21六回戦(準々決勝)
次の日。
昨日は長かった気がした。うーん疲れが微妙にとれてない。
ふと机の方を見ると、ダークエルフさんがまだなにかしていた。
双星「おはようございます。もしかして徹夜?」
ダークエルフ「おはよう。朝か・・もう少しで完成するから待ってて。」
双星「無理しないでって言ったのに。もう・・ありがとう。」
ダークエルフ「私が好きでやっていること。お前は私の主なのだから堂々としていればいい。」
胸を張ればいいのかな?
胸を張って―――巨乳のポーズ!
・・貧乳のみなさんごめんなさい。
・・
・・・・
朝食をいただき、試合会場へ向かう。
ダークエルフさんから対策用の魔法アイテムはばっちり受け取った。
エルフの使う精霊魔法は、人間の使う魔法より強力だから、できれば秘密にしてほしいって言われたけど。
エルフを恐れる人間が増えると、人間社会では住みにくくなるそうだ。
受付「あ、双星さんおはよーございます。」
ヒミカ「おはよう双星。昨日は遅くにすまなかったな。それとお金助かったぞ。」
双星「おはようございます受付のおねーさん。おはようございますヒミカさん。」
受付「お金?お金?なに?金がどうしたの?」
ヒミカ「なに、双星が軍に金を貸してくれたのだ。予算を減らされて厳しかったからな、助かった。」
受付「えーなら私にも貸してよー。1000年後に返すから。」
双星「返さない宣言ですよねそれ?」
ヒミカ「金を借りたらきちんと返せ。それが借りる者の礼儀だ・・とはいえ、こちらもいつ返せるかわからぬが・・国の予算が心許ないらしくてな。」
双星「いつでもいいですよ。使う予定もないので返さなくても困りません。」
受付「そんなにもお金あるなら頂戴頂戴ちょーだい!」
双星「働いているでしょ。」
受付「安月給なの!」
ヒミカ「気にしなくていいぞ。ローンの支払いに困って備品を売って横領罪に問われるくらい自業自得だから。」
受付「ちょっと魔法剣売っただけだから!」
ヒミカ「逮捕してもいいんだぞ?」
受付「ヒミカちゃんのいじわる~」
ヒミカ「金は貸さないでやってくれ。こいつのためにならない。」
双星「まぁ・・はい。」
受付「いいもん。双星ちゃんが優勝したら結婚して離婚して慰謝料がっぽりもらうもん。」
双星「皮算用はやめた方が・・」
受付「私のためにがんばって!」
ヒミカ「それだ、今日の試合どうするつもりだ?」
ダークエルフさんが対策してくれたし、ルシファーさんの怪しいお守りもあるけど・・
まぁダークエルフさんのは秘密だから・・うん、今まで通りいくか。
双星「ダメですね。どうしようもないかと。」
ヒミカ「そうか・・仕方ない、相手が悪かったのだ。」
受付「私の賞金は?」
ヒミカ「働け。」
受付「ぶーぶー。じゃあいつも通りお酒飲みますか?」
双星「・・いや、勝ってから思いっきり飲みます。」
受付「あれ?いつもは負けたらもう飲めないから試合前でも飲むとか言ってませんでした?」
双星「あれは勝つとは思わなかったから。でもほら、今度も偶然勝つかもしれないじゃないですか。」
ヒミカ「お前の偶然は悪質だからな。まあ今度は偶然も発動しようがないだろうが。」
受付「”神の子”ですもんねー。」
双星「あんなの偽物ですよ・・神様がいるのなら、世界はもっと幸せだと思います。」
ヒミカ「お前は無神論者か?」
双星「はい。ヒミカさんは?」
ヒミカ「創造神信仰だ。私たちが存在するのだから、誰かが始まりを作ったと考えている。その感謝の意を込めて信仰の対象にさせてもらっている。」
軍人なら軍神とか崇めそうだけど、まぁ信仰は人それぞれか。
まぁ軍神なんて小説の中でしか聞いたことないけど。
闘いの神なら・・超神かなぁ。
受付「お金くれる神様なら信じちゃうのになぁ。」
それはちょっと・・むしろ神様って、お金なんかなくても幸せになれる的な教えのような。
祈れば死んだあとで極楽いけるよとか、お金払うと死んだあとでいいところいけるよとか。
・・
・・・・
試合の時間になったので、試合会場へ行く。
対戦相手はもう来ていた。
クリストファー「憐れな人の子よ。お前はこの闘いで己の未熟さを知ることになるだろう。」
未熟もなにも、運だけでここまで来たからなぁ。
双星「えっと、今日はよろしくお願いします。」
クリストファー「礼儀は知っているようですね。今なら降参してもよいのですよ。神は正しき者を罰したりしません。」
双星「それではせっかく来ている観客のみなさんに申し訳ないです。できる限りのことはしないと。」
クリストファー「あなたからは誠実さを感じます。どうでしょう、あなたも私の宗教に入りませんか?」
クリストファー「私は神の子です。必ずやみなさんを導いてみせましょう。」
双星「すみません・・神の名を騙る偽物には興味ありません。」
受付「はーい闘いのお時間ですよー。今日勝利すればベスト4!」
受付「勝つのは無敵の神の子クリストファー選手か!?それとも偶然(笑)の双星選手か!?」
今、俺の紹介に(笑)つけた?
