216八回戦(決勝)
るーしーさんは既に来ていた。
いつもの無表情だ・・やっぱり棄権はしてくれないかぁ。
双星「おはようございます。お、お手柔らかにお願いします。」
るーしー「うん、痛くないように終わらせる。」
そうしてもらえるとすごく嬉しい。
やっぱり・・敵わないよなぁ・・見た目はかわいい小さな女の子なんだけど。
受付「決勝戦の時間になりました。」
受付「これより試合を始めますが、その前に新情報が入っています。」
新情報?
受付「るーしー選手の正体が判明しました。」
受付「その正体は神様に反逆した堕天使ルシファー。天界より第一級犯罪者に指名されています。」
るーしー「・・」
ふぁ?言っていいの?
受付「そして今回、天界からの依頼で堕天使ルシファー討伐作戦が組まれました。」
受付「幾度となく堕天使ルシファー討伐は失敗に終わっています。」
受付「天界からの気配を察知すると、堕天使ルシファーはすぐに姿を消すのです。」
受付「そこで今回は、人間の協力者によって作戦がひそかに進行しました。」
人間の協力者か・・嫌な予感がするのは俺だけ?
受付「その人間は、この大会を巨大な結界として堕天使ルシファーを逃がさない檻にしました。」
受付「人やドラゴン、堕天使ルシファーが闘うことで結界に力を注ぎ込み、討伐の舞台を作り上げた。」
受付「自身は常に道化を演じ、天界からの気配を一切感じさせず、批判を浴びても意に返さずすべてを用意した。」
初めて聞いた設定。
受付「その人間とは・・双星選手です。」
受付「ドラゴンやマシーナリー、巨大な力を持つ存在を呼び込んだのもすべて双星選手。」
受付「堕天使ルシファーが大会に溶け込めるよう、自然に参加できるようすべてを仕組んだ。」
受付「そう、すべてはこの決勝戦のため。」
受付「あとは・・双星選手が堕天使ルシファーを倒せばすべての計画が完成する・・新情報にはそう書かれています。」
モブ「・・う、嘘だろ?」
モブ「そんなことが裏で進行していたのかよ・・」
モブ「なんだよなんだよ。双星は天界とも交流あんのか!?」
モブ「新聞見てもしかしてと思ったら・・やっぱり双星の計画だったとは・・」
モブ「新聞すげえええ!」
モブ「ま、まあオレも全部わかっていたけどな。」
巴「えー・・」
ヒミカ「いつものことだ。」
メイド「さすが双星様です!」
ダークエルフ「完全に双星のための大会にしちゃったわね。エンタメとしては正しいけど、来年のハードルがあがったわ。」
女王「ふふ、来年はもっとすごい計画を立てればいいのよ。あなたのご主人様ならよく踊るわ。」
同志「A国はすげえことが起こるんですね。」
ジェノア「A国の人々が言ってた【計画】とはここまでやるのか。これは私も見抜けなかったな。」
ウラノス「やはりこうでなくてはな。双星殿は娯楽をわかっている。」
テミス「パパ・・まだ私、話についていけないんだけど。」
インスペクター「全部持ってかれてしまいましたね。」
土門将軍「仕方あるまい。だがこれくらいの方が国民も喜ぶだろう・・あとは双星殿が勝つだけだが・・」
リカルド「しかしどうやって勝つつもりだ?マラクにすら圧勝するような相手だぞ・・負けるなよ、双星。」
ミルカ「これが王女様の言っていた”必殺の一撃”ですか。」
王女「さすがですわ~。これには脱帽ですの。」
第一王子「研究者殿の言った通りでしたね。我々の想像を超えたことが起きました。」
研究者「・・なんとなく、これすら何か・・不思議なものを感じる。」
国王「双星の計画には驚かされてばかりだ。我も負けてはおれぬな。」
超神「精霊や天使ってこういうの好きよね。うらやましくなんかないんだから!」
悪魔王「私もいい役ほしかったわ。精霊みたいに、人間に加護でも与えようかしら。」
るーしー「そう・・あなたは天界からの使者だったのね。」
いや違うんです!初めて聞いた話で・・あれ、声が出ない!
るーしー「私は負けるわけにはいかない。神を殺し、私が新たな神になるまで。」
るーしーさんの背中から・・身長より遥かに高い漆黒の羽が生えた。
C国の悪魔騒ぎでも思ったけど・・なんて・・美しいんだ。
受付「あーっと、るーしー選手、これが真の姿なのでしょうか!」
受付「双星選手、どうやって闘うつもりでしょうか・・決勝戦、レディ・ゴー!!!」
るーしー「ですろーど」
抑揚のないいつもの口調で魔法を紡ぐ。
・・これくらったら死ぬんじゃない!?ああ声が出ない!
