225第9回A国武闘大会決勝戦
見覚えのある建物に連れて来られた。
確かここ・・ああ、去年の武闘大会で壊れた会場だ。
決勝戦の日に、隕石が落ちたんだよな。
獄獅「お前はそこの入口から入れ。」
双星「なんで?」
獄獅「入ればわかる。」
敵の言うことなんて罠だと思う。
でも入ってしまうのは、俺がバカだからかな。
受付嬢「ひゃーひゃひゃひゃ、第9回武闘大会決勝戦へようこそ!」
え?
今年の大会が第10回だったから・・え?
受付嬢「試合が始まるまでもう少し時間があるから!控室へどーぞ。」
よくわからないまま控室へ放り込まれた。
・・いつもの控室とは違う。
狭くて、あまり綺麗じゃなくて、あ、でも掃除はされてる。
少し・・落ち着いて考えてみよう。
去年は、隕石が落ちて決勝戦は行われなかった。
つまりこれは、去年の決勝戦をここでやろうってことなのか?
だとすると俺の過去を奪ったやつは・・去年の・・決勝戦の相手・・?
がちゃ。
受付嬢「ひゃっは♪試合が始まるからカモン。」
受付のおねーさんとは違う。
ちょっとイカれた感じの受付嬢さん・・かわいい。
うん、俺は別に年上好きじゃないな。うん。
受付嬢「さてさてー、自分の状況が理解できましたかー?」
双星「去年の決勝戦に不服だった対戦相手が仕組んだもの?」
受付嬢「ぴんぽんぴんぽーん♪じゃあ死ぬ覚悟できたんだ。」
双星「なんで!?」
受付嬢「向こうはすっごく恨んでんよ♪卑怯な手で決勝戦をぶち壊しにされたってね。」
卑怯って・・隕石は偶然の産物でしょ?
受付嬢「そうそう、控室どーだった?」
双星「なんか地味な感じ。」
受付嬢「ふつーの人は、あの控室なんよ。」
ああ、俺はクジで豪華控室になってたから・・すごい恵まれてたんだなぁ・・
受付嬢「さー行って死んでこーい!」
死ぬ気はないが・・俺は、試合の舞台へ足を踏み入れた。
・・
・・・・
観客「死刑囚が来たぞ!」
観客「殺せ殺せ!」
観客「ぶっ殺せ!!!」
観客席は満員御礼・・満席だった。
獄獅「よお、来たな。」
双星「あなたが去年の決勝戦の相手なのはわかりました。」
双星「でも隕石は偶然の出来事でしょう?」
獄獅「・・はー、何もわかってねーんだな。」
獄獅「あれはお前んとこの天使がやったんだよ!!!」
え?
獄獅「普通に闘えば間違いなくオレが勝つはずだった!」
獄獅「なのに!!」
獄獅「お前を勝たせるために卑怯な手を使った!!!」
胸の鼓動が速くなる。
確かに、俺が武闘大会で勝ち続けていたのは異常だった。
卑怯と言われれば・・確かにその通りだ。
観客「卑怯者は殺せ!」
観客「殺せ殺せ!」
観客「ぶっ殺せ!!!」
控室だって、普通の人は高いお酒もふかふかなソファーもかわいい女の子もついていない。
俺ばかり、いい思いをしてきた。
それだってきっと・・操作されたものだと思う。
獄獅「A国でのお前の幸せは、不正の上に積み上げられた汚い幸せなんだよ!」
観客「許せないな!」
観客「殺せ殺せ!」
観客「ぶっ殺せ!!!」
メイドさんも、ダークエルフさんも、俺なんかと一緒にいちゃいけなかったんだ。
俺に、そんな資格なかったんだ・・
受付嬢「あーテッステッス、マイクのダークネステストです。」
受付嬢「去年の決勝戦の日、裏でバトルが行われていました。」
受付嬢「獄獅選手の協力者と、双星選手の協力者です。」
え?
