188【依頼の目的】
目が覚めた。
頭が追い付かない。
こ、これが人格の統一・・・・・・ち、違う!
俺はカプセルから出た。
違う。これは・・人格の支配だ!
俺が頭で考えると、教団の人がその通りに動き出した。
全部頭の中に入って来る。
みんなの記憶も、感情も、ここの正体も、全部わかった。
でも!
俺は・・教団の奥へ進んだ。
まだ案内されていなかった場所・・教団員がドアを開ける。
俺が考えるだけでみんなその通りに動く。
ひとりが全員を支配するシステムだ。
統一じゃない。ひとり以外が奴隷になるだけだ・・
最後のドアが教団員によって開けられた。
中に入ると・・そこには、醜く太った男がいた。
こいつが今まで他の全員を支配していた。
他の人は・・みんな騙されていたんだ!
ここで今まで行われていたこと・・それは、記憶として知るだけでもおぞましいもの。
ここの子供の父親は・・みんなこの男だ。
他の人に働かせ、他の人をおもちゃにし、自分だけ幸せな日々を送っていた。
耐えがたい感情が俺の中に入って来る。
他人を蹂躙し、支配し、欲のまま行動する喜び。
醜い!なんて醜いんだ!!!
こんな人間がいるのか!?
・・
・・・・
支配のコントロールを俺が得ているのはともかく、解除の方法がわからない。
俺はヒミカさんに泣きついて来てもらった。
ヒミカ「つまり、そこの連中はお前の思い通りに動くんだな?」
双星「はいそうです!」
ヒミカさんは警察を手配してくれた。
大勢の人たちが教団施設にある物を調べている。
受付「よしよし、辛かったですよね。」
俺はなぜか受付のおねーさんになでなでしてもらっている。
まぁ、別にやめさせる必要ないよね!
ヒミカ「こいつが主犯か・・すぐに連行したいが、今の状態を解除しないと取り調べも意味がないな。」
双星「俺が言わせても意味ないですよね。」
ヒミカ「とりわけ解除方法と言ったら・・このカプセルか。」
人を奴隷状態にするカプセル。
・・まぁ、俺が使ったら支配権変わっちゃったけど。
受付「あ、そこにいじれるのついてますよ。それで解除もできませんか?」
ヒミカ「・・それっぽいのがあるな。よし、試してみるか。」
双星「試すなら俺から?」
ヒミカ「お前を解除して他のやつが支配権を持ったら面倒だ。お前は最後。」
はーい。
ヒミカ「主犯のやつで実験しよう。失敗して死んだ方がいいかもしれないが。」
みんな戻れなくなったらそれはそれで大変そう。
俺・・他人の記憶も、感情もいらないよ。
他人を傷つけて喜んだり、他人を蹴落として喜んだり、簡単に他人を憎んだり・・それが当たり前だなんて・・
ヒミカ「始めるぞ。」
主犯の男をカプセルに・・なんとか押し込み、作動させた。
効果はすぐに出た。支配の連結が解かれたのがわかったからだ。
主犯の男「な・・な・・?」
ヒミカ「話は聞いた。他者の洗脳や暴行、監禁で逮捕する。」
主犯の男「な、なぜだ!?双星を支配すれば、大勢の奴隷が増えたのに!」
ヒミカ「双星に常識を言っても無駄だ。」
主犯の男「くそお!殺してやる!お前なんか殺してやる!!!」
ヒミカ「連れていけ。」
警察「はっ!」
警察「ひっ!」
男はしょっ引かれた。
ヒミカ「犯罪者のあがきはいつ見ても醜いな。」
双星「・・あんなもんじゃないですよ。」
あがいている時より、犯罪を犯している時の方がよっぽど・・
他者の苦しみを自分の悦びにできるんですから。
ヒミカ「解除はできそうだな。他の者も解除していくぞ!」
被害者が正気を取り戻したときを考え、警察と医者に待機してもらった。
・・
・・・・
ヒミカ「今ので最後だな。」
双星「・・うん。」
正気を取り戻し、騙されていることを知った被害者は一様に動揺を隠せずにいた。
・・操られていた間の記憶が残っていたんだ。
暴れ出す人、絶叫する人、嗚咽を漏らす人、嘔吐する人・・殆どが心に傷を負っていた。
ヒミカ「お前が悪いわけじゃない。そんな気を落とすな。」
双星「・・洗脳を・・解かなければ苦しまずに済んだ・・なんて、変ですかね。」
ヒミカ「そんなのはぬるま湯の風呂から出れないいいわけと同じだ。」
ヒミカ「いつか出なければならないのだから、早い方がいい。」
ヒミカさんは・・強いよなぁ。
こういう時は、それがありがたい。
あれ?受付のおねーさんがきょろきょろしてる。
双星「どうしましたか?」
受付「干渉されています。何か仕掛けてくるかも。」
干渉?
