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179超神


俺たちは、城の裏手にある山へやって来た。

ここにオリジナルのイプシロンがあるらしい。


壁「ほらここ、よーく覚えとけよ。女体型の木が生えてる根本を掘るんだ。」

中々の美しさだ。

俺は掘る場所を伝えた。


第一王子「だ、そうです。兵士のみなさん頼みましたよ。」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

兵士たちは地面を掘りだした。


壁「全アド!遊びがないよね。オレなら”はい!へい!ほい!”って返事する。」

そのアドバイスは必要ないのでは?


ガツッ。


兵士「ありました!地下への階段です。」

階段はほんのり明るくなっていた。

ただ・・どこまで続いているかわからないほど続いている。


第一王子「これは・・兵士のみなさん、お互いが見えるくらいギリギリの距離で順番に入ってください。」

第一王子「状況をこまめに声かけ合いながら、異常があればすぐに報告を。」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

双星「普通に入るんじゃダメなんですか?」

第一王子「換気できない地下は、有毒ガスが充満している可能性がありますから。」

双星「・・・・え、それって・・兵士さんを犠牲にしているのでは・・」

兵士「B国のためなら喜んで犠牲になります!」

兵士「自分の行動でB国が良くなるなら望むところです!」

兵士「誰かが勇気を出す必要があるのなら、まずは自分が志願したいです!この様な機会を与えていただき至極光栄であります!」

う・・故郷から逃げた俺には痛い言葉だ・・


壁?「毒はないわよ。」

なら安心だ。というか野外なんだから壁がしゃべるのはちょっと・・


双星「毒はないそうですよ。」

第一王子「そうですか。では兵士のみなさんお願いします。」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

兵士「はい!」

俺の言葉を聞いていなかったかのように、兵士さんたちは間隔をあけて入っていった。


ダークエルフ「それが彼らの仕事。何を言っても無駄よ。」

双星「ダークエルフさん・・人の命って、平等じゃないのかな・・」

ダークエルフ「人間は、あらゆるものに価値をつけるわ・・命にもね。」

メイド「弱者を助けようというのも同じですよね。困っている人を弱者とそうでない人に分けて、弱者だと認定された人だけ助ける。」

メイド「本当の弱者は、助けてもらえなかった人なのに・・」

メイドさん・・そっか、メイドさんは貧民街出身だから・・


第二王子「ええいまどろっこしい!幸運の持ち主が大丈夫ってんならとっとと行けばいいだろ!」

第二王子が、階段を駆け下りていった。


第一王子「おやおや。」

ダークエルフ「いいのか?お前の弟だろう?」

第一王子「双星殿が毒はないと言ったのですから、大丈夫だと思っていますよ。」

双星「え、じゃあ兵士さんたちがやってるのは・・?」

第一王子「個人の感情で、今まで学んだやり方を否定するわけにはいかない・・というだけです。」

第一王子「石橋を叩き壊すくらい慎重なやり方が私に合っているんですよ。」

壊したら意味ない気もするけど・・うーん、俺にはちょっと難しいや。

俺たちは、第二王子の後を追って階段を下りていった。


・・

・・・・


階段を下りた先には、広い部屋があった。


第二王子「見ろよ、こりゃすげえぜ!」

第二王子が床を見てつぶやく。

・・ただの石畳に見えるけど。


ダークエルフ「カビもコケも生えない。空気も清浄・・神聖な力で守られている。」

第一王子「祝福の地ですね。このような場所に導いていただけるとは・・神に感謝しなければなりません。」

科学者「ふん、神は毒ガスもカビもコケも受け入れなさる。ここは・・双星が来るために用意された場所じゃ。なぜまだ気付かぬのだ。」

第二王子「いくらなんでも70年前から計画されてるわけねえだろ。双星が生まれる前じゃねえか。」

科学者「・・まだ人の常識に囚われておるのか・・」

第一王子「そんなことより、中央の”あれ”がオリジナルのイプシロンでしょうか。」

部屋の中央には、大きな棺のようなものがあった。

ふたを外さないと中はわからないな。


?「ここは禁断の地。精霊と天使により封印された場所。」

第二王子「誰だ!?」

石畳のブロックが集まり、大きな人の形になった。


ダークエルフ「・・ストーンゴーレム。」

ゴーレム「我はこの地を守るよう厳命された者。そなたらは、誰の許可を得てここに来た?」

双星「壁さん?」

ゴーレム「壁ではわからぬ。許可を出した精霊か天使の名を告げよ。」

えええ、知らないよ。

えーと、壁さん教えてください!