しかし、るーしーさんが生み出した魔法の槍は、俺に届く手前でバラバラになった。
るーしー「・・やはり、これは天界の力。」
そうなの?
受付「おーっと。双星選手、どうやら天界から加護を受けている様子!」
受付「るーしー選手、これはうかつに手を出せないか!?」
るーしー「こじ開ける」
るーしー「ですすまっしゅ」
先ほどと同じ魔法の槍。
だけど・・見ただけで数と威力が上だってわかる!
これやばい!絶対やばいって!
るーしー「ごー」
魔法の槍たちは、円を描くように俺の周りを回りながら全方位からやって来た。
・・が、すべて俺に届く手前で分解され消えた。
受付「双星選手、鉄壁の防御です!しかし攻めなければ勝ちはありません!」
受付「圧倒的な力を持つるーしー選手をどうやって攻略するつもりでしょうか!?」
わかりません!
え?体が・・これは・・能力強化?
ジェノア「バフの重ね掛けだが・・超高速連続バフ掛けしてるな。毎秒10回以上ってとこか。」
ミルカ「あ、ありえない!あんなバフのかけ方・・」
同志「ありえないんですかい?」
リカルド「バフの連続使用は3つの問題がある。詠唱時間、効果時間、消費魔力だ。」
リカルド「完全無詠唱のバフはかなり高度だ。効果時間は通常3分ってとこで、連続バフするより2,3回かけて殴る方が効率的だったりする。」
リカルド「そして魔力の消費があるので連続使用は限界がある・・普通ならな。」
同志「つまり普通じゃないと?」
ダークエルフ「双星は魔力を消費していないわ。全部精霊の力だけで魔法を使っている。」
女王「精霊が全部やっているから、詠唱時間も精霊任せ・・こんなやり方、精霊が嫌がるのに・・」
同志「じゃあなんで?」
女王「天界からの要請ね。天界の天使と精霊は協力関係にあるから・・」
ウラノス「新情報が正しいという裏付けになる、か。」
リカルド「効果時間だが・・ステータスを見たところ、72時間効果が続くぞ。」
同志「試合時間は30分でしょう!?無茶苦茶やんけ!」
あ、能力強化の魔法が終わった。
か・・体が軽い!すごい力が溢れてくる!
リカルド「ステータスは基本値の1000倍になってる。」
インスペクター「1000倍!?」
リカルド「あんな魔法の使い方するなら、元のステータスなんて無意味になるな。」
インスペクター「いくらでも強化できますね。」
リカルド「これが・・お前の本当の力か・・」
モブ「やべえ、やべえよ。双星が勝ったらオレの”優勝者を当てよう券”が完成しちまう!」
モブ「え?マジ?対戦相手の【戦闘不能】狙いか?」
モブ「当たったらモブのおごり決定な!」
るーしー「強化など無意味・・天使は常にステータスMAX。」
えええ、絶対誰も勝てないやん!
るーしー「これで終わらせる」
るーしー「ですすとーむ」
受付「これは・・双星選手の周囲に竜巻・・いや嵐が発生しました!」
るーしー「すべてが・・おわる」
受付「るーしー選手、双星選手の周りを高速移動!」
受付「漆黒の羽が嵐の中で双星選手に襲い掛かる!!!」
い、一応無傷だけど・・超不安です!この防御大丈夫だよね?
あ、嵐が治まった。
受付「双星選手ノーダメージ!マラク選手を倒した大技をも防ぎました!」
受付「これが天界の加護なのでしょうか!もはや人の領域を超えております!」
あああ、今度は体が勝手に動いてる。
俺が参加している意味ある?
受付「双星選手、天使の羽を取り出し・・それを剣と盾に変えました!」
受付「これは攻めるつもりだ!」
るーしー「武器なら私もある」
ヒミカ「なっ、剣が!?」
巴「あ、あそこです!」
るーしーさんの手には・・ヒミカさんの風神が・・
そういえば一回戦で言ってた!
