好意的解釈)」
ヒミカ「・・」
受付「あれ、ヒミカさんが怒らない?天変地異の前触れ!?」
ヒミカ「・・反省中だ。」
受付「そういえば、昨日からヒミカさんは双星さんの護衛になったんですよね。」
受付「そして今朝の双星さんは顔色が悪く、ヒミカさんは反省中。」
受付「ま、まさか朝まで人に言えないことをしてたんじゃ・・」
ヒミカ「・・黙秘する。」
受付「え?うそヒミカさんのこの反応・・ねーねー双星ちゃん、なにがあったの?」
ちゃん付け!?
双星「べ、別になにも・・」
受付「んーーー・・ねぇねぇ、ヒミカちゃんの初めてどうだった?避妊はちゃんとしないとだめだよ。」
双星「ちょ、そういうことはありませんでしたから!」
受付「なにがあったの?ねーねー。」
目を輝かせながら聞いてくる。
双星「・・疲れてるんで控室行かせてください。少しひとりにさせて。」
受付「えー」
ヒミカ「双星・・すまない。私のせいでそんな体調で試合に臨ませてしまって・・どう償えば・・」
ヒミカさん・・
双星「ヒミカさんはなにか勘違いしていませんか?」
ヒミカ「勘違い・・?」
双星「まさかこの程度で俺が試合に負けるとか思ってません?なんてことないですよ、いつものように余裕で勝ちますから。」
双星「対戦相手へのハンデにすらなりません。」
ヒミカ「だ、だが・・私のせいであのダークエルフの協力もあまり受けられなかったではないか!」
ヒミカ「相手は魔王だ!どうやって勝つつもりだ!!!」
双星「ほら例えばー、封印とか定番ですよねー」
ヒミカ「封印?そんなことができるのか?今までそんな素振りすらしていなかったお主が。」
双星「手のうちは最後まで隠すものですよ・・さて、控室でお酒でも飲むかな!」
・・・・
俺は控室へ行き・・・・大言を吐いたことを後悔した。
どどどどうやって勝てばいいんだよ!
ええい酒だ酒だ!ああ死んだらどうしよう・・
泣きながらお酒をちびちび飲む。高いお酒なのに、こんな気分じゃおいしさ半減だよ。
誰か・・誰か助けて!
テーブル「いいよ。」
・・ん?
テーブル「魔法アイテム2つ持ってんだろ?」
双星「え?あ、はい。」
ダークエルフさんが渡してくれた防御用の魔法アイテム。
テーブル「それを混ぜて、棚のひときわ小さい瓶のやつ、それぶっかけて。」
ここにあるのって、みんなお酒なんですが。
双星「あのー、魔法アイテムって繊細だから混ぜるとか危険だと思うんですが。」
テーブル「お前の仲間が作った魔法アイテムだ。信じてやれよ。」
双星「は、はい!」
言われた通り、2つの魔法アイテムを混ぜ指定されたお酒をぶっかける。
すると・・見た目の悪い魔法アイテムが出来上がった。
・・よく考えると、仲間が作ったとか関係なく、危険な扱い方をしたら意味ないよね?
テーブル「闘い方だがな、試合開始と同時に相手はお前の首をはねに来る。だから試合開始の合図と同時にかがめ。」
あ、はい。さくっと怖いこと言ってくるなぁ。
まず試合開始の合図と同時にかがむのね。
テーブル「そしたら相手の方へ飛びつく。ま、前方だな。」
相手の方って、危なくない?
テーブル「武器も魔法も射程がある。そして間近こそ一番力を発揮できない場所だ。」
へー。
テーブル「危険だと思われる敵のふところは力を込められない位置で、攻撃されにくい。」
へーへー。相手の方へ飛びつくのね。
テーブル「最後に相手の目の前で合成した魔法アイテムを使え。」
見た目不格好の魔法アイテムを見た・・これを使うのかー。
テーブル「最後まで諦めんなよ。素早く一歩踏み出す勇気を忘れるな。」
双星「わかった。やってみる!」
勝負をかけるしかない。
こんこん。
受付「双星さーん、試合始まりますが大丈夫ですか?」
受付のおねーさんが呼んでる。
双星「・・行ってくる。」
テーブル「ご武運を。」
俺は控室のドアを開ける。
受付「話は聞きました。辛いなら試合が始まってから棄権してもいいんですよ。」
双星「試合・・始まらないとダメなんですか?試合前は?」
受付「私の評価が下がるでしょ!!私の評価を下げたら全財産を慰謝料として請求しますから!!!」
双星「俺の権利・・」
受付「なにそれ?」
笑顔で俺を殺しにかかってる!