壁?「なんで?」

壁さんがここを教えてくれたんじゃないですか!


壁?「そこのハーフエルフにでも聞いたら?」

ハーフエルフって、ダークエルフさんのことか。

エルフとダークエルフのハーフだもんな。


双星「えーと、ダークエルフさん・・名前知ってますか?」

ダークエルフ「ん?なぜ私が?」

双星「いや・・壁さんがそう言ってて・・」

ダークエルフ「私が知るわけ・・いや、もしかしたら・・」

ダークエルフ「風の精霊、星恋。」

ほんとに名前出た。


ゴーレム「・・・・確認がとれた。よかろう、ここでの活動を認めよう。」

ゴーレム「ただし!そこのハーフエルフのみ認める。他の者は、口出しは構わぬが手出しは無用。」

ゴーレム「・・外に持ち出したものは好きにするがよい。そこから先は関知しない。」

ダークエルフさんだけ?


ゴーレム「それと精霊から伝言がある。」

ゴーレム「”次はジェミニちゃんの名前でお願い♪”だそうだ。」

ジェミニ?


壁?「よかったわね。あの女の名前がわかって。」

壁さん?

なんか・・さっきから様子が変っていうか・・

ゴーレムは、再びバラバラになって床や壁の一部に戻った。


第一王子「風の精霊ですか・・契約を結んだ精霊でしょうか?」

ダークエルフ「いや、精霊の枠組みを超えて活動していて、親しみやすく融通の利く御方だ。」

ダークエルフ「会ったこともなかったが、わかってくれたようだ。」

双星「ありがとうございます、いい精霊さんなんですね。」

ダークエルフ「精霊のルールを破ったり、天使に喧嘩を売ったり、人間を利用して実験したりするのがいい精霊なのかはわからないけどね。」

精霊の枠組みを超える = 精霊のルールを破る、天使に喧嘩を売る

親しみやすい = 人間を利用して実験をする

・・まぁ、空気は読める精霊さんなのかな・・?


ダークエルフ「許可は出たが私だけ作業許可か・・とりあえず棺のふたを開けるぞ。」

科学者「ああ、頼む。」

ダークエルフさんは、大きなふたを魔法で開けた。


第一王子「おお!」

第二王子「・・これがイプシロンか・・やっべえ感じがぷんぷんしてやがる。」

科学者「コピーではオリジナルに敵わぬか。追いつける気がしない。」

双星「そんなにすごいの?」

ダークエルフ「似てはいるけど根本的に別次元の代物ね。作り手はいい意味で常識を超えてるわ。」

ダークエルフ「・・恐らく人や亜人ではありえない。もっと高度な存在が作ったもの。」

記者「記事書きたいぃぃぃ!!!」

第一王子「これは絶対に許可出せませんね。ああ、この出会いを神に感謝します。」

第一王子「むしろ・・このオリジナルを動かせませんか?」

しかし科学者さんは首を横に振った。


科学者「基幹部分がコピーとは全然違っていて無理じゃ。コピーの設計図は・・わざわざ人間用に作り直しておったか・・」

双星「ええと、役に立ちそうですか?」

科学者「知りたい部分はわかるから大丈夫。ダークエルフのお嬢さん、イプシロンの左の胸にチップがあるはずじゃ。」

ダークエルフ「はい。」

しかし、探してもチップは見つからなかった。


科学者「・・これは!左右逆に作られておる!」

双星「逆に?なんで?」

科学者「そのまま作るより難度が高くなる。より深く理解した上で作れることを・・つまり、より高度な技術を持っていることを示しているのじゃ。」

はー、イプシロンを作った人はすごいってことか。


壁?「ありがとう。」

なんで壁さんがお礼言った?

