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219王の相談役


王様の相談役に任命され、登庁しろって命令が来た。

・・俺なんかに王様の相談役が務まるわけがない!!!


ダークエルフ「向こうが勝手に任命したのだから、務まらなくても気にしなくていいのよ。」

メイド「向き不向きがありますからね。全部が完璧な人なんていません。」

理屈ではわかるけど、期待に応えなきゃって感情が邪魔してくるぅ。


メイド「こういうのが得意なのは・・ダークエルフさんじゃないですか?」

双星「・・あの・・ついて来てもらうことは・・できますか・・?」

ダークエルフ「いいわよ。だからね、その捨てられた犬のような顔はやめて。」


・・

・・・・


国王「双星よく来た。早速相談したいことがいくつもあるぞ。」

双星「だ、ダークエルフさんも一緒でもよろしいでしょうか?」

国王「構わぬ。むしろよく来てくれた。」

双星「え?」

ダークエルフ「何度か参与に誘われたことがあるだけよ。」

参与って、相談役の職だよね?

あれ?俺が任命されたのも相談役だったような・・


国王「では早速だが・・」

俺の違和感は仕事の始まりと共に隅へ追いやられた。


・・

・・・・


国王「これで最後だ。地方政府の作った法が国民から賛否両論でな。介入した方がいいか迷っておる。」

双星「新聞にも載っていた、不正なやり方で作られた法のことでしょうか。抗議活動で逮捕者まで出したってありましたが。」

国王「そうだ。法自体はあっても構わないと思うのだが、こうも問題になるとな・・」

やり方が問題なだけで、法自体は妥当なものなのか・・

うん、これもわからん。俺はダークエルフさんを見た。


ダークエルフ「介入した方がいい。すぐにその法を廃止して、逮捕者も解放しないといけない。」

国王「理由を聞かせてくれ。」

国王「恩赦おんしゃは余程でなければできぬ。正しき理由が必要である。」

ダークエルフ「不正なやり方で作られた法に正当性はないわ。」

国王「しかし、手段を問わぬ政治手法とてあろう。」

ダークエルフ「マキャベリズムね。でも独裁を正当化するためのものじゃないわ。」

ダークエルフ「道を誤らないためには軸が必要になる・・国民の利益や不幸から救うことを軸にしないといけない。」

ダークエルフ「今回その法によって起きたこと、それは国民を犯罪者にした。」

ダークエルフ「それだけでも罪深き法よ。」

国王「犯罪を犯してでも抗議するような輩だ。この法がなくてもいつか犯罪者になったのではないか?」

ダークエルフ「人はお腹が空けばイライラする、麻薬を使えば依存する、お酒を飲んで酔うのはその人の心が弱いからかしら?」

ダークエルフ「人は思うほど自分を制御できないもの。外部の影響を受ける。」

ダークエルフ「その人は今回のことがなくてもどこかで罪を犯すかもしれないわ。」

ダークエルフ「でも今回は不正なやり方で作られた法が原因よ。それはあってはならないこと。」

国王「うーむ・・」

ダークエルフ「この件を放置すれば、王の政治も不正なものだと疑われかねない。」

国王「我はいつも国民のためを思って政治をしておる!うまくいかぬこともあれど不正呼ばわりされるいわれはない!」

ダークエルフ「なら、不正なやり方を認めてはいけないの。」

ダークエルフ「犯罪者まで出したら誰も引けなくなる。放っておいたら権力者がを貫くだけよ。」

ダークエルフ「みんなが納得できるよう収められるのは王しかいないわ。」

国王「・・なぜこの様なことで悩んでいたのか悔やまれる。」

国王「すぐに法を廃止し、逮捕された者を解放してやらねばならぬな。」

国王「法を作った者も相応の想いがあっただろう。それもんでやらねば。」

俺も相談していいですか?

・・俺がいる必要ないじゃん!