ヒミカ「双星・・本当にすまない。」
双星「大丈夫ですよ。ほらいつもみたいに酔いましたから。さくっと勝ってきます。」
ヒミカ「お前の大丈夫は全然わからん。死ぬかもしれないんだぞ。」
双星「その心配は、対戦相手にしてあげてください。じゃ、行ってきます。」
ヒミカ「双星・・」
俺は堂々と歩を進めた。
・・
・・・・
既に対戦相手は来ていた。
魔王「状態異常:寝不足、疲労、酔い・・ふざけてるのか?」
うわ一瞬で俺のステータスを読み取った!?
魔王「パラメータもなんて低さだ。こんなやつがなぜ準決勝までこれたのか理解に苦しむ。」
双星「それはまぁ、俺も同意しますが。」
魔王「変わったアイテムを使うそうだが・・武器はなく失敗アイテムしか持っていないではないか。」
失敗アイテム?・・ああ、控室で作ったあれね。うん見た目からして失敗だよな!
ぜ、全部見抜かれてる。
魔王すげー超すげー。
今までの人たちもすごかったけど、相手のステータスや持ち物まで見抜くとかチート級じゃない?
攻略本持ってまーすみたいな。
受付「えーテステス、ただいまマイクのテスト中。みんなー、乗ってるかーい!?」
しーん。
受付「ふぇぇノリが悪いよぉ。じゃあここで一曲歌うね!」
そして5分くらい受付のおねーさんによる歌謡ショーが始まった。
あーヒミカさん落ち込んでたから止めに入らないのか。
受付「みんなありがとう!じゃあ余興の試合を始めるね♪」
え?試合は余興だったの?メインイベントとばかり思って・・うん試合はメインだよな。
魔王「なんだあれ?」
受付嬢です!ちょっとあれだけど。
受付「まーずーはー、優勝したら私と結婚してすぐ離婚して慰謝料くれる双星ちゃん!」
受付「私のためにどんな手を使ってでも絶対勝つように!」
魔王「・・女の趣味が悪いな。」
双星「受け身人間でごめんなさい。」
受付「そーしーてー、自称魔王ちゃん!優勝したら離婚と慰謝料を前提に結婚してください!」
魔王「・・お前はああいう女が好みなのか?」
双星「もてない人生だったから・・どんな形でも好意を示されると嬉しいんです。」
魔王「憐れだな。」
俺もそう思います。
魔王「女は共に歩める相手こそ理想だ。あんな足かせにしかならない女は不要。」
魔王「助け助けられ、無条件に支え合う。それが夫婦であり愛だ。条件を出す者など相手にするな。」
双星「そんな女性いるんですか?」
魔王「偏見を捨てれば自ずと見えてくるだろう。」
偏見ねぇ・・そういや、メイドさんやダークエルフさんは見返りとか求めてないよな。
無条件で俺のために尽くしてくれて・・あれ、もしかして今の俺って恵まれている!?
それを気付かせてくれるとは・・魔王、なんていいやつ!
受付「さー準決勝の結果はいかに!試合開始です!」
ええと確か、かがんでよけるんだっけ。
俺がかがむと、ちょっと回避の遅れた髪の毛がスパッと切られた。
彡⌒ミ「なんて極悪非道な魔王だ!」
不思議な声を聞きながら、俺は次なにするんだっけ?と思った。
あ、敵のいる前方に飛び込むんだっけ。
かがんだ状態でー・・カエルジャンプ!