ダークエルフさんが右の胸からチップを取り出した。


科学者「それがあれば十分じゃ。」

第一王子「イプシロン本体を持ち出すことはできませんか?」

科学者「お嬢さんひとりでか?無理じゃ。」

第一王子「そうですか。わかりました。」

第二王子「兄貴にしてはいやにあっさり引き下がるじゃねーか・・なに企んでる?」

第一王子「疑り深い弟ですね。嫌われますよそういうの。」

科学者「どうせイプシロン・コピーが実用段階になったら強引に持ち出そうと考えてるのじゃろう。」

科学者「この神聖な空間はイプシロンが動かないよう調整されておる。コピーもここではでくの坊にしかならんぞ。」

第一王子「・・なっ。」

予想外だったのだろうか。

笑顔のイケメンだった第一王子が、初めて眉をひそめたイケメンになった。


第一王子「・・双星殿、なんとかなりませんか?」

壁さんどう?


壁?「死ねば?」

辛辣すぎる!


双星「すみませんわかりません。」

第一王子「そうですか・・まあ仕方ありません、目的は達しました。城へ戻りましょう。」

それにしても、壁さんが今までと違いすぎる。

俺は壁を見て驚いた。


壁の方には・・知らない女の子がいたからだ。


少し青がかった黒い髪と瞳。

褐色より少し薄めの肌。

体格はメイドさんと同じくらい。


壁?「見つかっちゃった。」

女の子は、いたずらを思いついた子供のようにニヤリと笑った。

みみみみんな!誰かいる!

・・声が出ない!体が動かない!


壁?「初めまして。私がそこのイプシロンを作った超神よ。」

超神?

というかなんで動けないんだ!?

・・みんなが俺を置いて外へ出ていく。気付いて!俺はまだ・・

しかし、誰も俺に気付かずいなくなってしまった。

お、おかしい。これが・・超神さんの力・・?


超神「ところで・・誰の許可を得て他人のものを持ち出してるわけ?」

いえその・・壁さん、でしょうか?


超神「私の大切なおもちゃなんだけど?そんなにもほしいの?」

は、はい。みんなとても興味深そうで、きっと素晴らしい作品なんだと思います!

俺は心の中で精一杯叫んだ。


超神「あなたは・・どう感じた?」

どうって・・いやその、どこがすごいかとかよくわからなくて・・ああいえすみません。

た、たぶん動いたらおおおって思ったりすると・・思うのですが・・


超神「ふーん、動いてなくてもすごいと思わせなくちゃダメってことね。次の参考にするわ。」

こ、この度は勝手に持ち出そうとして誠に申し訳ございません。

海より深く反省していますからどうかお許しください。


超神「いいわ、許してあげる。」

あっ、体が動く!ありがとうございます!

俺は全力で階段を駆け上がり、外に出た。


・・

・・・・


双星「お日様が素晴らしいです!」

声も出る。つい叫んでしまった。


メイド「双星様?どうかしましたか?」

双星「あ、いえ、なんでもないです。」

ふー、無事戻れたみたいでよかった。


メイド「それにしても、今回も双星様は大活躍でしたね。」

へ?


メイド「地下は危ないからと、率先して中の安全を確かめに行ったのには驚きました。」

メイド「でーすーが、危ないのでもうしないでくださいよ!」

・・何の話?

地下へ駆け下りたのは第二王子さんだよ?


ダークエルフ「双星が精霊の名を知っていたのも驚いたわ。人間が精霊と知り合う機会なんてそうないのに。」

ふぇ!?

な・・なんか、俺の知ってる展開と違うんだけど。


第二王子「あのゴーレムめ、中の物は双星しか扱っちゃいかん!とか言ってさ。偉そうだったよな。」

第一王子「ははは、双星殿がちゃんとチップを取り出したのですからいいではありませんか。」

いや、イプシロンのチップはダークエルフさんが・・

あれ?俺の手に・・チップがある!