国王「久しぶりに充実した時間を過ごした気分だ。またよろしく頼むぞ。」

双星「あの・・俺全然役に立っていませんでしたが・・」

ダークエルフ「最初からそのつもりだったのでしょう?」

え?


国王「B国やC国の王子王女は中々の器であった。」

国王「今後交流も増えるであろう。我も負けてはいられぬ・・が、今のままでは足りないのだ。」

国王「ブラスト殿の抜けた穴はあまりにも大きい。遺志を継ぐ者たちの力が必要だ。」

ダークエルフ「そっちで勝手にやればって感じだけどね。」

国王「ふふ、言わなくとも双星はお主を連れて来た。これからも頼むぞ。」

ダークエルフ「気が向いたらね。」

んー、つまり・・


双星「俺はアドバイスしなくていい感じ?」

国王「双星のアドバイスなど、意味も分からないのにやってみたら全部うまくいきました・・なんてものにしかならぬだろう。」

国王「踊らされているようで恐怖しか感じぬ。」

俺にそんな能力ないです!


・・

・・・・


王様との謁見を終えて部屋を出ると、ヒミカさんが待っていた。


ヒミカ「ご苦労。また忙しくなったな。」

双星「俺がいる意味ないですが・・」

ヒミカ「お前がいないとダークエルフは来ないだろう?人徳も力のうちだ。」

・・それはわかりますが、ちょっとむなしさを感じる。

というかヒミカさんもその辺りわかっているんだ。


ダークエルフ「あまりここにはいたくない。用がないなら帰らせてもらうぞ。」

ヒミカ「なら道すがら話そう。と言っても、そんな長い話じゃない。」

なんだろう?

俺たちは歩きながら話し出した。


ヒミカ「まずは優勝おめでとう。これで二連覇だな。」

双星「ありがとうございます。前会った時に言ってくれてもよかったのに。」

ヒミカ「あの時は仕事で会いに行ったからな。可能なら公私は分けたい。」

・・そういうの分けるの苦手だなぁ。


ヒミカ「ではここから仕事だ。明日で72時間経つ、何か異変は起きていないか?」

双星「・・言ってる意味がわからないんですけど・・」

ダークエルフ「決勝戦で使ったバフの効果時間が72時間・・最大30分の決勝戦にはふさわしくない。」

双星「もしかして、72時間以内に何か起こるとか?」

ヒミカ「そう踏んだのだがな。杞憂きゆうならその方がいい。」

うん杞憂!絶対杞憂!厄介事はノーサンキュー。


ダークエルフ「常に気を付けていればいいことだ。」

ヒミカ「なるほどな。」

ヒミカさんが俺を見た。


双星「何かあったら助けてください!」

ヒミカ「常識の範囲内ならな。」

ダークエルフ「こいつが敵に回るかもしれない。」

ヒミカ「その場合は真っ先にお前から排除する。」

ダークエルフ「利口な考えだ。危険な相手を先に始末しておけば、後が楽になる。」

こ、怖い話だめー。


双星「じ、自分の身を守る方法を教えてください!」

ヒミカ「危険な場所や人に近づかない。それだけで人生の8割の危険を避けられる。」

双星「つまり、2割は危険な方からやって来ると・・その場合は?」

ヒミカ「遺書でも書いておけ。」

死ぬ気満々やん!