俺は、異変に気付いた。
双星「あ・・もうひとりいます。洗脳のネットワークに誰か入ってきました!」
さっきまでいなかったはず。
カプセルを使われたわけもない。俺たちがすぐ近くにいたんだ。
双星「でも、位置が特定できない。命令もできない・・」
ヒミカ「どういうことだ?あれが最後ではなかったのか?」
そうなんですけど。さっきまではいなかったのに、今はいるわけで・・?
双星「な、なにか入って来る!」
これは・・記憶?
双星「・・どこだここ・・大勢の天使・・ひとりだけ違う何かがいる。」
ヒミカ「双星?」
受付「双星さん、気をしっかりもってください。」
声が聞こえる。記憶の中の声だ。
?「見事だ。これなら私たちも世界を作れる。」
?「そう。」
?「・・すぐに世界を作る。あなたも手伝ってくれませんか?」
?「キミたちだけでも作れると思うけど・・まぁいいよ。」
双星「世界を・・作る?」
場面が変わった。
双星「今度は・・大勢の天使と戦っている。これ、天使と戦っている人の視点だ・・」
強い。何百?いやもっといる?それだけの天使相手にまったく負けていない。
あ!
天使たちの中に・・受付のおねーさんが・・
俺は、思わず受付のおねーさんを見てしまった。
受付「・・」
流れ込んでくる記憶と同じ姿だ・・羽がないくらいで・・
天使は皆、美しい姿をしていた。
双星「・・治まった・・いや、ネットワークからも消えた。」
ヒミカ「何が起こったのだ?平気か?」
双星「まぁ、平気、です。」
受付「最初から・・それが目的だったんですね・・ルシファー・・」
え?
ヒミカ「結局なにが起こったのだ?」
双星「いきなりネットワークに誰か入って来て、記憶を流していったんです。」
双星「2つあって、ひとつは大勢の天使と天使以外がひとりいて、世界を作るとか言ってました。」
受付「天使じゃない方の役割は?」
双星「天使から手伝ってほしいって言われてOKしていました。」
受付「そう・・ですか・・」
双星「もうひとつは、大勢の天使と戦っていましたね。話してはいませんでしたが、すごい強い人でした。」
ヒミカ「何を表しているかはわからないが、堕天使騒ぎの次は天使か。」
受付「・・見ましたか?」
双星「・・は、はい。」
受付「・・負けたなんて知られたら恥ずかしいので秘密ですよ。」
負けた?
この記憶の人は、大勢の天使相手に勝利した・・?
ヒミカ「答えの出ないことを考えても仕方ない。お前も早くカプセルに入れ。」
双星「あ、はい。」
受付「双星さん・・あれは、人を殺したりはしません。ただ、やり方は気に入りません。」
あとはつつがなく事件の処理は終わった。
俺は簡単な事情聴取で解放された・・まぁ、今日一日の出来事だもんな。そんな話すことない。
依頼にあった逮捕状が出ていた人も、操られていただけなので罪にはならなさそう。
・・というか、操っていた人が責任を問われるそうです。
・・
・・・・
宿に戻ると、依頼人の女の子がいた。
俺を見つけると、てとてとやって来た。
るーしー「ありがとう」
女の子は報酬を渡してくれた。
かわいいなぁ。ああいう子供ができたら溺愛したくなるだろうなぁ。
あ・・ルシファーさん。
ルシファー「・・オレじゃない。始祖様のことだ。」
え?
ルシファーさんは、依頼人の小さな女の子を見た。
ルシファー「始祖ルシファー。オレたちルシファー族の創造主で、お前が見せられた記憶の持ち主。」
ちょ、ちょっと待って!
いきなりそんなこと言われても・・
ルシファー「ジェミニ様が不満を抱くのも無理はない。目をかけた人間が横からかっさらわれると思われているのだからな。」
ルシファー「だが・・始祖様はお怒りだ。神様への貢献が足りない、もっと・・神様に尽くせ。」
ルシファー「・・ま、怒りの矛先はお前じゃない。一年前は金サンキューな。」
えっと・・
そういうのは・・もっとすごい人間に言ってください・・
なんで俺なの?
るーしー「・・人間なんて、みんな同じ。」
・・
・・・・




