214七回戦(準決勝)
リカルド「来たか・・」
リカルドさん・・立っているだけで辛そうだ。
双星「あの、辛いなら棄権した方が・・」
リカルド「ふざけるな!お前を倒すためにここまで来た。」
リカルド「たとえこの体が朽ちようとも、諦めたりはしない!」
リカルドさんが構える。
・・やるしかないのか。まぁそういう大会だけどさ。
というか、観客席にマラクさんがいるのが超気になる。
子供のおもちゃにされているし。
アスタ「皆様お待たせしました。これより七回戦(準決勝)を始めます。」
モブ「これアスタ王女だろ?いいよなあ正統派美少女って感じで。」
モブ「実はオレ話したことあるんだぜ。むっちゃ優しい声で女神様だったわ。」
モブ「いいなあ。お近づきになりたいぜ!」
真実ってさ、知らない方が幸せなこともあるよね。
世の中、なんでもかんでも公開すりゃいいってことじゃないな。
アスタ「青きコーナーからは、いつも私たちに謎と希望を与えてくれる双星選手!」
アスタ「今大会も、私たちとは違うものを見ているのかもしれません。」
明後日の方向とかなら。
アスタ「赤きコーナーからは、六回戦で白熱した試合を見せてくれたリカルド選手!」
アスタ「双星選手とは前回大会でも同じ七回戦で闘いました。今回は・・雪辱戦です。」
前回はどう闘ったっけ?
ええと確か・・
アスタ「それでは、レディ・ゴーです!」
思い出した!
俺はすぐに頭を低く伏せた。
パラパラと、少し遅れた髪の毛が斬られて落ちる。
彡⌒ミ「極悪非道なやつめ!」
リカルド「ちっ・・」
確か前回は・・ふところに入ったんだ!
俺はかえる跳びでリカルドさんのふところに入る。
リカルド「前回と同じだと思うな!!!」
双星「うっっっ」
リカルドさんの膝蹴りが、俺のあごを捉えた。
鼻!鼻とか歯とか色々痛い!
ええと、ダークエルフさんの教えだと、攻撃する時は守りが薄くなるらしい。
そして攻撃が入ると追撃したくなるものだって。意識が攻撃に向かうとか。
よし、魔法アイテムでカウンターだ!
・・しかし、リカルドさんは動けずにいた・・
双星「やっぱり無理しているだけでは・・」
リカルド「無理してる?それがどうした!」
リカルド「どんなことがあろうと諦めたりはしない!誰だって・・譲れないものがある!」
双星「・・」
リカルド「我は魔王になる!魔族(民)が苦しんでいても無理だと思ったら諦めるのか?」
リカルド「我は絶対に諦めない!逃げたりはしない!笑われようとも、貶されようとも!」
・・この人は・・本当に立派な人なんだろう・・俺とは違って。
でも、そうまで言われたら俺だって諦めるわけにはいかない!
冷静に考えるんだ。ダークエルフさんが言ってた。
冷静さを失うと、攻撃が単調になるって。
冷静さだけは忘れてはならないと。
確実に勝てる方法・・
リカルド「お前には・・絶対に・・負けない・・」
かかって来ない?
もしかして、もう足が・・
遠くから魔法アイテムを投げれば勝てる。
そうでなくても守っていればリカルドさんはどんどん動きが鈍くなる。
悪手は・・俺から攻めた場合か。
双星「・・」
俺は、足を前に踏み出した。
リカルド「双星・・」
双星「来ないならこっちから行くよ。」
リカルド「上等だ!」
俺の一撃を、リカルドさんは剣で防いだ。
俺の短剣とリカルドさんの長剣はリーチが違うから、自分に有利な距離で闘わないと。
それには・・リカルドさんにより近づかないといけない。
前に出るのは怖いけど、そのために必死で訓練して来たんだ!
リカルド「・・」
・・泣いている?
リカルド「我は魔王になる。だからこそ・・民の気持ちも理解しようとしてきた。」
リカルド「・・感謝する。」
リカルドさんの、隙だらけな大振りな一撃を短剣で防いだ。
そして、そのままリカルドさんは倒れた。
アスタ「リカルド選手戦闘不能!双星選手の勝利です!」
アスタ「双星選手は決勝進出です。先に勝負を決めたるーしー選手との対戦になります!」
るーしーさんはもう勝負を決めたのか。
・・また決勝まできちゃったな。
マラク「・・立派でしたぞぼっちゃん・・」
マラク「さて・・これはどうしたもんかの。」
しっぽに乗って遊んだり、寄りかかって寝ている子供たちを見て、マラクはため息をついた。
・・
・・・・
アスタ「双星様おめでとうございます!」
アスタ王女が抱きついてきた。
アスタ「勝者に熱いキスを・・」
おお!