科学者「どうした?張り切って疲れたか?」

双星「えっと・・・・いえ、なんでもないです。」

これは一体・・


超神「にやにや。」

うわぁまだいるぅぅぅ!


超神「これからよろしくねぇ。はい、お近づきのしるし。」

封筒?あ、それぞれ名前が書いてある。


超神「みんなの欲しがってることがそこに書かれてあるわ。」

超神「名前の書いてある人に渡しなさい、それが運命の導きよ。」

運命はわからないけど、みんなが欲しがっていることなら喜んでもらえるのかな?


双星「あのーみなさんちょっといいですか?」

第一王子「どうしましたか?」

双星「これ、えーと・・う、運命らしいです。」

俺はみんなに封筒を渡した。


第一王子「こ、これは!未発見の鉱山の情報!?しかも5つも・・これが本当なら、飢える国民を救うことができます・・」

第一王子さんは、兵士たちにすぐ確認するよう指示を飛ばした。

欲しがっていることってそういうことか。優しい世界だ。


第二王子「こ、これは!!マイナーすぎて俺も知らない面白漫画情報!やったぜ!!!!!」

第二王子さんは、狂喜乱舞した。

いや、国のためになることじゃなくていいの?


科学者「こ、これは”創造の力”の資料か!かつて人はこの力を使い、堕天使ルシファーに会ったと言われておる!」

科学者「研究のし甲斐がある!この様なものがあったとは!!!」

堕天使ルシファー?

そういやA国の宿にもルシファーさんいたような・・?


メイド「こ、これは!双星様の署名捺印された婚姻届!やったー♪」

え?そんなのもらっても嬉しくないよね?


記者「こ、これは!!各国の未解決事件についての資料!え?うそ、知らない話もある!」

記者「裏をとったらすごい記事になりそう!・・まぁ裏はいっか。とにかく記事にしないと。」

裏はとりましょう。


ダークエルフ「・・」

ダークエルフさんは、難しい顔をしている。

嬉しいこと・・じゃなさそうだ。


双星「な、なにかよくないことでも書かれてあったんですか?」

ダークエルフ「いや・・私の・・実の両親の情報だ。」

え?


ダークエルフ「これによると、A国にいて私の成長を見守っているそうだ・・が、今更だ。」

第二王子「人に歴史ありなんて言うが、誰にだって歴史はあるよな・・ダークエルフにも。」

第二王子「あんただって全部が全部望んだことだけしてきて、望んだ結果を得てきたわけじゃねーだろ?」

第二王子「辛いこともあったろうし苦しいこともあっただろ、あんたの親も同じさ。」

第二王子「誰だって辛い過去には触れられたくないもんだ。だから・・今を大切にすればいい。両親についても、今を考えればいい。」

ダークエルフ「・・そうだな。ありがとう。」

さっきまで漫画で喜んでいた人のセリフとは思えない。うーん。


メイド「実の両親と再会できるかもしれないんですね・・絶対A国に帰らないと!」

うん。でも・・帰れるの・・?


第二王子「しかしなんでいきなりこんなもんくれたんだ?いや嬉しいけど。」

双星「いやなんか渡してって言われたから。」

第二王子「・・他人事だなぁ。別にいいけどさ。」

第二王子さんは、不満そうな顔をした。

・・超神さん、なんでですか?


超神「人間なんて、物を渡せば信頼してもらえるでしょ?」

む、そんなことありませんよ!


超神「じゃあ返して。」

・・いえその、せっかくもらったんですし・・というかみんな結構すごいのもらってたからね。期待しちゃう。

俺は自分の分の封筒を開けた。


中には紙が入っていて、そこには・・を治す魔法が載っていた。


・・・・違いますよ?

俺は違うからね?


超神「感謝していいわよ(にっこり)」

なんで?(激怒)


・・

・・・・


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