194マラクVSジェノア
バサッバサッバサッバサッ・・
この日、ドラゴンズタウン(都市名)の上空を、ドラゴンが滑空した。
マラク「試合に来たお。」
マラクさん・・これから試合の日の度にやってくるんですか・・?
ドラゴンが人間の都市へ来ただけで教科書に載ってもおかしくないのに。
双星「って、もしかしてマラクさんとトーナメント近い?」
ヒミカ「いや、お前がマラク殿と闘うとしたら、決勝戦だ。」
ふー安心。いやどのみち優勝は無理そうだ。
アナウンサー「それでは第一試合を始めます。」
アナウンサー「青のコーナーからは、今大会圧倒的な優勝候補!ドラゴンのマラク選手!!!」
アナウンサー「赤のコーナーからは、E国から初参加!予選では華麗な闘いを見せてくれた・・イケメンのジェノア選手!!!!!」
イケメンって・・アナウンサーさんの好みですか?
双星「ジェノアさんの出番だったんだ・・相手が・・んー・・」
これは無理でしょ。
ヒミカ「知り合いか?」
双星「あ、そっか。民主主義を学ぶためE国へ行った時に革命軍を指揮していたジェノアさんです。」
双星「ジェノアさん、同志さん、将軍さん、副官さん、ダークエルフさんに・・インスペクターさんと一緒にヘルハウンドを倒したんですよ。」
ヒミカ「ああ、話は聞いてる。メイスの使い手らしいな・・ま、見ればわかるか。」
巴「民主主義を学びに行って革命軍と一緒に戦った・・?」
至極もっともな疑問。
アナウンサー「ジェノア選手の無事を祈りつつ・・試合開始です!」
私情がすごい。受付のおねーさんが特別じゃなかったんだ。
ジェノア「でかいな・・」
マラク「おお、他の人間よりやりそうだ。しかし惜しい、メイスは巨大生物と相性が悪い。」
ジェノア「ふん、試してみるか!?」
アナウンサー「ジェノア選手しかけた!これは・・死角になりやすい脇腹からその内側へ移動しました!」
マラク「ははは・・戦闘種族を舐めてはいかんな。」
おお!
アナウンサー「こ、これは・・マラク選手、跳躍してその巨体の向きを変えました!」
アナウンサー「なんて軽やかな動き!これがドラゴン族の強さなのでしょうか!!!」
アナウンサー「ジェノア選手ピンチです!マラク選手の射程に入りました!」
マラク「この程度で終わっては困るぞ。」
マラクさんが、ジェノアさんを中心に広範囲ブレスを放つ。
アナウンサー「イヤアアアアアア!ジェノア様ぁ!!!」
ジェノア「けほっ、次はこっちの番だ!エンチャント!」
いつの間にかジェノアさんがドラゴンの背後に周り、後頭部をメイスでぶっ叩いた。
あれは魔法?メイスが淡く光っている。
アナウンサー「キャー!ジェノア様ぁん!」
マラク「やはり炎に強い素材か!いいぞ、人の闘い方をワイに見せてくれ!」
ジェノア「ちっ、全然効いてねえな。」
マラク「ちょっと痛かったゾ♪魔法で威力の底上げならワイもよくやるお。」
アナウンサー「ジェノア様がんばってくださあい!!!」
マラク「炎に強くても力で押したらどうする?」
マラクさんの巨体が動いた。
ジェノアさんに体当たりを仕掛ける。
それは・・大岩がぶつかって来るようなもの。巨大な質量が意思を持って襲い掛かる。
ジェノア「そんな雑な攻撃くらうか!くらえ!」
マラク「ははは、僅かな隙から反撃に転じるのか。この妙技、この絶妙なまでの間を読む力も人の強みだ!」
ジェノア「くそっ、余裕だな。」
マラク「では、ワイも見せようかな・・ドラゴン族の力を!」
アナウンサー「あっ、マラク選手飛び・・いえこれは跳躍です!」
ジェノア「ま、まさか・・」
マラク「HELL FIRE(熱くてごめんね)」
空中からのマラクさんのブレスが試合会場を飲み込んだ。
観客席は・・大丈夫みたいだ。でも、ジェノアさんが・・
ゆうに人の高さを越える炎が試合会場全体を覆う。
ジェノアさんの姿が見えない。
アナウンサー「あ、あ、そんな・・ジェノア様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
ズウウウウウウン!