・・ぐいっ、ぽいっ。
ヒミカさんに引き離され、投げられた。
ふえーんキスしてからにしてよぉ。
ヒミカ「王女様、大会参加者への特別な扱いは公平性を失いかねません。」
ヒミカ「失礼ながら、強制的に止めさせてもらいました。」
アスタ「わかりました。勝者へキスする権利はヒミカ様に御譲り致しますわ。」
ヒミカ「なっ?」
巴「だだだダメです!双星さんにするくらいなら私にしてください!」
ヒミカ「お前も何を言ってるんだ!?」
受付「・・」
あ、受付のおねーさんが控室に入っていった。
・・お世話になっているんだし、ここはうまくみんなを足止めしよう。
双星「みんなはキスしたことあるんですか?」
アスタ「いえ、まだです。」
ヒミカ「必要ない。」
必要のあるなしだったっけ?
巴「ヒミカ先輩が寝ている間に・・あ、いえ、まだです。」
ヒミカ「おい!」
巴「ちょっとだけ!ちょっとだけですから!」
ヒミカ「そういう問題じゃない!」
アスタ「あら?そういえば受付の方が見当たりませんね。先ほどまでいらしたのに。」
あ、バレた!
ヒミカ「ついさっき控室に忍び込んでいました。」
双星「え?気付いていたんですか?」
ヒミカ「当然だ。勝手に飲んだ分は給料から差っ引かれるだけだがな。」
・・受付のおねーさん・・ヒミカさんの方が上手でしたよ。
・・
・・・・
宿に戻ると、珍しくるーしーさんはいなかった。
ルシファー「始祖様が気になるのか?」
双星「え、ええ。一応次の・・決勝の対戦相手ですから。」
ルシファー「しばらく帰って来ないぞ。セバス殿が連れ戻しに来たからな。」
ルシファー「今頃隠れて食事でもしているのだろう。」
双星「セバスさん?」
魔界の人?
ルシファー「始祖様が最初に作られた方であり、魔界で一番弱い者だ。」
双星「未熟だったころに作ったから?」
ルシファー「違う。始祖様はおっしゃった。」
ルシファー「あなたたちが一番弱いセバスを殺したとき、魔界はより強い者が弱い者を殺す世界になる・・と。」
双星「・・」
ルシファー「セバス殿にもこう言った。」
ルシファー「あなたが無法を行えば、あなたは魔界の住人に殺される。あなたから魔界が始まり、終わるのもあなたからだと。」
双星「・・」
ルシファー「それだけだ。おかげで始祖様がいなくても魔界は秩序ある世界でいられる。」
ルシファー「だが・・始祖様がいないと寂しいのだ。」
双星「慕われているんですね。」
ルシファー「・・そうなんだが、放っておくと一生魔界に帰って来ないので、たまにこうしてセバス殿が連れて帰ろうとするわけだ。」
ルシファー「ははは、困ったもんだ。」
うーん、コメントしづらい。
双星「人の世界は・・そんないいものなんですか?」
ルシファー「魔界は秩序ある世界だ。それは素晴らしいものではある。」
ルシファー「だが・・秩序を作ろうとがんばっている世界は、それはそれで美しい。」
未完成だからこその魅力・・なのかな?
・・
・・・・
”終わりの始まり”
”長きに渡って繰り広げられた武闘大会も、明後日の決勝で終わりとなる。”
”今日の準決勝は今までと比べれば地味ではあった。”
”だが、確実に実力者を決勝へ導くよい試合でもあった。”
”決勝に残ったひとりは、るーしー選手。”
”小さな体のどこにそんな力があるのか?”
”初出場の女の子がノーダメージのまま決勝進出です!”
”もうひとりは我らが双星。”
”一回戦では驚かせてくれた双星だったが、その後は地味OR激運な試合が続いた。”
”決勝も期待できないという声が多数だった。”
”事前のアンケートでは、るーしー選手が優勝するという人が90%を超えた。”
”双星が真の計画を発表していたのは何だったのか?というくらい、双星は失望された形だ。”
”もし激運で勝利したところで誰も喜ばないだろう。”
”仮に、るーしー選手が棄権して双星が勝利したところで、皆の不満が高まるだけである。”
”私たちが求めているのは、もっと熱い闘いなのだ。”
”マラク選手VSイプシロン・コピー選手や、マラク選手VSるーしー選手の闘いのような・・”
”だが、ただの人間である双星に望んでも仕方ないことだ。”
”恐らく歴代でもっとも残念な決勝戦になるだろう。”
”観戦する人も少なくなると予想される。”
―――――
”一度はボツをくらったが、無断でここに書いておく。”
”双星に常識は通じない。お前ら何度騙されたら気が済むんだ?”
―――――
双星「記者さんこんなこと書いて大丈夫?」
・・
・・・・