魔王「な!?」
魔王がちょうど目の前に。
俺はふところから失敗アイテ・・合成アイテムを取り出し使った。
その瞬間、俺は物凄い力で吹っ飛ばされた!
一瞬なにが起きたのかわからなかった・・俺の使った”それ”は目の前の景色を歪ませ空間を捻じ曲げていた。
魔王「暴走・・魔法?うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
魔王が悲鳴と共に空間に飲み込まれ・・消えた。
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
試合会場が歓声で埋め尽くされる。
ほっ、どうやら勝てたみたいだ。
代理「勝者双星選手!」
あれ、受付のおねーさんはどうしたんだろう?
俺は観客に手を振ってから戻った。
・・
・・・・
受付「あ、来た!ほらあれ、あれが私にやれって言ったの!・・私は嫌だったのにやらないと試合を無茶苦茶にするって・・」
おや、冤罪の予感。
双星「察するに、試合でのマイクパフォーマンスが問題視されたのに対して、受付のおねーさんが俺にやらされたと主張しているわけですね。」
兵士「そうだ。」
ヒミカ「双星、こんなやつかばう必要ないからな。罪を犯せば罰せられるのが正道だ。」
受付「ヒミカさんだって監督責任問われてるじゃなですか!ほらほら双星さん、ヒミカさんがかわいそうだと思わないんですか!?」
兵士「どうなんだ?」
このやり取り聞けばすぐわかると思うけど・・
双星「・・俺が指示しました。」
受付「ほら私が言った通りでしょ!じゃ無罪放免~」
ヒミカ「まったくお主は・・」
双星「で、俺どうなるんですか?牢屋行き?」
兵士「自分に決定権はない。沙汰は追って出すので、それまで街から出ないように。」
双星「はい。」
兵士さんは帰っていった。
受付「さすが双星さん、便利ー。」
ヒミカ「この大会は国としてかなり重視している。問題を起こせば罪も大きくなるというのにお主はまったく・・」
双星「まぁまぁ、とりあえず受付のおねーさんはもう変なことはしないようにしてください。」
受付「だが断る。」
ええ?
双星「・・ヒミカさん、どうか受付のおねーさんの管理をお願いします。」
ヒミカ「お主が頭を下げてどうする。問題はお前ではなくこいつだろう。」
受付「カッとなってやった。今は反省している。」
あ、これ反省してないパターン(ネタ)だ。
受付「そんなことよりー、魔王すらあっさり倒すなんて双星さん何者なんですか?」
ヒミカ「・・そうだな。暴走魔法を使いこなす者など今までいなかった。」
双星「暴走魔法ってなんですか?」
受付「やだもう双星さん知ってて使ったんでしょ?魔法は繊細なので術式を間違えたりすると暴走して自爆するんですよ。」
ヒミカ「2回戦の魔法使いをそれで倒しただろう。」
あ、おならで勝ったやつか。対戦相手の名前は忘れた。
ヒミカ「今思えば暴走魔法を使いこなすお前にとって、相手の魔法を暴走させるのも容易だったということか。」
受付「知っているからそれを利用したんですね。双星さん詐欺師になれますよ。」
双星「いえだから、あれは偶然起きたことなんですよ。」
ヒミカ「すると今回の闘いも偶然か?」
双星「あれはテーブルが教えてくれたんです。」
ヒミカ「?」
受付「?」
双星「ちょっとついてきてください。」
俺はふたりを控室へ連れてきた。
双星「さっきですね、このテーブルが闘い方を教えてくれたんです。その暴走魔法?っていうのもテーブルに言われた通りしたんですよ。」
ヒミカ「・・」
受付「・・」
双星「テーブルさん、ほらふたりに説明してあげて。」
しーん。
双星「あのテーブルさん?寝てる?」
ヒミカ「・・双星、病院まで付き添うぞ。」
受付「・・寝不足なんですよきっと。もしくは脳の病気。」
え?脳の病気?
テーブルはなぜか喋らなかった。
いやテーブルが喋らないのは普通なんだけど、でもさっきは喋ったわけで・・
・・
・・・・