ダークエルフ「そういえば、戦い方は教えていても、逃げ方は教えていなかったわ。」

双星「・・実はそっちの方が重要?」

双星「そうだ、ヒミカさんってすっごく速く動きますよね?あれはどうやってるんですか?」

ヒミカ「一般的に、人の走り方だと”初速は遅く、徐々に加速”となる。」

ヒミカ「初速が遅ければ、そのぶん相手に反応する猶予ゆうよを与えてしまう・・そこで昔の人は考えた。初速も速ければいい!と。」

できたらいいなでできれば苦労はしませんが。


ヒミカ「歩法や走法をつきつめ多くの流派が初速を極限まで高めた・・私がやっているのもそのひとつだ。」

昔の人ってすごい・・


双星「や、やり方を教えてもらうことはできますか?もしかして門外不出もんがいふしゅつ?」

ヒミカ「そんなことはない。だが、人の体に合わないやり方だ。やりすぎると足を痛めるぞ。」

双星「・・やばいんですか?」

ヒミカ「休みなく走り続ければ限界が来るだろう。それと同じだ、なんでもやり過ぎは体によくない。」

ヒミカ「私は祖父から習ったが、同時にこう言われた。」

ヒミカ「”門弟もんていのひとりが軽々しく人に教えたために、武術の心を持たぬ者が使い足を壊した。”」

ヒミカ「”慣れぬうちは3度、慣れても両の手を超えてはいかん。”・・と。」

10回は超えられないのか。


ヒミカ「だから軍のやつらにも教えていない。あいつらは無理をするからな。」

双星「俺も結構無理するからなぁ・・」

ヒミカ「ははは、そんな馬鹿な。」

えっ?


ヒミカ「流派によってやり方は違うが、私のは律動りつどうを意識している。」

ふむふむ、律動ってリズムだよね?

それはわかる。でも、何もわからない。


ダークエルフ「リズムを極限まで速めるということか。行きつく先は・・無拍子か?」

ヒミカ「理想はな。それができれば、理論上は初速の無駄を0にすることができる。」

ヒミカ「私はまだその領域へは辿り着いてない・・が、それでも一般人よりは速く動けるようにはなった。」

双星「あの・・武術の心を持たない人にもわかるように説明をお願いできませんか?」

ダークエルフ「人は一定のリズムで走る。」

ダークエルフ「走るスピードを上げたり下げたりするのは、このリズムを変化させることにある。」

ダークエルフ「つまり、初速の段階でこのリズムを速めればスピードも上がる。」

双星「・・どうやって?」

さらっと言われたけど、それができないから初速は遅くなるのでは?


ダークエルフ「人の肉体はリミッターがあって、体が無理をし過ぎないよう設定している。」

ダークエルフ「だとしたらやることは肉体改造。リミッターを無視して動ければいい。」

ダークエルフ「足を痛めやすいのもその辺りが原因。まずは体・・筋肉を慣れさせるの。」

双星「やっぱり話聞いただけでできるようになりました!・・とはならないよね。」

双星「というかなんでダークエルフさんが説明しているの?」

ダークエルフ「私が教えるから。」

ヒミカ「独占欲とは怖いものだな。私には理解できん。」

うん、まぁ、ヒミカさん・・そういう人たくさんいますよ・・ヒミカさんを独占したい人が・・巴さんとか。


ダークエルフ「残念だがメイドとの共同所有だ。独占ではない。」

ヒミカ「そうか。間違えてしまったな。」

おや?


・・

・・・・


というわけで早速ダークエルフさんにやり方を教えてもらった。

えーい、超高速移動だぁぁぁぁぁバーーーーン

・・壁に・・ぶつかった・・


ダークエルフ「はい成功。さすがバフかけまくりね。」

うん、まぁ確かに初速から速かった・・でも制御が・・

決勝戦でかけられたバフが強力すぎる。


ダークエルフ「今の双星は、世界一強い力を持ち、世界一速く動け、世界一堅い守りをしているわ。」

ダークエルフ「感想は?」

双星「加減が難しいです・・」

ちょっと力を入れたら物が壊れるし、速く走ると風の抵抗がすごくなる。

頭が良くなっても知識が増えるわけじゃないし・・暗算がすごく速いくらい。

堅いのは助かるけど。


ダークエルフ「バランスを意識しないと体がついていかないわ。重心が大事、ね。」

双星「・・具体的には?」

ダークエルフ「制御できるギリギリまで力を抜く。あとは少しずつ本気を出していけば慣れるわ。」

それしかないかぁ。

今の状態のまま過不足なく動けるよう、体を慣らすのに時間をかけた。

まぁ明日の昼前にはバフの効果時間が切れると思うけど。


・・

・・・・


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