受付嬢「その結果、双星選手の協力者である天使が勝利しました。」
受付嬢「おふたりの試合は、すべてバックの方が勝敗を決めていたにすぎません。」
え?
受付嬢「他者を試合会場に連れて来て協力してもらうのはルール違反です。」
受付嬢「しかし、試合前に会場の外で装備や道具を作ってもらったり、運を授けてもらうのはルール内です。」
受付嬢「双星選手の勝ち方に、ルール違反はありません。」
俺が言うのもなんだけど、ルールの不備というか想定外なだけでは・・?
あれを想定しろというのも酷だと思うけど。
獄獅「ちっ、うっせーな。なんだあれ?」
双星「お前が用意した受付兼実況者さんじゃないの?」
獄獅「しらねーよ。」
なんか、誰も全体像を把握していない?
おかしくない?まだ裏に誰かいる?
獄獅「まあいいか。どの道お前はオレに殺される運命だ。」
双星「あの、お前もバックがいたっていうのは・・」
獄獅「そのままさ。異世界のバケモンに協力してもらってたんだよ。」
異世界の・・化け物?
受付嬢「ひゃーひゃっひゃ、補足説明でーす。」
受付嬢「異世界とは、神様の管轄外の世界を指しまーす。」
受付嬢「つまり、神様によって作られていない存在のことですね・・いてはいけない存在です。」
受付嬢「精霊や天使は、異世界から来た化け物を倒すのもお仕事なんよ♪」
双星「・・あれ?今回の件も異世界の化け物の仕業じゃなかった・・?」
双星「それも天使殺しなんて大層なスキルを持っている・・」
状況が・・あれ?
獄獅「前の協力者は、去年の決勝戦直前にお前んとこの天使にやられたからな。」
獄獅「今度は天使より強いやつと手を組んだのさ。」
獄獅「今回のやつは使えるぜ。今のお前に天使の加護はない!」
ひとりで・・この状況を切り抜けないといけないってことか・・
観客「早く殺し合え!」
観客「退屈だぞ!殺せ!」
観客「やらないならオレたちが殺してやろうか?」
獄獅「うっせえ雑魚ども!ほら観客がお待ちかねだ、お前を殺して正しい決勝戦にしてやるよ。」
やるしかない、か。
だけど・・
獄獅「オレが、オレ様が優勝するはずだったんだ!」
獄獅「お前みたいな弱いやつに未来を奪われるなんて許されねーんだよ!!!」
それで・・俺の過去を奪っていったのか・・?
受付嬢「ひひひ、では第9回A国武闘大会の決勝戦を始めまっす!」
受付嬢「勝者がすべて!相手を殺したら勝ちです!」
穏便にしてほしいな。
でも俺だってダークエルフさんに戦い方は習ったんだ。
負けるわけにはいかない。
獄獅「最初から本気でいかせてもらうぜ・・」
対戦相手の体が異常に膨れ上がった。
みるみるその姿を変え・・巨大な獣に姿を変えた。
受付嬢「ひゃっはー、獄獅選手の正体はヘルハウンドでした!」
受付嬢「鋭い爪、強力なブレス、その体躯で暴れたら誰が防げるでしょうか!?」
受付嬢「今のうちに念仏を唱えてあげる。きゃはっ♪」
・・・・人間じゃないの!?