受付「さあ注目の闘い、試合開始です!」
クリストファー「神の子を侮辱するなら死を与えましょう。神の子を、ひいては神を侮辱する者に生きる資格などありません。」
双星「俺は無神論者だけどさ、だからといって神様を侮辱するのはいけないと思うよ。」
みんなそれぞれ信じているものがある。
なにを信じるかは自由なはずだ。
他人が信じているものを否定したり、信じているものを他者に押し付けたりしちゃいけない。
だけど、偽物には偽物と言わせてもらおう。
クリストファー「予言しましょう。あなたはこの闘いでなにもできずに負けるでしょう。」
双星「そう・・じゃあ行くよ。」
俺はクリストファーに向かって歩き出す。
敵意をむき出しにして。
クリストファー「あなたが向かってきたが最後!神の力によって動けなくなるでしょ・・あ、あれ・・」
クリストファー「な、なぜだ・・私の体が動かない・・」
双星「神様なんてもんがいるのなら伝えといてよ。なんかしたいことがあるなら横着してないで自分で来てやれって。」
双星「なにもできないならなにも余計なことしないで!」
双星「ってまぁ、偽物相手だから言えるんだけどね。」
神様がいたら、ひれ伏すことしかできなさそう。
クリストファー「く、来るな!か・・体よなぜ動かない!」
双星「・・今まで抵抗できずお前に攻撃されてきた人たちの気持ち・・よーく味わってください。」
俺は一撃でクリなんとかさんを吹っ飛ばした。
こいつ・・弱い。
抵抗できない人をただ攻撃していただけだからか、全然鍛えてないな。
俺も弱いけど、これでも旅をするだけの体力はあるよ。
受付「な・・しょ、勝者双星選手!」
受付「これまで一切攻撃されなかったクリストファー選手でしたが・・クリストファー選手が攻撃できず敗北です!」
受付「いったいなにが起こったというのでしょうか!?」
カウンター・マジック。
ダークエルフさんは、魔法を跳ね返すアイテムを作ってくれた。
強力な魔法であればあるほど、跳ね返ったときの力は強大になる。
クリなんとかさんよ、力に頼っていたら、いつか力に敗北するんだぜ・・なんて俺超かっこいい?
・・あ、いえ調子にのりましたごめんなさい。
猫背になりながら控室に戻ろうとする。
がちゃ。
控室に戻ると、お酒を飲んで陽気そうな受付のおねーさんと、仏頂面のヒミカさんがいた。
双星「えーと・・いやー偶然勝っちゃいました。」
ヒミカ「嘘つけええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
受付「神の子に勝っちゃうなんて、双星さん神様ですか?」
双星「俺が神様だったら不細工を滅ぼすよ。」
受付「自殺はお勧めしませんよ?」
なんて破壊力のある発言だ。
受付「うそうそ冗談ですよ。双星さんは・・これ以上ないくらい普通の顔です。」
ヒミカ「うむ、完璧な普通の顔だ。」
褒められている気がしない・・あ、褒められてないのか。
ヒミカ「とりあえず座れ。」
双星「は、はい。」
床に正座する。
ヒミカ「ソファーに座れ。説教するわけじゃないのだから。」
受付「ヒミカさんの口調がまずいんですよ。もっとバカップルの女の子みたいな喋り方じゃないとダメですよ。」
ヒミカ「なに、そうなのか?・・そ、ソファーに座ってくれなきゃやだやだぁ。」
受付「・・」
双星「・・」
ソファー「キャラ考えろよ」
ヒミカ「・・死のう。」
受付「いえよかったですよ!とってもかわいかったです!」
ヒミカ「武門の恥だ!ええい死なせろ!」
双星「いつものヒミカさんも素敵ですが、かわいいヒミカさんも似合ってましたよ。」
ヒミカ「・・そ、そうか?な、なら、また気が向いたら・・」
受付「(なにこの対応の差)」
ソファー「(これが”あざとい”ってやつよ)」
さっきからこの部屋に4人いるような気がするけど、俺の気のせいだよね?
ヒミカ「いやそんなことより、あれはどうやった!?」
双星「あれとは?」
ヒミカ「だから、神の子クリストファーをどうやって倒したというのだ!?」
双星「アッパーで一撃でした。」
ヒミカ「そうではなく、やつには誰も攻撃できなかったはずだ!」
双星「きっと眉唾な話ですよ。だって俺が攻撃しましたから。」
ヒミカ「だからそれをどうやったというんだ!!!」
受付「双星さんは全部計画でやったんですよ。」
ヒミカ「具体的にわからなければ意味がないだろう!!」
受付「でもそれって、手の内を教えろってことでしょ?命を懸けて闘う双星さんにとっては命を危険に晒せってことにならない?」
ヒミカ「・・それでも教えてもらうぞ。クリストファーを野放しにするわけにはいかないのだ。」
双星「そうだなぁ・・俺も教えたいけどちょっと事情があってね・・」
双星「秘密を守れる一部の人だけに伝えるとかできる?」
ヒミカ「努力はしよう。」
受付「どうせ口約束ですよ。ここは私にだけ教えませんか?」
双星「売るつもりですね?」
受付「他に理由ある?」
実はクリなんとかさんの信者だったとか?