着地したマラクさんの衝撃で、観客席まで大きく揺れた。
マラク「・・まさか・・」
ジェノア「はあああああああ!!!」
アナウンサー「ジェノア様!!!!!」
炎の中から飛び出したジェノアさんの渾身の一撃は・・マラクさんの頭をぶっ叩いた。
ジェノア「・・ここまでか・・」
落下するジェノアさんを、マラクさんのしっぽが受け止めた。
ジェノア「対戦相手から情けをかけられたらどうしようもない、降参だ。」
マラク「痛いお。だがこれでドラゴン族の成長につながる。」
ジェノア「どういうことだ?」
マラク「ドラゴン族は最強を目指している。人の闘い方も吸収してより強くならせてもらう。」
ジェノア「・・さらに強くなるのか。」
マラク「精霊を超え、天使を目指し、いずれは神をも超える。それがドラゴン族すべての悲願だ。」
マラク「種族の目標を持たぬ人間には難しかったかな?」
ジェノア「そうか、だからドラゴン族同士は争わないのか!」
マラク「・・んなことないんだけどねぇ。昔は同族殺しすごかったよ。」
アナウンサー「ジェノア選手が降参したため、マラク選手の勝利です!」
アナウンサー「ジェノア様が生きててよかったです!!!」
うん、ジェノアさんが生きててよかった。マラクさん強すぎ!
双星「・・あのー、ひいき実況はいいんですか?」
ヒミカ「結構評判いいからな。理由があれば許される。」
双星「理由?」
ヒミカ「例えば、対戦相手が残虐な者だったりしたら、正義実況は盛り上がる。」
へー。
ヒミカ「今回は人間VS非人間だ。しかも相手はドラゴン族。弱い人間が強大なドラゴンに立ち向かう物語になる。」
ヒミカ「お前の場合は特殊だったから無かったが、昨年の改造人間が相手の時はよくあったぞ。」
なるほど。俺が縄で縛られた状態で挑んだあれか。
今思えば頭おかしかったね!
巴「今年の試合は例年以上ですね!見た目の派手さもそうですが、人間だってドラゴンと闘えてますから。」
ヒミカ「二回戦が盛り上がりの最高潮にならなければよいがな。」
二回戦?
双星「二回戦に何があるんですか?」
ヒミカ「順当に進めば・・・・マラク殿VSイプシロン・コピーだ。」
事実上の決勝戦かな?
・・
・・・・
”一回戦”
”・・本日の試合はいきなりクライマックスだった。”
”双星VSヒミカ選手”
”この対戦カードに、みんなの心がひとつになった。”
”我らのヒミカ様が双星を倒し勝利を飾ってほしいと!”
”だが、ヒミカ様が棄権を申し出たのだ。”
”棄権理由は参加者の機密情報を聞かされたとのこと。”
”ヒミカ様に非はない。皆が棄権なんてしないでほしいと願った。”
”・・その願いを叶えたのは双星だった。”
”双星は理路整然と不正ではないとヒミカ様を説得。”
”それに呼応するように大会上層部も不正ではないと発表した。”
”ヒミカ様は棄権を撤回し、闘いが始まった・・”
”圧倒的な身体能力と戦闘センス、そして魔剣を2本も所持するヒミカ様が負ける道理はなかったはずだ。”
”だが、卑怯な双星はヒミカ様の魔剣を奪って闘った。”
”さらに魔剣の【真の力】を解放し、そのおぞましさに観客は恐怖し震えあがった。”
”勝負はヒミカ様の2本目の魔剣まで双星が奪ったところでヒミカ様がギブアップ。”
”双星の闘い方は、まるで悪魔のようだった。”
”やはりこの男を止めるには、武器に頼らない圧倒的な力が必要だ。”
”圧倒的な力を持つマラク選手。”
”一回戦の対戦相手はE国のジェノア選手。”
”ジェノア選手はブレス対策として炎に強い防具、そして武器強化のエンチャントを用意してきた。”
”・・ドラゴン族相手に善戦したと本誌記者は思う。”
”だが、マラク選手は超広範囲ブレスで試合会場全体を炎で包み込んだ。”
”逃げ場のない状態からジェノア選手は一矢報いた・・が、そこまでだった。”
”余裕を残しつつ、マラク選手が勝利した。”
”だが本来ドラゴンは大勢で挑むものであり、単独で戦い抜いたジェノア選手の勇気は本物だった。”
”ドラゴン相手に物怖じせずその力を十二分に発揮する。この様な人物こそどの国も望む人材であろう。”
”イプシロン・コピー選手は・・これは闘いではなかった。”
”一方的な蹂躙。”
”B国の秘密兵器は予選に続き本選でも圧倒的な強さを見せつけた。”
”これ以外にも多くの試合でレベルの高さがうかがえた。”
”紙面の都合で全部を紹介できないことがあまりにも残念である。”
”二回戦の注目は間違いなく、マラク選手VSイプシロン・コピー選手だろう。”
”優勝候補同士のぶつかり合い。竜虎相搏つ試合になることは間違いない。”
”本誌記者のために観客席を開けててもらえると助かります!”
双星「あの・・我らが双星はどこへ行きましたか?」
・・
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