双星「なんというか、その方が卑怯じゃない?」
獄獅「ルールの範囲内だ!死ね!」
ブレスを軽くかわす。
十分な間合いさえとれていれば、そこまで恐れるものではない。
だけど、距離空きすぎて俺も攻撃が届かない・・近づかないと・・
獄獅「お前はこう考えているな?なんとかして近づいて攻撃を当てたい・・と。」
獄獅「こっちから近づいてやるぜ!」
相手が一歩踏み出すだけで、俺のすぐ近くまで距離を詰めてしまう。
体格差がありすぎる。
爪によるなぎ払い・・俺は後ろに跳んでかわす。
だけど、また距離が空いた。
獄獅「ちょこまか逃げやがって・・もうお前に天使の加護はないんだよ!」
獄獅「諦めてオレに殺されろ!」
・・そういえば・・
なんで俺、ちゃんと避けられるんだろう。
いくらダークエルフさんと修行したからって、素人に毛が生えた程度っていうか・・
・・俺は、少し気付いた。
獄獅「死ね!」
俺は、相手のなぎ払いブレスを・・前に進んでかわした。
ヒミカさんのような、初速をあげた動き。
かわす先は、相手のお腹の下・・ジェノアさんがマラクさんと闘った時のように、死角から攻撃する。
獄獅「ぐ・・ちょこざいな!」
お腹の下にいれば、相手の攻撃方法は限られる。
その巨体が伏せるだけで、お腹の下にいる人間は押し潰される。
俺は間一髪、横に逃げて回避する。
相手が伏せれば・・頭はそれだけ下にいく。
E国でオルトロスの首を斬ったインスペクターさんや将軍さんのように、俺も首を・・急所を狙う。
双星「はああああ!!!」
魔剣が相手の首を斬る。
吹っ飛ばせはしなかったが、これなら・・
獄獅「ぐ・・そんなバカな・・人間なんかに、ただの人間なんかに・・」
双星「E国で、お前に似たオルトロスと戦った。」
双星「殺すという感覚を、G国で経験した。」
双星「A国に帰ってから、戦う力を身につけるよう言われた。」
双星「今年の武闘大会で、たくさん観客からヤジを受けて慣れた。」
双星「大会で、ジェノアさんがお前みたいな巨体相手の闘い方を披露してくれた。」
双星「ヒミカさんから、初速をあげる方法を教わった。」
双星「それでも足りない部分は・・魔剣で補ってくれた。」
双星「今は加護が断ち切られていても、ずっとお前と戦う準備をしてくれていたんだ!」
受付のおねーさんは、すべてを見越していた。
もしかしたら他にもあるかもしれない。
俺が気付いていないだけで。
双星「・・俺たちの勝敗は、ずっとバックが決めていたじゃないか!」
双星「お前はなまじ強いからわからないかもしれないけど、俺はずっとそうだった。」
双星「お前は・・・・信じる相手を間違えたんだ。」
獄獅「・・」
異世界の化け物なんか信じるべきじゃなかったんだよ。
人は、成功を収めたとき、自分の力だけだと思わず神に感謝することがある。
神様が見ていてくれると信じているからだ。
・・お前と俺は、どこか似ている気がするよ・・
受付嬢「第9回A国武闘大会決勝戦は、双星選手の勝利です!」
・・これで、去年の大会も決着がついたかな。
タッタッタッタッ・・足音?
佐藤「双星さん!早くここから逃げましょう!」
双星「あ、佐藤さん。なにかあったの?」
佐藤「”敵”は双星さんから奪った過去を陣地にしてきました。」
佐藤「ここが敵の最後の陣地です!」
佐藤「もう残っているのは、異世界の化け物だけです!ですから・・」
一瞬にして、重苦しい空気に変わった。
なにか・・いる。
だけど見えない。把握できない。感覚がおかしい。
魔剣「私を使って!」
双星「そ、創造の力よ!」
魔剣が人の姿に変わる。
その瞬間、膨大なエネルギーが押し寄せて来た。
魔剣が、それを受け止めてくれた。
膨大なエネルギーが通り過ぎた後・・そこに魔剣はいなかった。
だけど、まだいる。
強大な何かが。
重苦しい空気の中、どうすることもできない。
その瞬間、空が光った。
上を見ると・・大勢の・・羽の生えた・・
?「人間よ、よくぞここまで追い詰めました。」
?「ここからは私たちの番です。」
光が地上へ降り注ぎ・・俺は意識を失った。
・・
・・・・