あの剣を作ったのは・・堕天使ルシファーだって・・
るーしー「・・第五十段階・・」
魔剣が姿を変え、小さなるーしーさんに似合わない長剣になった。
わかる・・剣が喜んでいる。
本当の持ち主なんだ。そしてあれが・・魔剣の真の姿・・
るーしー「・・神は間違っている。」
るーしー「世界を苦しみで満たし、一部の存在だけが輝くなんておかしい。」
るーしー「私なら、世界の誰もが幸せな世界にできる。」
るーしー「私こそ神になって人々を導くべきなの。」
魔界の話を聞いちゃったからなぁ。
るーしーさんのやり方はすごいと思う。
もしかしたら、その方がいいのかもしれない。
双星「でも・・幸せな世界では、相手を思いやる気持ちが育たないんじゃないでしょうか。」
双星「苦しみがあるから、辛いことがあるから、相手を思いやれる。助け合えるのでは。」
るーしー「そのためにどれだけの人が犠牲になるの?あなたは助けてと言えないまま死ぬ人を見ても同じことが言える?」
双星「わからない。俺は・・・・人間なんて救う価値ないと思う・・」
双星「そんなことより、もっと・・最初から・・完璧な存在に作ってほしかったよ・・」
るーしー「・・」
双星「あなたたちが作ったんだ!これがあなたたち神や天使の作った人間だ!」
双星「何も説明しないで、全部そっちでやって、それでいてこんな苦しみを背負わされて・・」
るーしー「・・」
双星「神様は困っていないの?人間は何もしなくていいの?」
双星「人間は便利な道具を作ってきたよ。でもそれは人間のため・・」
双星「なら・・神様は、神様のために人間を作ったんじゃないの?」
るーしー「・・」
双星「守られたいんじゃない、守りたいんだ。救われたいんじゃない、救いたいんだ。」
双星「もっと役に立ちたいんだ!こんな、何もできない自分だけど・・」
双星「あなたたちは責任をとらないで好き勝手やって・・せめて・・生きる意味を・・ください・・」
いつの間にか声が出ていた。
俺は・・自分がこんなことを考えていたのかと驚いた。
自分のことがわかっていなかったなぁ・・
受付「あんまりぼそぼそ話はやめてくださいねー。観客の皆さんに聞こえるよう話してください。」
わーよかったー。
こんな恥ずかしい話を聞かれたら外歩けないよ。
るーしー「覚悟を示して」
覚悟?
るーしー「この剣が、受け止められる?」
るーしーさんが、魔剣を構えた。
・・体が動く。
俺は・・武器を構えた。
受付「両者武器を構えました!いつ動いてもおかしくありません!」
るーしー「いく」
るーしーさんが、いきなり目の前に現れた!
わ、ワープ!?
ガギィ・・盾でかろうじて防ぐ。
るーしー「覚悟、受け取った」
また体が勝手に動き出した。
剣を振るうが、るーしーさんは後ろに避けた。
るーしー「です・はるまげどん」
るーしー「・・特殊変形:B2・・」
るーしーさんの魔剣が、さらに姿を変えた。
るーしー「いく」
受付「おーっと、ここでるーしー選手猛攻!接近戦で勝負をかけるつもりか!?」
速いし重い!
体が勝手に動いてくれなかったら防げないよ!
・・長剣の使い方は習っていないって言ったら怒られるかなぁ。
るーしー「わーるどえんど」
るーしー「・・特殊最終変形:B・・」
斬り合いの最中、さらに魔剣が姿を変える。
え?
俺の・・剣と盾が合わさり、新たな剣に変わった。
るーしー「これで決める」
今までと違う、全力の攻撃。
俺も迎撃・・というかまだ勝手に動くんだけど俺の体。
ズバッ・・
俺の攻撃が入った。
るーしーさんの魔剣が手から離れ、るーしーさんも吹き飛ばされた。
地面を転がり倒れる。
るーしー「うぅ・・私が・・やらなければ・・・・」
るーしーさんがよろよろと立ち上がる・・が、ぽてっと倒れた。
受付「るーしー選手戦闘不能!」
受付「第10回A国武闘大会は、双星選手の優勝です!!!」
モブ「うおおおおおおおおおやったぜオレ!”優勝者を当てよう券”完成だあああああ!!!」
モブ「すげえ!おい、モブがやったぜ!」
モブ「よーしみんな、モブを胴上げだ!」
・・なんか、観客席で知らない人を胴上げしているんだけど。
優勝したの俺だよ!?
彡⌒ミ「さっき髪の話しなかった?」
いいえ。
宇宙人「おめでとー」
ありがとー。
・・
・・・・