いや受付のおねーさんは・・お金様の信者にしか見えない。
ヒミカ「お前は酒を飲んでろ。」
受付「お金の方が嬉しいなぁ。」
ヒミカ「はいはい横領の懲罰くらいは消してやってもいいぞ。給料は改善される。」
受付「その程度ぉ?」
ヒミカ「仕事中の飲酒や酒の持ち出しで罰してもいいんだぞ。」
受付「え、お酒を持ち出したの知ってたの!?」
ヒミカ「カマかけただけだ。そのあたりはお前の態度次第による。」
受付「双星さぁん、助けてぇ。」
双星「真面目に仕事すればいいと思います。」
受付「もっと面白いこと言って!」
面白い話・・そう言われても。
双星「じゃあクリなんとかさんの秘密は二人に教えますが、俺がどう対応したかは受付のおねーさんにだけ教えます。」
双星「受付のおねーさんはそれをヒミカさんに教えてポイント稼ぎしてください。」
受付「ヒミカさん、何ポイントになりそう?」
ヒミカ「ふむ、10000ポイントだな。」
受付「やったぁ!」
双星「(10000ポイントの価値は?)」
ヒミカ「(ほぼ無価値)」
これがインフレの脅威か。
そろそろデノミですね。
受付「さぁさぁ話して話して!金の話!」
双星「まずクリなんとかさんは神の子じゃない。あれは精霊魔法を使っています。」
受付「精霊魔法?」
ヒミカ「なるほど、お前が話しにくい理由がわかった。」
受付「え?」
ヒミカ「エルフ族は精霊魔法を使う。双星の部屋にダークエルフがいたからそれでわかったんだろう。」
ヒミカ「そしてエルフ族の使う精霊魔法は人間の使う魔法より強力だ・・このことが知られたらエルフ族はより人間社会で住みづらくなる。」
ヒミカ「それはダークエルフも同じ・・双星は仲間を気遣っているのだ。」
受付「ちょっと意味わかんない。」
ヒミカ「減点1000000だな。」
受付「そんなぁ!」
双星「クリなんとかさんが使っているのは、カウンター・バインドという、敵意や攻撃に反応して相手を拘束する魔法です。」
ヒミカ「クリストファーは精霊魔法を使うのか?」
双星「確認したわけじゃないですが、アイテムを使ってるって聞きました。」
ヒミカ「アイテムか・・それを奪えば・・」
受付「減点多すぎない!?」
ヒミカ「それで、どうやって防ぐのか?」
双星「・・まぁそれは受付のおねーさんに教えるということで。」
ヒミカ「ここで聞かせれば減点を帳消しにするが、どうする?」
受付「ここでお願いしましゅ!」
あ、かんだ。
まぁいいけど。
双星「同じ精霊魔法にカウンター・マジックという、魔法反射の魔法があります。それを使いました。」
ヒミカ「お前は精霊魔法まで扱えるのか?」
双星「クリなんとかさんと同じ・・アイテムです。」
ヒミカ「お前のところにいたダークエルフが作ったものか?」
双星「はい。」
ヒミカ「よし、なら同じものをもっと作ってもらう。」
双星「・・それはやめた方がいいかと。第二第三のクリストファーが生まれる下地になってしまいます。」
双星「俺が使っていたカウンター・マジックのアイテム・・それと、お守りです。これを使ってください。」
お守りは宿でルシファーさんがくれたものだけど・・まぁ価値はないかな。
ヒミカ「・・わかった。これで奴から回収しよう。」
双星「お願いします。」
ヒミカ「ところでお守りはなにか意味あるのか?」
双星「成功祈願ですかね。」
ヒミカ「・・交通安全と書いてあるが。」
・・俺は目を逸らした。
受付「ふふーん。無罪放免になったところで双星さんへの賞金6400万とトロフィーでーす!」
賞金・・あれどこ?
受付「なお金貨が100キロ超えましたので、別途お送りします。」
双星「扱いに困る重さ。宝石にしてください。」
受付「却下です。」
ヒミカ「ん?入手が容易なものなら、同等額の他の物でもよいはずだぞ。」
受付「しーっ。扱いに困れば私に貢いでくれるかもしれないじゃないですか!」
双星「宝石でお願いします。多少金額が落ちても軽いのを望みます。」
受付「・・仕方ないですね。換物の際、いくらか着服するしかないか。」
ヒミカ「一発逮捕。」
双星「次の受付担当誰になるかなー。」
受付「双星さんひどい!私に貢いでくれる約束はどうしたんですか!?」
してないしてない。
受付のおねーさんが譲らないので、賞金の扱いはいったん保留となった。
・・
・・・・




